契約書の「データ保存」と電子帳簿保存法—電子契約データ保管の注意点

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電子契約を締結してデータとして保存するにせよ、紙の契約書をスキャンしてデータ化するにせよ、契約を電子的に保存するにあたって知っておかなければならない法律が「電子帳簿保存法」です。

 

この法律は、平成10年に成立後、平成17年、27年、28年そして令和2年と複数回にわたる法改正が入った経緯があり、さらに令和4年(2022年)1月にもさらなる改正法が施行されました(関連記事:電子取引における電子帳簿保存法改正対応のポイント)。そのため、条文も読みやすいものとは決して言えず、「結局のところ、どうすれば契約書をデータとして適法に保存できるのかわからない」というご質問をよくいただきます。

 

そこで今回は、電子帳簿保存法に定められた「電子取引のデータ保存」の義務と要件を解説します。契約書をデータ化し、文書保存の負担を適法に減らすにはどうすればよいのかがわかります。

電子帳簿保存法とは—電子取引(電子契約)のデータ保存を義務付けた法律

電子帳簿保存法とは、正式な名称を「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」といい、電子取引(電子契約)を行なった際のデータ保存に関する義務を定めた法律 です。

クラウドサインのようなインターネットを用いた電子契約は、税務上の用語で「電子取引」と呼ばれます(電子帳簿保存法2条1項5号)。所得税および法人税を納税する企業が電子取引を行った場合、電磁的記録(その取引のデータ)を保存しておく必要があります(同法7条)。

電子帳簿保存法

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(中略)
五 電子取引 取引情報(取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいう。以下同じ。)の授受を電磁的方式により行う取引をいう。

第七条 所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない。

電子契約は、ここでいう「電子取引」に該当することになることから、この電子帳簿保存法の要件を満たさない電子契約サービスを利用して契約を保存すると、法違反となってしまいます。

電子取引のデータ保存にあたって電子帳簿保存法上満たさなければならない具体的要件

それでは、どのようにすれば契約のデータ保存が適法となるのか、その具体的方法について確認してみましょう。

まず、電子契約を単にPDFファイルとしてサーバーに保存するだけでは、民法や電子署名法上で有効なものとして取り扱えても、電子帳簿保存法の要件を満たさず税務リスクが存在することに注意が必要です。

先ほど確認した第10条の条文中に「財務省令で定めるところにより」とあるように、保存義務の詳細な要件が別途細かく定められている ためです。この財務省令とは、電子帳簿保存法施行規則 を指します。以下、電子帳簿保存法とあわせ、この電子帳簿保存法施行規則の中身をさらに細かく解説していきます。

基本的な保存義務—納税地で7年間保存

まず基本的な義務として、見積書・注文書・契約書・領収書等の取引情報に係る書面は、7年間保存する義務があります(所得税法148条・同法施行規則63条および法人税法126条・同法施行規則59条ほか)が、電子取引の場合には、取引情報に関する電磁的記録を同じ期間適切に保存しなければなりません(電子帳簿保存法7条・同法施行規則4条ほか)。

第四条 法第七条に規定する保存義務者は、電子取引を行った場合には、当該電子取引の取引情報(略)に係る電磁的記録を、当該取引情報の受領が書面により行われたとした場合又は当該取引情報の送付が書面により行われその写しが作成されたとした場合に、国税に関する法律の規定により、当該書面を保存すべきこととなる場所に、当該書面を保存すべきこととなる期間、次に掲げる措置のいずれかを行い、第二条第二項第二号及び第六項第六号並びに同項第七号において準用する同条第二項第一号(同号イに係る部分に限る。)に掲げる要件(当該保存義務者が国税に関する法律の規定による当該電磁的記録の提示又は提出の要求に応じることができるようにしている場合には、同条第六項第六号(ロ及びハに係る部分に限る。)に掲げる要件(当該保存義務者が、その判定期間に係る基準期間における売上高が千万円以下である事業者である場合であって、当該要求に応じることができるようにしているときは、同号に掲げる要件)を除く。)に従って保存しなければならない。

