ゼロから学べる電子契約の基礎—電子契約の導入メリットと注意点

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電子契約の基礎知識、電子署名法や電子帳簿保存法等の法令、導入時のメリットや注意点など、電子契約について知っておくべきことをまとめました。

電子契約とは

電子契約とは、電子ファイルをインターネット上で交換して電子署名を施すことで契約を締結し、企業のサーバーやクラウドストレージなどに電子データを保管しておく契約方式 を言います。

クラウド型電子契約のイメージ図

2001年以降、「電子署名法」や「電子帳簿保存法」といった電子契約に関する法的環境が整備され、電子署名やクラウドストレージ等の技術的開発も進んでおり、電子契約を導入しやすい環境になりました。

日本の商慣習において当たり前に行われてきた「紙と印鑑」による契約締結だけでなく、電子契約による契約締結も徐々に増加してきています。

電子契約のタイプ別分類と図解

電子契約サービスには、大きく分けて2つの型があります。

これをさらに細かく分類すると、以下3つの署名タイプに分類することができます。

  1. ローカル署名
  2. リモート署名
  3. クラウド署名

この電子契約の分類をわかりやすく図解すると、以下のとおりです。

当事者署名型と事業者署名型、ローカル署名・リモート署名・クラウド署名の違いを図解

2001年の電子署名法施行時は当事者署名型が主流でしたが、2015年以降は事業者署名型の電子契約サービスが普及 し、主流の電子契約サービスとなりました。

法的な有効性を保ちながら、利用者による署名鍵の準備や電子証明書の発行手続きに関する手間やコストなく利用できる点で、事業者署名型が企業のニーズに合致していたためです。

電子契約の普及率

電子契約の普及率については、JIPDEC(一般財団法人日本情報経済社会推進協会)が経年調査をしています。

2020年調査時点で、すでにクラウドサインをはじめとする電子契約サービスの利用を「採用している」は 43.3%、「検討している」が27.5%と、合計7割超の企業が電子契約をなんらかのかたちで採用または検討 しています。

JIPDEC「企業IT利活用動向調査2020」P27 電子契約の利用状況 https://www.jipdec.or.jp/library/itreport/2020itreport_spring.html

テレワーク推進のきっかけとなった新型コロナウイルス感染症拡大以前の、2020年1月時点の調査結果であるため、採用および検討企業はこれよりも増加していることは間違いありません。

電子契約の市場規模およびシェア

株式会社アイ・ティ・アールの市場調査レポート「ITR Market View:ECサイト構築/CMS/SMS送信サービス/電⼦契約サービス市場2020」によれば、電子契約の市場規模は売上金額ベースで102億円前後 と推計され、2021年度もこの追い⾵を受け売上⾼ベースで前年度⽐160%超の成⻑が⾒込めるビジネス領域と予想されています。

電子契約の市場規模 ITR Market View:ECサイト構築/CMS/SMS送信サービス/電⼦契約サービス市場2020

その中でも、クラウドサインは導入社数で10万社を突破し、電子契約サービス市場 累計導入企業社数シェアNo.1の電子契約サービス(電子署名法2条1項に定める電子署名を用いる電子契約サービスにおいて、有償・無償を含む発注者側ベースでの利用登録社数 株式会社東京商工リサーチ調べ 2020年3月末時点)となっています。

書面契約と電子契約の比較

ここで、書面契約と電子契約とを表形式で比較 してみましょう。

分類 書面契約 電子契約
書類媒体 紙への印刷 電子データ
署名方法 記名押印、署名 電子署名
締結日時の証明 日付記入、確定日付の取得 認定タイムスタンプ
相互確認 原本の郵送、持参による受け渡し インターネット上での電子データによる受け渡し
保管方法 倉庫やキャビネットによる原本の物理的な保管 自社内のサーバーや外部のデータセンターによる電子的な保管

メリットについてはまた後ほど詳細に解説をしますが、特に企業間の取引においては、

といった、電子契約ならではの大きなメリットを得ることができます。

「電子契約書」の表現は法的には誤り?

