電子契約で変更できるAWSの準拠法・裁判管轄条項


外国企業との契約において最重要条件と言っても過言ではない「準拠法条項」と「裁判管轄条項」。これらの契約変更手続きがウェブ上のクリックだけで完結する電子契約を、Amazon社が導入しています。

外国企業との契約における準拠法条項・裁判管轄条項の重要性

万が一の紛争に備えて締結する契約書。中でも 外国企業との契約において、どちらが交渉の主導権を握るかを如実に表し、執行場面においても重要な影響を及ぼすのが、契約解釈の基準法を定める「準拠法」条項とその場所を定める「裁判管轄」条項 です。

クラウドサインのお客様の中でも、当社サービスで利用するクラウドサーバーの設置場所やサーバー管理者との契約の法的管轄について、日本法準拠・日本国内裁判管轄の管理下で運用されているか否かを調達選定基準とする、そうしたお客様もいらっしゃいます。

そんな中、日本の多くのクラウド事業者が利用するAmazon Web Services(AWS)に関する契約条件のうち

・準拠法の定めを「日本法」
・管轄裁判所を「東京地方裁判所」

とすることについて、Amazon社が 変更を希望する日本の契約者にフレキシブルに対応するようになった のをご存知でしょうか?

Amazon Artifact https://aws.amazon.com/jp/blogs/news/how-to-change-aws-ca-by-artifact/ 2019年8月28日最終アクセス
Amazon Artifact https://aws.amazon.com/jp/blogs/news/how-to-change-aws-ca-by-artifact/ 2019年8月28日最終アクセス

AmazonがWeb上でかんたんに契約変更できる仕組みを導入

この変更手続きには、AWS Artifactのサイトから いくつかの契約書ファイルをダウンロードして内容を確認し、チェックボックスにクリックを入れ同意するだけで完結する、きわめてかんたんな電子契約方式 が採用されています。

https://youtu.be/bnRuxeOG8zc 2019年8月28日最終アクセス
https://youtu.be/bnRuxeOG8zc 2019年8月28日最終アクセス

クラウドサインもサービス開始当初からAWSを利用していますが、当時準拠法・裁判管轄を日本に変更する契約手続きを行なった際には、Amazon社とメールで交渉の上、個別に変更契約を締結する必要がありました。

企業同士が締結した契約を変更する際には変更契約書を作成し、お互いに押印やサインをする手続きを取るのが通例です。しかしこの電子契約方式によれば、そうした面倒なく手続きを完了することができます。

プラットフォーマーが一方的な契約条件を押し付ける時代は終わった

一般に、グローバル企業との契約において、日本の法律・および日本の裁判管轄とするよう交渉しても、英米法とはまったく異なる法体系であることを理由に応じてくれないものです。中でもGAFAと呼ばれるような 巨大プラットフォーマーとの契約では、彼らにとって一方的に有利とも思える契約条件を課されることも少なくない 現実がありました。

事実、2012年頃のAWSの契約条件を振り返ってみると、以下のとおり米国ワシントン州法・州裁判所での裁きに服することが交渉の余地なく定められ、ユーザーとしては事実上訴訟を提起することが困難な状況を受け入れざるを得なかったのです(参考記事:Amazonの障害と利用規約による免責 ― ウェブサービス利用規約の「日本流」と「米国流」を比較してみる

13.11 準拠法、裁判地 
本契約およびサービス利用者とアマゾンの間に生じるすべての種類の紛争は、法の抵触に関する規則の適用は除外して、アメリカ合衆国ワシントン州法に準拠する。提供される本サービス内容または本契約に関連して、当事者が合計7,500ドル以上の救済を求める紛争の場合には、アメリカ合衆国ワシントン州キング郡に所在する州裁判所または連邦裁判所で判断されるものとする。サービス利用者はこれらの裁判所の専属管轄権および裁判地に同意する。(以下略)

近年、特にBtoCの契約において、プラットフォーマーによる一方的な契約条件の押し付けに対し、消費者保護の観点から厳しい目線が向けられるようになってきています。

AWSのようなBtoBの契約においても、契約条件変更に柔軟な姿勢をみせ、かつその変更手続きの手段として簡便な電子契約を採用するようになったのは、大きな進歩と言ってよいでしょう。

トップ画像:
bee / PIXTA(ピクスタ)

(橋詰)

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