条文にいう「場所」と「期間」は、所得税法・法人税法に従い、以下のように読み替えます

  • 当該書面を保存すべきこととなる場所 = 取引関係書類が作成・受領された日本国内の納税地
  • 当該書面を保存すべきこととなる期間 = 7年間

なお、保存場所の要件については、電子契約システム・サービスのサーバーが海外にあっても国内からアクセスできれば差し支えない ことが、国税庁の見解として示されています。したがって、海外にサーバーが置かれているようなクラウドサービスであっても、問題ありません(国税庁「電子帳簿保存法一問一答 【電子取引関係】」問20  10〜11頁)。

また、保存期間について、欠損金の繰越控除をする法人は、最長で10年間の保存が必要となります(法人税法施行規則8条の3の10 1項ほか)。

この基本的な保存義務のもと、電子帳簿保存法施行規則に詳細に定められた保存の要件について、以下解説します。

(1)真実性の確保のための措置—認定タイムスタンプ、訂正削除できないシステムの利用または事務処理規程があること

データ保存の要件の中で一番わかりにくいのが、真実性の確保のための措置の要件です。

第四条 (一項柱書省略)
一 当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプが付された後、当該取引情報の授受を行うこと。
二 次に掲げる方法のいずれかにより、当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すとともに、当該電磁的記録の保存を行う者又はその者を直接監督する者に関する情報を確認することができるようにしておくこと。
イ 当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すことを当該取引情報の授受後、速やかに行うこと。
ロ 当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すことをその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに行うこと(当該取引情報の授受から当該記録事項にタイムスタンプを付すまでの各事務の処理に関する規程を定めている場合に限る。)。
三 次に掲げる要件のいずれかを満たす電子計算機処理システムを使用して当該取引情報の授受及び当該電磁的記録の保存を行うこと。
イ 当該電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認することができること。
ロ 当該電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行うことができないこと。
四 当該電磁的記録の記録事項について正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程を定め、当該規程に沿った運用を行い、当該電磁的記録の保存に併せて当該規程の備付けを行うこと。

従来は、全ファイルへの認定タイムスタンプの付与が求められてきました。(施行規則4条1項1号または2号)が、認定タイムスタンプを付与するのにはコストがかかるという批判を受け、令和2年の電子帳簿保存法の改正により、

  • 訂正削除の履歴が残るか、そもそも訂正削除ができないシステムを利用する(施行規則4条1項3号イまたはロ)
  • 訂正及び削除を制限する社内規程を定める(施行規則4条1項4号)

ことでも可とされ、前者により、クラウドサービスによる保存でも(訂正削除の履歴が残るかできないものであれば)、要件を満たすこととなりました。

クラウドサインは記録事項の訂正削除ができないシステムとなっており、施行規則4条1項3号ロの要件を満たします。なお、2018年3月22日以降スタンダードプラン以上の有償プランをご契約いただいたお客様、および2020年9月7日以降フリープランをご利用いただくお客様の締結済みファイルに、認定タイムスタンプも付与しています。

(2)見読可能性(可視性)の確保—納税地で画面とプリンターで契約内容が確認できること

納税地または事業所その他準ずる場所(税務調査を受ける場所)で、対象の電子取引データについて見読可能性を確保しておくことが要件となっています。具体的には、ディスプレイやプリンターを使って電子契約の内容が速やかに画面または書面で確認できるようにしておくこと が必要です(施行規則2条2項2号)。

第二条 (一項省略、二項柱書省略)
(一号省略)
二 当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存をする場所に当該電磁的記録の電子計算機処理の用に供することができる電子計算機、プロ
グラム、ディスプレイ及びプリンタ並びにこれらの操作説明書を備え付け、当該電磁的記録をディスプレイの画面及び書面に、整然とした形式及び明瞭な状態で、速やかに出力することができるようにしておくこと。