「契約書」とは、契約の成立を証明する書面のことです(有斐閣「法律用語辞典 第4版」)。そして「書面」とは、文書の文面または文書そのものを指します(岩波「広辞苑 第7版」)。ここでいう 文書が紙の有形物に限定されるのか、電子ファイルも含まれるか が問題となります。

民事訴訟法の世界では、「文書とは、通常の文字またはこれに代わる特殊な符号によって思想・判断・認識等を紙片その他の有形物に表示したものをいう」とされ、紙以外のビデオテープ・電子ファイル等電磁的記録等「準文書」とは明確に分けて取り扱われます(菊井・村松ほか『コンメンタール民事訴訟法Ⅳ』(日本評論社、P368))。

また、定期建物賃貸借契約について定めた借地借家法38条など、法文上で有形物としての紙に契約内容を文字で記した書面の作成義務を明示的に定める法令もあります。この場合、電子ファイルで作成された契約では、要件を満たさないこととなります(なお法改正により、2021年9月以降は電子ファイルも可となる予定)。

このような考え方から、電子契約の文面に関し「電子契約書」という表現が使われることがありますが、紙で作成されていない電子契約に関して「電子契約書」という表現を使うのは誤り、ということになりそうです。

電子署名とは

ところで、電子契約に用いられる電子署名とはどのようなものでしょうか。「電子」の「署名」と聞くと、タブレットなどを使って電子ファイルに電子ペンを使って手書きで文字を書き込む姿を想像するかもしれませんが、電子契約における「電子署名」は、それとは違った意味を持ちます。

電子ファイルの原本性を守るための技術的措置が電子署名

電子署名とは、印影や手書き署名に代わって電子ファイルの作成者の証明をしやすくするとともに、そのファイルが改変されないようにするための技術的措置 をいいます。

書面を用いた契約では、押印した印影や手書きの署名を施すことによって、文書の内容が本人の意思であることを証明できるようにし、朱肉やインクによって本人以外がその文書を改変しにくい状態にします。これは、一般に印鑑が本人だけが保有しているものであることが推定されること、また手書きの署名であれば筆跡鑑定で本人が推定されることを前提とした仕組みでした。

一方、電子ファイルを用いる電子契約では、ファイルそのものに印影や署名を施すことはできません。もちろん、デジタルな印影や署名を画像として上書きすることはできますが、デジタル画像はコピーが容易であるため、本人の意思によることを証明することは出来ず、意味がありません。そのため、電子署名という技術によって、その内容が本人の意思であることを証明できるようにする必要があるわけです。

公開鍵暗号方式によりファイル作成者と改ざんされていないことを証明

現在、この 電子署名を実現する主な方法として、暗号技術を用いた公開鍵暗号方式 が用いられています。

JIPDECウェブサイト https://esac.jipdec.or.jp/intro/shikumi.html より

一対になった暗号化鍵と復号鍵の鍵ペアを作り、特定の復号鍵で復号できる暗号文がある場合、その暗号文は、その復号鍵に対応する暗号化鍵で平文を暗号化したものと証明できます。この2つの鍵のうち、復号鍵をインターネット上に公開し(公開鍵とし)、暗号化鍵を本人だけが知りうるパスワード等で管理された秘密鍵とするのです。こうすることで、公開鍵で復号できる暗号文は、その公開鍵と一対となっている秘密鍵の管理者によって暗号化されたものであると推定されます。

この 公開鍵暗号方式により、その電子ファイルの作成者と、作成後ファイルが改変されていないことを推定できるようにした仕組みが、一般に電子署名と呼ばれているものの正体 です。

電子契約サービスの利用者には難しい知識や操作は不要

こうした技術に詳しくないユーザーでも、インターネットに接続されたパソコンで電子署名済みのPDFファイルをAcrobat Readerで開くだけで、「署名パネル」の詳細から誰が・いつその文書の内容に同意したのか、その後改変されていないかが、かんたんに確認できます

電子署名はPDFファイルの「署名パネル」からかんたんに確認できる

電子署名を実現するために暗号技術がどのように利用されているかを理解するのは難しいことですが、電子契約サービスの利用者は、そのような知識や操作を細かく理解する必要はありません。

