第一回  ゼロから学べる電子契約の基礎

第一回のコラムとなる本日は、電子契約の導入におけるメリットと、どのような法的環境が存在するのか、そしてメリットだけではなくデメリットについても紹介することで、電子契約に関する基礎を解説していきます。

電子契約とは

電子契約とは、電子文書をインターネット上のサービスで交換して署名することで契約を締結し、企業のサーバーや、外部のデータセンターなどに電子データを保管しておく契約の方法です。電子署名法や電子帳簿保存法といった電子契約に関する法的環境が2000年前後に整備され、インターネット技術やセキュリティやタイムスタンプといった技術的開発が進んだことで、電子契約を導入しやすい環境になってきています。

法的・技術的な環境の整備によって、日本の商慣習において当たり前に行われていた「紙と印鑑」による契約締結だけでなく、電子契約による契約締結も徐々に増加してきています。

書面契約と電子契約の比較

分類 書面契約 電子契約
書類媒体 印刷された紙 電子データ
署名方法 署名、押印 電子署名、タイムスタンプ
相互確認 原本の郵送、または持参による受け渡し インターネット上での電子データによる受け渡し
保管方法 倉庫やキャビネットによる原本の物理的な保管 自社内のサーバーや外部のデータセンターによる電子的な保管

特に企業間の取引においては、電子契約を導入することで、「契約に関する費用の削減」「契約締結から管理までの業務効率」「契約に関する各種リスクの低減」といった、大きな経済効果を得ることができるようになってきました。 今ではおよそ4割の企業が電子契約を導入、もしくは導入を検討するようになっています。

およそ4割の企業が電子契約を導入、もしくは導入を検討している

電子契約の導入メリット

これまでの書面による契約を電子契約に切り替えることで、企業は大きく3つのメリットを受けられるようになりました。

電子契約利用のメリット

コスト削減

書面による契約の締結は、郵送代、封筒代、印刷代、インク代、さらにはそれらの作業にかかる人件費や、書類の保管費(法人税法上、紙の契約書は7年間の保存が定められています)といった様々なコストが発生します。 一件あたりの費用は数百円から数千円程度ですが、総額では毎月数万円以上の費用になっていることも少なくありません。電子契約を導入することで、契約書類はインターネット上でデータを受け渡しするため郵送はもちろん、原本の印刷なども不要になります。また、ファイルをインターネット上にアップロードするだけなので、業務は簡素化されて人件費も最小限にできます。

書面を取り交わして保管する場合1契約あたり500円以上かかる

そして電子契約の導入で特に注目されるのが、印紙代のコスト削減です。印紙代は、印紙税法第二条において、印紙税の対象となる課税文書が定義されています。その金額は、一枚数百円から、数万円を超えるものまであります。

平成28年4月現在において、課税文書とされるのは、以下の要件を満たすものとされています。

参考:印紙税額の一覧(国税庁より)

しかし、国税庁は課税文書を「紙の原本」と定義しています。したがって、契約書の電子データだけでなく、電子データのコピー(写し)も原本に当たらないため印紙代はかかりません。少し前の話になりますが、2005年、当時の首相である小泉純一郎氏は、以下のような答弁をしています。

参議院議員櫻井充君提出印紙税に関する質問に対する答弁書(5の一部を抜粋)

事務処理の機械化や電子商取引の進展等により、これまで専ら文書により 作成されてきたものが電磁的記録により作成されるいわゆるペーパーレス化が 進展しつつあるが、文書課税である印紙税においては、電磁的記録により 作成されたものについて課税されないこととなるのは御指摘のとおりである

http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/162/touh/t162009.htm

業務効率化

書面で契約を締結する場合は、原本を印刷、押印、郵送、取引相手に押印後の原本返送の依頼等によって、契約締結まで2〜3週間程度かかることもあります。 さらに、途中で契約内容の変更などあれば、再度印刷からやり直すことになり、二重、三重の手間が発生していました。また、監査等の対応で過去の契約内容を確認する時は、倉庫やキャビネットから探し出す必要があり、整理されていない状態だと探すのに苦労することもあります。

電子契約の場合は、お互いがパソコンやスマートフォンで作業するだけなので、早ければ2、3分で契約締結に関わる全ての業務を終えることができます。契約書の送信者は、互いが電子データを確認できる環境にファイルをアップロードして、署名してもらうだけで契約が完了します。仮に、修正があっても、再度ファイルをアップロードするだけです。また、過去の書類を確認する必要があれば、検索機能を利用して書類の名前などで容易に検索が可能です。

