口約束と契約書のスキマを埋める新しい契約締結プラットフォーム「2sign」


久々にリーガルテックの話題を一つ。音声で質問に答えていくだけで契約を作成し、音声でサインする、スマホ時代の新しい契約プラットフォーム「2sign」をチェックしてみます。

アプリからの質問に音声で答えて契約を証拠化

その発想は、非常にシンプルです。

アプリからの質問に音声で回答していくダイアログ形式の画面
アプリからの質問に音声で回答していくダイアログ形式の画面
  • Who is the seller?
  • Who is the buyer?
  • What is the date this agreement is being on?
  • What is being bought or sold? Please list everything.
  • What is the amount being paid by the buyer?

リース、売買、約束手形、サービスの4つの中から契約類型を選択すると、契約類型に沿った上記のような質問がアプリから次々と繰り出されます。

これに沿って、各契約当事者が自分のスマートフォンのマイクに音声を吹き込んでいくと、その音声をファイルとして記録するとともに、確認・署名用にテキストにも書き起こされるというのが基本的な仕組みです。

あくまで「口約束以上、契約書未満」に割り切った作り

売主・買主がそれぞれ音声で吹き込んだ契約条件に食い違いが生じた場合、どう処理されるのでしょうか?

この点2signは、そのまま両者の回答を並列で並べてしまう、という解決策を取っています。たとえば、以下の画面では、

食い違いを含む両者の回答をそのまま並列で表示する2signの画面
食い違いを含む両者の回答をそのまま並列で表示する2signの画面
  • 買主:「Lightly used なロールスロイスを1,000ドルで買う」という認識
  • 売主:「Lightly used だが good condition な1992年製ロールスロイスを1,000カナダドルで売る」という認識

このケースでは、買主よりも売主が慎重に・より厳密に条件を吹き込んでおり、その両者の認識の相違がそのまま文字にも書き起こされています(黄色字部分)。一般的な契約法上の解釈では、このままサインをすると、最後に(後に)条件を吹き込んだ売主の認識で条件を合意したということになりそうです。

また、詳細な条件についてまで口頭で回答しながら合意するのはさすがに煩雑すぎるということで、契約書の後半に記載される準拠法条項などの一般条項については最小限にとどめられ、2sign社が契約類型ごとに用意しているひな形に従うことが強制されます。

あくまで「口約束以上契約書未満」に割り切った作り、と言えそうです。

オーディオ署名+サイン+写真付き証明書で契約の真正性を担保

契約の再発明という視点から、ぜひ参考にしたいなと思った点が、 合意したことの証跡の残し方についてです。

2signのボイス署名+サイン+写真付き証明書入力欄
2signのボイス署名+サイン+写真付き証明書入力欄

文書の真正は「サイン(署名)」で担保するものという常識を拡張し、スマートフォンというデバイスの特性を生かして、音声・サイン・写真付き証明書の3つによって契約の真正性を担保しようというアイデア。

確かに、紙の契約書ではサインや印鑑に公的な証明書(サイン証明・印鑑証明)をつけることぐらいしかできませんし、電子署名技術で用いられる電子証明書ほど厳重な発行手続きを必要とするものでもなく、それでいてこちらの方がなりすましの防止という意味で賢い方法かもしれません。

タイムリーなことに、決勝ラウンドが明日4月21日に開催される“Global Legal Hackason 2018”で、この2signが14組のファイナリストの1社として出場しています。イマドキのスマートコントラクトサービスやGDPR対策ソリューションなどが競合にひしめくなか、どのようなプレゼンテーションを見せるのか、非常に楽しみです。

(橋詰)

契約のデジタル化に関するお役立ち資料はこちら

こちらも合わせて読む

電子契約の国内標準
クラウドサイン

日本の法律に特化した弁護士監修の電子契約サービスです。
さまざまな外部サービスと連携でき、取引先も使いやすく、多くの企業や自治体に活用されています。