スマートコントラクト事始め — まずは基本書探しから

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このメディアでも、そろそろ「スマートコントラクト」について取り上げていきたいと思います。

ちなみに、クラウドサイン事業部としては、2016年からデジタルガレージとスマートコントラクトに関する共同開発を進めているところです。こちらの成果も随時お伝えしていければと思いますが、これとは別に、スマートコントラクトがどんなもので、企業活動にどのように役立てられそうかについても、様々な視点から情報提供していければと考えています。

スマートコントラクトの定義

ご自身でビットコインをはじめとする仮想通貨(暗号通貨)を購入したり、投資・投機対象として研究するぐらいの好奇心旺盛な方は別として、一般の方にとっては、スマートコントラクトという単語を目にしたことはあっても、その定義、特徴、メリット/デメリットは何なのか実はよくわからないのが普通だと思います。

そこでまず最初に、この言葉の定義を確認してみることにしましょう。法律実務家向けの専門誌 NBL No.1093 P28で、増島雅和弁護士がこのように解説されています。

「スマートコントラクト」という用語は、論者によって異なる意味・ニュアンスによって用いられており、一義的な意味を持つ用語ではない。近時比較的受け入れられている言説によると、スマートコントラクトは現在大きく以下2つの意味が混在しているとされている(Nick Szabo, “Formalizing and Securing Relationships on Public Networks” http://firstmonday.org/ojs/index.php/fm/article/view/548/469-publisher=First

- 契約を保存し、有効性を担保し、履行するためのプログラムないしコード(いわゆるスマートコントラクトコード)。これは分散型台帳ないしブロックチェーン技術(以下「DLT」と総称する)によって実装されるものとそうではないものが存在する。この意味で用いられるスマートコントラクトとは、法的な意味での契約(複数の法主体間の意思の合致、すなわちリーガルコントラクト)にとどまらず、社内の異なる部門や同一部門内での階層間におけるビジネスロジックの実行プロセスの制御に関するものも含まれることがある。

- 法的な意味での契約を補完または代替する、スマートコントラクトコードを実装する技術の応用(いわゆるスマートリーガルコントラクト)。これは、法と経済学の観点から、契約理論が求める契約として成立し得るためにスマートコントラクトはどのようにデザインされるべきか、という論点や、伝統的な法学の観点から、ある技術とデザインによって実装されたスマートリーガルコントラクトの成立可能性や有効性、執行可能性が論点となる。

(太字強調は橋詰による)

ちょっと長いので噛み砕くと、前者は、「M2Mで機械同士がものごとを自律的に合意して進めていくIoT的なものも含めた仕組み」を捉えてスマートコントラクトと呼ぶ立場であり、後者は、「人間が紙と言語で行なっていた合意をコンピュータが読めるコードに置き換え機械がこれに従って契約を履行する仕組み」を捉えてスマートコントラクトと呼ぶ立場、この2つの立場に分かれているということです。

このメディアでは、主に後者の「スマートリーガルコントラクト」の意味で、スマートコントラクトという言葉を使います。

スマートコントラクトを理解するための基本書

定義を確認したところで、ではその特徴やメリット/デメリットは何かというお話になります。しかし、ここから先に進むステップでつまづく方が多いのではと思います。というのも、ある程度の前提知識を持っておかないと、スマートコントラクトを解説する文章が頭に入ってこないからです。たとえば、一度は見聞きしたことがあるはずの「ブロックチェーン」一つをとっても、スマートコントラクトを理解するためには、それを支える暗号技術・ハッシュ関数・分散システムがどんなものかというレベルで知識・用語をインプットしておく必要があります。

ビットコインが注目を浴びるようになって以降、毎日のようにこうした用語の解説がニュースや雑誌でなされています。そして、特にエンジニアにとっては将来性の高そうな技術ということで、ネットや技術専門書等でしばしば特集が組まれてもいます。しかしながら、非エンジニアでも分かるように基本的な用語から解説してくれていて、特徴やメリデメも体系的に整理され、信頼できる著者によって書かれた基本書となると、これというものがなかなか見当たらないのが現状です。

そんな中、私がこの数ヶ月間、ネット・書店・Amazon・国会図書館で「スマートコントラクト」のキーワードにマッチする記事・書籍・雑誌・論文に総当たりし読んでみて、おすすめできそうなのがこちらでした。

▼ブロックチェーン技術を活用したサービスに関する国内外動向調査報告書(概要)
http://www.meti.go.jp/press/2016/04/20160428003/20160428003-1.pdf

▼ブロックチェーン技術を活用したサービスに関する国内外動向調査報告書
http://www.meti.go.jp/press/2016/04/20160428003/20160428003-2.pdf

ビットコインを中心としてブロックチェーン技術が今後社会にどう生かせそうかについて、社外の有識者も交えて議論の上、経産省がNRIと取りまとめた資料です。2年前の資料ではあるものの、作成(参加)者の信頼度、項目立てのわかりやすさ、用語の定義の正確さ、事例紹介の豊富さ、引用文献の丁寧な明示、そして無料でどなたでも入手できる点などを総合的に勘案すると、基本書として手元に置いて紐解く文献としてはこれがベストなのではないかと思います。

たとえば、ブロックチェーンを説明するページはこんな感じ。

コンピュータ用語に普段触れていない方は「PoW」「ハッシュ値」「ノード」といった用語が並んで面食らうことと思います。こうした用語と略語についても、定義を一覧で確認できるようになっています。

図表がやや少なめなのは否めないものの、スマートコントラクトを理解するための最初の文献としては、十分なものと言えるでしょう。

次回以降は、他の文献もご紹介しながら、実際にブロックチェーンやスマートコントラクトを動かすコードも触ってみたいと思います。

(橋詰)