【採用DXとは】人事の負担を減らし「欲しい人材」を逃さないための手法と成功事例
「採用DX」とは、デジタル技術を使って採用プロセスそのものを根本的に見直し、プロセスに沿った組織に変えることを指します。
単にツールを導入するだけでなく、それによって「採用スピードを上げ、欲しい人材を確実に採用できる組織に変わること」を最終的なゴールとしている点がポイントです。
今回は、中小・中堅企業こそ取り組むべき採用DXのメリットや失敗しない進め方について、具体例を交えて詳しく解説します。
人手不足が加速するいま、「もっと気合を入れて頑張ろう」と闇雲に業務を詰め込むのでは現場は疲弊してしまいます。採用DXの本質について理解を深め、「人間がやるべきコア業務(候補者への口説き、合意形成・見極めなど)」に集中するための環境作りを進めていきませんか。
目次
そもそも「採用DX」とは? 単なる「IT化」との違い
よくある誤解が、例えば「紙の履歴書をPDFにすること」や「エクセルで管理することをDX(デジタルトランスフォーメーション)と呼ぶケースです。これは単なる「デジタル化(デジタライゼーション・IT化)」に過ぎません。
本当の意味での「採用DX」とは、デジタル技術を使って採用プロセスそのものを変革(トランスフォーメーション)することを指します。
- IT化(守り): 手作業をツールに置き換え、作業時間を減らすこと。
- DX(攻め): 浮いた時間とデータを活用し、採用戦略を練り直したり、候補者へのフォローを手厚くして採用成功率を高めること。
つまり、「エクセルを脱却してクラウドツールを入れる」だけでなく、それによって「採用スピードを上げ、欲しい人材を確実に採用できる組織に変わる」ことがゴールです。
採用DXに取り組むべき最大のメリット
なぜ、いま多くの企業が採用DXを急いでいるのでしょうか。もっともわかりやすいメリットは以下の2点です。
1. 選考スピードが上がり、内定承諾率が向上する
優秀な人材は、複数の企業から引く手あまたです。「面接日程が決まらない」「合否連絡が遅い」というだけで、候補者の意欲は下がり、他社に流れてしまいます。
DXによって事務作業を自動化すれば、応募から内定出しまでのリードタイム(期間)を劇的に短縮でき、他社よりも素早く日程調整や合否連絡を進められます。この「スピード」こそが、採用における最強の武器になります。
2. 候補者体験(CX)が向上する
CX(Candidate Experience)とは、「候補者が企業を知ってから選考を終えるまでの体験」のことです。
ウェブ面接で移動の手間をなくしたり、スマホで簡単にエントリーできるようにしたりすることで、CXは向上します。CXが良い企業は「入社意欲」が高まりやすく、結果として採用活動における歩留まり(選考の各段階に進む割合)が改善します。
就活生の半数以上が生成AI活用環境を重視
実際、採用活動のデジタル化がCXの向上につながることは、さまざまなアンケート調査でも明らかになっています。
たとえば、株式会社IDEATECHが提供するリサーチマーケティング「リサピー®️」が就職活動中もしくは就職活動の予定がある大学生を対象に2025年12月に行なったアンケート調査によると、就活生の58.2%が就職先選びで「企業の生成AI活用環境」を重視しているという結果が出ています。
同調査では、生成AIを活用していない企業に対し52.0%が「ネガティブな印象を受ける」と回答しており、採用活動においても生成AIなどのデジタルツールを活用し、時代の変化に対応する重要性が増しているといえます。
Z世代の7割以上が会社説明会のオンライン化を支持
このほかにも、Z世代の7割以上が会社説明会のオンライン化を支持しており、オンラインでも入社に繋がることが明らかになったというMIL株式会社の調査レポートもあります。
このように、採用DXは企業が「自社にとって必要だからするもの」というよりは、もはや採用候補者が企業に求める「必須条件」になりつつあるともいえます。
採用DXの主要な手法とツール例
具体的な手法として、以下のようなツールの活用が挙げられます。特に「3. 雇用契約・内定通知の電子化(電子契約)」は、近年法改正も進み、導入必須のツールとなりつつあります。
1. ATS(採用管理システム)
応募者の情報をエクセルではなく、専用のシステムで一元管理します。「誰がどのステータスにいるか」がチーム全員でリアルタイムに共有できます。
2. 日程調整ツール・ウェブ面接ツール
空き枠を提示して候補者に選んでもらう形式にすることで、メールの往復をなくします。ウェブ面接は地方在住者へのアプローチも可能にします。
3. 雇用契約・内定通知の電子化(電子契約)
雇用契約書や内定通知書を、紙とハンコではなく、クラウド上で締結・交付します。
2019年4月の法改正により、労働条件通知書の電子化が解禁されました。これにより、企業は書面交付の義務から解放され、メールやSNS等でスピーディーに条件を明示できるようになっています。
「郵送して、ハンコを押して返送してもらう」という数日間のロスタイムをゼロにできるため、内定辞退の防止にも直結します。
採用DXの成功事例
実際にツールを活用して成果を上げている事例を紹介します。
事例1:採用管理システムで「全員参加型のデータドリブン採用」を実現
SaaS比較サイト「デジタル化の窓口」が主催する「SUCCESS STORY AWARD 2025」の採用DX部門を受賞した「PERSONA」を導入した株式会社ビザスクの事例をご紹介します。
株式会社ビザスクでは、年間50名以上の採用を少数精鋭メンバーで回しており、Excelでの集計に週2時間かかっているという課題がありました。そこで採用管理システム「PERSONA」を導入し、採用に関わる情報とプロセスの一元管理を実施しました。
