ゼロから学べる電子契約の基礎—電子契約の導入メリットと注意点

電子契約の基礎知識、電子署名法や電子帳簿保存法等の法令、導入時のメリットや注意点など、電子契約について知っておくべきことをまとめました。

電子契約とは

電子契約とは、電子ファイルをインターネット上で交換して電子署名を施すことで契約を締結し、企業のサーバーやクラウドストレージなどに電子データを保管しておく契約方式を言います。

クラウド型電子契約のイメージ図

2000年以降、「電子署名法」や「電子帳簿保存法」といった電子契約に関する法的環境が整備され、電子署名やクラウドストレージ等の技術的開発も進んでおり、電子契約を導入しやすい環境になりました。

日本の商慣習において当たり前に行われてきた「紙と印鑑」による契約締結だけでなく、電子契約による契約締結も徐々に増加してきています。

電子契約の普及率

日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)の2015年調査時点で、すでにクラウドサインをはじめとする電子契約サービスの利用を「導入している」は 1 割強、「検討している」が3割と、合計4割超の企業が電子契約をなんらかのかたちで採用・検討しています。

2018年現在では、これがさらに拡大をしているものと推測されます。

日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)「2015年文書情報マネジメント関連市場ユーザー動向調査結果の概要について」 https://www.jiima.or.jp/wp-content/uploads/pdf/research/2015research.pdf

電子契約の市場規模およびシェア

矢野経済研究所の2018年8月末時点の調査「リーガルテックウォッチ2018 ~電子契約サービス編」によれば、電子契約の市場規模は売上高ベースで40億円前後と推計され、対前年比で150%前後の成長率と見込まれています。

また、クラウドサインは、当該調査において発注者側ベース(有償無償含む)の累計利用登録者数で8割以上のシェアを占め、No.1という結果となりました。

クラウドサインは累計利用登録者数でNo.1

書面契約と電子契約の比較

ここで、書面契約と電子契約とを表にして比較してみましょう。

分類 書面契約 電子契約
書類媒体 紙への印刷 電子データ
署名方法 記名押印、署名 電子署名
締結日時の証明 日付記入、確定日付の取得 認定タイムスタンプ
相互確認 原本の郵送、持参による受け渡し インターネット上での電子データによる受け渡し
保管方法 倉庫やキャビネットによる原本の物理的な保管 自社内のサーバーや外部のデータセンターによる電子的な保管

メリットについてはまた後ほど詳細に解説をしますが、特に企業間の取引においては、

といった、電子契約ならではの大きなメリットを得ることができます。

電子署名とは

ところで、電子契約に用いられる電子署名とはどのようなものでしょうか。「電子」の「署名」と聞くと、タブレットなどを使って電子ファイルに電子ペンを使って手書きで文字を書き込む姿を想像するかもしれませんが、電子契約における「電子署名」は、それとは違った意味を持ちます。

コピーが容易な電子ファイルの作成者をどう証明するか

書面を用いた契約では、押印した印影や手書きの署名を施すことによって、その紙に書いた内容が本人の意思であることを証明できるようにします。これは、一般に印鑑が本人だけが保有しているものであることが推定されること、また手書きの署名であれば筆跡鑑定で本人が推定されることを前提とした仕組みです。

一方、電子ファイルを用いる電子契約では、ファイルそのものに印影や署名を施すことはできません。もちろん、デジタルな印影や署名を画像として上書きすることはできますが、デジタル画像はコピーが容易であるため、本人の意思によることを証明することは出来ず、意味がありません。そのため、別の手段によってその内容が本人の意思であることを証明できるようにする必要があります。

公開鍵暗号システムを用いて電子ファイルの作成者を証明

現在、これを証明できるようにする手法として用いられているのが、コンピュータの暗号技術を用いた公開鍵暗号システムです。

一対になった暗号化鍵と復号鍵の鍵ペアを作り、特定の復号鍵で復号できる暗号文がある場合、その暗号文は、その復号鍵に対応する暗号化鍵で平文を暗号化したものと証明できます。この2つの鍵のうち、復号鍵をインターネット上に公開し(公開鍵とし)、暗号化鍵を本人だけが知りうるパスワード等で管理された秘密鍵とするのです。公開鍵で復号できる暗号文は、その公開鍵と一対となっている秘密鍵の管理者によって暗号化されたものであると推定されます。