クラウドサインで締結し保存された書類は、ディスプレイの画面、およびプリンタで印刷する書面に速やかに出力することが可能です。

(3)電子計算機処理システムの概要書等の備付け—マニュアルが備え付けられていること

自社開発したシステムを利用する場合には、概要書を備え付けておくことが求められます(施行規則2条2項1号)。

第二条 (一項省略、二項柱書省略)
一 当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存に併せて、次に掲げる書類(当該国税関係帳簿に係る電子計算機処理に当該保存義務者が開発したプログラム(略)以外のプログラムを使用する場合にはイ及びロに掲げる書類を除くものとし、当該国税関係帳簿に係る電子計算機処理を他の者(当該電子計算機処理に当該保存義務者が開発したプログラムを使用する者を除く。)に委託している場合にはハに掲げる書類を除くものとする。)の備付けを行うこと。
イ 当該国税関係帳簿に係る電子計算機処理システム(電子計算機処理に関するシステムをいう。以下同じ。)の概要を記載した書類
ロ 当該国税関係帳簿に係る電子計算機処理システムの開発に際して作成した書類
ハ 当該国税関係帳簿に係る電子計算機処理システムの操作説明書
ニ 当該国税関係帳簿に係る電子計算機処理並びに当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存に関する事務手続を明らかにした書類(当該電子計算機処理を他の者に委託している場合には、その委託に係る契約書並びに当該国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存に関する事務手続を明らかにした書類)

クラウドサインを利用されるお客様においては、自社開発したシステムとクラウドサインとを連携していない場合は不要です。

(4)検索機能の確保—主要項目を範囲指定および組み合わせで検索できること

電子契約システム・サービスにおいて、電子取引の履歴から税務調査対象年度等特定の範囲にデータを絞り込んで検索できるようにすることが求められています(施行規則2条2項6号)。

六 当該国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項の検索をすることができる機能(次に掲げる要件を満たすものに限る。)を確保しておくこと。
イ 取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先(ロ及びハにおいて「記録項目」という。)を検索の条件として設定することができるこ
と。
ロ 日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること。
ハ 二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること。

概略以下3つの検索機能があれば要件を満たすと考えられます。

  • 取引年月日や取引金額等の主要項目が検索条件として設定できる
  • 日付と金額については範囲指定して検索できる
  • 2つ以上の項目を任意に組み合わせて検索できる

クラウドサインでは、お客様が「書類情報」として上記項目を入力いただくことで本要件を満たすことができます。

以上の詳細要件については、表形式でまとめたものを「クラウド契約法律ガイド」にも掲載しています。

クラウドサイン法律ガイドより抜粋

所轄税務署への事前届出は不要

電子で締結した電子契約をそのまま「データ保存」する場合については、所轄税務署長の事前承認は不要 です。国税庁のリーフレットでも、以下括弧書きのとおり解説されています。

「これまで、電子的に作成した国税関係帳簿を電磁的記録により保存する場合には、事前に税務署長の承認が必要でしたが、事業者の事務負担を軽減するため、事前承認は不要とされました (電子的に作成した国税関係書類を電磁的記録により保存する場合についても同様です。)。

作業負担だけでなく法的手続き負担の面からも、紙に押印した契約書を後でスキャナ保存するよりも、はじめから電子契約を選択しデータ保存する方法のほうが、より少ない手間とコストで保管スペースの削減ができ、賢い選択であることがお分かりいただけるかと思います。

電子帳簿保存法の要件を満たしたクラウドサービスを選定する

以上、電子契約サービスを利用した場合の、契約書のデータ保存に関する法務と税務をまとめてみました。

クラウドサインでは、契約締結の際に管理画面の「書類情報」をお客様に入力いただくことで、この電子帳簿保存法の要件を満たし、契約書のデータ保存を適法に行うことができます。

電子契約サービスの中には、認定タイムスタンプが付与されないサービスや、他のサービスと組み合わせない限り検索性の要件を満たさないクラウドサービスもあります。電子帳簿保存法の要件を満たせる電子契約サービスかを確認の上、導入検討されることをお勧めします。

参考文献

  • 国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」(令和3年12月)
  • 税理士法人山田&パートナーズ『改正電子帳簿保存法ハンドブック』(大蔵財務協会,2021)
  • PwC税理士法人『電子帳簿保存法の制度と実務』(清文社,2021)

画像: imageteam / PIXTA(ピクスタ)

(橋詰)

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