結果として、集計・分析作業が週2時間から約10分に短縮され、月換算で24時間の工数を削減。採用担当者全員がデータに基づいて議論できるようになり、会議の質が向上したそうです。
特定の人だけでなく、全員がデータに触れて議論できる「データドリブンな採用」を実現した好例とされています。
参考:「SUCCESS STORY AWARD 2025」採用DX部門「PERSONA」
事例2:電子契約を導入し「人生100年時代」に向けた働き方改革を実現
電子契約サービスを導入し採用関連契約書類をデジタル化することで、「人生100年時代」に向けた働き方改革を実践したという事例もあります。
昭和21年創業の「ぼてぢゅう」などのお好み焼き店を全国展開する「BOTEJYU Group」では、「会社にとっての財産である『人』に、安心して長く働いてもらえる環境を作っていくことが重要な使命」と考え、働き方改革に着手。従業員1人1人に合わせたキャリアプランを作っていくため、柔軟に雇用契約書を見直せる体制が必要だと考え、電子契約サービス「クラウドサイン」を導入しました。
結果として、長い時では数ヶ月かかっていた契約書の締結業務時間を3分の1まで圧縮。アルバイトやパートなど約800名(取材当時)の従業員の雇用契約書を、3ヶ月に1回のペースで見直せる体制を整えました。
採用DXにおける課題と乗り越え方
採用DXは多くのメリットをもたらしますが、導入にはいくつかのハードルも存在します。これらを事前に把握しておくことで、失敗のリスクを最小限に抑えることができます。
コストと費用対効果(ROI)の見えにくさ
株式会社ミツモアが行なったアンケート調査によると、「採用管理システムの導入を断念した1番の理由」として挙げられたのが「導入・運用コストが高すぎた」(28.4%)でした。
採用管理システムやスカウト媒体は、月額数万円〜数十万円のランニングコストがかかります。 「このツールを入れて、具体的に何人採用できるのか?」という経営層からの問いに対し、直接的な因果関係を証明するのが難しい(採用数は市場環境にも左右されるため)という課題があります。
「採用数」だけでなく、「削減できる残業代」や「事務作業時間」を試算し、コストメリットを数字で提示することが重要です。
社内のデジタルリテラシーと抵抗感
次に大きな課題は「人」の問題です。「今のやり方(紙やExcel)で慣れているから変えたくない」という現場の抵抗や、ITツールへの苦手意識が導入を阻むケースが多々あります。 特に、面接官となる現場社員や決裁権を持つ経営層がデジタルに疎い場合、説得に時間がかかります。
対策としては、いきなり複雑なツールを入れないことが鉄則です。操作が直感的で、マニュアルを読まなくても使えるシンプルなツールを選定しましょう。
セキュリティと個人情報の管理
履歴書や職務経歴書には、極めて重要な個人情報が含まれています。クラウドサービスを利用する場合、情報漏洩のリスク管理が必須となります。 無料のツールやセキュリティ対策が不十分なツールを使用すると、企業の信用失墜につながる恐れがあります。
PマークやISMS認証を取得している信頼できるベンダーを選びましょう。また、社内で「誰がデータにアクセスできるか」という権限設定を明確にする必要があります。
コミュニケーションの希薄化(「冷たい」印象)
自動返信メールやWeb面接ばかりになると、候補者に「事務的で冷たい会社だ」「熱意が伝わらない」という印象を与えてしまうリスクがあります。 効率化を追求しすぎた結果、志望度が下がってしまっては本末転倒です。
全てを自動化せず、「最終面接は対面で行う」「内定通知後のフォロー面談はじっくり時間を取る」など、デジタル(効率)とアナログ(体温)の使い分けを意識しましょう。
実際、オンライン面接と対面面接をハイブリッド運用している企業が9割という調査データもあり(出典:株式会社プロフェッショナルバンク「オンライン面接による先進的な採用アプローチ実態調査」)、オン・オフ両手法の特長を活かした運用が主流となっているようです。
まとめ:DXは「内定」の先まで見据えてこそ成功する
デジタルツールは魔法の杖ではありませんが、強力な「武器」です。
ルーチンワークをDXで自動化し、空いた時間を「候補者の話に耳を傾ける」「自社の魅力を熱く語る」といった、人間にしかできない対話のために、有効に使ってください。
また、採用は「入社」して終わりではありません。入社後の契約更新や労働条件の変更など、定着・管理フェーズも含めてデジタル化しておくことで、人事部門の負担は長期的に軽減されます。
クラウドサインでは、入社手続きに関わる契約書を電子化するメリットや、法的な注意点について解説したセミナーのアーカイブ動画も公開しています。人事・採用担当者の方はぜひ参考にしてください。
この記事の監修者
梅原和也
日本経団連 認定キャリアアドバイザー
1987年に理学部数学科を卒業後、国内金融機関にて人事総務部門配属。以後、大手グローバルコングロマリット企業、老舗外資系企業で採用統括責任者、HRBP、エリア人事責任者を歴任し、人事人材戦略策定や人事管理、労務管理全般にまつわる業務に約30年従事。現在は、高等学校の非常勤講師として従事するほか、キャリアカウンセラーや組織人事コンサルタントとして活動中。
この記事を書いたライター
業務改善プラスジャーナル編集部
業務改善は難しそう、大変そうという不安を乗り越え、明日のシゴトをプラスに変えるサポートをします。単なる業務改善に止まらず、組織全体を変え、デジタル化を促進することを目指し、情報発信していきます。契約管理プラットフォーム「クラウドサイン」が運営。
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