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【2027年4月施行】「不公正な取引方法」に関する改正ポイントは?物流特殊指定・優越ガイドライン・支払告示の変更点を弁護士が解説

2027年4月1日より、独占禁止法上の不公正な取引方法に関するルールが改正されます。今回の改正点は「物流特殊指定」「優越ガイドライン」「支払告示」の3点です。

特に今回の改正によって新設される支払告示は、製造委託等について給付受領日等から60日を超える代金の支払遅延を原則禁止するもので、幅広い事業者に関係する規制です。新たな規制の内容を正しく理解し、独占禁止法の遵守に努めましょう。

本記事では、2027年4月から施行される「不公正な取引方法」に関する改正につき、物流特殊指定・優越ガイドライン・支払告示の変更点を弁護士が解説します。

【2027年4月施行】独占禁止法上の「不公正な取引方法」に関する改正

公正取引委員会は2026年6月17日、独占禁止法によって禁止されている「不公正な取引方法」につき、各種の改正を公表しました。

「不公正な取引方法」とは、事業者間の自由な競争を阻害したり、競争の基盤を侵害したりする行為です。独占禁止法では不公正な取引方法を具体的に列挙したうえで、それらを禁止しています(独占禁止法2条9項、19条)。

不公正な取引方法の中には、公正取引委員会によって指定されているものが含まれています。公正取引委員会による指定のうち、すべての業種に適用されるものは「一般指定」、特定の事業分野における特定の取引方法についてのみ適用されるものは「特殊指定」と呼ばれています。

また公正取引委員会は、法律上列挙されている不公正な取引方法の一部について、各種のガイドラインを公表しています。

今回の改正は、公正取引委員会の特殊指定およびガイドラインに関するものです。

改正の目的・施行日

今回の改正の目的は、サプライチェーン全体における取引の適正化を図ることです。具体的には、契約外の業務を無償で行わせるような問題のある商慣習の是正、対価の適切な支払いの確保、適切な価格転嫁などを促す改正が盛り込まれています。

各改正はいずれも2027年4月1日から施行されます。

改正内容の全体像

今回の改正は、次の3つの内容から成り立っています。

①物流特殊指定の改正
②優越ガイドラインの改正
③支払告示の新設

次の項目から、各改正点の概要を解説します。

【改正点①】物流特殊指定の改正

1つ目は物流特殊指定の改正です。物流に関する不適切な商慣習の是正などを目的として、次に挙げる変更が行われます。

(a)適用範囲の見直し
(b)特定荷主による不公正な取引方法の追加・見直し
(c)特定着荷主に対する規制の新設

参考:(令和9年4月1日施行)特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合等の特定の不公正な取引方法(平成十六年三月八日公正取引委員会告示第一号)|公正取引委員会

物流特殊指定とは

「物流特殊指定※」とは、特定荷主が物流事業者に対して継続的に物品の運送または保管を委託する場合に、不公正な取引方法に当たる特定荷主の行為を指定した公正取引委員会の告示です。
※正式名称:特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合等の特定の不公正な取引方法

継続的な物品の運送・保管に関する取引において、荷主が物流事業者よりも取引上優越する一定の関係のある場合、荷主は「特定荷主」、物流事業者は「特定物流事業者」として取り扱われます。

特定荷主は、物流特殊指定に定められた不公正な取引方法を行ってはなりません。一例として、代金の支払遅延、不当な代金の減額や著しく低い代金額の設定などが不公正な取引方法として挙げられています。

適用範囲の見直し

今回の改正により、物流特殊指定の適用範囲が拡大されました。

まず、従来は対象外とされていた「役務提供委託」が新たに適用対象に追加されました。

役務提供委託とは、事業者が業として行う役務の提供の全部または一部を、他の事業者に対して再委託する取引です。ただし、建設業者が請け負う建設工事の再委託は除外されます。

また、従来の物流特殊指定では資本金等の額および取引上の地位を基準に適用の有無を判定していたところ、今回の改正によって従業員数による基準が追加されました。

その結果、次の3つのいずれかを満たす荷主・物流事業者間の取引については、物流特殊指定が適用されるようになります。

①資本金等の額 資本金の額または出資の総額が、次のいずれかに該当する
(a)荷主が3億円超、かつ物流事業者が3億円以下
(b)荷主が1000万円超3億円以下、かつ物流事業者が1000万円以下
(c)荷主が1000万円超、かつ物流事業者が個人
②従業員数 常時使用する従業員の数が、荷主が300人超、かつ物流事業者が300人以下
③取引上の地位 荷主が物流事業者に対し、取引上優越した地位にある
(物流事業者が荷主に対し、取引上の地位が劣っている)
※取引依存度、荷主の市場における地位、取引先変更の可能性等を総合的に考慮する

