【実録】Wi-FiトラブルをAIで解決。福祉現場の情シスが語る、非エンジニアにもできるAI活用術
医療や福祉など、社会的にも人手不足やデジタル化の遅れが課題となっている業界において、少人数でITインフラを支える情シス担当者の負担は計り知れません。
愛知県名古屋市・小牧市・東京都を中心に高齢者福祉施設等を展開している社会福祉法人紫水会の中越英児さんもそうした「少数先鋭情シス」のお一人ですが、全社的なAI活用の方針が定まりきっていない中でも、個人的な探求心からAIを駆使し、見事にWi-Fi構成の見直しといった業務効率化に成功しました。
従業員数約1,900名、約25もの施設を抱える巨大な組織でありながら、情シス担当はわずか2名。プログラミングやコーディングの専門家ではない中越さんがどのようにAIを活用し、業務効率化を実現したのでしょうか。
今回は、「明日のシゴトをプラスに変える」をコンセプトにお届けするwebメディア『業務改善プラスジャーナル by クラウドサイン』の特別企画として、中越さんへのインタビューを深掘りしてご紹介します。
中越 英児さん
社会福祉法人紫水会 情報システム担当
社会福祉法人の法人本部事務局員として、IT・ネットワーク・MDM・端末管理、システム導入、業務改善、新規施設開設準備などを担当。Wi-Fi、VPN、AP構成、端末展開、採用LP制作などを進め、現場運用に即した効率化と安定稼働を支援している。前職では約18年間、インハウスデザイナー兼社内情シスとして、Web・印刷物制作やWeb運用に従事。生成AIパスポートを保有、デザインとITの両面を活かして業務改善に取り組んでいる。
目次
ほぼ毎日AIを活用。ChatGPT・Gemini・NotebookLMを使い分け
ーー従業員数約1,900名、25施設に対して、情シス担当がお2人というのは非常にハードな環境かと思います。AIを活用し始めたきっかけを教えてください。
中越様: 私自身は2025年の4月に入職したのですが、AI自体は前職時代の2023年頃から個人的に使っていました。当時はChatGPTが日本で使えるようになったばかりでしたが、すぐに個人的に課金して、業務の計画立てやトラブル対応時のログ分析などに活用していました。
転職直後は、会社全体として「AIを積極的に使っていこう」という方針がガチガチに決まっているわけではありませんでした。そのため、個人的にWebやメルマガ、ウェビナーなどで情報収集を行い、ChatGPT PlusやGeminiなどを要件に合わせて使い分けながら、2人体制の限られたリソースをカバーするためにAIを活用しています。
ーー メインで使っているAIは何ですか。
中越様: メインで使っているのはChatGPTの「Plus」(有料版)です。2023年から使っているので使い慣れているという部分が大きいです。ただ、ChatGPTの反応速度が異常に遅い場合には、先にGoogleのGeminiに指示を投げておくなど、スピード感を重視してGeminiも併用しています。また、ローカルの情報だけで生成できるという理由から、NotebookLMも少し試しているところです。
ーー どのくらいの頻度でAIを活用されていますか。
中越様: ほぼ日常の業務に組み込んで生成AIを活用しています。たとえば、稟議書の作成は自分ではほとんど書かず、プロンプトを入れてAIに任せています。掲載する内容や背景、文字数を指示して投げ、多ければ削るといったやり方で調整しています。また、各施設にある端末の管理表を整形する作業なども、自分専用のGPTsを作って投げ込むだけで済むようにしており、日々の細かな作業の省力化を図っています。
コーディングが苦手でも大丈夫。プロンプト次第でWi-Fiログ分析を自動化
ーー具体的に、どのような業務でAIを活用して成果を上げられたのでしょうか?
中越様: 一番大きかったのは、ある特養施設での全館Wi-Fiの通信不調の改善です。各フロアで職員がiPhoneを内線として使っているのですが、通話が途切れたり呼び出しができないといった問題が起きていました。 現場の状況を把握するためにはログを継続的に収集・分析する必要がありますが、はじめは手動で行っていました。手動でやっていては時間がかかりすぎます。そこで、10分に1回自動でログを取りに行くPythonのスクリプトをChatGPTに作らせました。
ーーWi-Fiログ分析をAIで自動化した際、具体的なプロンプトはどう書きましたか?
中越様: まず、2.4GHzや5GHzのチャンネル設定、出力などの各種データを入力し、「どのような構成が良いか」を出力してもらいました。この施設は空港が近く、気象レーダーとの干渉を避ける必要があったため、「使えないチャンネルのところは使わないように」といった条件も指定して構成を組ませています。
また、ログ収集のスクリプト作成では、「ログイン情報を持たせて、画面上のログデータをキャプチャーし、テキストとして取得するスクリプトを作ってほしい」と指示しました。
ーープロンプトを書くコツはありますか?
