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可用性とは? 言葉の意味を分かりやすく解説します

可用性とは、システムの稼働能力のことです。たとえば「可用性が高いシステム」といえば、何らかの障害が発生しても、継続的にサービスを提供し続けられるシステムを指します。

本記事では、可用性の意味、可用性の高いシステムを構築する重要性や、具体的な方法などを解説します。

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可用性とは何か?

可用性とは、「システムが必要な時に、正常に使えるかどうか」(稼働能力)を意味します。仮にシステムの一部に障害が起きていても、バックアップシステムなどの手段を用いてサービスを提供し続けられれば、可用性は高いといえます。

これは数値で示せます。可用性の指標には、時間で測る「稼働率」と、回数で測る「成功率」などがありますが、分かりやすいように「回数」の例で考えてみましょう。

あるシステムを使おうとした回数が100回あり、そのうち2回は機能しなかった…という場合、そのシステムの可用性(成功率)は98%です。

なお、サーバーの契約などでよく目にする「稼働率99.99%」といった表記は、一般的に「稼働していた時間」をベースに計算されています。

ちなみに「可用性」は、「availability」の訳語として生まれました。そもそも英語のavailabilityは有効性、有用性などと訳されますが、コンピューターの安定性に関わる要素であるRAS(Reliability=信頼性、Availability、Serviceability=保守性)を訳す際、日本IBMがavailabilityに「可用性」という言葉をあてたのが最初だといわれています。

情報セキュリティにおける可用性

可用性は、Confidentiality(機密性)、Integrity(完全性)とともに情報セキュリティの3要素(CIA)としても挙げられています。ここでの可用性も先述のとおり、システムの稼働能力を指しますが、セキュリティを語る上で用いられる場合は「“情報をセキュアに扱えるようにするための” システムの稼働能力」という意味合いが強くなります。

可用性の具体例

「そのシステムが止まると、ビジネスに大きな損害が発生する」「そのインフラが使えなくなると、社会的に悪影響が出る」といった、いわゆるミッションクリティカルなものには、高い可用性が求められます。企業であれば基幹システム、大規模なサービスを提供するサーバーやネットワークなどが挙げられます。

信頼性、サービス継続性との違い

可用性と似た意味を持つ言葉として、信頼性やサービス継続性があります。その違いを簡単に説明します。

可用性と信頼性の違い

ITにおける「信頼性」とは、システムが故障せずに動作する確率を指し、平均故障間隔(次の故障が起きるまでの時間的感覚)、平均故障時間(故障して使えない時間)、稼働率などの指標があります。

可用性と信頼性の違いをイメージしたいただくために、極端な例を用いて説明してみましょう。

まず24時間365日、サーバーを稼働させ続けて提供しているサービスがあるとします。ここに投入できるサーバーとして、12時間に1回故障し、修理にも12時間かかるものを用意しました。一般的に考えればこのサーバーは「信頼性が低い」といえます。

そこで同じ機種のサーバーを用意して、1台が故障したらすぐに修理に回し、修理中はもう1台でサービスを提供し続けることにしました。12時間というスパンの中で、故障と修理を繰り返せば、ユーザーはいつでもサービスを受けられる状態を保てます。つまりシステムとしての「可用性は高い」ということになります。

可用性とサービス継続性の違い

可用性は「今、使えるか」という日常の運用に関わるものであるのに対し、サービス継続性は、システムやインフラが大規模な災害などで利用できなくなってしまった場合の対策や計画に関わるものである、という違いがあります。

サービス継続性はBCP(事業継続計画)などを論じる際、可用性よりも幅広い問題を扱う場合につかわれる言葉です。

たとえば、「稼働率99.99%のサーバー(高可用性)」を作っても、そのデータセンターが地震で使えなくなってしまっては意味がありません。逆に、「完璧な遠隔地バックアップ(高継続性)」があっても、普段のシステムが毎日頻繁に止まっていればビジネスになりません。

この概念の違いを明確にすることで、「どの程度止まることを許容するか(可用性)」と「最悪の場合、どの程度で復帰できれば会社が潰れないか(継続性)」という、全く異なる2つの経営判断を適切に行なうことができます。

可用性が低い場合に起こるリスク

可用性が低いシステムを利用していると、どのようなリスクがあるのでしょう。

売上損失・収益低下リスク

顧客向けのサービス提供が不安定になれば、売上・収益が低下するリスクがあります。

システムが停止している間、売り上げがゼロになるだけでなく、復旧コストや違約金など、直接的なキャッシュアウトを伴います。

さらにエンジニアのリソースが「新機能の開発」ではなく「障害対応」に奪われ、疲弊するリスクもあります。

ブランド力低下などのビジネスリスク

企業のブランドイメージが低下したりして、ビジネス全体に影響が及ぶおそれがあります。

競合サービスへの乗り換えが容易な現代において、「繋がらない」という体験は、即座に顧客解約(チャーン)に直結します。一度失った「このサービスは不安定だ」という評判を覆すには、正常稼働時の何倍もの時間とマーケティングコストが必要です。

セキュリティリスクにつながるおそれ

可用性が低ければ、システム障害時、日常的に行っていた認証(ログイン)が上手くいかずに必要なデータにアクセスできなかったり、外部のハッカーから可用性の低さをつかれた攻撃を受けて、大きな損害につながったりするおそれがあります。

可用性を高めるための具体的な方法とは?

