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契約実務

【無料ひな形付き】物流委託契約とは?主な記載事項や注意点を弁護士が解説

物流に関する業務(荷物の運送・納入など)を受委託する際には「物流委託契約」を締結します。委託契約書において委託業務の内容や事故発生時の処理などを明確化して、トラブルの発生や深刻化を防ぎましょう。

本記事では物流委託契約について、主な記載事項や注意点を弁護士が解説します。

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物流委託契約(3PL契約)とは

物流委託契約とは、荷主が物流事業者に対して物流業務を委託し、物流事業者がこれを受託する契約です。「3PL(Third Party Logistics)契約」とも呼ばれています。

物流事業者は単なる荷物の運送だけにとどまらず、検品や在庫管理、配送業者の手配などを一体的に担います。大規模な物流センターを運営している物流事業者に対し、ECサイト上で販売した自社商品の物流を継続的に委託する場合などに、物流委託契約が活用されます。

運送委託契約との違い

物流委託契約では、物流業務全体を物流事業者に対して委託します。物流業務には荷物の運送も含まれますが、それだけでなく、検品や在庫管理、配送業者の手配などが幅広く含まれるのが大きな特徴です。

これに対して「運送委託契約」は、荷物の運送業務のみを対象としているケースが多いです。両者を比較すると、物流委託契約の方が委託業務の範囲が広い傾向にあります。

ただし「運送委託契約」という名称でも、実際には検品や在庫管理、配送業者の手配なども委託業務に含まれているケースがあります。このような場合には、物流委託契約と運送委託契約の違いは相対的なものとなります。

【例文あり】物流委託契約の主な記載事項

物流委託契約には、主に次の事項を定めます。

①委託業務の範囲・運営方法
②秘密保持
③事故発生時の措置等
④損害賠償
⑤損害保険
⑥料金
⑦再委託
⑧その他

各事項について、例文を示しながら解説します。

委託業務の範囲・運営方法

(例)
第1条 (委託業務)

  1. 甲は、乙に対し、甲の商品(以下「本商品」という。)に係る次の物流業務(以下「本業務」という。)を委託し、乙はこれを受託する。
    ① 入荷受付及び検品の業務
    ② 保管及び在庫管理の業務
    ③ ピッキング、梱包及び出荷の業務
    ④ 配送業者の手配及び配送業者に対する引渡しの業務
    ⑤ 返品の受領、検品及び再入庫処理の業務
    ⑥ 前各号の業務に付随又は関連する業務
  2. 乙は、甲乙間で別途合意する場所(以下「物流センター」という。)において本業務を実施するものとする。
  3. 甲は乙に対し、物流センターに入荷する本商品につき、次に掲げる事項を示した書面又は電磁的方法による納品書(以下「納品書」という。)を、事前に又は入荷と同時に交付するものとする。乙は、物流センターに入荷された本商品について、納品書と照合の上、数量及び外観の検品を行うものとする。乙は、数量不足、破損その他異常を発見したときは、速やかに甲へ通知してその指示に従うものとする。
    ① 種類、数量その他の内容
    ② 危険物その他の取扱いに注意を要する物が含まれているときは、その旨及び必要な注意の内容
    ③ その他の必要な事項
  4. 乙は、前項に基づく検品が完了した本商品を、その特性に応じて適切な保管場所に配置し、システムを用いて在庫管理を行うものとする。乙は、本商品の入出庫情報を随時更新し、甲の求めがあったときは直ちに在庫状況を報告しなければならない。
  5. 甲は乙に対し、物流センターに在庫している本商品につき、次に掲げる事項を示した書面又は電磁的方法による出荷指示書(以下「出荷指示書」という。)を交付して、出荷を指示することができる。乙は出荷指示書に基づき、本商品のピッキング及び梱包を行ったうえで、出荷できる状態に整えなければならない。
    ① 本商品を納入すべき場所
    ② 本商品の納入を完了すべき日時(期限)
    ③ その他の必要な事項
  6. 乙は、前項に基づき出荷を指示された本商品につき、当該本商品の性質、配送先、配送期限、運賃その他の条件を総合的に考慮し、合理的な裁量に基づいて配送業者を選定するものとする。ただし、甲が配送業者を指定したときは、当該指定に従うものとする。乙は、当該本商品を配送業者に引き渡し、配送状況を管理するものとする。
  7. 乙は、返品された本商品を物流センターにおいて受領したときは、当該返品の理由、当該本商品の状態その他の事情を確認したうえで、甲乙間の合意により別途定める基準に従い、次の各号に従って処理するものとする。
    ① 再販売が可能であるときは、前四項に準じて処理する。ただし、検品については、甲が別途定める品質基準に従う。
    ② 修理又は再加工が必要であるときは、甲が指定する修理業者又は再加工業者へ引き渡す。
    ③ 破損、汚損その他の理由により再販売が不可能であるときは、甲に対して報告したうえで、その指示に従って返送、廃棄その他の処理を行う。
  8. 本業務の内容の変更は、甲乙間の合意によってのみ行うことができる。当該変更の手続きについては、前二項を準用する。
  9. 乙は、自ら及び本業務に対して適用のある国内外法令を遵守し、善良なる管理者の注意をもって本業務を遂行しなければならない。
  10. 甲は、乙に対し、本業務の遂行状況に係る報告を随時求めることができる。乙は甲の求めに応じて、本業務の遂行状況を速やかに報告しなければならない。

