契約書の「データ保存」に関する法務と税務 —電子契約をデータとして保存する場合

電子契約を締結してデータとして保存するにせよ、紙の契約書をスキャンしてデータ化するにせよ、契約を電子的に保存するにあたって知っておかなければならない法律が「電子帳簿保存法」です。

この法律は、平成10年に成立後、17年、27年、28年と複数回にわたる法改正が入った経緯もあり、条文も読みやすいものとは決して言えず、「結局のところ、どうすれば契約をデータとして適法に保存できるのかわからない」というご質問をよくいただきます。

契約をデータ化し文書保存の負担を適法に減らすにはどうすればよいのか?今回は、電子帳簿保存法に定められた「電子取引のデータ保存」の義務と要件を解説します。

電子取引(電子契約)を行った場合は税務上の要件に沿ったデータ保存が必要

クラウドサインのようなインターネットを用いた電子契約は、税務上の用語で「電子取引」と呼ばれます(電子帳簿保存法2条1項6号)。所得税および法人税を納税する企業が電子取引を行った場合、電磁的記録(その取引のデータ)を保存しておく必要があります(同法10条)。

なお、データ保存の代わりに、電子契約データを印刷した書面(またはマイクロフィルム)を保存することでも、税務対応が可能です(同法10条ただし書き)。

データ保存の要件を満たさない電子契約サービスを利用すると、データとは別にプリントアウトした書面を保管しておく必要があることになります。これですと、せっかく電子契約を結んでも保管スペースの削減メリットを活かせないことになります。

電子帳簿保存法

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(中略)
六 電子取引 取引情報(取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいう。以下同じ。)の授受を電磁的方式により行う取引をいう。

第十条 所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。ただし、財務省令で定めるところにより、当該電磁的記録を出力することにより作成した書面又は電子計算機出力マイクロフィルムを保存する場合は、この限りでない。

電子取引のデータ保存にあたって満たさなければならない具体的要件

それでは、データ保存の方法について、具体的に確認してみましょう。

まず、電子契約を単にPDFファイルとしてサーバーに保存するだけでは、民法・商法上の契約としては有効なものとして取り扱えても、電子帳簿保存法の要件を満たさず税務リスクが存在することに注意が必要です。

先ほど見た第10条の条文中に「財務省令で定めるところにより」とあるように、保存義務の詳細な要件が別途細かく定められているためです。この財務省令とは、電子帳簿保存法施行規則 を指します。

電子帳簿保存法施行規則

第八条 法第十条に規定する保存義務者は、電子取引を行った場合には(中略)、当該電子取引の取引情報(中略)に係る電磁的記録を、(中略)当該書面を保存すべきこととなる場所に、当該書面を保存すべきこととなる期間、次の各号に掲げるいずれかの措置を行い、第三条第一項第四号並びに同条第五項第七号において準用する同条第一項第三号(同号イに係る部分に限る。)及び第五号に掲げる要件に従って保存しなければならない。
一 当該取引情報の授受後遅滞なく、当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すとともに、当該電磁的記録の保存を行う者又はその者を直接監督する者に関する情報を確認することができるようにしておくこと。
二 当該電磁的記録の記録事項について正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程を定め、当該規程に沿った運用を行い、当該電磁的記録の保存に併せて当該規程の備付けを行うこと。

この読みにくい条文の中に、満たさなければならない要件が列挙されています。文章のままでは分かりにくいので、表形式で詳細をまとめたものを「クラウドサイン法律ガイド」にも掲載しています。まだお持ちでない方はぜひ資料請求してみてください。

クラウドサイン法律ガイドより抜粋

以下、この表の中身をさらに細かく解説していきます。

基本的な保存義務—納税地で7年間保存

まず基本的な義務として、納税地で7年間データを保存する義務があります(施行規則8条1項、および法人税法施行規則59条ほか)。

なお、保存場所の要件については、電子契約システム・サービスのサーバーが海外にあっても国内からアクセスできれば差し支えないことが、国税庁の見解として示されています。したがって、海外にサーバーが置かれているようなクラウドサービスであっても、問題ありません(国税庁「電子帳簿保存法一問一答」12頁)。