特定荷主による不公正な取引方法の追加・見直し

今回の改正により、特定荷主が特定物流事業者に対して運送代金を支払う際に、手形を交付することは一律不公正な取引方法に当たるとされました。

また手形のほか、支払期日までに代金相当額の金銭と引き換えることが困難である支払方法を用いることも、不公正な取引方法に当たるとされました。

さらに、特定物流事業者から運送代金の額に関する協議を求められたにもかかわらず、特定荷主が協議自体を拒否し、または必要な説明や情報提供をせず一方的に代金額を決定することにより、特定物流事業者の利益を不当に害する行為も不公正な取引方法に指定されました。

特定着荷主に対する規制の新設

物流事業者AがXのところからYのところへ荷物を運送する場合、Xは「発荷主」、Yは「着荷主」に当たります。

従来の物流特殊指定の対象は、発荷主と物流事業者の間の取引に限られていました。

しかし、着荷主が荷物の受け渡しなどに関して物流事業者に負担をかけ、その費用を発荷主へ不当に転嫁するケースなどが見られることを踏まえ、今回の改正によって一定の要件を満たす着荷主(=特定着荷主)に対する規制が新設されました。

特定着荷主に当たるのは、発荷主に対して取引上優越する立場にある着荷主です。優越関係の有無は、前述の資本金等の額・従業員数・取引上の地位の3基準を、発荷主・着荷主に読み替えて判定します。

特定着荷主による次の行為は、不公正な取引方法に当たるものとされました。

(a)次のいずれかの行為により、発荷主の利益を不当に害すること
・自己のために、契約に基づく物品の運送以外の経済上の利益の提供をさせる(発荷主が運送事業者に当該提供をさせる場合に限る)
(例)契約外の荷下ろし、商品の検品や仕分けなどをさせ、その費用を発荷主に負担させる・運送の内容を変更し、または運送のやり直しをさせる(発荷主が運送事業者に当該変更、やり直しをさせる場合に限る)
(例)長時間の待機、再配達などをさせ、その費用を発荷主に負担させる(b)自己の違反行為に関する公正取引委員会への通報等を理由に、発荷主に対して取引の量を減じ、取引を停止し、その他不利益な取扱いをする

【改正点②】優越ガイドラインの改正

2つ目は優越ガイドラインの改正です。物流取引における適切な価格転嫁を促すため、十分な協議を行うことなく一方的に対価を決定することが不公正な取引方法の想定例として明記されました。

参考:優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方 新旧対照表|公正取引委員会
参考:優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方|公正取引委員会

優越ガイドラインとは

「優越ガイドライン※」とは、独占禁止法によって禁止されている「優越的地位の濫用」に関する公正取引委員会のガイドラインです。
※正式名称:優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方

優越的地位の濫用とは、自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすることをいいます(独占禁止法2条9項5号)。

(a)継続して取引する相手方(新たに継続して取引しようとする相手方を含む)に対して、その取引に係るもの以外の商品または役務を購入させる
(b)継続して取引する相手方(新たに継続して取引しようとする相手方を含む)に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させる
(c)取引に係る商品の受領を拒む(受領拒否)
(d)取引に係る商品を受領した後、その商品を相手方に引き取らせる(返品)
(e)取引の対価の支払を遅らせる(支払遅延)
(f)取引の対価の額を減じる(減額)
(g)上記のほか、相手方に不利益となるように取引の条件を設定もしくは変更し、または取引を実施する

