収入印紙とは?条文とデータから学ぶ収入印紙の基礎知識

収入印紙の正確な定義、印紙誕生の歴史、消印の方法を指定した条文、現時点国の税収のどのくらいを支えているのかといったデータなど、知っているようで意外と知らない収入印紙に関する疑問にまとめてお答えします

収入印紙とは

収入印紙とは、印紙税に代表される租税・手数料その他の収納金の徴収のため、政府が発行する証票です(印紙をもつてする歳入金納付に関する法律第2条)。

念のため、法律学小辞典の定義も確認してみます。

歳入金の一定額を表章する証票で、その形式等は財務省の告示で定められている。国に納付する手数料・罰金・科料・過料・刑事追徴金・訴訟費用・非訟事件の費用及び少年法31条1項の規定により徴収する費用は印紙をもって納付することができるとされており(略)、租税の中にも原則として印紙で納付するもの(印紙税)と印紙で納付できるものとがある(印紙納付)。(『法律学小辞典』有斐閣、2016)

契約書を作成した際に印紙税を納税する義務は、印紙税法第2条および第3条に定められています。

第二条 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書には、この法律により、印紙税を課する
第三条 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書のうち、第五条の規定により印紙税を課さないものとされる文書以外の文書(以下「課税文書」という。)の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある

145年の歴史を重ねてきた収入印紙

日本で収入印紙を用いた納税の制度が始まったのは、1873年(明治6年)に制定された「受取諸証文印紙貼付心得方規則」が起源です。その後明治32年に旧印紙税法が制定され、何度かの法改正を経て、現行の印紙税法が昭和42年に施行されました。

印紙税および収入印紙の発祥については諸説ありますが、1624年にオランダが導入したのがはじまりであり、それがイギリス、フランス、ドイツに採用された後、日本に伝わったという説が有力とされています(押切徳次郎「収入印紙の誕生、発展とその罰則」法律のひろば6巻5号、1953)。

収入印紙はどこで購入できるのか

収入印紙の販売は、法律により、日本郵便株式会社が元締めとなり、一部を総務大臣認可基準にしたがって委託して販売しています(印紙をもつてする歳入金納付に関する法律第3条、郵便切手類販売所等に関する法律第2条)。郵便局だけでなく、法務局にある「印紙売さばき所」やコンビニで購入できるのはそのためです

印紙売りさばき所の看板

ただし、コンビニエンスストアの場合、ほとんどの店舗が200円の収入印紙のみを販売しており、高額な収入印紙は在庫していないことがほとんどです。

収入印紙の貼り方と消印の方法

印紙税は、文書に収入印紙を貼り付け、印影又は署名等で「消印」することで納付します(印紙税法第8条第2項、印紙税法施行令第5条)。

貼る要領としては、切手とまったく同じです。貼る場所については、契約書のタイトル部分の左右どちらかの余白に貼るのが普通です。

消印は、契約書の調印に用いた印章の印影を使って両当事者が行うのが一般的ではありますが、法律上および税務上は、印紙が再利用できないようなかたちでいずれかの当事者が何らかのサイン等を行っていれば、問題はありません(印紙税法基本通達第65条)。

→参考:印紙の消印の方法(国税庁ウェブサイト)

消印の方法

なお、課税対象となる文書に収入印紙を貼らないということは、印紙税の納付を怠ったということになります。この場合、納付すべきだった3倍の金額(納付しなかった印紙税の金額と、2倍に相当する金額との合計額)が徴収されることになりますので、要注意です(印紙税法第20条)。

ただし、収入印紙を貼り忘れたとしても、契約書そのものが無効になるわけではありません。納税の義務を怠っている点は違法ではありますが、契約内容が違法というわけではないからです。

契約書に貼付すべき収入印紙の金額(印紙税額)

印紙税は、文書に記載された契約等の内容と金額によって、収入印紙を貼付して納付すべき税額が異なります。

事業内容を問わずよく用いられるのは、2号・7号・17号の3つの文書となりますので、ここでは、この3つの文書に絞って解説します。

なお最新の法令に関しては、国税庁のタックスアンサーをご確認ください。

【第2号文書】請負に関する契約書

など、仕事の完成と引き換えに対価を支払う契約には、収入印紙を貼付する必要があります。

建設工事のような有形の成果物を伴う契約はもちろん、サーバーシステム構築、講演、警備、機械保守や清掃といった無形のサービス契約も対象に含まれます。

契約金額 印紙税額
契約金の記載がない 200円
1万円未満 非課税
1万円以上 100万円以下 200円
100万円超え 200万円以下 400円
200万円超え 300万円以下 1,000円
300万円超え 500万円以下 2,000円
500万円超え 1,000万円以下 1万円
1,000万円超え 5,000万円以下 2万円
5,000万円超え 1億円以下 6万円
1億円超え 5億円以下 10万円
5億円超え 10億円以下 20万円
10億円超え 50億円以下 40万円
50億円超え 60万円