作業時間の大幅な短縮が可能

コンプライアンス強化

書面での契約書を倉庫やキャビネットに保管するリスクとして、契約締結の改ざんや管理漏れ、紛失や復元などが挙げられます。企業の中では、日々に多くの契約書類の受け渡しがあり、どの契約書を、今誰が、どのように進めているのか、全てを把握するのは難しいのではないでしょうか。また、契約内容を改ざんされてしまうこともあります。

さらに、いざ過去の契約書の確認が必要になって倉庫やキャビネットを探してみると、一部の書類が紛失していたというリスクがあります。災害などで倉庫やキャビネットが破壊され、そこに保存していた書類も復元できなくなってしまうという可能性もあります。

電子契約では、契約書を電子データとして一元管理することで、業務の透明性が向上し、抜け・漏れを少なくすることができます。当社が提供しているクラウドサインでは、書類の締結状況や、誰まで送信されているのかまでステータスで管理できますので、契約の締結漏れを減らすことも可能です。

さらに、外部のデータセンターは高いセキュリティ基準を設定しているが多く、不法な侵入を防いでくれます。また、災害に備えて耐震性なども強化しています。バックアップデータも写しではなく原本ですので、原本保全性の確実性が高まります。

電子契約に関わる法的環境の整備

次に、電子契約に関わる法的環境について紹介したいと思います。冒頭で説明しました通り、電子契約に関わる法的環境は2000年前後から整備されました。代表的な法律について紹介します。

電子帳簿保存法

従来、企業が紙で管理していた会計記録は、7年間の保存が義務付けられていました。しかし、電子帳簿保存法において、納税地又は国内の事務所、事業所その他準ずる場所で、以下の保存要件を満たせば、帳簿書類の電子データでの保存が可能となりました。

  1. 見読性の確保(整然とした形式及び明瞭な状態で、速やかに出力が可能)
  2. システムの概要を掲載した書類
  3. 検索機能の確保(記録項目を検索の条件、日付・金額については範囲を指定して条件設定)

e-文書法

従来の「電子文書」は、電子帳簿保存法等の条件をみたす場合には保存可能な文書と認められていましたが、紙文書をスキャナで取込んだ「電子化文書」については保存を認められていなかったので、紙文書を廃棄することはできませんでした。しかし、e-文書法の要件を満たす場合には、電子化文書(契約書、発注書等の証憑書類を含む。定款・会計帳簿等が代表例)も電子保管の対象となり、紙を廃棄することが可能となりました。

電子署名法

同法第三条において「電磁的記録であって情報を表すために作成されたものは、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名が行なわれているときは、真性に成立したものと推定する。」とされており、電子ファイルに電子署名を付与された契約書と、書面に押印または署名された契約書に同等の法的効力が生じることが認められました。電子署名には、2つの役割があります(どのように証明するのか、具体的仕組みの解説は、別のコラムに掲載いたします)。

  1. 本人の証明(電子文書が署名者本人により作成されていることを証明する)
  2. 非改ざん性の証明(署名された時点から電子文書が改ざんされていないこと証明する)

電子契約にもデメリットはある

ここまで、電子契約に関して、比較的良い面について紹介してきました。しかしながら、電子契約の導入は容易でないケースもあります。本日のコラムの最後となる本パートにおいては、電子契約を導入する際の注意点として、そのハードルについて紹介します。

導入時にハードルとなる場面

事前に理解いただくことで、電子契約を自社に導入できるのか、そして解決策がないか考える参考にしていただければと思います。

一部は書面による契約締結が法律で定められている

まずは始めに確認しなければならないこととして、電子契約を利用している契約書類が、法的に問題ないかです。電子契約が普及している中でも、法律で書面による締結が義務付けられているものがあります。基本契約や秘密保持契約、申込書、請求書、雇用契約など、ほとんどの契約において電子契約での締結は可能となっておりますが、以下に書面による通知が必要な代表的な類型を紹介します。業界特有の法律も存在するため、電子契約の導入の前には必ず弁護士や社内の法務部に確認して法的に利用できるか確認することをおすすめします。

導入時の関係者への説明

電子契約を導入すると、それまでの契約業務から業務フローが変更になり、以前の方法で慣れている人からすると、新しい業務フローは面倒に感じられてしまうことがあります。また、法的な効力についても理解いただく必要があります。

受信者側の理解

自社内で導入できたとしても、次に電子契約の受信者側の理解も必要になります。当然のことながら、相手が合意することで契約は締結されますので、受信者である相手が電子契約を拒んで、従来の書面による契約を希望した場合には、相手に合わせるケースも少なくありません。
また、導入する電子契約サービスによっては、相手にも同様の電子契約サービスを利用してもらう必要もあるため、相手に費用を負担させてしまうこともあります。「自分たちのために同じ電子契約を使ってください」と言ったところで、相手にメリットがなければ同じ電子契約サービスは利用してくれません。

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