優越ガイドラインでは、上記の優越的地位の濫用に当たる行為につき、その要件の解釈や違反行為の想定例などが示されています。

優越的地位の濫用に当たる想定例の追加

今回の改正では、優越的地位の濫用に当たる行為の想定例として、次の事項などが追加されました。

(a)受領拒否
・天災や道路事情等、納入業者に責任のない事情により納期や検査基準を満たすことができない場合に、賞味期限には十分な余裕があるにもかかわらず、一定の商慣行のみを理由として、一方的に商品の受領を拒否すること。
・合意した発注ロットを守らず納品管理を困難にさせておきながら、一定の商慣行を理由として、一方的に商品の受領を拒否すること。(b)取引の対価の一方的決定
・補給品の発注数量減少により製造コストが上昇しているにもかかわらず、単価引上げの協議を拒否または無視し、従前の単価を一方的に据え置くこと。
・ 取引の減少や打切りを示唆して、不当に低い(または高い)価格を要請し、協議せず一方的に価格を決めること。
・コスト上昇を示す資料に基づく単価引上げの協議に応じず、理由や根拠資料を示さずに従前の単価を一方的に据え置くこと。
・短納期発注によって生産コストが大幅に増加したにもかかわらず、通常の納期で発注した場合と同じ単価を一方的に定めること。

サプライチェーン全体において受注者側が弱い立場に置かれがちであることを踏まえ、スムーズな納入や適切な価格転嫁を促すことを目的とした改正といえます。

【改正点③】支払告示の新設

3つ目は支払告示の新設です。サプライチェーン全体において適切に対価の支払期日が定められるように、給付受領日等から60日を超える代金の支払遅延が原則として禁止されました。

参考:製造委託等に係る代金の支払に関する特定の不公正な取引方法(令和八年六月十八日公正取引委員会告示第三号)|公正取引委員会
参考:「製造委託等に係る代金の支払に関する特定の不公正な取引方法」の運用基準|公正取引委員会

支払告示とは

「支払告示※」とは、受託事業者の取引上の地位が委託事業者に対して劣る製造委託等につき、代金の支払遅延を不公正な取引方法として指定した公正取引委員会の告示です。今回の改正により新設され、2027年4月1日からの施行が予定されています。
※正式名称:製造委託等に係る代金の支払に関する特定の不公正な取引方法

「製造委託等」とは、取適法2条6項で定義されている「製造委託」「修理委託」「情報成果物作成委託」「役務提供委託」「特定運送委託」を指します。

製造委託等のうち、資本金等の額または従業員数について一定の基準を満たすものについては、60日以内の代金の支払いを義務付けるルールがすでに適用されています。

今回の支払告示の新設は、取適法が適用されないものの、受託事業者の取引上の地位が委託事業者に対して劣る製造委託等について、代金の支払遅延を原則として禁止するものです。

なお、取引上の地位の優劣の有無は、次の事情を総合的に考慮して判断されます。

・受託事業者の委託事業者に対する取引依存度
・委託事業者の市場における地位
・受託事業者にとっての取引先変更の可能性
・その他、委託事業者と取引することの必要性を示す具体的事実

給付受領日等から60日を超える代金の支払遅延を原則禁止

支払告示では、委託事業者が受託事業者から給付を受領した日、または役務の提供を受けた日から起算して60日以内に代金を支払わない場合は、原則として不公正な取引方法に当たると定めています。

ただし例外的に、代金を60日以内に支払わないことについて正当な理由がある場合は、この限りではありません。

不公正な取引方法に当たる支払遅延の具体例

たとえば支払告示が適用される取引につき、委託事業者が受託事業者から9月30日に成果物の納入を受けたとします。

この場合、納入日から起算して60日目の11月28日までに代金を支払う必要があります。11月28日を経過しても代金を支払っていない場合は、正当な理由がない限り不公正な取引方法に該当します。

代金の支払いは、現金またはこれに準ずる支払手段(電子記録債権、ファクタリングなど)によって行う必要があります。給付受領日等から60日以内の割引が困難である手形などによる支払いは認められない点に注意してください。

支払遅延が許容される「正当な理由」とは

支払告示では、正当な理由があれば給付受領日等から60日以内に代金を支払わなくても不公正な取引方法に該当しないとされています。

正当な理由がある場合としては、たとえば次のようなケースが挙げられます。

(a)受託事業者の責めに帰すべき理由がある場合
(例)給付の内容が契約と異なっていた場合(b)受託事業者との合意により支払条件を定め、その条件に従って代金を支払う場合(取引上の合理的な理由に基づき支払条件を定める場合に限る)
(例)十分な協議を経て、受託事業者が納得したうえで、60日を超える支払期日を契約上明記していた場合

