Excel(エクセル)で契約書管理することの限界と問題 解決策も解説
結論
契約書をエクセルで管理すると、検索性の低さや属人化により、業務停止・無駄なコスト・意思決定の遅れといった問題が起こりやすくなります。本記事では契約書管理でよくある5つの問題と、エクセル運用の限界、そして次のステップへ進むべき判断基準を解説します。まず自社の現状をチェックしてみましょう。
「契約書の保管場所が担当職員しかわからない」
「担当職員のPCに保存されている契約書に担当者以外がアクセスできない」
エクセルによる契約書管理を続けていると、管理状況がブラックボックス化し、こうした問題が起こりやすくなります。
普段の業務では問題ないように見えても、いざトラブルが発生すると迅速な対応ができないでしょう。
この記事では、契約書管理によくある問題や、エクセル管理の限界をわかりやすくまとめて紹介するとともに、具体的な解決策を提案します。

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目次
契約書管理が適切に行われないことで起きる問題とは?
そもそも適切に契約書管理が行われていないと、業務の停止、無駄なコストの負担が発生するだけでなく、担当者しか管理・確認ができない属人化が進むなど、さまざまな弊害が発生し得ます。それぞれの問題を具体的に確認していきましょう。
必要な契約書をすぐに取り出せず業務が止まる
契約書を無計画にエクセルや共有フォルダに保存していると、必要な契約書がすぐに取り出せない状態が発生します。
たとえば、契約内容の変更や更新、監査などのタイミングで、過去に交わした契約書を確認する際、以下のような問題が顕在化します。
- 契約書データがどこに格納されているかわからず、検索に時間がかかる
- 契約条項に至った経緯がわからない
- やり取りの記録が散在しており、整理に時間がかかる
こうした事態になると、業務がストップするだけでなく、違約金の発生にもつながりかねません。
特に、多数の会社と取引しているときは、目的の契約書を瞬時に見分けられるようにする必要があります。また、同じ会社との取引が複数存在するときは、対象物・対象となるサービス・期間などで、瞬時に検索できる工夫も必要です。
更新・解約期限の見落としで無駄なコストが発生する
契約書をエクセルや共有フォルダで漫然と管理していると、年に1回の更新の際の手続を失念してしまったり、次回の更新前に解約しようと考えていたのに解約期限を徒過してしまったりと、重要なスケジュールを見落とすことにつながります。
重要なスケジュールを見落とすと、以下の無駄なコストが発生するかもしれません。
- 再契約料
- 利用しないサービスの年間契約費用
- 年度途中の解約による違約金
契約内容の確認に時間がかかり意思決定が遅れる
契約書をエクセルや共有フォルダで漫然と管理していると、「重要な条項はどこか」、「過去の各取引先との契約書ではどうなっているか」などの比較・確認に必要以上の時間がかかります。
普段は問題がないように見えても、いざ素早い経営判断が求められる場面で、「複数の取引先で統一させた契約内容にすべきか」、「どこに違いをつけるか」といった意思決定が遅れる可能性があります。
担当者しかわからない状態になり業務が属人化する
会社での業務やビジネスにおいては、できるだけ業務を属人的にせず、誰でも交代して作業ができるような業務フローにすることが好ましいでしょう。
しかし、特定の職員がローカルな環境でエクセル管理していると、その担当職員がなんらかの事情で出社していない場合、書類内容の確認ができません。
また、共有フォルダに保存してはいるものの、担当者が独特な手法で管理していると、ほかの職員が見ても内容がよく理解できないケースも多く、やはり担当者の出社を待つことになりかねません。
なお、属人化を解消する方法についてはこちらの記事でも詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
監査やトラブル時に迅速に対応できない
監査を受けるときやトラブルへの対応時は、特に迅速な対応が求められます。しかし、担当職員による属人的な管理状態になっていると、その担当職員がいなければ迅速な対応が難しくなるでしょう。
結果的に、監査の内容によっては、業務プロセスや文書管理に重大な不備があるとみなされ、再審査や是正措置を求められる可能性があります。
情報の分散により誤った契約書を参照する
属人的な管理には、新たな契約書を作成する際、他の職員が誤った契約書を参照するリスクもあります。
また、他の職員によるチェック体制がない状態だと、担当者がファイル名のリネームを間違えるようなケースも考えられます。たとえば、A社との契約書に「B社契約書」、B社との契約書に「A社契約書」とファイル名を間違えて保存すると、誤った契約書を参照する事態になりかねません。

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エクセルでの契約書管理に限界がある5つの理由