中越様: プロンプトを書く際のコツはウェビナーなどで学んだのですが、依頼に関する「背景」や「目的」を伝え、「あなたはこういう専門家です」と役割を定義するようにしています。細かく難しく書きすぎず、ざっくりと日常会話的な感覚で入力するのがポイントです。1回で期待した回答が出ない場合は、打ち方が悪かったと考えて入力を修正し、ブラッシュアップを繰り返しています。
ーースクリプトの作成もAIが行ったということですが、プログラミングの専門知識がなくても可能なものですか?
中越様: はい。私自身、ネットワーク周りやコーディングについて体系的に学習したとか資格を持っているというわけではありませんが、独学でも要件をAIに伝えればPythonなどのコードを書いてくれます。必要な部分だけ個別に修正をかければ動くものが作れます。
もしChatGPTがなかったら、ずっと手作業でテキストに書き出し、保存して分析することになり、プロジェクトの検討開始から半年以上たった今でも終わっていなかったかもしれません。
電子化・ペーパーレス化は「現場に聞かずにやったらあかん」
ーー限られた人数で新しい仕組みを導入する際、一番大変なのはどのような点でしょうか?
中越様: やはり「現場の意識改革」ですね。例えば、音声認識AIを使った議事録作成ツール「noman(ノーマン)」を導入したのですが、いきなり「今日から使っていいよ」と言われても現場は戸惑ってしまいます。
今までやってきたやり方があるので、そこに新しい仕組みをどう馴染ませるかが重要です。 「何でもかんでも電子化・ペーパーレス化すればいい」というわけではなく、紙の方が早ければ紙でいい部分もありますし、システムに合わせて業務プロセスや現場の意識を変えていく必要があります。
ーー現場の意識を変えるための工夫やコツはありますか?
中越様: 基本的には、現場に「こんなことができますが、どうですか?」と事前に相談しながら進めるようにしています。情シス側だけで決めて「現場に聞かずにやったらあかん」と思っています。
また、新しいものを広める際は、各施設でアナウンスをしてくれそうなキーパーソンにまず話をしてみて、そこから全体に広げてもらう形が一番スムーズに進むと感じています。施設や組織によって進めやすい方法は異なるので、現場の声を聞きながら柔軟に対応することが大切です。
迷っているなら、まずは試してみる
ーー今後のDXの展望は?
中越様: とりあえず問題があるところから順次対応していますが、将来的にはデータベース的なものをきちんと整備したいと考えています。今後は、入居者様との契約書を電子化する構想も検討しています。
福祉の現場では、入退去時の書類手続きが膨大で、ご家族の方に遠方からわざわざ署名・捺印のためにお越しいただくことも少なくありません。こうした現場やご家族の負担を少しでも減らすため、また、契約関係書類の管理、契約にかかる時間の短縮などのため、電子契約の導入は医療・福祉業界としても必要だと感じています。
将来的には、現在システム化されていない勤怠の申請書類などをうまく回せるのではないかと漠然と考えています。部分的にやれるところから順番に進めていく方針です。
ーー最後に、同じように人手不足やDX推進に悩む情シス担当者へアドバイスをお願いします。
中越様: プロンプトの入力やスクリプトの作成など、まずはAIで分析させたり作らせてみたりすることを試してほしいですね。やってみると「意外と使えるな」と実感できるはずです。 期待通りの結果が出なくても、プロンプトの書き方を少し調整すれば、ノーコード的にある程度の概要までは全く問題なく作れます。
迷っているなら、まずは触ってみる価値は大いにあると思います。
ーー本日は貴重なお話をありがとうございました。
福祉現場のDXを加速させるなら電子契約の検討を
中越様のように、限られたリソースの中でDXを推進し、現場の業務効率化に取り組む情シス担当者様は少なくありません。
とくに福祉・医療業界においては、入退去時の書類手続きなど、入居者様との契約関連の書類手続きが大きな負担となっています。
電子契約サービスの導入は、この膨大な書類管理の省力化、契約にかかる時間の短縮、そして何より現場とご家族の負担を軽減するために不可欠です。
本インタビューで語られた「迷っているなら、まずは触ってみる価値は大いにある」というアドバイスと同様に、電子契約についてもまずは「触ってみる」ところから始めてみてはいかがでしょう。
貴社の業務をどう変えるのか、具体的な導入ステップや成功事例をまとめたホワイトペーパーを公開していますので、気になる方はぜひご活用ください。
この記事を書いたライター
業務改善プラスジャーナル編集部
業務改善は難しそう、大変そうという不安を乗り越え、明日のシゴトをプラスに変えるサポートをします。単なる業務改善に止まらず、組織全体を変え、デジタル化を促進することを目指し、情報発信していきます。契約管理プラットフォーム「クラウドサイン」が運営。
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