この公開鍵暗号システムを用いて、その電子ファイルの作成者を推定できるようにした仕組みが、一般に電子署名と呼ばれているものの正体です。「署名」と言う言葉が紛らわしさを生んでいますが、手書きによる書面上の署名と似たような本人確認の機能を有するところから「署名」という言葉が用いられているに過ぎません。

JIPDECウェブサイト https://esac.jipdec.or.jp/intro/shikumi.html より

電子契約と電子署名に関する主な法令

電子契約に関わる法的環境は、2000年以降順次整備されています。以下、代表的な法律について紹介します。

電子署名法

2000年に施行された電子署名法により、本人による電子署名を施した電子ファイル(電磁的記録)についての法的効果が定められました(電子署名法第3条)。

第三条 電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。

以下の要件を満たす電子署名を付与された電子ファイルは、書面に押印または署名された契約書に同等の法的効力が生じることとなります(電子署名法第2条)。

  1. 本人性の証明—電子文書が署名者本人により作成されていることが証明できること
  2. 非改ざん性の証明—署名された時点から電子文書が改ざんされていないこと証明できること

電子帳簿保存法

税法上、契約書、注文書、領収書、見積書等の取引情報に係る書面は、7年間保存する義務があります(法人税法施行規則59条ほか)。

ただし、電子契約のように電子データで保存する場合、以下の要件を満たすことで、紙の契約書等の原本と同等に扱われ、長期保存にかかる負担が解消できます(電子帳簿保存法10条)。

  1. 真実性の確保—認定タイムスタンプまたは社内規程があること
  2. 関係書類の備付—マニュアルが備え付けられていること
  3. 検索性の確保—主要項目を範囲指定および組み合わせで検索できること
  4. 見読性の確保—納税地で画面とプリンターで契約内容が確認できること

電子契約の導入メリット

これまでの書面による契約を電子契約に切り替えることで、企業は大きく3つのメリットを受けることができます。

(1)コスト削減

書面による契約の締結は、印紙代、郵送代、印刷費、さらにはそれらの作業にかかる人件費や、書類の保管費(法人税法上、紙の契約書は7年間の保存義務)といった様々なコストが発生します。一件あたりの費用は数百円から数千円程度に過ぎなくても、総額では毎月数十万円以上の費用になっていることも少なくありません。

電子契約を導入することで、契約書類はインターネット上でデータを受け渡しするため、郵送費はもちろん、印刷費、保管費などが不要になります。

また、ファイルをインターネット上にアップロードするだけなので、業務フローが簡素化され人件費も最小限にできます。

書面を取り交わして保管する場合1契約あたり500円以上かかる

そして電子契約の導入でもっとも分かりやすいメリットが、印紙代のコスト削減です。印紙代は、印紙税法第二条において、印紙税の対象となる課税文書が定義されています。その金額は、1通数百円から、数万円を超えるものまであります。

2018年9月現在において、課税文書とされるのは、以下の要件を満たすものとされています。

参考: 国税庁 印紙税額一覧表 平成30年5月現在(PDF)

しかし、国税庁は課税文書を「紙の原本」と定義しています。したがって、契約書の電子データはもちろん、電子データのコピー(写し)も課税対象文書に当たらないため印紙代はかかりません

2005年に当時の首相である小泉純一郎氏は、以下のような答弁をしています。

参議院議員櫻井充君提出印紙税に関する質問に対する答弁書(5の一部を抜粋)

事務処理の機械化や電子商取引の進展等により、これまで専ら文書により作成されてきたものが電磁的記録により作成されるいわゆるペーパーレス化が進展しつつあるが、文書課税である印紙税においては、電磁的記録により作成されたものについて課税されないこととなるのは御指摘のとおりである

http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/162/touh/t162009.htm

(2)業務効率化

書面で契約を締結する場合は、原本を印刷、押印、郵送、取引相手に押印後の原本返送の依頼等によって、契約締結まで2〜3週間程度かかることもあります。さらに、途中で契約内容の変更などあれば、再度印刷からやり直すことになり、二重、三重の手間が発生していました。

