【無料ひな形付き】寄託契約書とは?主な記載事項や作成時の注意点を弁護士が解説

他人に物品を預ける場合、または他人から物品を預かる場合には「寄託契約書」を締結します。「引渡し→保管→返還」の流れを意識しつつ、寄託の条件が明確に記載されているかどうかをチェックしましょう。
本記事では寄託契約書について、主な記載事項や作成時の注意点などを弁護士が解説します。
なお、クラウドサイン公式の契約書ひな形(テンプレート)12選パックもご用意しております。Word形式なのでダウンロード後すぐにお使いいただけます。ぜひあわせてご活用ください。
無料ダウンロード
目次
無料ダウンロード


クラウドサインではこれから電子契約サービスを検討する方に向けた「クラウドサイン サービス説明資料」をご用意しました。クラウドサインの特徴や使い方を詳しく解説していますので、ダウンロードしてご活用ください。
ダウンロードする(無料)寄託契約書とは
「寄託契約」とは、当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾して受託する契約です(民法657条)。寄託物の引渡しがなくても、当事者の合意だけで成立します。他人に物品を預ける場合、または他人から物品を預かる場合に締結します。
「寄託契約書」は、寄託契約の条件を記載した文書です。「引渡し→保管→返還」の流れを意識しつつ、寄託の条件を明確に記載することが求められます。
【例文あり】寄託契約書の主な記載事項
寄託契約書には、主に次の事項などを記載します。
②寄託物の引渡し
③寄託期間
④寄託物の保管
⑤寄託料
⑥寄託物の返還
⑦その他
各事項につき、条文例を示しながら解説します。なお条文例では、甲が寄託者(=預ける側)、乙が受寄者(=預かる側)を指します。
物品の寄託
第1条 (物品の寄託)
- 甲は乙に対し、別紙(寄託物一覧)記載の物品(以下「本物品」という。)の保管を委託し、乙はこれを受託する(以下「本寄託」という。)。
- 甲及び乙は、その合意によって、本寄託に係る寄託物を追加することができる。その場合、当該寄託物について本契約の規定を適用する。
対象となる物品を指定したうえで、当事者間で寄託を行う旨を記載します(1項)。寄託物を追加する可能性がある場合は、その取扱いも明記しておきましょう(2項)。
寄託物の引渡し
第2条 (寄託物の引渡し)
甲は、本契約締結日から〇年〇月〇日までの間の甲乙間で別途合意する日において、下記場所へ本物品を持参し、その場で本物品を乙に引き渡す。
記
住所:○○
施設名:○○
寄託物の引渡しについて、年月日・場所・方法などを定めます。
上記の条文例では、引渡しの年月日を別途合意するものとしています。その場合、引渡日を別途文書によって明確化することが望ましいです。
引渡しの場所は寄託物の保管場所とするのが一般的ですが、容易に運搬できる場合は別の場所とすることも考えられます。
寄託期間
第3条 (寄託期間)
- 乙は、前条第1項に基づく引渡しを受けた時から1年間(以下「寄託期間」という。)、本物品を甲のために保管する。
- 寄託期間が満了する1か月前までに、甲又は乙のいずれかが書面により契約終了の申出を行い、かつ当該申出が相手方に到達していない限り、寄託期間はさらに1年間延長されるものとし、以降も同様とする。
- 前各項の規定にかかわらず、本契約が解除その他の事由によって終了したときは、寄託期間は終了する。
寄託の期間を定めます。上記の条文例では、寄託期間を1年間とし、かつ当事者双方から終了の申出がなければ自動更新する旨を定めています。
寄託物の保管
第4条 (寄託物の保管)
- 乙が本物品を保管する場所は、第2条第1項に定める場所(以下「保管場所」という。)とする。ただし、甲乙間で別段の合意をしたときは、その合意によって定めた場所を保管場所とする。
- 前項の規定にかかわらず、本物品の保管上やむを得ないときは、乙の裁量により、一時的に保管場所を変更することができる。この場合、乙は甲に対して直ちに通知したうえで、その後の保管場所について協議を求めなければならない。
- 乙は、本物品を自らの財産から明確に区別する方法で、かつ善良な管理者の注意をもって保管しなければならない。
- 乙は、甲の事前の承諾を得ることなく、本物品を使用、加工若しくは処分し、又は第三者をして本物品を使用、加工若しくは処分させてはならない。
- 乙は、甲から合理的に求められたときは、速やかに本物品の保管状況を確認したうえで、その概要を甲に対して報告しなければならない。
- 乙は、本物品について滅失、損傷その他の異常を発見したときは、直ちにその状況を甲に対して通知しなければならない。その際、本物品の保管方法等について甲から合理的な指示を受けたときは、当該指示に従うものとする。
- 本物品について権利を主張する第三者が乙に対して訴えを提起し、又は差押え、仮差押え若しくは仮処分をしたときは、乙は、遅滞なくその事実を甲に通知しなければならない。ただし、乙が既にこれを知っているときは、この限りでない。
