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業務改善の基礎

見える化とは?意味・メリット・実践方法をわかりやすく解説

「見える化」という言葉は、ビジネスの現場で頻繁に聞かれますが、具体的に何を意味し、どのような効果があるのでしょうか。

この記事では、業務効率化の第一歩となる「見える化」の基本概念を解説します。

見える化とは何か?基本をわかりやすく解説

ここでは、業務改善における「見える化」の基本概念と、その起源を深く掘り下げて解説します。

ビジネスにおける「見える化」の意味とは

ビジネスにおける「見える化」とは、本来目に見えづらい業務プロセス、情報、問題点などをわかりやすい形で見えるようにすることで、誰もがすぐに認識し、異常や変化に気づいた際に自律的に行動できる状態にすることを指します。

「見える化」という言葉が広まったきっかけは、日本の大手自動車メーカーであるトヨタ自動車が確立したトヨタ生産方式(TPS)だとされています。TPSにおいて「見える化」は、「ムリ・ムダ・ムラ」を排除し、現場の生産性を最大化するための不可欠な手法とされています。

トヨタ生産方式における「見える化」の核心

  • 異常の顕在化(Abnormality Exposure): 正常な状態と異常な状態を区別できるようにし、異常が発生したらすぐに誰でも分かるようにすること。
  • 行動の誘発: 単に事実を見せるだけでなく、見た人が改善のための行動を起こすように設計されていること。

つまり、「見える化」のゴールは、「誰でも異常を発見でき、即座に手を打てる仕組み」を構築することにあるのです。

参考:トヨタ生産方式における「見える化」の仕組みの拡張 - 上智大学
参考:トヨタ生産方式(公式企業サイト)

可視化・共有化との違い

「見える化」と似た言葉に「可視化」や「共有化」もあります。

「見える化」との違いは、「可視化」や「共有化」が「見せること」や「渡すこと」で終わるのに対し、「見える化」は、その情報が「行動」に繋がる設計になっているかどうかが問われる、より実践的な概念であるという点にあります。

用語 目的 具体例 行動への繋がり
可視化 データや事実の表現(現状把握) 月次売上データをグラフ化して資料に掲載する。 受け手次第。
グラフを見た人が行動するかどうかはわからない。
共有化 情報を関係者間で共有(情報伝達) マニュアルをファイルサーバーにアップロードし、
アクセス権を付与する。
能動的なアクセスが必要。
受け手が「知りたい」と思って見に行く。
見える化 異常・問題の顕在化と改善の促進(行動変容) 設定したKPIが危険水域に達すると、
ダッシュボードの色が自動的に赤に変わる。
自動的・受動的に異常が分かり、
すぐに次の行動(原因究明、対策)が始まる。

なぜ今「見える化」が注目されているのか

現代の企業が「見える化」を必須とする背景には、主に次のような要因が考えられます。

  • 業務の属人化解消と標準化: スキルやノウハウが特定の社員に集中している状態(属人化)は、退職や休職で業務が停滞するリスクを高めます。業務プロセスを「見える化」することで、誰でも同じ品質で業務を遂行できる標準化が可能になります。
  • リモートワーク環境下でのマネジメント: テレワークが普及し、上司が部下の働きぶりを直接見ることができなくなりました。進捗、業務負荷、タスクを「見える化」することで、公平な評価と適切なサポートが可能になります。
  • データドリブン経営の浸透: 勘や経験則だけでなく、客観的なデータに基づいて意思決定を行うデータドリブンな経営が求められています。大量のデータを戦略に活かすためには、「見える化」が不可欠です。

