使える業務フロー図と使えないフロー図の違いとは?現場の「ありのまま」を描くためのポイント
新しい業務フローを取り入れる際や、既存業務の課題を洗い出す際に活用されるのが、「業務フロー図」です。
業務の流れや手順などを図形と矢印でシンプルに表現することで、「業務の流れを目で見てわかりやすくする」のが目的ですが、いざ作成しようとすると、何をどこまで書けばいいのか迷う方も多いはずです。
この記事では、数々の企業DXをサポートしている「業務改善のプロ」から、業務フロー図作成のポイントを紹介してもらいました。
せっかく作成したのに現場に浸透しない「使われない業務フロー図」になってしまわないための注意点や、業務改善につながるフローの書き方、現場の反発を防ぐための工夫など、経験に基づいたアドバイスもありますので、ぜひ参考にしてください。
【この記事に登場する専門家】
蜂須賀 聡さん
弁護士ドットコム株式会社クラウドサイン事業本部カスタマーサクセス部ソリューションコンサルチーム
ITインフラからSaaSのプロダクト開発まで14年以上の経験を積む。現在は契約管理プラットフォーム「クラウドサイン」と各種システムとの連携支援・導入コンサルティングに従事。技術とビジネス両面の知見を生かし、これまで100社以上の顧客の業務改革とDX推進を支援してきた。
松井 聡さん
弁護士ドットコム株式会社クラウドサイン事業本部PdM・Design部プロダクトマネジメント第2チーム マネージャー
マーケティング系SaaS企業にて、QA・開発エンジニアを経て製品企画の経験を積む。Fintech企業のPMを経て、現在はクラウドサインのプロダクトマネージャーとして、製品企画やメンバーのマネジメントを担当。
目次
業務フロー図作成の目的は「共通認識」を得ること
ーーそもそも、業務フロー図を作成する一番の目的はどこにあるとお考えでしょうか。
蜂須賀さん
作成する一番の目的は、業務に関わる人たちが同じものを見て、共通認識を得ることです。作成の過程で、現場からはさまざまな意見も出てくるので、コミュニケーションを活性化させるツールとしての役割があります。
たとえば、電子契約導入の業務フロー図を作成する場合、バックオフィス部門からも意見が出てきて、これまで気づかなかった課題が明らかになることがあります。このような場面では、意見をまとめるため、1か月近く議論が続くことも珍しくありません。
松井さん
業務フロー図を使って「どのように組織や業務を改善したいのか」を問うことも重要です。システムやツールを導入する際、導入後の業務フロー図を書くことでどのように変わるのかを可視化できれば、スムーズな業務につながることが期待できます。

弁護士ドットコム株式会社クラウドサイン事業本部カスタマーサクセス部の蜂須賀さん
現場からの反発を防ぐコツとは?
ーー業務フローを作成する過程で、現場から反発もあるかもしれません。反発を防ぐためにはどうすればいいでしょうか。
蜂須賀さん
確かに、タスクを減らすのは現場から歓迎されますが、タスクが増えると反発が生じるおそれがあります。
重要なのが「新たなタスクを全部現場がするのか?」と思われないように、現場のメリットを明確に示すことです。最終的に、前工程が忙しくなっても、後工程は楽になるということを説明して認識の相違をなくし、部門間の衝突を避けるようにしましょう。
松井さん
こちらが提示する業務フローは、あくまでも「たたき台」であると強調し、これから現場に合った内容にブラッシュアップしていきます、というスタンスでコミュニケーションを取ることも効果的です。