電子契約と電子署名に関する主な法令

電子契約に関わる法的環境は、2000年以降順次整備されています。以下、代表的な法律について紹介します。

民法

2020年4月に施行された改正民法に「契約方式の自由」が明記され、契約の成立に書面は必要ないという大原則 が明文化されました(民法522条2項)。

第522条 (1項省略)
2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。

この契約方式自由の原則により、取引基本契約・秘密保持契約・売買契約・業務委託契約・請負契約・雇用契約など、ほとんどの契約において電子契約が利用可能となっています。

電子署名法

押印や直筆署名に代えて、電磁的な同意の記録を電子ファイルに行った者を明示するとともに、作成時以降データが改変されていないことを検知し担保できる技術的「措置」を電子署名と定義 した法律が、電子署名法です(電子署名法2条1項)。

この電子署名を本人が電子ファイルに施すことで、電子化された契約書等の真正な成立が認められることになります(電子署名法3条)。

第3条 電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。

クラウドサインは、この電子署名法に準拠したクラウド型電子契約サービスであるとの確認を、主務官庁より日本で初めて取得しています。

総務省・法務省のウェブサイトにおいても、電子署名法2条1項への該当性が確認された電子契約サービスの第1号案件として掲示

電子帳簿保存法

税法上、契約書、注文書、領収書、見積書等の取引情報に係る書面は、7年間保存する義務があります(法人税法施行規則59条ほか)。

ただし、電子契約のように電子データで保存する場合、以下の要件を満たすことで、紙の契約書等の原本と同等に扱われ、長期保存にかかる負担を解消 できます(電子帳簿保存法10条)。

  1. 真実性の確保—認定タイムスタンプを付与、改変不可能もしくは改変が記録されるクラウドサービスを利用、または社内規程があること
  2. 関係書類の備付—マニュアルが備え付けられていること
  3. 検索性の確保—主要項目を範囲指定および組み合わせで検索できること
  4. 見読性の確保—納税地で画面とプリンターで契約内容が確認できること

電子契約の導入メリット

これまでの書面による契約を電子契約に切り替えることで、企業は大きく3つのメリットを受けることができます。

(1)コスト削減

書面による契約の締結は、印紙代、郵送代、印刷費、さらにはそれらの作業にかかる人件費や、書類の保管費(法人税法上、紙の契約書は7年間の保存義務)といった様々なコストが発生します。一件あたりの費用は数百円から数千円程度に過ぎなくても、総額では毎月数十万円以上の費用になっていることも少なくありません。

電子契約を導入することで、契約書類はインターネット上でデータを受け渡しでき、そのままファイルとしてクラウド上に保管できるので、郵送費はもちろん、印刷費、物理的な保管スペース確保の費用などが不要 になります。

また、ファイルをインターネット上にアップロードするだけなので、業務フローが簡素化され人件費も最小限 にできます。

書面を取り交わして保管する場合1契約あたり500円以上かかる

そして電子契約の導入でもっとも分かりやすいメリットが、印紙代のコスト削減 です。

印紙税は、以下の要件を満たす「課税文書」に収入印紙を貼り付け、印影又は署名等で「消印」することで納付します(印紙税法第8条第2項、印紙税法施行令第5条)。その金額は、1通数百円から、数万円を超えるものまであります。

この課税要件の最大のポイントは、用紙等に課税事項を記載し行使する、つまり紙の書面に書いて交付した時に「作成」したとみなされる点にあります(印紙税法基本通達第44条)。この点、電磁的記録を用いた電子契約は、紙の書面を作成・交付するものではないため、印紙代はかかりません

このことは、国税庁も見解を述べているほか、2005年に当時の首相である小泉純一郎氏が国会で以下のような答弁もしています。

参議院議員櫻井充君提出印紙税に関する質問に対する答弁書(5の一部を抜粋)