見える化によって得られるメリット

「見える化」は、組織のあらゆる面にポジティブな影響をもたらします。ここでは、企業が得られる具体的な3つのメリットを深掘りします。

業務のボトルネックを早期発見できる

業務プロセス全体を「見える化」することで、特定の工程で作業が停滞する「ボトルネック」を客観的に特定できます。

たとえば、慣習的に行っている「無駄な会議」「不要な承認ステップ」「重複したデータ入力」といった、これまで気づかれなかった「ムダ」をフロー図上で可視化できます。

また、担当者ごとのタスク量や残業時間、対応件数などを「見える化」することで、特定の社員に業務負荷が集中している「ムリ」や「ムラ」を解消し、業務を適切に再配分できます。

チームの生産性やモチベーションが向上する

「見える化」を進めることで「自分たちが設定した目標に、自分たちがどれだけ近づいているか」をリアルタイムで感じられるため、モチベーションの向上に繋がります。

チームの目標(KPI)や他のメンバーの進捗状況が常に「見える」ことで、自分が今何をすべきか、チームにどう貢献できるかが明確になり、目標達成への意識が向上する効果も期待できます。

さらに、個人の業務負荷や成果が明確になるため、マネージャーは公平に評価しやすくなります。また、メンバー間でもお互いの状況を理解し合えるため、相互の信頼感が高まり、協力体制が強化されます。

意思決定のスピードと精度が上がる

経営層やマネージャーにとって、「見える化」されたデータは、激しい市場の変化に対応するための生命線となります。

たとえば、特定の製品の在庫が予測以上に早く減っていることがダッシュボードで赤色(異常)として「見える化」された場合、すぐに生産計画の見直しやプロモーションの調整といった戦略的なアクションを取ることができます。

見える化の課題・デメリットも理解しよう

数々のメリットが期待できる「見える化」ですが、リスクやデメリットも存在しています。

それぞれ、対策とともに解説します。

情報共有の手間やコストが増える場合もある

「見える化」を導入する初期段階、あるいは運用段階で、現場の負担が増えることがあります。

業務時間外に進捗報告のためのデータ入力や、マニュアル作成を求められるなど、現場担当者の「見せるための作業」が増加し、本業がおろそかになるリスクがあります。

対策としては、「データ入力は極力自動化する」「既存システムとの連携を前提とする」など、現場の負担を最小限に抑える設計が不可欠です。

また、一時的な苦労はあっても、将来的には「見える化」することによって現場のメンバーにもメリットがあることを説明することも大切です。

混乱や不信感が生じるリスク

個人の作業時間やタスク完了率などが細かく「見える化」されると、社員が「評価を下げるための監視」だと感じ、心理的安全性が低下したり、見せかけの残業が増えたりする可能性があります。

このため、「このデータは『誰が・何のために・どのように使うのか』」という目的とルールをセットで周知徹底することが、信頼構築の土台となります。

目的を明確にしない「見せるだけ化」の危険性

「見える化」失敗の最大の原因は、「見える化」をすること自体が目的化することです。この状況を言い換えれば「見せるだけ化」とも呼べるでしょう。

失敗例:行動に繋がらないKPIの設定
「WebサイトのPV数(ページビュー数)」を毎日ダッシュボードで公開しても、それだけでは「なぜ増減したのか」「次は何をすべきか」という改善アクションには繋がりません。

 

成功例:行動に繋がるKPIの設定
「WebサイトのPV数」ではなく、「資料請求数(コンバージョン数)」「資料請求率」「CPA(顧客獲得単価)」といった、利益や行動に直結する指標を追うことで、初めて改善施策の議論が始まります。

 

「見える化」は、「次のアクションを起こさせるためのトリガー」であり、改善プロセスの一歩目であることを決して忘れてはいけません。

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業務を見える化する具体的な方法とツール

ここでは、業務の「ムリ・ムダ・ムラ」を解消し、生産性向上に直結する具体的な「見える化」の手法を、レベル別、課題別に紹介します。

業務プロセスを可視化する「業務フロー図」を作成する

業務プロセス全体を把握する最も基本かつ重要な手法です。特に、Swimlane(スイムレーン図)という手法は、誰がどの工程を担当しているかを明確にするのに役立ちます。