また、保存期間について、欠損金の繰越控除をする法人は、最長で10年間の保存が必要となります(法人税法施行規則8条の3の10 1項ほか)。

(1)真実性の確保—認定タイムスタンプまたは社内規程があること

データ保存の要件の中で一番わかりにくいのが、「真実性の確保」の要件です。原則としては、全ファイルへの認定事業者のタイムスタンプの付与が求められています。(施行規則8条1項1号、および3条5項2号ロ)。

ただし、認定タイムスタンプを付与するのにはコストがかかるという批判もあります。そこで、タイムスタンプの代わりに「訂正及び削除を制限する社内規程」を定めることでも可とされました(施行規則8条1項2号)。スキャナ保存の場合は現状も認定タイムスタンプが絶対必要とされているのに対し、少し規制緩和がされた形になります。

なお、クラウドサインでは、2018年3月22日以降スタンダードプランをご契約いただくお客様の全ファイルに認定タイムスタンプ(長期署名)を付与しています。

(2)関係書類の備付—マニュアルが備え付けられていること

利用する電子契約システム・サービスの利用方法が誰にでも分かるよう、その概要を記載した書類(マニュアル)を備え付けておくことが求められます(施行規則3条1項3号イ、3条5項7号による準用)。

(3)見読性の確保—納税地で画面とプリンターで契約内容が確認できること

納税地または事業所その他準ずる場所(税務調査を受ける場所)で、ディスプレイやプリンターを使って電子契約の内容が速やかに画面または書面で確認できるようにしておくことが必要です(施行規則3条1項4号)。

(4)検索性の確保—主要項目を範囲指定および組み合わせで検索できること

電子契約システム・サービスにおいて、電子取引の履歴から税務調査対象年度等特定の範囲にデータを絞り込んで検索できるようにすることが求められています(施行規則3条1項5号、3条5項7号による準用)。

条文の読み替え規定のせいで要件が分かりにくいのですが、概略以下3つの検索機能があれば問題ないと考えられます。

電子取引のデータ保存の場合は所轄税務署への事前届出は不要

紙で作成された契約書をスキャンして保存する「スキャナ保存」の措置を行う際には、事前に所轄税務署長の承認を得た上で行う必要があります(電子帳簿保存法4条)。かなり面倒な手続きです。

一方、今回解説したような、もともと電子で締結した電子契約をそのまま「データ保存」する場合については、所轄税務署長の事前承認は不要です。これは、電子帳簿保存法に定める承認義務が、(スキャナ保存の場合と異なり)電子取引のデータ保存については規定されていないためです。

作業負担だけでなく法的手続き負担の面からも、紙に押印した契約書を後でスキャナ保存するよりも、はじめから電子契約を選択しデータ保存する方法のほうが、より少ない手間とコストで保管スペースの削減ができ、賢い選択であることがお分かりいただけるかと思います。

クラウドサインは電子帳簿保存法の要件を満たしたデータ保存が可能

以上、電子契約サービスを利用した場合の、契約書のデータ保存に関する法務と税務をまとめてみました。

クラウドサインでは、2018年3月12日より契約の管理機能を強化し、この電子帳簿保存法に対応しています。契約締結の際に管理画面の「書類情報」をお客様に埋めていただくことで、上記要件すべてを満たし契約書のデータ保存を適法に行うことができます。

電子契約サービスの中には、認定タイムスタンプ(長期署名)が付与されないサービスや、検索性の要件を満たさないサービスもあります。電子帳簿保存法の要件を満たせる電子契約サービスかを確認の上、導入検討されることをお勧めします。

参考文献

画像:
Rawpixel / PIXTA(ピクスタ)

(2018/09/21 橋詰改訂)