事務処理の機械化や電子商取引の進展等により、これまで専ら文書により作成されてきたものが電磁的記録により作成されるいわゆるペーパーレス化が進展しつつあるが、文書課税である印紙税においては、電磁的記録により作成されたものについて課税されないこととなるのは御指摘のとおりである

http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/162/touh/t162009.htm

(2)業務効率化

書面で契約を締結する場合は、原本を印刷、押印、郵送、取引相手に押印後の原本返送の依頼等によって、契約締結まで2〜3週間程度かかることもあります。さらに、途中で契約内容の変更などあれば、再度印刷からやり直すことになり、二重、三重の手間が発生していました。

また、監査等の対応で過去の契約内容を確認する時は、倉庫やキャビネットから探し出す必要があり、整理されていない状態だと探すのに苦労することもあります。

電子契約の場合は、お互いがパソコンやスマートフォンで作業するだけなので、早ければ2〜3分で契約締結に関わる全ての作業を終える ことができます。契約書の送信者は、互いが電子データを確認できる環境にファイルをアップロードして、署名してもらうだけで契約が完了します。仮に、修正があっても、再度ファイルをアップロードするだけです。

また、過去の書類を確認する必要があれば、検索機能を利用して書類や契約相手方の名前などで容易に検索が可能 です。

作業時間の大幅な短縮が可能

(3)コンプライアンス強化

第1に、電子署名と認定タイムスタンプを電子データに組み合わせて施すことで、契約内容の改ざんを防止 できます。

3Dプリンタで偽造された印鑑の印影を人間の眼で見破ることは困難ですが、電子署名であれば、PDFファイルの「署名パネル」を確認することで、改ざんの有無をデジタルに、誰でもかんたんに確認できます。

また、書面での契約書を倉庫やキャビネットに保管するリスクとして、管理漏れや紛失などが挙げられます。企業の中では、日々に多くの契約書類の受け渡しがあり、どの契約書を、今誰が、どのように進めているのか、全てを把握するのは難しいのではないでしょうか。

災害などで倉庫やキャビネットが破壊され、そこに保存していた書類も復元できなくなってしまうという可能性もあります。

電子契約では、契約書を電子データとして一元管理することで、業務の透明性が向上し、抜け・漏れを少なく することができます。当社が提供しているクラウドサインでは、書類の締結状況や、送信先での確認状況までステータス管理 できますので、契約の締結漏れを減らすことも可能です。

さらに、クラウドサーバは一般企業のファイルサーバーと比較して高いセキュリティ基準を設定しており、外部者による不法な侵入を防ぎます。また、災害に備えて耐震性なども強化されています。

電子契約導入にあたっての注意点

ここまで、電子契約の良い面を中心に紹介してきました。しかしながら、電子契約の導入にはいくつか注意していただきたいポイントもあります。

法律で書面が求められる契約類型が一部に存在する

電子契約が普及している中でも、消費者保護などを目的として、法律で書面(紙)による締結や交付が義務付けられているものも一部ですが存在 します。たとえば、訪問販売、電話勧誘販売、連鎖販売、特定継続的役務提供、業務提供誘引販売取引における交付書面(特定商品取引法4条ほか)が代表例です。

このような契約を扱う場合、電子契約の導入の前に、顧問弁護士にも確認の上ご利用いただくことをおすすめします。

受信者側(契約相手方)に手間やコストが発生する場合がある

自社で導入できたとしても、電子契約の受信者側の理解も必要になります。相手が合意することで契約は締結されますので、受信者である相手が電子契約を拒んで従来の書面による契約を希望した場合には、相手に合わせなければならないケースも少なくありません。

特に、当事者署名型の電子契約サービスは、相手にも同様の電子契約サービスを利用してもらう必要もあるため、手間と費用の負担を強いることにもなります。「自分たちのために同じ電子契約を使ってください」と言ったところで、相手にメリットがなければ相手方は利用してくれません。

この点、事業者署名型を採用するクラウドサインでは、受信者は利用規約をご確認いただくだけで、登録費用等は必要ありません。契約相手方に負担を強いることなく、スピーディに契約を締結することができます

また、豊富な図解入りの受信者様向けガイドコンテンツもご用意し、お客様をサポートしています。

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