経営管理システム(MIS)とは?代表的なシステム7選と選び方を解説
近年、企業における経営戦略の立案・実行において、経営管理システム(Management Information System 、MIS)の重要性が増しています。経営管理システムを賢く利用すれば、迅速かつ精度の高い経営判断が可能です。
この記事では、経営管理システムの基本的な機能や導入メリット、自社に合ったシステムの選び方を紹介します。企業の競争力強化や企業価値向上を図りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
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ダウンロード(無料)経営管理システムとは?
経営管理システム(MIS)とは、企業の経営層が意思決定に必要とする情報を効率的に提供するためのシステムのことです。各部門が持つ売上・コスト・利益・KPIなどのデータを統合・整理し、ダッシュボードや自動レポートで可視化することで、経営戦略の分析や立案を支援します。
たとえば、予算計画の立案・見直しや実績と予算の差異分析、将来予測シミュレーションなどが可能で、従来のExcelや紙による管理では難しかった、タイムリーな情報共有を実現します。
経営管理とは
そもそも経営管理とは、企業や組織が目標達成に向けて事業や活動を計画・実行・評価する一連のプロセスを指します。具体的には、経営戦略の策定、予算計画の立案、業務実績のモニタリング、フィードバックを通じて業務を総括・調整し、目標達成を図る活動です。
経営管理の現場では、多数の部門から得られる売上や利益、コスト、KPI(重要業績評価指標)など多様なデータを迅速かつ正確に把握することが求められています。
経営管理システムが必要な理由
現代のビジネス環境は変化が激しく、正確な経営判断に必要なデータ量が増大しています。従来の Excel や紙ベースの予算管理では、各部門から集計された複数シートのデータはタイムリー性に欠けていることが多く、データ統合時のエラーや遅延も少なくありません。
経営管理システムは、会計・販売・人事など既存システムの最新データを取り込み、一元管理が可能なため、Excel 管理の煩雑さを解消できます。リアルタイムに経営情報が可視化されるため、迅速かつ的確な経営判断が可能です。
加えて、シミュレーション機能や将来予測機能を活用することで、意思決定の「質」も向上します。経営判断がますます難しくなる中、業務の効率化や高度な意思決定により企業価値を高めるためにも、経営管理システムの導入は必要不可欠なシステムといえるでしょう。
ERP(企業資源計画)との違い
経営管理システムと混同されやすいのが ERP(Enterprise Resource Planning)、直訳すると「企業資源計画」です。ERP は会計や販売、人事、生産管理といった企業基幹業務を統合管理するシステムで、主に業務の効率化・プロセス統合を目的としています。そのため、レポート作成や戦略分析といった経営向け機能に関しては限定的にしか搭載されていません。
一方、経営管理システムは ERP を補完する役割があり、ERP で集約したデータをベースに予算編成や KPI 管理、シミュレーション分析などに特化しています。つまり、ERP は「データの集約と業務運用の効率化」、経営管理システムは「経営判断に必要な情報提供と分析支援」にフォーカスしているというわけです。
経営管理システムの基本機能
ここからは、経営管理システムに備わっている基本的な機能について解説していきます。
経営管理システムにはさまざまな機能を備えたものがありますが、基本機能としては次のようなものが挙げられます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
予算管理・業績管理機能
「予算管理」と「業績管理」は、経営管理システムの中核です。
