アノテーションとは? 言葉の意味、ビッグデータ活用での意義などをわかりやすく説明します
アノテーション(annotation)は「注釈」を意味する英単語ですが、IT分野では「データにタグやラベルなどによって説明をつけること」を指します。ビッグデータを活用する際の効率性・利便性を上げるためにアノテーションは重要な工程で、AI開発には欠かせません。
本記事ではアノテーションとは何かを説明するだけでなく、自社でアノテーションを行なうことで、どのようなAI活用が可能になるのかについても説明します。
目次
アノテーションとは何か? 何のために必要なのか?
アノテーションとは、「データにタグやラベルなどの注釈をつけること」です。
昨今ではさまざまなデータを収集・分析してビジネスに役立てることが当たり前になっていますが、単にデータを集めるだけでは意味がありません。特にデータをAIに分析させようとすれば、AIが扱えるようにデータを加工する必要があります。
「これはテキストデータ」「これは画像データ」のように分類し、さらに「●●について書かれたテキスト」「■■が写った画像」など、機械であるAIにもそのデータが何なのかがわかるように、説明をつけたかたちにしなければなりません。このようにデータに説明をつける作業工程が、アノテーションと呼ばれるものです。
アノテーションを経て、説明のためのタグやラベル(メタデータ)をつけられたデータ(教師データ)を基礎に、AIは学習を進めていきます。学んだデータの中にあるパターンやルールを分析し、やがては説明がついていなくても、それがどういうデータなのかを推測・判断できるようになるのです。このように機械学習のための前処理工程として、アノテーションは欠かせません。
どんなデータに、どんなアノテーションを行なうのか
AIに正しく効率的な機械学習をさせるためには、どのようなアノテーションが必要となるのでしょう。またきちんとしたアノテーションを行なうことで、AIをどのように活用できるようになるのでしょう。いくつか例を挙げて紹介します。
画像データ
人が画像を見て、その画像のどの部分に何が写っているのか、データに注釈をつけていきます。たとえば車が多い幹線道路が写った画像があるとします。アノテーション作業では、その画像の中のトラックが写っている部分を指定して「自動車」「トラック」、タクシーが写っている部分に「自動車」「タクシー」、道路標識が写っている部分に「道路標識」「制限速度60km」のように説明をつけます。
こうした教師データを大量に学習させれば、やがてAIは初めて読み込んだ画像であっても、その中に写ったトラック、タクシー、道路標識などを認識できるようになります。
医療分野ではX線画像やCT、MRIの画像に、患部がどこか、病名は何かといった説明をつけておくことで、AIは人間が気づかなかったような小さな異常をも検知してくれるようになっています。同様に製造分野では、画像認識システムと組み合わせることで、生産ラインを流れてくる部品・商品のキズや不良を高精度に見つけられます。
動画データ
動画も画像と同様、画面内に何が写っているのか、また動画内で何が起こっているのかなどの注釈をつけていきます。画像と違い動画には時間的な長さがあるため、動画を一定の時間やフレーム単位(映画フィルムでいう1コマ単位)で区切って注釈をつけます。
監視カメラの動画データにアノテーションを行ない、それをAIに学習させることで、リアルタイムの監視映像の中に写った不審な人物や、トラブルの予兆などをより高い精度で発見できるようになっています。また車載カメラの映像に詳細なアノテーションを行なうことで、安全性の高い自動運転の実現に向けた取り組みが進んでいます。
テキストデータ
何について書かれた文章かという情報だけでなく、1センテンスを分解し、それぞれの語や句に対して注釈をつけていきます。自然言語処理ができるLLM(大規模言語モデル)の開発には、テキストデータへのアノテーションは不可欠です。正しい文法、正しい語用、正しい解釈のために、文章を品詞分解してアノテーションをつけたり、誰のどの書物からの引用か、といった情報を付け加えたりします。
テキストデータを活用したAIは、ChatGPTやチャットボット、スパムメールの判定、翻訳などに用いられ、身近な存在になっていますが、これらも適切なアノテーションが行われていればこそ可能になったことだといえます。
音声データ
音声を文字起こししたテキストデータをつくり、語られている内容、誰が話しているのか、さらにはどんな感情で語られているのかなどを注釈としてつけていきます。
しっかりとしたアノテーションを行ない、そのデータをつかって学習させればAIの精度は高まり、データ活用の幅は広がります。
音声データのアノテーションによって、たとえば議事録の文字起こしや自動通訳を高い精度で行なえるAIをつくることができます。またコールセンターでは、電話をかけてきた顧客の感情を分析し、オペレーターに適切な対応を提案することも可能です。将来的には感情豊かな日常会話ができるロボットの開発にもつながるかもれません。
さまざまな形式のデータを扱えるようにするために、そしてAIの精度を高めるために、アノテーションが果たす役割は非常に大きなものなのです。
AIで社内データを有効活用するために
上述のように特定の業務・業種に特化した活用以外に、AIは日常業務の効率化・生産性向上にも役立ちます。アノテーションを行なった社内データを、GPTやGeminiのような生成AIサービスで扱えるようにすれば、欲しい社内情報を簡単かつ迅速に見つけ出すことが可能になります。