先述したような「契約書管理における課題」が発生する一因として、エクセルで契約書管理を続けていることが挙げられます。
エクセルは非常に手軽で優れたツールですが、会社の規模が拡大したり、扱う契約書の数が増えたりすると、適切に管理するよう意識していてもどうしても限界があるためです。起こり得る具体的な問題とともに、エクセル管理に限界がある理由を確認しておきましょう。
契約書の検索に時間がかかる
エクセルの契約書管理台帳を複数人で運用していると、取引先名や契約書名を入力する際に「表記ゆれ」が発生し、目的の契約書を検索するのに時間がかかる可能性が高まります。
また、複数の契約書をタブに分ける形で管理していたりすると、目的の契約書を特定するまでに相当な労力・時間が必要です。
さらに、紙の契約書と電子契約を併用している場合、紙の契約書は台帳を、電子ファイルは電子契約システムをそれぞれ確認するという二重の手間が発生してしまいます。
更新・解約期限の管理が属人的になる
エクセルには自動で担当者に更新期限をメールやチャットで通知する機能が基本的にはないので、契約書の更新・解約期限の管理が属人的になりがちです。具体的には、「エクセルファイルを開かないと期限を過ぎていることに気付かない」「エクセルファイルを開いたとしても期限設定が可視化されていない」などが考えられます。
ファイルの分散・重複が発生する
エクセルはあくまで「情報を記録する台帳」であり、契約書そのものを格納する場所ではありません。
このため、ファイルサーバーやクラウドストレージなど、契約書の保管先のURLをエクセルに貼り付ける運用が一般的ですが、フォルダ構成が変わった際にリンク切れを起こしたり、リンクの貼り付けミス、入力漏れなどによって迷子になったりするリスクがあります。
また、同じ取引先の同一の契約書であるのに、複数の全く同じエクセルファイルを保存し、ファイルの重複が発生する可能性もあります。
同時編集や最新情報の管理が難しい
職員それぞれのPCでエクセルファイルを保存していると、複数の職員による同時編集ができません。異なる職員が別々に更新を行うことで、「どれが最新版かわからない」というファイルの先祖返りや重複が発生し、情報の整合性を保つのが困難になります。
担当者依存でブラックボックス化する
エクセルで作った契約書管理台帳をローカル保存(個人のPC内のみで管理)していると、担当者以外の職員はその内容を確認できず、ブラックボックス化します。担当者の不在や退職によって、必要な情報にアクセスできない、あるいは誤操作でデータが消失するといったリスクを常に抱えることになります。

契約管理の属人化をなくす
「担当者が不在で契約書が見つからない」を解消する方法
契約書管理の属人化が引き起こす問題点(担当者の負担や会社のリスク)を解説し、その解消に向けた具体的な5つの取り組みリストを紹介しています。
エクセル管理を改善する具体的な方法
漫然とエクセルを使い続けるのではなく、管理の仕組みを整えることで多くのリスクは回避可能です。まずは、今すぐ取り組める、具体的なエクセル管理の改善策を確認してみましょう。
管理台帳のフォーマットを標準化する
全契約を一元管理する「管理台帳」を作成する際、管理台帳のフォーマットはできるだけわかりやすく、一覧性の高い形式にしておくことで、特定の契約書を探し出す際に迅速に探し出すことができるようになります。
フォルダ構成と命名規則を統一する
エクセルファイルの保存場所やフォルダ構成、ファイル名のつけ方を組織全体で統一しましょう。項目やレイアウトを統一し、一覧性を高めることで、必要な情報を瞬時に検索・把握できるようになります。この状態であれば、他の職員への管理の引き継ぎも行いやすくなり、共同での管理もしやすくなります。
期限アラートを設定する
エクセルの「条件付き書式」を活用し、期限が迫った項目を自動で色付けしましょう。一覧表を作成し、期限が過ぎると赤く表示される、outlook連携により期限が近づいた旨の確認メールが送信されるように設定する、といった対策により、更新漏れや解約期限の見落としといった致命的なミスを防げます。
運用ルールを明文化する
「修正時はコメント機能を使う」「フォントやレイアウトはこの設定にする」といった細かなルールをマニュアル化しましょう。誰が作成したファイルでも同じ品質で理解できる状態を作ることで、ブラックボックス化を避けられるでしょう。
どこまでエクセルで対応できるかを見極める
工夫次第で改善は可能ですが、同時編集の制限やセキュリティ面など、エクセルには物理的な限界が存在します。「どこまでエクセルで対応し、どこから専用ツールを導入すべきか」を、次項の契約書管理サービスとの比較をもとに検討してみましょう。
エクセル管理から次のステップに進むべきタイミング
契約書の数が少ないうちは、エクセルでの契約書管理も可能ですが、組織の成長に伴い必ず限界が訪れます。ここからは、エクセル管理から次のステップに進むべきタイミングについて解説していきましょう。
契約件数が増えて管理しきれなくなったとき
