小規模事業者持続化補助金をわかりやすく解説

「小規模事業者持続化補助金」は、販路拡大や商品のPR、チラシ制作や公式サイト開設といった費用を支援するための制度です。
この記事では、小規模事業者持続化補助金の概要と活用のメリット、申請に必要な準備や基本的な申請の流れを、はじめての方にもわかりやすく解説します。自社のさらなる成長を目指したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
小規模事業者持続化補助金とは
小規模持続化補助金は、販路開拓や業務効率化などに取り組む小規模事業者を支援するための国の補助制度です。ここでは、補助金の概要や対象者に加え、2025年度版における変更点を解説していきます。
補助金の概要と対象者
小規模持続化補助金を利用するには、商工会議所または商工会のサポートを受けながら、事業計画を立てて申請する必要があります。補助金の上限は原則50万円(特例併用で最大250万円、共同・協業型は5,000万円)で、対象経費の3分の2までが補助されます。
具体的には、設備の導入、チラシ・パンフレットの作成、ホームページやECサイトの構築、看板設置、展示会出展などが補助対象となります。
対象となる事業者は、常時使用する従業員数が一定以下の小規模事業者です。たとえば、商業・サービス業では5人以下、製造業・建設業・運輸業では20人以下が目安です。個人事業主も対象となるため、幅広い業種で活用が進んでいます。
2025年版の制度ポイント、2024年版からの変更点
これまでは、卒業枠や後継者支援枠など複数の特別枠が設けられていました。しかし2025年版では、このような申請枠の見直し、整理が行われました。これは、中小企業庁の「政策の原点回帰を行い、経営計画の策定に重点化」という方針に則ったものです。
これにより、「一般型」「創業型」「共同・協業型」「ビジネスコミュニティ型」の4種類の申請類型に変更されました。
| 類型 | 申請枠 | 要件 |
| 一般型 | 通常枠 | 経営計画を作成し販路開拓等に取り組む小規模事業者 |
| インボイス特例 | 免税事業者から課税事業者に転換 | |
| 賃金引上げ特例 | 事業場内最低賃金を50円以上引き上げる小規模事業者 | |
| 災害支援枠 | 令和6年能登半島地震等における被災小規模事業者 | |
| 創業型 | 産競法に基づく「認定市区町村による特定創業支援等事業の支援」を受けた小規模事業者 | |
| 共同・協業型 | 地域に根付いた企業の販路開拓を支援する機関が地域振興等機関となり、参画事業者で ある10以上の小規模事業者の販路開拓を支援 |
|
| ビジネスコミュニティ型 | 商工会・商工会議所の内部組織等(青年部、女性部等) | |
補助対象となる事業・経費
補助対象は、販路開拓や業務効率化など、事業の持続的発展につながる取り組みとされています。単なる設備投資や経費削減ではなく、「売上拡大」「生産性向上」「経営基盤の強化」を目的とした取り組みであることが前提です。
【補助対象となる経費の例】
| 経費区分 | 内容例 |
| 機械装置等費 | 補助事業の遂行に必要な製造装置の購入等 |
| 広報費 | 新サービスを紹介するチラシ作成・配布、看板の設置等 |
| ウェブサイト関連費 | ウェブサイトやECサイト等の開発、構築、更新、改修、運用にかかる経費 |
| 展示会等出展費 | 展示会・商談会の出展料等(オンラインによる展示会・商談会等を含む) |
| 旅費 | 販路開拓(展示会等の会場との往復を含む)等を行うための旅費 |
| 新商品開発費 | 新商品の試作品開発等に伴う経費 |
| 借料 | 機器・設備等のリース・レンタル料(所有権移転を伴わないもの) |
| 委託・外注費 | 店舗改装など自社では実施困難な業務を第三者に依頼(契約必須) |
小規模事業者持続化補助金スケジュール
2025年に実施されている小規模事業者持続化補助金の公募開始から採択発表までのスケジュールは、次のとおりとなっています。スケジュールは随時更新されるため、最新情報は公式独立行政法人 中小企業基盤整備機構のサイトや日本商工会議所のサイト等で確認しましょう。なお、公募の「第〇回」という回数表記は、申請する類型(枠)によって異なります。
| 類型・申請枠 | 公募回 | 公募開始日 | 申請開始日 | 申請締切日 | 採択発表日 |
| 通常枠 | 第17回 | 3月4日 | 5月1日 | 6月13日 | 9月26日 |
| 第18回 | 6月30日 | 10月3日 | 11月28日 | 未定 | |
| 災害支援枠 | 第6回 | 3月4日 | 3月21日 | 4月28日 | 7月1日 |
| 第7回 | 4月30日 | 5月16日 | 7月28日 | 未定 | |
| 第8回 | 7月29日 | 8月19日 | 10月27日 | 未定 | |
| 第9回 | 10月28日 | 2026年 1月23日 |
2026年 3月31日 |
未定 | |
| 創業型 | 第1回 | 3月4日 | 5月1日 | 6月16日 | 未定 |
| 第2回 | 6月30日 | 10月3日 | 11月28日 | 未定 | |
| 共同・協業型 | 第1回 | 3月31日 | 4月25日 | 6月13日 | 未定 |
| ビジネスコミュニティ型 | 第8回 | 4月11日 | 4月11日 | 6月2日 | 8月18日 |
| 第9回 | 10月1日 | 10月1日 | 12月1日 | 未定 |
※2025年11月19日時点
補助金を活用するメリット
ここでは、小規模事業者持続化補助金を活用するメリットについて解説します。
事業コストを抑えられる
小規模事業者持続化補助金の大きなメリットは、「リスクを抑えて自社成長のために投資できる」という点です。併せて、商工会議所や商工会の担当者と一緒に事業計画を作成するプロセス自体が、経営を見直すきっかけになります。自社の強みや課題を整理すれば、会社がどの方向性をもって成長していくべきかを明確にできます。
