請求書電子化システムの選び方とは?失敗しない比較ポイントと導入手順を解説
結論
請求書の電子化システム選びで失敗しないポイントは、
①電子帳簿保存法への対応範囲
②OCR精度と会計ソフト連携
③料金体系
の3点の見極めです。自社の請求書業務量や運用体制に合わせてタイプを選び、無料トライアルで操作感を確認したうえで段階的に導入することが、失敗を防ぎ効率化効果を最大化する近道です。
請求書の電子化を進めたいものの、「どのシステムを選べばよいかわからない」「自社に本当に必要か判断できない」と悩む企業は少なくありません。
請求書電子化システムは、業務効率化や保管コスト削減につながる一方、機能や料金、会計ソフトとの連携など比較すべきポイントが多く、選び方を誤ると「使いこなせない」「思ったほど効率化できない」といった失敗につながるケースが少なくありません。
この記事では、請求書電子化システムの種類や費用相場、失敗しない選び方についてわかりやすく解説します。
※本記事の内容は2026年7月時点の情報に基づいています。電子帳簿保存法をはじめとする関連法令は改正される場合があるため、最新の要件は国税庁の公表資料等でご確認ください。

DX推進ができている企業は何をしているのか?
無理なくはじめる“ちょうどいい” バックオフィス業務改善のコツ
ITが苦⼿な社員が多い会社が取るべきDX戦略について、とある製造業A社を例に挙げて解説します。
請求書電子化システムの導入が進んでいる理由
まずは、請求書電子化システムの導入が進んでいる理由を確認していきましょう。
電子帳簿保存法への対応が求められている
2024年1月の改正電子帳簿保存法の施行により、請求書や領収書をメールやクラウドで受け取った場合は、一定の要件を満たしたうえでのデータ保存が必須要件となりました。請求書電子化システムを活用すれば、法令要件への対応負担を軽減しつつ、適切な文書管理体制の構築がしやすくなります。
電子帳簿保存法については以下の記事でも詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
紙・PDF管理では請求書運用が煩雑になりやすい
紙やPDFで請求書を個別管理していると、「どこに保存したかわからない」「承認状況が見えない」「保管ルールが属人化する」といった問題が起こりやすくなります。
請求書電子化システムを活用することで、紙の書面もPDFの電子ファイルのいずれも保存・検索・承認をシステムで一元管理でき、管理効率の向上や属人化の防止につながります。
経理業務の効率化やテレワーク対応につながる
請求書業務は、入力・確認・承認・保管など複数の工程が発生するため、経理担当者の負担が大きくなりがちです。クラウド型サービスを活用すれば場所を問わず確認・承認ができるため、テレワークや多拠点運営との親和性も高い点が特徴です。

きちんと対応できていますか?
電子取引における電子帳簿保存法改正対応のポイント
本資料では、改めて「電子帳簿保存法」において緩和された検索要件やタイムスタンプのルールから、仮装・隠蔽に対する厳しい罰則規定まで、企業がおさえるべき重要なポイントを一覧でまとめています 。
請求書電子化システムの主なタイプ
請求書電子化システムにもさまざまなタイプがあります。それぞれの特徴を確認しておきましょう。
請求書受領に特化したシステム
請求書受領に特化したシステムは、取引先から受け取る紙やPDFの請求書を電子化し、保存・管理することに強みがあります。AI-OCRによる自動データ化や承認フロー、会計ソフト連携を備えているケースが多く、特に買掛金管理の効率化に役立ちます。請求書の受領件数が多く、経理担当者の入力負担が大きい企業に向いています。
請求書発行まで対応できるシステム
請求書の受領だけでなく、発行業務にも対応するシステムでは、見積書や請求書の作成、送付、入金管理まで一元化が可能です。郵送コストや印刷作業を削減しやすく、請求漏れや送付ミスの防止にもつながります。
また、請求状況や入金状況を可視化しやすくなるため、売掛金管理の精度向上も期待できます。請求書の発行件数が多く、請求漏れ防止、入金管理の効率化を図りたい企業に適しています。
経費精算・ワークフロー一体型
請求書管理に加え、経費精算や社内申請、承認フローまで一体化されたタイプもあります。請求書だけでなく、稟議や支払申請などの業務全体をデジタル化できるため、業務効率化の効果が大きくなりやすいのが特徴です。
一方で、多機能な分、導入時の運用設計や定着支援が重要になります。請求書業務だけでなく、間接業務全体の効率化を検討している企業に向いているでしょう。
中小企業向けのシンプル型