ステップ 内容 目的
1. 業務の洗い出し 担当者へのヒアリングに基づき、
業務の「開始」から「完了」までの
全作業を漏れなく書き出す。
属人化している暗黙知を言語化する。
2. スイムレーンの設定 図を縦軸(または横軸)で部門や
担当者別に区切り(これがスイムレーン)、
誰がどの作業を担当するかを明確にする。
担当の切り替わりや責任範囲を明確化する。
3. ボトルネックの特定 図上で「待機時間」「手戻り(矢印が戻る)」
「意思決定の分岐点」が多い箇所に印をつけ、
関係者全員で共有する。
業務の停滞箇所(ボトルネック)を特定し、
無駄な工程を削減する。

業務フロー図は、マニュアル化やシステム導入の土台となるため、必ず現状を正確に表現し、その後に理想のフロー図を作成し比較することが重要です。

KPIや進捗を「ダッシュボード」で見える化する

目標達成に向けた状況をリアルタイムで共有するために、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールやプロジェクト管理ツールを活用したダッシュボードは不可欠です。

部門 追うべき具体的なKPI例 「見える化」で達成できること
営業 パイプライン進捗率、案件ステージ別件数、
受注率、顧客単価
受注予測の精度向上、
営業プロセスのボトルネック特定
マーケティング CPL(リード獲得単価)、
MQL(見込み客)数、
Webサイトのコンバージョン率
費用対効果の明確化、
次の施策への予算配分判断
カスタマーサポート MTTR(平均解決時間)、
NPS(顧客推奨度)、対応件数
顧客満足度向上、
サポート担当者の負荷分散
開発/プロジェクト タスク完了率、進捗の遅延状況、
バグ発生率、工数実績
スケジュールの遅延防止、
リソースの適切な再配分

KPIを「見える化」する際は、「赤(危険)」「黄(注意)」「緑(正常)」といった色分け(信号方式)を導入し、異常が一目で分かるように設計することで、行動への繋がりを強化します。

ナレッジ共有ツールで情報を一元管理する

知識やノウハウといった「情報」を「見える化」し、組織全体の共有財産にする手法です。

  • ツールの活用: GoogleWorkspaceやNotion、SharePointなどのナレッジ共有ツールを導入
  • 検索性の担保: 単に情報を溜め込むだけでなく、タグ付けやフォルダ構造を整備し、「知りたい情報に3クリック以内で辿り着ける」状態に
  • Q&Aの公開: 部署内で頻繁に繰り返される質問と回答(FAQ)を公開・蓄積することで、「聞くムダ」を削減し、新入社員のオンボーディング(研修)効率を大幅に向上

【事例】B2B企業の「見える化」成功事例

具体的な事例を通じて、「見える化」がどのように効果を発揮するかを見てみましょう。

業界 課題 導入した「見える化」 成果
製造業 在庫の過剰/欠品、
納期遅延が頻発
各工程の進捗と在庫数を
リアルタイムでIoT/ダッシュボード化
納期遅延率を15%削減、
在庫コストを10%削減
ITサービス業 プロジェクトの属人化、進捗が不透明 タスク管理ツール(カンバン方式)と
工数管理を連携
プロジェクトの遅延リスクを早期検知し、
手戻り率を半減
コンサルティング 顧客情報やノウハウが個人PCに散在 CRM/SFAツールを導入し、
営業進捗と顧客との過去接点を一元化
営業チーム全体の契約率が向上し、
新規案件獲得までのリードタイムが短縮

見える化を成功させるためのポイント

「見える化」の取り組みを定着させ、継続的な改善に繋げるための、組織的な成功ポイントを解説します。

目的を明確にしてからツールを選ぶ

「見える化」失敗の多くの原因は、「導入ありき」で進めることにあります。ツール選定の前に、以下の問いに答えましょう。

  1. 解決したい最大の課題は何か?(例:残業時間の多さ、顧客満足度の低さ)
  2. その課題の原因として、何が見えていないのか?(例:メンバーの業務負荷、お客様が離脱する原因)
  3. その情報が「見える」ことで、現場の誰が、どんな行動を起こせるようになるのか?