【第7号文書】継続的取引の基本となる契約書

など、特定の相手との継続的に生じる取引の基本となる契約書を指します。印紙税の税額は1通につき4,000円で一律です。

ただし、契約期間が3ヶ月以内であり、かつ、更新の定めのない契約書は除外(非課税)になります。

契約金額 印紙税額
金額の定めによらない 4,000円(1通あたり)

【第17号文書】金銭又は有価証券の受取書

- 商品販売代金の受取書 - 不動産お賃貸料の受取書 - 請負代金の受取書 - 広告料の受取書

など、作成の目的が金銭又は有価証券の受取事実を証明することとなる文書です。

印紙税の税額は、売上代金に係る受取書と、売上代金以外の受取書の区分によって異なります。

売上代金にかかる受取書

売上代金とは、資産を譲渡しもしくは使用させること(当該資産に関する権利を設定することを含む)または役務を提供することによる対価をいい、これを受領した場合、下表の印紙税が発生します。

契約金額 印紙税額
5万円未満 非課税
5万円以上 100万円以下 200円
100万円超える 200万円以下 400円
200万円超える 300万円以下 600円
300万円超える 500万円以下 1,000円
500万円超える 1,000万円以下 2,000円

売上代金以外の受取書

担保物としての受領、保険金の受領、借入金の受領、割戻金の受領、損害賠償金の受領など、対価性のない金銭または有価証券は、5万円以上で一律200円が課税されます。

契約金額 印紙税額
5万円未満 非課税
5万円以上 200円

現時点での印紙税収額は約1兆円

こうして徴収される印紙税による国の税収額は、本来であれば、経済活動が活発化し契約社会化するにつれて増えていくのが自然です。

しかし、印紙の実物を見る機会は減っているというのが実感です。実際のところ、収入印紙の流通金額はどう推移しているのでしょうか?

ちょうどよい資料が発見できなかったため、1989年(平成元年)からの30年間の印紙収入の増減について、財務省ウェブサイト「租税及び印紙収入予算の説明」に掲載された補正予算額からデータを拾い集め、グラフ化してみました。

グラフ 1989年(平成元年)以降の印紙収入の推移

予想通りではありますが、バブル経済が崩壊した1991年以降、株価は2万円台に回復し経済活動は活発化している一方で、印紙収入はピークの2兆円に遥か及ばず、2003年以降は1兆円程度でほぼ横ばいとなっていることがわかります。

これは、近年の電子商取引の拡大に加えて、印紙税が課税されない(不課税となる)電子契約が普及していることなどが原因と考えられます。

収入印紙のデザイン変更

このような大切な税収をささえている収入印紙は、偽造防止を目的として何度かデザインが変更されています。直近では2018年7月1日、25年ぶりにデザインが変更されることとなりました(国税庁「収入印紙の形式改正について」)。

2018年に変更される収入印紙のデザイン

新しい収入印紙には、以下のような何重もの偽造技術が施されています。

報道によれば、国税庁は「25年を経て偽造防止の技術が時代後れになっていた。デザインを変えることで偽造された印紙の流通を食い止めたい」としているとのこと。なお、古いデザインの収入印紙は新しく販売されないだけであり、在庫しているものがあれば使うことはできます。

しかしながら、特殊な印刷にコストをかけるぐらいであれば、収入印紙によらない徴税の方法を考えたほうがよいのでは?という疑問もあります。

収入印紙と印紙税の未来

1兆円を下回ろうとする印紙収入、そして2018年のデザイン変更実施を見れば、少なくとも政府としては、収入印紙や印紙税という制度が今後数年で終わるとは考えていないことは明らかです。

その一方で、収入印紙自体の印刷・流通・購入・納付確認にかかる手間を考えると、ユーザーでありかつ納税により印紙制度を支えている企業や個人にとっては、その制度維持にかかるコストに意義を見出しにくい制度でもあります。

紙情報のデジタル化や契約の電子化が急速に進み、徴税方法として空洞化も予想される中、収入印紙による印紙税の納付という制度が今後どの位の期間維持されるのか、電子契約に対する新たな課税方法が編み出されるのか、注目したいと思います。

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