物流委託契約における委託業務の内容や運営方法は、オーダーメイド性が高いものです。当事者間でよく話し合い、委託業務の内容や運営方法を具体的に、かつ明確に定める必要があります。

上記の条文例では、第1項で委託業務の内容を箇条書きで示した後、第2項以降で各業務の運営方法を順次示しています。物流委託契約本体とは別に、別紙や覚書を作成することも考えられます。

なお、上記の条文例で納品書や出荷指示書を電磁的方法でも交付できることとしているように、物流業務にかかわる書類は電子化が進んでいます。契約書本体や別紙・覚書を電子契約で取り交わせば、これらの業務書類とあわせて、契約の締結から日々の運用までをオンライン上で一貫して管理しやすくなります。

秘密保持

(例)
第2条 (秘密保持)

  1. 1. 甲及び乙は、本契約に関して相手方から受領した情報(秘密である旨が明示されているか否かを問わず、書面、データ、口頭等の伝達方法の如何を問わない。以下「秘密情報」という。)を、正当な理由なく第三者に対して開示又は漏えいしてはならない。ただし、次に掲げる情報は秘密情報に当たらないものとする。
    ① 相手方から受領した時点で既に保有していたもの
    ② 相手方から受領した時点で既に公知であったもの
    ③ 相手方から受領した後、自らの責によらずに公知となったもの
    ④ 第三者から秘密保持義務を負わずに適法に取得したもの
    ⑤ 秘密情報に依拠することなく独自に開発したもの
  2. 前項の規定にかかわらず、甲及び乙は、次の各号のいずれかに該当するときは、必要最小限の範囲内に限り、秘密情報を開示することができるものとする。
    ① 法令等の定めに基づき、又は監督官庁、裁判所その他の公的機関から開示要請を受けた場合に、その要請に従って開示するとき。
    ② 本契約の目的のために必要な範囲内で、弁護士、公認会計士、税理士、その他法律上秘密保持義務を負う専門家に対して開示するとき。
    ③ 本契約で定める秘密保持義務と同等の義務を負うことを条件に、自らの役員若しくは従業員、又は再委託先(第10条第1項で定義する。)の役員若しくは従業員に対して開示するとき。

物流委託契約の当事者間では、商品等に関する営業秘密のやり取りが継続的になされるため、守秘義務を明確化しておくことが重要です。相手方に無断での開示・漏えいを禁止することや、秘密情報から除外される情報について定めておきましょう。

事故発生時の措置等

(例)
第3条 (事故発生時の措置等)

  1. 乙は、本業務の遂行に当たり、何らかの事故又は支障(本商品の毀損、汚損及び紛失、並びに運送の遅延及び不履行を含むが、これらに限らない。以下「事故等」という。)が生じたときは、直ちに甲に報告してその指示に従わなければならない。
  2. 乙は、前項の報告を行った後、甲から適時に指示を受けなかったときは、自らの合理的な裁量により、事故等による影響を最小限に抑えるための措置を講じなければならない。