従来は、各部門がExcelで作成したデータを集めて集計していましたが、経営管理システムを利用すれば、全社のデータを一元管理し、差異をリアルタイムで把握できます 。
たとえば、売上計画や人員計画、投資計画をシステム上に入力すれば、自動的に集計され予算と実績の比較が可能です。差異が生じた際は、すぐに原因分析を行えるため、早期に軌道修正ができます。
こうした仕組みにより、計画策定から進捗管理、改善行動までを効率的に行えるのが、経営管理システムの大きな強みです。
経営分析・レポート機能
次に重要なのが「経営分析・レポート機能」です。経営管理システム上で、売上、利益、コスト、KPIといった指標を自動で集計・可視化し、ダッシュボードやグラフ形式で提示できるため、 経営層は複雑な数値を視覚的に確認でき、課題の把握や意思決定を迅速に行えます。
また、レポートはワンクリックで生成できるため、会議資料の作成時間も大幅に削減可能です。さらに、複数年度や部門間の比較分析から、経営改善の方向性を具体的に示すエビデンスも提供できます。こうした「データに基づく経営」は、個人的な経験やカンといった属人的経営判断から脱却する足掛かりになるでしょう。
KPI管理・戦略策定支援
経営管理システムでは、売上成長率や営業利益率といったKPI(重要業績評価指標)を登録し、目標達成の状況をリアルタイムで追跡できる機能が備わっています 。進捗が遅れている指標はアラート通知されるため、経営層や管理職の迅速な対応が可能です。
加えて、多くのシステムにはシミュレーション機能が備わっており、売上増減やコスト変動など複数のシナリオを試算できます。これにより、不確実な環境下でも、複数の選択肢を比較しながら戦略を立案でき、持続的成長に向けた意思決定ができるでしょう。
経営管理システムを導入するメリット
経営管理システムの導入には大きく分けて以下のようなメリットがあります。
経営に関する意思決定の迅速化・精度向上
経営管理システムを活用すれば、最新の経営情報(売上・コスト・利益など)を把握したうえで、市場環境の変化に即応できます。また、シミュレーション機能で将来予測を加味すれば、ライバル他社の一歩先を行くような、質の高い経営戦略がとれるでしょう。
煩雑なExcel業務からの解放による業務効率化
システムによるデータ集計やレポート作成作業を自動化できれば、業務時間の大幅削減が実現可能です。これに伴い、残業代や人件費といったコストを削減できるほか、人材の再配置も可能になります。煩雑なExcel集計から解放された経営企画や経理部門では、より付加価値の高い分析作業に注力できるようになるでしょう。
属人化の解消によるコスト削減
システム上で経営管理業務を標準化できれば、フォーマットや集計方法の統一化による属人化解消が期待できます。また、修正履歴のシステム管理により、担当者の交代や人材補填が発生した場合でも、スムーズに業務の引き継ぎが可能です。ヒューマンエラーのリスクも低くなるため、その分の労力を経営戦略の立案やアイデアの創出に回せるようになります。
ガバナンスと内部統制の強化
経営管理システムには、業務プロセスやデータ履歴の記録機能があるため、不正や入力ミスの防止に役立ちます。監査対応やコンプライアンス強化といったガバナンス面での効果も大きく、外部規制への対応速度も高めることができるでしょう。一貫したデータを経営層からステークホルダーへ提示しやすいため、企業の信頼性向上にも寄与します。
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ダウンロード(無料)経営管理システムの選び方
経営管理システムを導入する際は、以下のポイントに留意しながら選定していきましょう。
導入目的の明確化
まず、予算策定の効率化や業績の可視化、データ分析の強化など、経営管理システムの導入目的を明確にしましょう。目的が明確になれば、自社にとって本当に必要な機能がどれかを判断しやすくなります。
