法律書籍検索閲覧サービス「Legal Library」が専門知識の共有のあり方を変える

多くの新しいリーガルテックが登場した2018年の暮れに、出版業界の今後にも大きな影響を与えそうな新サービス登場の一報が入りました。

その新しいサービスについて、本日、日経XTrendが詳しく報じています。

法律専門書の「ひな型」などをすぐ利用できるサービスが実験開始

利用者がWebブラウザー上で「株式譲渡契約」や「不動産譲渡契約」といったキーワードを入力すると、出版社の協力を得てデータベース上に蓄積された多くの法律専門書のうち、当該キーワードについて解説した書籍の表紙画像が複数、表示される。利用者が読みたいと思った書籍の表紙画像をクリックすると、キーワードについて解説しているその書籍の該当ページが表示されるという仕組みだ。
今回のサービスの最大の特徴は、書籍の中に示された「契約書のひな型」をクリックすると、文書作成ソフト(マイクロソフト「Word」を想定)が立ち上がり、契約書のひな型を編集可能な状態で表示することだ。利用者は、○○で表記された名前や日付の箇所を実際に記入すれば、すぐに契約書として使える。

このサービスの運営者となる株式会社Legal Technologyは、2018年12月19日に設立されたばかりのスタートアップですが、代表取締役CEO 二木康晴氏は、株式会社経営競争基盤に所属されていた弁護士でいらっしゃいます。

同氏の著書として、そのコンサルティング経験と弁護士としての専門性をかけあわせた良書『いちばんやさしい人工知能ビジネスの教本』があります。こちらは先日の「X−Tech法務ブックガイド」でもご紹介したところでした。

法律業界のSPEEDA・Bloomberg・メドレーを目指す

テクノロジーと法律に精通する専門家が、リーガルテック市場の中から狙いをすまして立ち上げる最初のビジネスが、一見地味にも見える「法律書籍検索閲覧サービス」だというのは、少し意外に思われるかもしれません。

この点、二木CEO自身はFacebookの公開投稿で、このようにコメントをされています。

例えば、コンサルは「SPEEDA」、金融は「Bloomberg」、医療は「メドレー」等のようなオンライン上の効率的なリサーチツールがあります。
では、法律はどうか、というと、いまだに紙の法律書籍によるリサーチが中心です。
もし法律書籍が本文の内容も含めて電子化されて、オンライン上から自由に検索し、中身まで閲覧できるようになれば、リーガルリサーチのあり方そのものを変えるのではないかと考えています。

私自身、多くの書籍を自炊しOCR(文字認識)にかけ、クラウドにアップロードして利用している者の一人です。これを実現するために相当のコストも労力もかけています。

しかし、そうやって一度電子化さえしてしまえば、書籍の中に閉じ込められていた有益な専門知識がデータになり、

こうした恩恵に預かることができます。しかも、最近のクラウドサービスの進化のおかげで、アップロードしたすべての書籍の本文をキーワードで瞬時に串刺し検索できるようにもなってきたのは、感動すら覚えているところです。

クラウドサービス上でのキーワード串刺し書籍検索(Legal Technology社のサービス画面ではありません)

そうした恩恵を実感しているだけに、「法律書籍の電子化がリーガルリサーチのあり方そのものを変える」というコメントに、大きくうなずけます。

有斐閣の参画で専門書出版業界に雪崩は起きるか

そうはいっても、サービスで利用できる専門書自体が信頼のおける書籍でなければ、なんの意味もありません。ところが、あの有斐閣がその書籍を同サービスのコンテンツとして提供すると聞くと、きっと驚かれる法律専門家は多いのではないでしょうか。

こうしたチャレンジングなWebサービスと新興企業がタッグを組み、業界大手にチャレンジするというのは、よくある展開です。しかし、140年を超える歴史を持ち法律出版業界の中でも大手である有斐閣が一番乗りで本サービスに参加するというのは、まったく予想だにしない展開でした。Legal Libraryとしても、有斐閣の厳しい編集を通った専門書、つまり信用に値する優良な専門知識に自由にアクセスできるサービスというブランディングが、自然とできるわけです。

本サービス開始は2019年夏ごろを目処としているとのこと。同社の参加を受け、他の出版社が堰を切ったようにこのサービスになだれこんだ場合、その影響は法律出版業界だけにとどまらず、日本のあらゆる専門書と専門知識のWebコンテンツ化が一気に進む大きな一歩ともなりそうです。

(橋詰)