商品の毀損・汚損・紛失などの事故が発生した場合の処理について定めます。

物流事業者が荷主に報告して指示を受けることが基本となりますが、連絡がとれない場合もあり得るため、その場合の処理方法も定めておきましょう。

損害賠償

(例)
第4条 (損害賠償)

  1. 甲及び乙は、自らが本契約に違反したことにより、相手方に損害が生じた場合には、相当因果関係の範囲内で当該損害を賠償する責任を負う。
  2. 前項にかかわらず、乙の責めに帰すべき事由による事故等によって本商品を毀損、汚損又は紛失したことにより、乙が甲に対して負担すべき損害賠償責任の上限額は、次のうちいずれか高い金額とする。
    ① 当該事故等に係る本商品の価額の110%相当額
    ② 当該事故等に係る本商品の価額に10万円を加算した額
  3. 天災地変その他甲乙いずれの責めにも帰すことができない事由により事故等が発生したときは、甲及び乙はいずれも、当該事故等によって相手方に生じた損害を賠償する責任を負わない。

契約違反によって生じた損害の賠償責任について定めます。

物流委託契約では、主に物流事業者の責に帰すべき事由により、商品が毀損・汚損・紛失するケースが想定されます。物流事業者としては、自社の責任が過大にならないように、1事故あたりの賠償金額の限度を明記することが望ましいです(上記2項)。

また、自社に責任によらない事故等については、損害賠償責任を負わない旨も明記しましょう(上記3項)。

損害保険

(例)
第5条 (損害保険)

  1. 乙は、本業務を遂行するに当たり、事故等による損害を十分に補填し得る内容の保険を付保しなければならない。当該保険の付保に要する費用は、乙の負担とする。
  2. 乙は、前項に基づき保険を付保したときは、甲に対し、速やかに当該保険に係る保険証券の写しを交付しなければならない。
  3. 乙は、第1項に基づき付保した保険を変更又は解約するときは、当該変更または解約をする日の10日前(以下「報告期限」という。)までに、甲に対してその旨を報告しなければならない。ただし、報告期限までに甲に対する報告ができないやむを得ない事情があるときは、報告期限の経過後に報告すれば足りる。
  4. 甲は、乙から前項に基づく報告を受けたときは、当該保険の変更又は解約がなされる前に限り、乙に対して異議を述べることができる。当該異議が合理的なものであるときは、乙は当該保険を変更又は解約してはならない。

商品の毀損・汚損・紛失などが生じた場合の損害賠償責任をカバーするため、保険への加入義務について定めます。誰が付保するのか、付保証明の提示、変更・解約時の報告などを明記しましょう。

料金

(例)
第6条 (料金)

  1. 本業務に係る料金(以下「本料金」という。)は、次に掲げる金額の合計額とする。各金額の計算方法は、別紙「料金表」に従うものとする。
    ① 基本料金
    ② 入荷作業料
    ③ 保管料
    ④ 出荷作業料
    ⑤ 配送手配料
    ⑥ 配送料その他の実費
  2. 乙は、毎月末日までに完了した本業務に係る本料金を記載した請求書を、翌月○日(以下「請求期限」という。)までに甲に対して交付するものとする。
  3. 甲は、前項に基づき乙から受領した請求書に従い、当該請求書に係る請求期限が属する月の末日(以下「支払期限」という。)までに、乙が別途指定する口座に振り込む方法によって、乙に対して本料金を支払うものとする。なお、振込手数料は甲の負担とする。
  4. 前項にかかわらず、請求期限を徒過した後に甲が乙から請求書を受領したときは、甲は、支払いの準備をするため合理的に必要な期間に限り、支払期限に遅れても履行遅滞の責任を負わない。
  5. 本業務に要する費用(人件費、物流センターに係る賃料及び運送費を含むが、これらに限らない。)に著しい変動が生じたときは、甲乙は誠実に協議したうえで、本料金を改定することができる。

物流業務の料金は、業務の内容等に応じた区分を設けるのが一般的です。上記の条文例では、基本料金と業務内容別の加算金額を設定したうえで、金額の詳細は別紙で定めることにしています。

料金の額のほか、支払期限や支払方法、改定の方法なども定めておきましょう。

再委託

(例)
第10条 (再委託)