- 第三者が本物品について権利を主張する場合であっても、乙は、甲の指図がない限り、甲に対し当該本物品を返還しなければならない。ただし、乙が前項の通知をした場合又は同項ただし書の規定によりその通知を要しない場合において、本物品をその第三者に引き渡すべき旨を命ずる確定判決(確定判決と同一の効力を有するものを含む。)があったときであって、その第三者に当該本物品を引き渡したときは、この限りでない。
- 乙は、前項の規定により甲に対して本物品を返還しなければならない場合には、甲に当該本物品を引き渡したことによって第三者に損害が生じたときであっても、その賠償の責任を負わない。
寄託物の保管に関する条件や、受寄者(=預かる側)が遵守すべきルールなどを定めます。
具体的には、保管場所(1項・2項)や善管注意義務(=善良な管理者として通常求められる注意を払う義務。3項)、受寄者による無断使用等の禁止(4項)、寄託者に対する報告・通知(5項・6項)、第三者が権利を主張してきた場合の対応(7項~9項。民法660条の内容を確認的に定めたもの)などを定めておきましょう。
寄託料
第5条 (寄託料)
- 本寄託に係る寄託料(以下「寄託料」という。)は、別紙(寄託物一覧)記載の金額とする。
- 甲乙の合意により、別紙(寄託物一覧)に記載されていない物品が本寄託の目的とされたときは、当該物品に係る寄託料は、甲乙間の合意によって別途定める。
- 1か月に満たない期間に係る寄託料は、1か月を30日とする日割計算によって算定する。
- 寄託料は、寄託期間について発生する。ただし、寄託期間の途中において、乙が甲に対して本物品を返還して保管を中止した期間があるときは、当該本物品の当該期間に係る寄託料は発生しないものとする。
- 前項の規定にかかわらず、次条に基づいて本物品を返還すべき場合において、寄託期間を経過しても乙が当該本物品を保管したときは、当該保管の期間に応じた寄託料が発生するものとする。
- 乙は甲に対し、毎月5日(以下「請求期限」という。)までに、前月中に発生した寄託料の請求書を交付するものとする。
- 甲は、乙から前項の請求書を受け取ったときは、当該請求書の交付に係る請求期限の属する月の末日までに、乙が別途指定する銀行口座へ振り込む方法により、乙に対して寄託料を支払わなければならない。振込手数料は甲の負担とする。
(別紙省略)
寄託料について、金額・請求方法・支払期限・支払方法などを定めます。上記の条文例では、物品ごとの寄託料を別紙にて定め、月末締め翌月末払いで寄託料を精算するものとしています。
別紙においては次のような形で、寄託物を特定するのに十分な情報を記載しましょう。
別紙(寄託物一覧)
| 番号 | 品名 | 型式・製造番号等 | 数量 | 寄託料 | その他備考 |
| 1 | |||||
| 2 | |||||
| 3 | |||||
| 4 | |||||
| 5 |
寄託物の返還
第6条 (寄託物の返還)
- 本寄託に係る本物品の返還時期は、寄託期間の満了時とする。寄託期間が経過したときは、乙は甲に対し、本物品を返還しなければならない。
- 甲は、寄託期間の途中であっても、乙に対し、書面又は電磁的方法で相当の期間を定めて通知することにより、本物品の全部又は一部の返還を請求することができる。この場合、乙は甲に対し、当該期間が経過するまでに、当該返還請求に係る本物品を返還しなければならない。
- 乙は、寄託期間の途中であっても、やむを得ない事由があるときは、甲に対し、本物品の全部又は一部を返還することができる。
- 乙は、前二項に基づき甲に対して返還した本物品につき、甲から再保管を求められたとしても、当該本物品を再保管する義務を負わない。ただし、乙が承諾して当該本物品を再保管することを妨げず、その場合は当該再保管について本契約の規定を適用する。
- 本条に基づく本物品の返還は、保管場所において行うものとする。ただし、甲乙間で別段の合意をしたときは、その合意に従う。
- 本条に基づき本物品を返還すべき場合(第3項に基づき返還することができる場合を含む。以下同じ。)には、乙は甲に対し、書面又は電磁的方法により、相当の期間を定めて当該本物品を引き取るよう催告することができる。
- 前項に基づく催告をした後、相当の期間が経過しても甲が当該催告に係る本物品を引き取らないときは、乙は、当該本物品を処分することができる。
- 本条に基づき本物品を返還すべき場合であっても、乙が甲に対して現実に当該本物品を返還するか、又は前項に基づき当該本物品を処分するまでの間、当該本物品の保管に関して第4条の規定を適用する。
寄託物の返還について、時期や方法などを定めます(1項、5項)。
寄託期間の途中で寄託物を返還する場合の取扱い(2項~4項)や、寄託者が寄託物を引き取らない場合の取扱い(6項~8項)なども明記しておきましょう。
その他
寄託契約書には上記のほか、次の事項などを定めます。
- 費用の負担
- 秘密保持
- 再委託の禁止
- 契約上の地位の譲渡等の禁止
- 損害賠償、危険負担
- 有効期間
- 契約の解除
- 反社会的勢力の排除
- 合意管轄