中小企業向けのシンプルなタイプは、必要最低限の機能に絞ることで、低コストかつ導入しやすい設計になっています。電子帳簿保存法への対応、請求書保存、基本的な会計ソフト連携に特化しているケースも多く、導入負荷・運用負荷を抑えやすい点が特徴です。
請求書件数が比較的少ない企業や、まずは電子帳簿保存法への対応から段階的に進めたい企業に適しています。
なお、電子帳簿保存法では、基準期間(2期前)の売上高が5,000万円以下の事業者は、税務職員のダウンロードの求めに応じられる状態にしておけば検索要件が免除されます。さらに、原則的な保存ルールへの対応が間に合わない場合でも、検索要件は簡易的な方法による対策も可能です。
詳しくは国税庁の資料でも解説されているので、参考にしてみてください。
参考:電子帳簿保存法対応!令和6年1月以降の電子取引データの保存方法について(令和6年11月)
請求書電子化システムを導入する流れ
システム定着のためには、導入までの流れを把握しておくことが大切です。それぞれのステップを確認していきましょう。
STEP1.現在の請求書運用を整理する
まずは、自社の請求書業務を整理しましょう。請求書の受領方法、承認者、会計処理の流れ、保管ルールの可視化により、非効率な業務やボトルネックが見えてきます。現状把握が不足したまま導入を進めると、必要な機能が不足したり、逆に過剰なシステムを選んだりする原因になるため注意が必要です。
STEP2.電子化する範囲を決める
請求書業務の「どこまでを電子化するか」の決定も重要です。受領請求書の保存の電子化にとどめるか、請求書発行や承認フロー、会計ソフト連携まで含めるかによっても、選ぶべきシステムは変わります。
また、最初からすべてをデジタル化しようとすると現場の運用負荷が高くなります。まずは影響範囲が小さい業務から始めるなど、段階的な導入が有効です。
STEP3.無料トライアルで運用を確認する
多くの請求書電子化システムでは、無料トライアルやデモ環境が用意されています。実際に使ってみると、操作性やOCR精度、会計ソフトとの連携のしやすさを確認できます。
カタログや営業説明だけで判断すると、「思ったより使いづらい」といった失敗につながりやすいため、現場担当者を交えて試験運用を必ず行いましょう。
STEP4.社内ルールや運用フローを整備する
導入後にスムーズに定着させるには、社内ルールの整備が欠かせません。たとえば、「誰が請求書をアップロードするか」「承認期限をどうするか」「ファイル名や保存ルールをどう統一するか」を明確にしておくことで、属人化や運用ミスを防げます。システム選びだけでなく運用設計も導入成功の大きなポイントです。
STEP5.段階的に電子化を進める
請求書の電子化は、一度に全社展開するよりも段階的に進める方が失敗しにくい傾向があります。まずは一部部署や特定の請求書業務から試験導入し、課題を改善しながら対象範囲を広げていきましょう。スモールスタートで現場の負担を最小限に抑えながら進めていけば、現場に定着させやすくなります。

プロジェクト推進のコツがわかる
DXが失敗する現場で今起きていること
企業内でDXが進まない原因や、推進のポイントをまとめました。業務のデジタル化をスムーズに進めたい方は必見です。
請求書電子化システムの費用相場
請求書電子化システムを導入するにあたって、コストの計算も欠かせません。ここでは、一般的な費用の相場を確認しておきましょう。
初期費用の相場
請求書電子化システムの初期費用は、無料〜数万円程度が一般的です。特にクラウド型のサービスでは初期費用無料のケースも多く、中小企業でも導入しやすくなっています。
一方で、会計ソフトとの個別連携、承認フロー設定、既存データの移行を代行依頼する場合には、別途費用が必要なケースもあります。導入時は月額料金だけでなく、初期設定コストも確認しておきましょう。
月額費用の相場
月額費用は、小規模向けのシンプルなタイプで数千円程度、中規模以上向けの多機能型では数万円程度が目安です。料金は利用人数、請求書件数、利用機能によって変動するケースが多く、経費精算やワークフロー機能を含むと費用が上がる傾向があります。現在の請求書件数と将来的な利用規模を踏まえた比較が重要です。
従量課金で発生しやすい費用
請求書電子化システムでは、基本料金に加えて従量課金が発生する場合があります。たとえば、OCRで読み取る請求書枚数、電子送付件数、データ保存容量、追加ユーザー数が代表例です。月額料金が安く見えても、請求書件数が増えると想定以上のコストになるケースもあるため、料金体系を事前に確認しておく必要があります。
【注意点】料金だけで選ばない方がよい理由