既存システムとの連携性
すでに利用しているERPや、会計・販売管理・人事システムなどから、データの取り込めるかを確認しましょう。既存環境との連携がスムーズであれば、データの二重入力や手作業集計の手間が減ります。連携可否は、導入効果に直結する重要な要素です。導入候補製品の対応状況を細かくチェックしておきましょう。
クラウド型か、オンプレミス型か
経営管理システムは、導入形態によって「クラウド型」と「オンプレミス型」の2種類に分けられます。
【クラウド型とオンプレミス型の違い】
項目 | クラウド型 | オンプレミス型 |
サーバー | 不要(ベンダーが提供) | 自社での用意・構築が必要 |
初期費用 | 低い、または無料 | 高い(サーバー購入費、構築費) |
運用・保守 | ベンダー側で実施(アップデートも自動) | 自社で実施(専門知識が必要) |
クラウド型は初期費用が低く、ネットワーク経由で即利用できる手軽さが特徴で、自動アップデートやスケーラビリティが備わっている点も強みです。
一方、オンプレミス型は自社サーバー内で運用するため、セキュリティ管理やカスタマイズ性の面で優れています。
自社の予算、IT部門の運用体制、情報セキュリティ要件を踏まえ、適切な形態を選択します。
拡張性と柔軟性
将来的な会社の合併・分割や子会社の追加、会計基準の変更など、将来的な組織変更があったとき、柔軟に対応できる設計かを確認しておきましょう。導入後に機能追加や利用者増加が容易であれば、組織変更後もスムーズに継続利用できます。
画面の見やすさ・操作のしやすさ
画面デザインや操作フローが直感的で、担当者がすぐに入力・分析できるかも重要です。優れたUI/UXは、情報共有を促進し、全社的な利用率向上に寄与します。トライアルやデモ版では、機能面だけでなく、実際の操作感もしっかり確認しておきましょう。
コストパフォーマンス
導入・運用コストと提供機能のバランスもチェックポイントです。経営管理システムには、無料や低価格で始められる製品から、エンタープライズ向けの高機能製品まで幅広く存在します。自社の予算と必要な機能を踏まえ、価格帯ごとの特徴を比較検討してみてください。初期導入費用だけでなく、サブスクリプション費用やカスタマイズ費用も考慮しましょう。
セキュリティとコンプライアンス対応
経営管理システムでは、機密性の高い経営情報を扱うため、アクセス権限管理や通信暗号化、不正検知などのセキュリティ機能を確認しておきましょう。
また、会計や税務の規制、個人情報保護法など、各種法令に沿った機能(内部統制レベルのログ管理など)が備わっているかも重要です。可能であれば情報セキュリティ認証(ISMSやISOなど)の取得状況も参考にしましょう。
サポート体制
導入後のトレーニングやヘルプサポートの体制、問い合わせへのレスポンスやユーザーコミュニティの有無などもチェックポイントです。ベンダーの信頼度やアップデート方針もチェックし、長期的に安心して使えるパートナーになり得るかを総合的に評価しましょう。
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ダウンロード(無料)日本国内で使われている代表的な経営管理システム7選
国内でも多くの経営管理システムが提供されていますが、ここでは大企業から中堅・中小企業向けのものまで、幅広く代表的に使われている製品例を7つ紹介します。
STRAVIS
STRAVISは、主にグローバル展開している企業グループ向けの連結会計・管理会計システムです。グループ企業の連結会計業務プロセスを全体的にカバーし、IFRS や会社別会計基準のマルチ対応が可能です。上場企業を含む大手グループを中心に導入されており、日本国内では約1,000社超に採用されている実績があります。
公式サイト:連結会計システムSTRAVIS
BizForecast