契約件数が数百、数千件と増えてくると、分類方法も複数のものが考えられ、管理台帳の複雑化・肥大化が避けられません。次第に台帳自体に一覧性が失われ形骸化し、エクセルファイルでの管理台帳による管理に限界を感じることになるでしょう。情報の正確性が失われ始めたら、エクセル運用の限界サインです。
複数部署で契約書を共有する必要があるとき
共有フォルダでの管理は、権限設定や同時編集に制限があり、誤削除や上書き保存のリスクが絶えません。部署をまたいだ参照や連携が日常化しているなら、誰でも直感的に操作でき、安全に共有できる専用サービスの利用が効率的です。
リスク管理や内部統制が求められるとき
エクセルでの属人的な契約管理には、ブラックボックス化のリスクがあります。アクセス権限の管理や、変更履歴の確認が難しく、改ざんや紛失を防ぎきれないため、ガバナンスの観点から問題視されることがあります。
経営側や外部からの要請でリスク管理・内部統制を迫られた際には、ノウハウの少ない職員が1から契約書管理の体系化・明瞭化を押し進めるよりも、証跡管理や権限設定が標準装備された専用ツールを導入するほうが、確実かつスピーディです。
業務効率化の優先度が上がったとき
「トラブルが起きない限り現状維持」という姿勢では、法務業務の生産性は向上しません。中小企業であればなおさら、法務担当職員に任せきりになっている体制にメスを入れるインセンティブは働きにくいでしょう。
昨今は国家・地方自治体で推進されているDX(デジタルトランスフォーメーション)の流れに合わせ、契約書管理を自動化・デジタル化することで、担当者の付随業務を削減し、本来注力すべきコア業務にリソースを割くことが可能になります。
よくある質問(FAQ)
エクセルによる契約書管理について、よくある質問とそれに対する回答を紹介します。
Q. エクセルで契約書管理を続けても問題ないですか?
A. 現状で問題が顕在化していないだけで、潜在的なリスクが顕在化した際には手遅れということもあります。上記を参考にエクセルファイルでの契約書管理の限界・デメリットを確認し、不足があるようであれば契約書管理サービスの利用も検討すべきでしょう。
Q. 契約書管理の最適な方法はなんですか?
A. 扱う契約書の数や契約書管理に携わる人数・部署の数によって最適な方法は異なります。少人数で契約書の件数も少ないうちは、エクセルファイルによる契約書管理が安価で選ばれやすいでしょう。ただし、厳格な管理ルールを設けておかないと担当職員のもとでブラックボックス化しやすく、また、大量の契約書を扱う場合に複雑化しやすいというデメリットがあります。
一方、扱う契約書の件数が多かったり、複数人で契約書を管理する必要があったりする場合は専用の契約書管理サービスの導入がおすすめです。コストがかかる一方、簡易明瞭なルール・表示方法で整理されたツールを使うため、大量に契約書を扱う場面や複数の部署と共同で管理する場面にも適しています。
Q. 契約書の期限管理はどうすればいいですか?
A. エクセルファイルでアラート機能を駆使することでも実現できますが、契約書管理サービスを使えば、簡単に期限管理を実現できます。
Q. 中小企業でも管理を見直す必要はありますか?
A. 中小企業は法務リスクが顕在化した場合に大きな打撃を受けるため、法務部が整っていない中小企業こそ、管理を見直すべきでしょう。
Q. 紙とデータはどう管理すべきですか?
A. 紙の契約書は原本を保管するとともにデータ化してできるだけ一元管理をするべきでしょう。別々に管理すると、データで検索してもヒットしない契約書が、紙の契約書で存在するかを逐一探索しなければならず、業務遅延の原因となります。
紙とデータの一元管理方法については、こちらの資料でも詳しく紹介しています。気になるかたはダウンロードの上、ご活用ください。

紙と電子の混在期を乗り切る
契約書一元管理への移行方法を解説
混在する紙・電子の契約書の理想的な一元管理方法をご紹介いたします。紙と電子の契約書が混在していて管理方法に悩んでいるという方は参考にしてみてください。
まとめ 限界を感じたら次の管理方法の検討を
契約書管理を漫然と行っていると、担当職員のもとでブラックボックス化し、業務遅延や余計なコストの発生、契約書の取り違えなどのリスクが潜むことになります。適切に管理していたとしても、企業の成長や契約書の増加に合わせて、エクセル管理に限界を感じるタイミングがやってくるでしょう。
情報の正確性が損なわれそうに感じたなら、契約書管理サービスの利用を積極的に検討してみてください。
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この記事を書いたライター
原千広
弁護士
東京都出身。東京大学法科大学院を修了後、新司法試験合格。司法修習を経て都内の法律事務所に勤務。国内外の企業・私人に対する紛争から国際家族紛争まで国を跨ぐ案件に幅広く携わる。ロシア語能力検定1級。趣味はお酒に合う缶詰収集。
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