ホワイトボード一枚で解決できる課題に、数千万円のBIツールは不要です。「課題解決に必要な情報と、それを伝えるための最適な手段」を逆算して選びましょう。

関係者が見やすく理解しやすい形にする

情報を「見せる」側の都合ではなく、「使う」側の視点に立って設計することが極めて重要です。

  • パーソナライズ: 経営層には財務的なサマリ、現場担当者には自身のタスクの進捗、マネージャーにはチーム全体の負荷状況など、立場や役割に応じて必要な情報だけを表示する設計にしましょう。
  • シンプルさの追求: 複雑な棒グラフや、多すぎる指標は、かえって情報のノイズとなります。最も伝えたいメッセージを「一目で」理解できるよう、デザインと情報量を最適化します。
  • フィードバックの継続: 導入後も「見にくい」「この情報は不要」といった現場からのフィードバックを積極的に取り入れ、生きているダッシュボードへと改善を続けましょう。

定期的に運用を見直し、改善を重ねる

業務改善は一度きりで終わりません。「見える化」の仕組み自体も、時代の変化や組織の成長に合わせて進化させる必要があります。

  • PDCAサイクルの組み込み: 見える化によって問題を発見し、対策(Action)を実行した後は、その効果が本当にあったかを再度ダッシュボードで検証(Check)し、次の改善計画に繋げるサイクルを回し続けます。
  • 情報の棚卸し: 半年に一度、「このKPIは、今も目的達成に貢献しているか?」「このマニュアルは最新の状態か?」をチェックし、使われなくなった情報や指標は廃止・更新する情報の鮮度管理を徹底しましょう。

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まとめ|契約プロセスの「見える化」に電子契約を

この記事で解説されている通り、「見える化」のゴールは、「誰でも異常を発見でき、即座に手を打てる仕組み」を構築することにあります。

なお、業務の中でもとくに売り上げに直結しやすい「契約プロセス」においては、電子契約サービスの導入が見える化の手段としておすすめされます。

電子契約とは、従来の「紙と印鑑」の契約業務を電⼦化することで、作業時間とコストを⼤幅に削減することができる仕組みのことです。

【電子契約のイメージ】

クラウド型電子署名サービスを用いた電子契約のイメージ図

電子契約システムの導入は、単なるペーパーレス化に留まらず、顧客や取引先との「契約」という重要な業務プロセスに、「見える化」の核心を導入することでもあります。

電子契約サービスを導入することで、これまでブラックボックスだった取引プロセスが完全に「見える化」されます。

  • 「今、契約書は誰のところで止まっているのか?」
  • 担当者に渡っているが、署名期日が迫っているのにアクションがない」

といった、紙の時代には追跡不可能だったプロセスの異常(遅延)が、ダッシュボード上でリアルタイムに「赤信号」として自動的に顕在化されます。

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この記事の監修者

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高桑清人

中小企業診断士

前職ではBPO企業にて12年間、業務設計・品質管理・人材マネジメントなどの管理業務に従事。独立後は中小企業の経営支援に携わり、新規事業の立ち上げや事業計画策定を伴走型で支援。学習塾講師として16年・1万時間超の授業経験もあり、「聴く・伝える・支える」現場感を大切に活動している。

この記事を書いたライター

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業務改善プラスジャーナル編集部

業務改善は難しそう、大変そうという不安を乗り越え、明日のシゴトをプラスに変えるサポートをします。単なる業務改善に止まらず、組織全体を変え、デジタル化を促進することを目指し、情報発信していきます。契約管理プラットフォーム「クラウドサイン」が運営。

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