など
【弁護士監修】寄託契約書のひな形ダウンロード(無料)
寄託契約書のひな形は、下記のリンクからダウンロードできます。取引の内容に応じて、適宜調整したうえでご利用ください。
ひな形無料ダウンロード
寄託契約書を締結する際のチェックポイント
寄託契約書を締結する際には、特に次に挙げるポイントを踏まえつつ内容を検討してください。
②中途返還や第三者からのクレームなど、さまざまなケースを想定する
「引渡し→保管→返還」の流れを意識する
寄託契約書を締結した後、寄託物は「引渡し→保管→返還」という流れを辿ることになります。
寄託契約書においては、引渡し・保管・返還の各段階における寄託物の取扱いや、当事者(特に受寄者)がとるべき行動、相手方に対して請求できることなどを具体的に記載することが大切です。
「引渡し→保管→返還」の流れを意識して、必要な条項が定められているかどうかよく検討しましょう。
中途返還や第三者からのクレームなど、さまざまなケースを想定する
寄託契約書を締結する際は、契約期間中に生じ得るさまざまな事態を想定し、その取扱いを定めておくことが重要です。
たとえば、寄託者が契約期間の途中で寄託物の返還を求めるケースや、寄託物について第三者が権利を主張してくるケースなどが想定されます。これらの場合に、当事者がどのような行動をとるべきなのか、誰がどのような責任を負うのかなどを明記しておきましょう。
寄託契約書に収入印紙は必要?
紙で作成する寄託契約書に収入印紙の貼付を要するかどうかは、寄託物の種類によって異なります。
寄託物が金銭または有価証券である場合、紙で作成する寄託契約書は印紙税法上の「第14号文書」に当たり、原本1通当たり200円の収入印紙を貼る必要があります。
これに対し、寄託物がそれ以外の物品であるときは、寄託契約書に収入印紙を貼る必要はありません。
ただし、契約内容に寄託以外の取引が含まれている場合は、その種類に応じて収入印紙の貼付を要することがあるので注意してください。
なお、寄託契約書を電子契約によって締結する場合は、寄託物の種類や契約内容の如何を問わず、収入印紙の貼付は不要です。
寄託契約書は電子契約で締結できる?
寄託契約書は、紙ではなく電子契約で締結することもできます。
電子契約で締結しても契約は有効
契約は、当事者間における申込みと承諾の合致によって成立するところ(民法522条1項)、法令に特別の定めがある場合を除き、その方式は自由とされています(同条2項)。
寄託契約については、法律上特別の方式が定められていないため、紙の契約書を作成する方式のほか、電子契約の方式で寄託契約を締結することも可能です。
電子契約で寄託契約書を締結するメリット
- 寄託物の追加・変更を合意しやすい
寄託物を追加する場合や保管場所を変更する場合は、当事者間の合意が必要になります。電子契約なら、離れた拠点間でも速やかに合意し、その記録を残せます。 - 契約書を一元管理しやすい
寄託契約は自動更新で長く続くことが多く、終了の申出期限などを確認する場面があります。契約書を電子データで一元管理しておけば、必要なときにすぐ内容を確認できます。 - 収入印紙が不要
金銭や有価証券を預かる寄託契約書は、紙で作成すると1通200円の印紙税がかかりますが、電子契約なら不要です。
※寄託契約の内容や印紙税の取扱いは、個別の事情によって判断が異なります。具体的な対応は、弁護士などの専門家にご相談ください。
寄託契約書についてよくある質問(FAQ)
寄託物を特定するための情報は、どこまで詳しく記載すべきですか?
他の物品と区別するために必要十分な情報を記載しなければなりません。たとえば、品名や型式・製造番号等、数量などによって特定することが考えられますが、記載すべき事項は寄託物の種類等に応じて個別に検討する必要があります。
寄託物を保管する際に注意すべきポイントは?
報酬を受けて寄託物を預かる受寄者は、善管注意義務を負います。無報酬の場合は「自己の財産に対するのと同一の注意」で足ります(民法659条)が、商人が営業の範囲内で寄託を受けた場合は、無報酬でも善管注意義務を負います(商法595条)。いずれの場合も、滅失や損傷を防げる方法で寄託物を保管することが大切です。
寄託契約書において具体的な保管方法が定められている場合は、その条件に従いましょう。
まとめ
寄託契約書を締結する際には、「引渡し→保管→返還」の流れを意識しつつ、寄託の条件を明確に定めることが重要です。
寄託者(預ける側)は寄託物が適切に保管されるためのルールが明記されているか、受寄者(預かる側)は自らが過大な義務を負っていないかなどの観点から、内容を慎重にチェックしたうえで寄託契約書を締結しましょう。
寄託契約書は、電子契約によって締結することもできます。電子契約なら寄託物の追加合意や契約書の一元管理がしやすく、契約業務の効率化につながるので、未導入の企業は積極的に導入をご検討ください。
この記事を書いたライター
阿部 由羅
弁護士
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。