弁護士ドットコム株式会社クラウドサイン事業本部PdM・Design部の松井さん
準備段階で見落としがちなポイント
ーー業務フローを作成する準備段階で、見落としがちなポイントがあれば教えてください。
松井さん
まず業務フロー図は、コミュニケーションのための道具だと意識することが重要ですよね。最初から作り込むのではなく、対話によってアップデートしていくという意識を持つことがおすすめです。
蜂須賀さん
ホワイトボードにいきなり書き出すなど徒手空拳で始めると、目的を説明する手間が生じるので、たたき台として大まかなフローを用意しておくことがポイントです。
たたき台の段階では、時間を書ける必要もないので、手書きで十分です。初期のフローは、指定サイズに収めることができるパワーポイントを使うと手軽に作れます。大枠を作った後は、エクセル、描画ツールの順に使って、詳細化していくといいでしょう。
松井さん
相手と共有するのに適したツールを選ぶことで、コミュニケーションも取りやすくなりますよね。その意味では、パワーポイントは誰でも使いやすいといえそうです。
蜂須賀さん
また、意外と見落としがちなのが、関係者の洗い出しとスケジュール設定です。業務に関わる全部門の担当者を特定して、アサインを忘れることがないよう気をつけましょう。
最上段のプロセスは10個以内が鉄則、目的に応じた粒度設定も重要
ーー準備段階を経て、業務フローを書く際に「どこまで細かく書くか」という粒度の判断基準はいかがでしょうか。
蜂須賀さん
1枚ですべてを書くのではなく、階層構造をもったほうがいいです。最初に大まかな業務全体のフローを書いたうえで、一部を切り取ってレイヤーに詳細を落とし込んでいくことで、共通認識が得やすくなります。
最上段のプロセスは10個以内が鉄則です。30個以上になった場合は分解する粒度を間違えています。その粒度で書いてしまうと収集がつかなくなるので、最上段の全体像から徐々に詳細を落とし込むようにしましょう。
松井さん
業務フローの粒度は、目的に応じて設定するべきです。たとえば、システム導入が目的の場合、込み入った業務では具体的な手順が求められます。問題なく業務を遂行するためには、マニュアルに近いレベルまで粒度を細かくする必要があります。
ーー業務フローにはさまざまな種類がありますが、部門をまたぐ「スイムレーン型」を作成する際、部門連携を円滑に進めるコツがあれば教えてください。
蜂須賀さん
他部門にボールを投げたり受け取ったりする部分に焦点を当てて、インプットとアウトプットをキーとして書くことで簡潔になると思います。
BPMN(業務プロセスモデリング表記法、業務開始から終了までのステップと手順をフロー形式で図式化する方法)で、他部門に業務を受け渡す単位でプロセスを書いてみるといいでしょう。
【BPMNの例】
その際、インプット、アウトプットで渡すもので粒度を変えると書きやすくなります。たとえば、矢印に「メール」と補足して受け渡しの手段を書くと、矢印を見るだけでチャネルがわかるので、見やすいフローに仕上がります。
松井さん
他部門に情報を受け渡すところが重要なポイントですので、どのようなインプット、アウトプットがあるかを確認しましょう。「ドキュメントを作って渡す」など、内容や渡すものによって吹き出しにコメントを入れるとわかりやすくなります。
「ありのまま」を描くことで、使える業務フロー図になる
ーー業務改善につながるフローとつながらないフローの違いは、どこにあると考えられますか。
松井さん
目的設定に適した図になっていれば、おのずと業務改善につながるでしょう。そのためには、システム導入で影響を受ける業務や関係部門を網羅していたり、関係者が理解できる用語や粒度で作成したりすることがポイントです。これらを考慮しないで作ると、使われないものになってしまいます。
蜂須賀さん
現場の「ありのまま」を現場の「協働」によって「議論しやすい」形で作成したものは業務改善につながりやすいと思います。
逆に、業務改善につながらないのは現場の実態からかけ離れた「絵に描いた餅」のようなものだった場合です。
現場では、粒度が細かくなるので、リアルな会話を引き出せない業務フローは使いものになりません。きれいに書けたことに満足して、そこからコミュニケショーンが生まれないようではダメです。
改善につなげるには、見やすさもポイントです。記号は「◇(判断)」など基本的なものに絞り、目的に応じた粒度で書くことが重要です。A3やA4用紙1枚に収まる範囲で、誰でも読みやすい文字のサイズで作りましょう。
ーー業務フローを使って、業務の改善に成功した事例やエピソードがあれば教えてください。
蜂須賀さん
たとえば、当社のクラウドサインを導入していただく場合、どの範囲までをクラウドサインに任せるのか、契約締結前後をどのようにシームレスにやっていくかなど、業務フローを使うことで検討範囲を決めやすくなりました。
実際に工事請負契約の電子契約フローを作成した事例では、フローに関わる部署が多岐にわたっていても、フローを元に議論することで、必要なアクションや各アクションごとの論点を洗い出すことができ、業務をスムーズに行なうことができました。
松井さん
実際に業務フロー図を作成することで、お客さまが新しいシステムを導入後の業務について、どのように理解しているか、ギャップがあるとすればどこか、といったことが明確になりました。
業務フローで可視化することで、実際は人員が足りず、対象業務の実施が難しいことが明らかになるなど、理想と現実のギャップが見つかることも成果のひとつだと思います。

クラウドサインの導入支援に用いられる業務フロー図のイメージ
業務フロー図作成において絶対にやってはいけない注意点
ーー最後に、これから業務フローを書き始める方に向けて、「これだけはやってはいけない」という注意点や応援メッセージをお願いします。
蜂須賀さん
10年前の自分にも言いたいのですが、絶対に1枚ですべてを書こうとしないでください。最初はぼやけた形でいいので全体像から始めて、レイヤーを重ねるごとに明確にしていくといいでしょう。
手書きやパワーポイントで大枠を作成してから清書することで、無駄な手間が省けます。描画ツールは使いこなせると便利ですが、プロセスが10個以内ならパワーポイントで十分です。
業務フロー図作成初心者の方は、まずは書いてみることです。10個以内のものを書く経験を積むことで、上達していきます。慣れてくると、フローから想像力を働かせて、お客さまに提案する、といったこともできるようになるでしょう。
松井さん
やはり最初から、完成形を目指して細かくしすぎないことがポイントです。繰り返しになりますが、業務フローはあくまでも「対話のための手段」と認識し、関係者と一緒に共通認識を作り上げることを意識していれば、きっとうまくいきますよ。
ーーありがとうございました。
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この記事の監修者
蜂須賀聡
弁護士ドットコム株式会社クラウドサイン事業本部カスタマーサクセス部ソリューションコンサルチーム
ITインフラからSaaSのプロダクト開発まで14年以上の経験を積む。現在はクラウドサインと各種システムとの連携支援・導入コンサルティングに従事。技術とビジネス両面の知見を活かし、これまで100社以上の顧客の業務改革とDX推進を支援。
この記事の監修者
松井聡
弁護士ドットコム株式会社クラウドサイン事業本部PdM・Design部プロダクトマネジメント第2チーム マネージャー
マーケティング系SaaS企業にて、QA・開発エンジニアを経て製品企画の経験を積む。Fintech企業のPMを経て、現在はクラウドサインのプロダクトマネージャーとして、製品企画やメンバーのマネジメントを担当。
この記事を書いたライター
業務改善プラスジャーナル編集部
業務改善は難しそう、大変そうという不安を乗り越え、明日のシゴトをプラスに変えるサポートをします。単なる業務改善に止まらず、組織全体を変え、デジタル化を促進することを目指し、情報発信していきます。契約管理プラットフォーム「クラウドサイン」が運営。
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