販路拡大や集客施策に活用可能
主要な補助対象施策は、販路や集客の拡大に資するものです。したがって小規模事業者の生命線である収益力向上につながる「思い切った一手」を実行するチャンスとなるでしょう。
業務改善やデジタル化を進められる
小規模事業者持続化補助金は販路開拓だけでなく、業務の効率化やデジタル化(省力化)を進めるための投資にも活用できます。特に、人手不足や人件費の上昇が進む中、デジタルツールの導入により、限られた人員で成果を上げる仕組みづくりは、多くの中小企業にとって急務といえる課題です。
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ダウンロード(無料)申請までの基本的な流れ
ここでは、小規模事業者持続化補助金を申請するまでの基本的な流れについて6つのステップで確認していきます。
ステップ1:事前準備
申請には、政府共通認証システム「GビズIDプライム」が必要です。法人・個人事業主を問わず、申請者本人がアカウントをもっていなければ申請を進めることができません。発行まで約2~3週間かかる場合もあるため、早めに取得することをおすすめします。
加えて、申請には商工会議所または商工会の「事業支援計画書」が必須です。申請前に相談・面談を行ない発行してもらう必要があるので、計画性をもって準備しましょう。
ステップ2:事業計画・導入内容の整理
補助金の採択を左右するのが、事業計画の作成です。自社の課題と目的を明確にし、補助金で実施する取組内容を具体的に整理します。
自社にとって、「なぜこの取り組みが必要か」「どんな成果を見込めるか」を論理的に示すことが重要です。投資と効果を結びつけ、数値目標を交えて実現性を高められれば、審査での評価が向上します。
ステップ3:申請書の作成
申請は、GビズIDから電子申請システムでのみ行なうことができます。情報を入力する際は、事業計画や添付するファイルなどを入念に確認し、不備のないようにしましょう。
ステップ4:審査・交付決定
申請完了後は、提出内容をもとに審査が行なわれます。審査で確認されるのは、事業の実現可能性や費用の妥当性、事業内容と補助金の趣旨が一致しているか、などです。
採択結果は公式サイトで発表の上通知され、見積書等の提出を行うと、正式に「交付決定通知書」が届きます。この通知前に発注・契約・購入・支払いを行うと、補助対象外となるため注意が必要です。
ステップ5:事業の実施・経費精算
審査を通過したあとは、計画に沿って事業を実施します。補助対象経費については、領収書や振込明細などの証憑を保管しておき、支出内容と見積書・請求書の金額が一致しているかを確認しながら、適切に経費精算しましょう。
ステップ6:実績報告・補助金受領
事業が完了したら経費の支出内容をまとめた「実績報告書」と証拠書類を提出します。報告内容に問題がなければ、精算が行なわれ、補助金が指定口座へ振り込まれます。提出漏れや金額差異があると入金が遅れるため、最終確認を徹底しましょう。
申請時に注意すべきポイント
ここでは、申請時に特に注意すべきポイントを解説します。
書類不備や期限の確認
申請時にもっとも多いトラブルは「書類不備」と「提出期限の遅れ」です。チェックリストを活用しながら、「だれが、いつまでに用意するか」を明確にすることが肝要です。また、ファイル形式や添付漏れも審査対象外の原因になります。余裕をもったスケジュールで準備を進めましょう。
補助対象経費の適合性
経費の内容が「補助対象として適切か」も厳しく確認されます。対象となるのは、販路開拓や業務効率化などに直接関係する経費のみです。汎用的な備品、交際費、人件費などは対象外となるため注意してください。見積書・請求書の名目と事業計画の内容を一致させ、経費の適合性を明確に示しましょう。
申請内容の具体性と説得力
審査では、申請内容の具体性と説得力が重視されます。抽象的な表現や一般論だけでは評価されにくいため、実行イメージが審査員へしっかり伝わる記述が理想的です。具体的な数値目標や実施スケジュールなど、実態を掴みやすい情報を添えれば、実現の可能性を高められるでしょう。
支援機関・商工会との連携
申請に必要な「事業支援計画書」は、申請直前に慌てて依頼すると、発行が間に合わない場合があります。
申請を検討し始めた段階で早めに各機関・商工会へ相談し、事業計画の方向性や経費の妥当性を確認してもらいましょう。担当者の助言を反映させれば、採択率の高い申請書に仕上げることができます。
まとめ
小規模事業者持続化補助金は、販路拡大や業務効率化に挑戦する事業者を力強く後押しする制度です。事前にしっかりと計画を立て、必要な準備を早めに進めれば、採択される可能性を高められます。補助金を上手に活用し、自社の課題見直しや、成長ステージへ踏み出すきっかけにしましょう。
また、小規模事業者持続化補助金を活用するにあたって、あわせて検討したいことが業務のペーパーレス化による業務フローのスピードアップです。
なぜなら、旧態依然とした紙の業務が残っていることで、小規模事業者持続化補助金を活用する目的である「売上拡大」「生産性向上」「経営基盤の強化」を阻む「見過ごせないボトルネック」になる可能性が高いためです。
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この記事を書いたライター
高桑清人
中小企業診断士
前職ではBPO企業にて12年間、業務設計・品質管理・人材マネジメントなどの管理業務に従事。独立後は中小企業の経営支援に携わり、新規事業の立ち上げや事業計画策定を伴走型で支援。学習塾講師として16年・1万時間超の授業経験もあり、「聴く・伝える・支える」現場感を大切に活動している。
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