サービスとして提供されているAIは、すぐに利用できるように事前学習を終えたものです。たとえば「日本国民の三大義務は?」のような一般的な質問には、「教育・勤労・納税」と即座に回答してくれます。しかし「当社では、出張申請はいつまでに出さなければならない?」と、あまりにローカルな質問をしても正確な回答を得ることはできないでしょう。
こうした場合には社内規則をデータベース化し、それをAIが役立てられるようにするRAG(RetrievalAugmented Generation:検索拡張生成)を導入するのが有効です。AIで簡単に社内規則を検索できるようになれば、問い合わせや対応に要する時間は削減されます。
また社内に蓄積されたノウハウやナレッジをデータベース化し、必要な時にAIからアドバイスを受けられるようにしておけば、初心者でも熟練者並みの成果を上げられるようになるでしょう。 そしてその精度を上げるためには、やはり元データへのアノテーションが重要となります。
【RAGの構成(社内データをAIで扱うケース)】

アノテーション実践の方法
実際にAIやRAGを導入しようとする場合、誰が、どうやってアノテーションを行なえばいいのでしょうか。
社内で行なう
アノテーションが必要なデータの中には、自社の優位性を保つために外部に出したくない情報もあるでしょう。機密性を保つには社内にチームをつくって行なうのがベストだといえます。
しかし膨大なデータに詳細なアノテーションを施すには、多くの人員と時間が必要になることは想像に難くありません。またチーム内での統一見解がないと、メンバーによって注釈のつけ方にズレが生じ、それによってAIの回答にも悪影響が出かねません。
外部に委託する
アノテーション作業を代行してくれるサービスもあり、こちらを利用するのも選択肢の1つです。サービス事業者では多数のアノテーター(アノテーションをする人員)を抱えており、社内の人員で行なうよりも短期間に完了させられるでしょう。
課題はコスト、そして情報漏洩のリスクがあるということです。外部委託する際には、事業者のセキュリティ体制をしっかり確認しておくべきでしょう。また社内で行なう場合と同様、自社でアノテーションの基準を決め、どういうデータにはどういう注釈をつけてほしいかを、明確に伝えておく必要もあります。
アノテーションツールを利用する
データを投入すると、アノテーションを自動で行なってくれるツールもあります。機密性は高く、スピードもはやいのが特長です。画像、動画、音声、テキストのように対応できるデータ種がツールによって違うので、自社にあったものを選んでください。
アノテーションの内容については細かく設定しなければならないものもあるので、操作性と設定の容易さ・柔軟さ、コストのバランスなどを考えて選定しましょう。
アノテーションツール導入の注意点
ツールは扱うデータ形式、自動追加されるアノテーションの精度の高さ、使いやすさなどを考慮に入れて選定する他、以下の点にも注意が必要です。
データ漏洩リスクとセキュリティ対策
アノテーションを行なうデータの中には、機密や個人情報が含まれている場合もあると考えられます。ツールにセキュリティ的な脆弱性がないかについては、事前に確認しておいた方が良いでしょう。
社内での工数を考慮に入れる
アノテーションを行なうデータは、当然ながらユーザー側が用意することになります。つまりデータ収集のための人員・インフラや、集めたデータを整理するための工数がかかる場合もあります。導入前にはこれらを考慮に入れておきましょう。
目的から逆算したデータ設計が必須
何のためにAIを活用するのか、そのためにはどういうデータが必要で、どういうアノテーションを行なえば期待通りの結果を得られそうかということを考えて、データ収集・整理、そしてツール選定を行いましょう。
まとめ: AI活用の基礎づくりに、アノテーションは重要
ここまでアノテーションという言葉の意味や、何のために必要なものかについて解説してきました。AI活用が普及しつつある今、所有しているデータをいかに効率的に利用できるかで、企業の競争力は左右されます。AI活用の基礎を固めるために、“上手なアノテーション”ができる体制づくりを目指してください。
この記事を書いたライター
蔵捨
コピーライター
広告代理店勤務を経て、2001年からフリーランスに。ウェブを中心にIT系、ビジネス系の記事を執筆する他、企業ウェブサイトのコンテンツ制作、製品プロモーション映像の構成台本制作などを手掛ける。
こちらも合わせて読む
-
業務効率化を実現するAI活用とは?企業が最初に取り組むべき業務8選と成功の考え方
ペーパーレス化DX業務効率化多様な働き方の実現AI活用 -
「従業員より経営者をAIにすべき」深津氏が語る、2026年の生成AI展望と地方中小企業の活用戦略
業務効率化会議DX多様な働き方の実現AI活用 -
AI議事録とは?できること・できないことを解説|Zoom・Teams対応ツール比較
ペーパーレス化業務効率化会議DX多様な働き方の実現AI活用 -
【初心者向け】Teamsの使い方を徹底解説|会議・チャット・ファイル共有まで
ペーパーレス化業務効率化会議DX多様な働き方の実現 -
おすすめのプロジェクト管理ツール7選|特徴・料金・選び方を徹底比較
ペーパーレス化DX業務効率化新規事業多様な働き方の実現経営企画プロジェクトマネジメント -
3代目社長がコロナ禍で見出したDXという活路 長崎の教習所はどのようにしてIT企業へと変貌を遂げたのか
ペーパーレス化DX業務効率化新規事業経営多様な働き方の実現 -
Web会議システムとは?選び方や代表的な4つのツールを徹底解説
ペーパーレス化DX業務効率化マーケティング会議DX多様な働き方の実現 -
議事録ツールおすすめ5選 AIで効率化する会議DXの最前線
ペーパーレス化DX業務効率化会議DX多様な働き方の実現