料金の安さだけで選ぶと、「操作が複雑で現場に定着しない」「会計ソフトと連携できず二重入力が発生する」といった課題に直面する可能性があります。
重要なのは、支払うコストではなく、削減できる工数や人件費とのバランスです。月額費用が多少高くても、業務効率化による効果が上回れば、結果的に費用対効果が向上します。
また、電子帳簿保存法の要件を満たさないまま運用を続けると、青色申告の承認取消しや、不正が発覚した際の重加算税の加重(通常の重加算税に加えて10%上乗せ)といったリスクにもつながります。料金の比較だけでなく、法令順守の観点からもシステムを選定することが重要です。
請求書電子化システムの選び方
ここでは、システムを選ぶ際の基準を解説します。自社に合ったシステムを選定する際のチェックリストにしておきましょう。
電子帳簿保存法に対応しているか確認する
請求書電子化システムを選ぶ際は、電子帳簿保存法への対応状況を必ず確認しましょう。「電帳法対応」と表示されているだけで判断するのではなく、具体的にどの要件を満たせるかまで確認することが重要です。
たとえば、日付・金額・取引先による検索機能、訂正削除履歴の保存、改ざん防止措置など、法令要件を満たしていないと別途対応が必要になる場合があります。また、法改正が行われた際にシステム側で継続的にアップデートされるかも確認しておきたいポイントです。
なお、改ざん防止の具体的な方法としては、
①タイムスタンプの付与
②訂正・削除の履歴が残るシステム(または訂正・削除ができないシステム)の利用
③正当な理由がない訂正・削除を防止する事務処理規程の運用
のいずれか1つを満たせばよいとされています。
また、繰り返しになりますが、基準期間(2期前)の売上高が5,000万円以下の事業者は、税務職員のダウンロードの求めに応じられる状態にしておけば、検索要件(日付・金額・取引先での検索)自体が免除されますし、原則的な保存ルールへの対応が間に合わない場合でも、検索要件は簡易的な方法による対策も可能です。
参考:電子帳簿保存法対応!令和6年1月以降の電子取引データの保存方法について(令和6年11月)
あわせて、対象書類は原則7年間(欠損金がある事業年度は最大10年間)の保存が必要になる点も確認しておきましょう。
電子帳簿保存法への対応方法について、詳しくはこちらの記事でも解説しています。ぜひ参考にしてください。
OCRや検索機能の精度を確認する
請求書の入力負担を減らすには、OCRやAI-OCRの読み取り精度が重要です。金額や取引先名の認識精度が低いと、確認・修正工数が増え、かえって業務負担が大きくなる可能性があります。
また、請求日・金額・取引先などでスムーズに検索できるかも重要です。特に過去の取引を確認する必要がある際には、検索性が業務効率に直結するため、実際の使用感も忘れずに確かめておきましょう。
会計ソフトとの連携性を確認する
自社で利用している会計ソフトとAPI連携できるか、仕訳データをスムーズに取り込めるかを事前に確認しましょう。
会計ソフトとの連携が不十分だと、請求書データを手入力する必要が生じ、業務効率化の効果が薄れてしまいます。単なるCSV出力だけでなく、仕訳データの自動連携範囲まで確認する必要があります。たとえば、勘定科目や税区分が連携できるかによって、経理工数は大きく変わります。
操作しやすいUIか確認する
機能が充実していても、画面が複雑で使いにくいシステムは現場に定着しにくい傾向があります。特に中小企業では、経理専任者ではなく総務や事務担当者が兼任するケースも多いため、直感的に操作できるかが重要です。
また、承認者となる経営者や管理職が外出先でも利用しやすいか、スマートフォン対応が十分かも確認しておきたいポイントです。無料トライアルを活用し、実際の使用感を確認しましょう。
料金体系と運用コストを確認する
月額料金だけでなく、OCR件数やユーザー追加などの従量課金が発生するかも確認が必要です。また、費用対効果を考える際は、「請求書1件あたり処理時間がどれだけ削減されるか」という観点でも評価しておきましょう。
安価に見えても、利用量によって想定以上のコストになる場合があります。初期費用も含め、長期的な運用コスト・費用対効果で比較しましょう。
サポート体制や導入支援を確認する
導入時の設定支援や運用相談など、サービス提供側(ベンダー)からのサポート体制も重要な比較ポイントです。特にIT専任者がいない中小企業では、問い合わせ対応や初期設定支援の充実度が定着率に影響します。運用設計や制度対応まで相談できるサポート体制があると、スムーズに定着しやすいでしょう。
よくある質問(FAQ)