では可用性を高めるためには、どのような方法があるのでしょうか。

システムの冗長化とバックアップ

冗長化とは、簡単にいえば「予備を用意しておくこと」です。「可用性と信頼性の違い」の項でご説明したように、予備の機器を用意しておき、メイン機に不具合が生じたらすぐに切り替えられるようにしておく、データベースのバックアップを欠かさないなどの対策をとれば、可用性は高まります。

複数台のコンピューターを1つの計算リソースとして利用し、それぞれのコンピューターへの負荷を軽減する「クラスタリング」によって、可用性を高める手法もあります。クラスタリング構成であれば、そのうちの1台に障害が起きても処理は継続できます。

クラウドサービスの活用

費用や人材不足などの問題で、社内のオンプレ・システムを冗長化することが難しい場合、システムをクラウドサービスに移行するという方法も考えられます。クラウドサービスであれば日常的な保守はサービスプロバイダーが行なってくれますし、障害時のサーバー切り替えやシステムへの負荷に応じた拡張も比較的容易です。

ただしクラウドであっても、障害がないわけではありません。世界的に有名なパブリッククラウドに障害があり、一部の社会インフラが停止したことがあったのは、皆さんもご存じのとおりです。自社でシステムを管理した場合の経済的・人的コスト、サービス停止に陥った際のリスクなどを考慮に入れ、どのシステムをどのクラウドサービスに移行するかは十分に検討する必要があります。

SLA(サービスレベル合意)を結ぶ

これは可用性を高めるというよりもシステム障害時の対策です。自社のユーザーに対して提供できる可用性、パフォーマンス、障害からの復旧時間などを数値として提示し、「その範囲内で品質を保証する」という契約(SLA)を結ぶのです。これによって障害対応に猶予を持つことができ、損害賠償額の抑制にもつながります。

一方、自社が契約したクラウドからサービスを提供する場合は、クラウドサービスプロバイダーとのSLAで、保証される範囲について合意しておくことも重要です。

可用性を高めるための技術、ツール

予備のシステムを準備しておく冗長化の他、可用性を高めるためには次のようなツール、技術にも目を向けておきましょう。

ロードバランサー

サーバーにかかる負荷を分散させる機能を持つのがロードバランサーです。1台のサーバーに負荷がかかりすぎるのを防ぐだけでなく、障害が起きたサーバーを避け、他のサーバーに処理を振り分けることも可能となります。

監視ツール

サーバーやネットワーク機器から、稼働状況データを取得する監視するツールを利用すれば、どこにどんな負荷がかかっているのか、サーバーの状態はどうなっているのかをチェックできるようになるため、障害を未然に防ぐ手立てを取るのに役立ちます。

AI・自動化による障害予測

センサーデータや監視ツールが収集したデータ、過去の故障履歴などをAIに学習させ、故障の発生を予測・通知する技術の開発も進んでいます。既に産業界では、機器が発生させる異音などから、メンテナンスの時期や部品の交換時期を知らせる技術があり、IT全般でも同様の技術の導入が進んでいます。

まとめ:可用性はビジネスの安定につながる

多くのビジネスがデジタルデータに依存している今、システム障害は大きな損害につながりかねません。信頼性、冗長性の高いシステムの構築は、いずれ降りかかってくるかもしれないリスクを回避・緩和し、安定したビジネスを続けていくために重要だといえます。

なお、クラウドサインでは会社全体のセキュリティ対策や業務改善に取り組む方に向けて、プロジェクト推進のポイントをまとめた資料をご用意しています。

情報セキュリティ担当者・DX推進担当者はもちろんのこと、生成AI活用など全社にまたがる業務改善プロジェクトに共通するポイントが盛りだくさんの内容なので、「周囲の巻き込み力」を高めたい方はぜひ参考にしてみてください。

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この記事を書いたライター

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蔵捨

コピーライター

広告代理店勤務を経て、2001年からフリーランスに。ウェブを中心にIT系、ビジネス系の記事を執筆する他、企業ウェブサイトのコンテンツ制作、製品プロモーション映像の構成台本制作などを手掛ける。

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