画像引用元:BizForecast公式サイト
プライマル株式会社が提供する、管理会計の専門ベンダーが開発した予算実績管理ソフトウェアです。Excelとの親和性を重視した「脱Excelではなく活Excel」をコンセプトに掲げており、既存のExcel資産・ノウハウを活かしつつ予算管理・業績管理を効率化できるのが強みです。中堅企業から大企業まで幅広い規模の導入実績があり、集計スピードやレポート機能の使い勝手に定評があります。
公式サイト:BizForecast
Sactona

画像引用元:Sactona公式サイト
アウトルックコンサルティング社が提供するクラウド/オンプレ対応の経営管理システムです。実績データの高速集計やマルチレート換算、即時集計などの機能に優れ、グローバル企業の管理会計業務を支援します。
パナソニックでは、世界約600社をつなぐグローバル連結会計システム「Eva-Net」に Sactona を活用するなど、大手製造業・流通業を中心に採用が広がっています。
公式サイト:Sactona
CCH Tagetik

画像引用元:CCH Tagetik公式
ウォルターズ・クルワー社(Wolters Kluwer)のクラウド型経営管理プラットフォームです。予算編成、連結会計、収益性分析などを統合的に管理でき、AI を活用した予測分析や高度なレポート機能を備えています。
グローバル製品として金融・製造・小売など多業種に導入されており、国内でも大手企業のIFRS対応やグループ会計基盤として採用数が増加中です。
公式サイト:CCH Tagetik
Loglass

画像引用元:Loglass公式サイト
日本発のクラウド型経営管理システムで、社内に散在する経営データをワンクリックで統合・データベース化し、迅速かつ正確な予実管理が実現可能です。2023年度の国内クラウド経営管理ツール市場においては新規導入数・累計導入数ともにトップの実績を誇り、経営企画部門のDXを志向する企業で採用が急増しています。
公式サイト:Loglass
DIGGLE

画像引用元:DIGGLE公式サイト
株式会社ディグ(旧CAFIS CAPITAL)が開発するクラウド予実管理システムです。予算策定から見込み・実績管理までをシステム上で完結させ、ERPや販売管理システムなど他システムのデータも取り込める点が特徴です。属人的なExcel業務を排除し、予実差異分析やレポート作成を自動化することで、データドリブンな経営判断を支援します。
公式サイト:DIGGLE
ヨジツティクス

画像引用元:ヨジツティクス公式サイト
株式会社カオナビが提供する予実管理クラウドサービスです。予算・見込み・実績データを一元管理し、複数部門が入力した数値を自動集計・可視化します。経営陣や現場の担当者は、共有される最新情報を基に意思決定できるため、煩雑な集計作業も必要ありません。
公式サイト:ヨジツティクス
まとめ
経営管理システムは、正確な経営情報の可視化やPDCAの高速化に不可欠なツールです。導入する際は、まず自社の経営課題や導入目的を整理し、基本機能やメリット、選定ポイントを踏まえて比較検討しましょう。
無料トライアルやデモ版で、操作性を確認し、キーパーソンを含めて社内合意を形成することが重要です。長期的な視点で自社に最適な製品・パートナーを選択すれば、導入効果を最大限に高められるでしょう。
経営管理システムの導入は、全社的なDX推進における重要な一歩です。そして、DXをさらに加速させるツールとして、多くの企業が次に取り組んでいるのが「電子契約」を用いた契約業務のデジタル化です。経営の根幹に関わる契約書を電子化することは、コスト削減だけでなく、意思決定のスピードをさらに向上させることにも繋がります。
電子契約とは、従来の「紙と印鑑」の契約業務を電⼦化することで、契約書の締結にかかる作業時間とコストを⼤幅に削減することができる仕組みのことです。
【電子契約のイメージ】
契約書のデジタル化は、以下の3つの理由から業務効率化の第一歩としておすすめされます。
- 操作が簡単(メールを使えれば大丈夫)
- 既存の業務フローに対して「追加・変更」が少なくて済む
- 収入印紙代や郵送費、管理保管場所の削減などコスト削減効果が大きく成果が短期的にも見えやすい
クラウドサインでは、契約書のデジタル化をこれから検討する方に向けた資料をセットにして無料でご提供しています。気になる方はぜひダウンロードのうえ、ご活用ください。
資料5点セット


「電子契約とはそもそも何か」という基礎知識から、そのメリット・デメリット、サービス比較のポイントなど、電子契約サービス導入前に初心者が知っておきたい情報をまるっと入手できる資料セットです。業務改善を進めたい企業の方はぜひダウンロードしてご活用ください。
ダウンロード(無料)この記事を書いたライター

橋爪兼続
ライトハウスコンサルタント代表
2013年海上保安大学校本科第Ⅲ群(情報通信課程)卒業。巡視船主任通信士を歴任し、退職後、大手私鉄の鉄道運行の基幹システムの保守に従事。一般社団法人情報処理安全確保支援士会の前身団体である情報処理安全確保支援士会の発起人。情報処理安全確保支援士(第000049号)。
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