  1. 乙は、本業務の遂行に当たり、本業務の全部又は一部を第三者(以下「再委託先」という。)に対して再委託することができる。ただし、本契約に別段の定めがあるときは、その定めに従う。
  2. 乙は、前項に基づく再委託をするときは、再委託先に対し、本契約における乙の義務と同等の義務を課すものする。
  3. 再委託先の責めに帰すべき事由により、甲に損害が生じたときは、乙は甲に対し、当該損害を賠償しなければならない。

物流業務は、運送事業者をはじめとする協力会社への委託によって成り立つため、物流委託契約では再委託を許容するのが一般的です。上記の条文例では、原則として物流事業者の裁量によって再委託先を選定できることとしていますが(上記1項)、荷主の承諾を必要とすることも考えられます。

再委託を行う場合は、物流事業者が再委託先の行為についても責任を負う旨を明確化しましょう(上記2項・3項)。

その他

物流委託契約には上記のほか、次の事項などを定めます。

  • 有効期間
    →契約の有効期間や、契約終了後も存続する条項を定めます。自動更新制とすることも考えられます。
  • 中途解約
    →中途解約の可否や方法などを定めます。
  • 契約の解除
    →契約を解除できる場合と、解除の手続きを定めます。
  • 契約上の地位の譲渡等の禁止
    →相手方の承諾を得ることなく、契約上の地位の譲渡や担保提供をしてはならない旨を定めます。
  • 反社会的勢力の排除
    →暴力団員等に該当しない旨の表明・確約や、暴力的な要求行為をしない旨の確約などを定めます。
  • 準拠法
    →契約の解釈に用いる法を明記します。国や地域を跨いで物流を行う場合には特に重要です。
  • 合意管轄
    →契約トラブルが発生した訴訟が必要になった場合に、訴訟を提起する裁判所を指定します。

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物流委託契約を締結する際のチェックポイント

物流委託契約を締結する際には、特に次のポイントに留意してください。

①委託業務の内容・運営方法を明確化する
②3PL契約書ガイドラインを参考にする

委託業務の内容・運営方法を明確化する

物流委託契約においては、特にオーダーメイド性の高い委託業務の内容や運営方法についての定めが重要です。

物流事業者はどの範囲で物流業務を行えばいいのか、どのようなフローで業務を行うのかなどを、荷主と物流事業者の間で詳細に契約交渉を行って取り決めましょう。

3PL契約書ガイドラインを参考にする

国土交通省は「3PL契約書ガイドライン」を策定・公表しています。荷主と物流事業者の公平を確保するための考え方が数多く示されているので、物流委託契約の内容を検討する際には参考にしてください。

参考:3PL契約書ガイドライン|国土交通省

物流委託契約書に収入印紙は必要?

物流委託契約を紙で作成するときは、収入印紙を貼るべき場合が多いです。次の要件をいずれも満たす場合は、印紙税法上の第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)に当たり、原本1通当たり4000円の収入印紙を貼る必要があります。

①委託業務に運送または運送取扱い(配送業者の手配など)が含まれている
②契約期間が3か月を超えているか、または契約更新の定めがある

これに対して、物流委託契約を電子契約によって締結する場合は、収入印紙を貼る必要がありません。電子契約のファイルは、印紙税法上の課税文書に該当しないためです。

電子契約で収入印紙が不要になる理由を知りたい方は下記記事もご一読ください。

まとめ

物流委託契約は、総合的な物流業務を受委託する際に締結する契約です。物流業務の内容や運営方法はオーダーメイド性が高いため、荷主と物流事業者の間でよく話し合って詳しく決める必要があります。

こうした物流委託契約は、電子契約によって締結することもできます。継続的な取引のなかで料金改定や業務内容の変更にともなう覚書を取り交わす機会も多く、再委託先や配送業者を含めて関係する契約も増えがちですが、電子契約であれば、契約の締結や管理がオンライン上でスムーズに行えるので便利です。収入印紙を貼る必要がない点もあわせて、物流委託契約と電子契約は相性のよい組み合わせといえます。 未導入の企業は、ぜひ電子契約の導入をご検討ください。

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この記事を書いたライター

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阿部 由羅

弁護士

ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。

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