また、監査等の対応で過去の契約内容を確認する時は、倉庫やキャビネットから探し出す必要があり、整理されていない状態だと探すのに苦労することもあります。

電子契約の場合は、お互いがパソコンやスマートフォンで作業するだけなので、早ければ2〜3分で契約締結に関わる全ての作業を終えることができます。契約書の送信者は、互いが電子データを確認できる環境にファイルをアップロードして、署名してもらうだけで契約が完了します。仮に、修正があっても、再度ファイルをアップロードするだけです。

また、過去の書類を確認する必要があれば、検索機能を利用して書類や契約相手方の名前などで容易に検索が可能です。

作業時間の大幅な短縮が可能

(3)コンプライアンス強化

第1に、電子署名と認定タイムスタンプを電子データに組み合わせて施すことで、契約内容の改ざんリスクを最小化できます。

3Dプリンタで偽造された印鑑の印影を人間の眼で見破ることは困難ですが、電子署名であれば、PDFファイルの「署名パネル」を確認することで、改ざんの有無をデジタルに、誰でもかんたんに確認できます。

電子署名はPDFファイルの「署名パネル」からかんたんに確認できる

また、書面での契約書を倉庫やキャビネットに保管するリスクとして、管理漏れや紛失などが挙げられます。企業の中では、日々に多くの契約書類の受け渡しがあり、どの契約書を、今誰が、どのように進めているのか、全てを把握するのは難しいのではないでしょうか。

そして、いざ過去の契約書の確認が必要になって倉庫やキャビネットを探してみると、一部の書類が紛失していたというリスクがあります。災害などで倉庫やキャビネットが破壊され、そこに保存していた書類も復元できなくなってしまうという可能性もあります。

電子契約では、契約書を電子データとして一元管理することで、業務の透明性が向上し、抜け・漏れを少なくすることができます。当社が提供しているクラウドサインでは、書類の締結状況や、送信先での確認状況までステータス管理できますので、契約の締結漏れを減らすことも可能です。

さらに、クラウドサーバは一般企業のファイルサーバーと比較して高いセキュリティ基準を設定しているので、不法な侵入を防いでくれます。また、災害に備えて耐震性なども強化しています。

電子契約導入にあたっての注意点

ここまで、電子契約の良い面を中心に紹介してきました。しかしながら、電子契約の導入にはいくつか注意していただきたいポイントもあります。

法律で書面が求められる契約類型が一部に存在する

契約方式自由の原則により、基本契約・秘密保持契約・売買契約・業務委託契約・請負契約・雇用契約など、ほとんどの契約において電子契約が利用可能となっています。

一方、電子契約が普及している中でも、消費者保護などを目的として、法律で書面(紙)による締結や交付が義務付けられているものも一部ですが存在します。

以下に書面が必要となる代表的な類型を紹介します。

このような契約を扱う場合、電子契約の導入の前に、顧問弁護士にも確認の上ご利用いただくことをおすすめします。

受信者側(契約相手方)の理解

自社で導入できたとしても、電子契約の受信者側の理解も必要になります。相手が合意することで契約は締結されますので、受信者である相手が電子契約を拒んで従来の書面による契約を希望した場合には、相手に合わせなければならないケースも少なくありません。

また、導入する電子契約サービスによっては、相手にも同様の電子契約サービスを利用してもらう必要もあるため、相手に費用を負担させてしまうこともあります。「自分たちのために同じ電子契約を使ってください」と言ったところで、相手にメリットがなければ同じ電子契約サービスは利用してくれません。

この点クラウドサインでは、受信者は利用規約をご確認いただくだけで、サービスのアカウント登録作業は必要ありません。もちろん、費用負担も契約相手方に強いることなく、スピーディに契約を締結することができます。

また、豊富な図解入りの受信者様向けガイドコンテンツを豊富にご用意して、この点をサポートしています。

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(2018/11/29 橋詰改訂)