(c)あらかじめ受託事業者の同意を得て、かつ、代金の支払の遅延によって受託事業者に通常生ずべき損失を委託事業者が負担する場合(例)受託事業者が納得したうえで同意し、60日経過後に遅延損害金を付して代金を支払った場合

支払告示にどう備えるか|電子契約による実務対応

ここまで見てきたとおり、支払告示は「給付を受領した日から60日」という明確な期限を課すものであり、正当な理由がない限り猶予はありません。では、この60日という期限を確実に守るために、実務上どのような対応が有効でしょうか。ここでは、契約プロセスのデジタル化、特に電子契約サービスの活用という選択肢について解説します。

「60日」のタイムラグを電子契約で圧縮する

紙の契約書の場合、契約書の作成から郵送、相手方の押印、返送までの一連のやり取りだけで、1〜2週間、場合によってはそれ以上の時間がかかります。この「紙の往復」で失われた時間は、そのまま支払期限までの猶予を圧迫し、意図せず60日を超過してしまうリスクを高めます。

電子契約であれば、契約の作成から合意までを数分〜数時間で完結できます。契約にかかる時間を極限まで縮めることで、納品・検収から支払処理までの間に十分な余裕を確保しやすくなります。

口頭発注をなくし、契約プロセスを正常化する

支払遅延が発生する原因の一つに、「契約書の作成が間に合わないため、とりあえず口頭で発注し、後から書面を整える」という現場慣行があります。これは支払告示のもとでも問題視されうるポイントです。

電子契約を導入して契約手続きのハードルを下げれば、「正式な契約を締結してから発注する」という本来あるべきプロセスを現場が守りやすくなります。結果として、意図しない法令違反を未然に防ぐことにつながります。

公正取引委員会の調査に備えた「証跡」を残せる

支払遅延の疑いで公正取引委員会の調査が入った場合、企業側は合意日・納品日・支払日を正確に証明する必要があります。紙の契約書やメール・口頭でのやり取りだけでは、合意の正確な日時やバックデート(日付の遡り合意)の有無を客観的に示すことが困難です。

電子契約であれば、誰がいつ合意したかが記録として残るため、調査対応時の証跡として活用できます。

こうした観点から、支払告示への対応は単なる業務効率化の範囲にとどまらず、取引適正化ルールに対応する体制づくりの一手段として、電子契約の導入を検討する価値があるといえるでしょう。

「不公正な取引方法」の改正に関するよくある質問

Q1. 物流特殊指定の改正によって、荷主にはどのような対応が求められますか?

物流特殊指定が適用される運送取引については、手形の交付や支払期日までに換金することが困難な方法によって運送代金を支払うことが禁止されます。これらの支払方法を用いている場合は、現金払いなどに変更してください。

また、物流事業者から運送代金の額に関する協議を求められたら、誠実に応じなければなりません。

Q2. 相手方に価格交渉を求められた場合、応じなければ優越的地位の濫用に当たりますか?

自社が相手方に対して取引上優越した地位にある場合は、価格交渉に応じないと優越的地位の濫用に当たる可能性が高いです。

相手方の要求を全面的に受け入れるべきとは限りませんが、少なくとも協議(交渉)には応じ、要求を拒否する場合はその理由を説明するなど誠実な対応に努めてください。

Q3. 支払サイトが60日を超える取引は、すべて独占禁止法違反に当たりますか?

支払サイトが60日を超えることが不公正な取引方法に当たるのは、支払告示が適用される取引、すなわち受託事業者の取引上の地位が委託事業者に対して劣る製造委託等に限られます。

支払告示が適用される取引についても、十分な協議を経て受託事業者が納得し、契約上明確に合意したなどの正当な理由があれば、支払サイトが60日を超える取引も許容されます。

ただし、長すぎる支払サイトを設定すると独占禁止法違反のリスクが高まるので、基本的には60日以内の支払サイトを設定することが望ましいでしょう。

まとめ

独占禁止法上の不公正な取引方法に関する今回の改正は、物流特殊指定・優越ガイドライン・支払告示の3つにわたって行われました。いずれも多くの事業者に影響が生じ得る改正なので、自社の取引が適正に行われているかどうかを再点検しましょう。

特に支払告示の新設に関しては、電子契約を活用することにより、支払遅延等のリスクを抑えられる可能性があります。未導入の企業は、電子契約の導入を積極的にご検討ください。

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この記事を書いたライター

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阿部 由羅

弁護士

ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。

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