最後に、請求書電子化システムに関するよくある質問を確認します。
Q. 請求書電子化システムは小規模企業でも必要ですか?
A. 小規模企業であっても、請求書件数が一定数ある場合や、経理担当者が兼任体制の場合は導入メリットがあります。特に電子帳簿保存法への対応、請求書検索の効率化、保管スペース削減といった効果が期待できます。一方で、機能過多なシステムは運用負荷につながるため、自社規模に合ったシンプルなシステムを選ぶことが重要です。
Q. 電子帳簿保存法に対応するにはなにが必要ですか?
A. 電子取引で受領した請求書を保存する場合、電子帳簿保存法の要件を満たす必要があります。具体的には、日付・金額・取引先で検索できることや、訂正削除履歴の確保などが代表的です。ただし、システムを導入するだけで自動的に適法となるわけではないため、社内運用ルールの整備も非常に重要です。
Q. 紙の請求書は廃棄しても問題ありませんか?
A.保存方法によって異なります。電子取引で受領した請求書は原則として電子保存が必要であり、紙出力のみでは要件を満たさない可能性があります。一方、紙で受領した請求書については、PDF化するだけでは不十分で、スキャナ保存要件を満たせば原本を廃棄できるケースもあります。運用方法に応じて適切な保存ルールを確認しましょう。
なお、スキャナ保存の要件を満たすには、一定の解像度(200dpi相当以上)での読み取りに加え、タイムスタンプの付与(または訂正・削除の履歴が残るシステムの利用)、検索機能の確保など複数の条件をあわせて満たす必要があります。要件を満たさないままスキャンデータのみを保存すると、原本の廃棄が認められない可能性があるため注意しましょう。
関連:電子帳簿保存法の要件とは?2026年最新のポイントをわかりやすく解説
まとめ
請求書電子化システムは、単なるペーパーレス化のためのツールではなく、経理業務の効率化や内部統制の強化、電子帳簿保存法への対応を支える仕組みとして重要性が高まっています。
ただし、システムによって機能や料金体系、会計ソフトとの連携性は大きく異なるため、「安いから」「有名だから」という理由だけで選ぶのは避けるべきです。重要なのは、自社の請求書運用を整理したうえで、必要な機能と運用負荷のバランスを見極めることです。
まずは無料トライアルを活用し、自社の業務との相性を確認しながら、段階的に電子化を進めていくことをおすすめします。
この記事を書いたライター
高桑清人
中小企業診断士
前職ではBPO企業にて12年間、業務設計・品質管理・人材マネジメントなどの管理業務に従事。独立後は中小企業の経営支援に携わり、新規事業の立ち上げや事業計画策定を伴走型で支援。学習塾講師として16年・1万時間超の授業経験もあり、「聴く・伝える・支える」現場感を大切に活動している。
こちらも合わせて読む
-
EDIとは?電子契約との違いやシステム例をわかりやすく解説
ペーパーレス化業務効率化請求書電子帳簿保存法納品書経理DX -
請求書の保存方法とは?電子帳簿保存法に対応した方法、原本の保存が必要なケースなどを解説
請求書電子帳簿保存法 -
電子請求書を導入する場合の案内文の書き方|例文や注意点を解説
ペーパーレス化業務効率化請求書電子帳簿保存法経理DX -
請求書の電子化とは?メリットや注意点などを詳しく解説
請求書電子帳簿保存法経理DX -
請求書には電子印鑑の利用は可能か?利用のメリット・デメリット・注意点を解説
ペーパーレス化DX業務効率化請求書電子帳簿保存法経理DX -
請求書のハンコは必須?押印のメリットや電子化すべき理由を解説
DX請求書電子帳簿保存法経理DX