第二回  雇用契約書のチェックポイント

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雇用契約書を作成してくれといきなり上司から言われたとき、あなたはどうしますか?
法律の専門家ならポイントを理解した上で作ることは可能かもしれませんが、雇用契約書を作ったことがない人が大半だと思います。「いきなり作れと言われても、間違った契約書つくったら大変。とりあえずネットで検索してみるか」という方がこの記事を読まれているのではないでしょうか。
この記事では、法律や契約書という言葉に抵抗のある人が、雇用契約書を作るために必要な情報をわかりやすく解説します。

雇用契約書とは

雇用契約書とは、自社で雇用する従業員との間で締結し、主に労働条件等を明確にすることを目的として権利義務を定めた契約書です。
いきなり「雇用契約書」という難しい単語が出てきましたが、こういうときは、簡単にイメージしていくようにしましょう。
まず契約というのは、簡単に言えば人と人との約束です。つまり口頭の約束でも契約は成立します。
雇用契約というのは、会社側は「働いたら給料を払います」と約束して、雇われる方は、「会社のために働きます!」と約束することをいいます。

ここで、口約束でも契約できるなら、なぜ雇用契約書を作らないとならないのかと疑問に思う方も多いと思います。 口頭でも契約は可能なのですが、契約後になんらかのトラブルになったとき、大変なのは、「以前『○○』と言った!」「いやそんなこと言ってない!」と水掛け論になることです。
水掛け論になってしまうと、どちらが本当なのか判別が困難になり、結果的に本当のことを言っている方が裁判などで不利益な扱いを受ける可能性もあります。後々のトラブルを避けるために避けるために、雇用契約書を作成するのが一般的です。

雇用契約書作成の前に

雇用契約書を作成する前に、労働基準法を知っておく必要があります。

労働基準法とは

雇用契約書は、労働基準法に反しないように作成しなければなりません。 雇用契約は、会社と従業員となる人の間で締結される契約ですが、ここで大切なのは、一般的に会社と従業員はどちらの方が立場として強いか?という点です。
法律では就業できるかどうかは会社側が判断することなので、会社側の方が立場が強いとされています。 なんの規制もなく雇用契約を締結できるとなると、「一日20時間労働で土日出勤、月給5万円、いつでもクビにできる」という一方的な契約を締結させられる可能性が出てくることになります。
これを防ぐために労働基準法で契約できる内容を設定しています。そのため、雇用契約は労働基準法に反しないものでなければなりません。雇用契約書に、労働基準法に反した内容を記載してもその部分については無効となります。それを踏まえて、労働基準法に反しない契約書を作るためのポイントについて述べていきます。

就業規則を参照する

就業規則とは労働契約を締結している従業員が10人以上いる場合に制定しなければならない、会社と全従業員の間のルールが書いてあるものです。
この全従業員というのがポイントです。例えば、10人を雇用した後で労働条件を変更しようと思った場合、10人とそれぞれ契約内容を変更するのは大変です。 また、一人が「契約内容の変更なんてしたくない!」と言った場合、その人だけ変更をしないと他の従業員との間で不平等が生じかねません。
そこで、法律上、就業規則の内容を変更した場合、特別な事情のない限り全社員との労働条件の変更とすることができます。 就業規則は全従業員に適用されるルールですから、新しく従業員になる人に対しても就業規則に基づいた契約を締結する必要があります。そのため、雇用契約書を作成するには、必ず就業規則を参考にするようにしましょう。  

雇用契約書の記載事項

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これは弁護士監修の下で作成された、クラウドサインで契約書を作成する際に実際に使用されている雛形です。 無料登録をしてダウンロードすることも可能です。
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では、この雛形に沿って雇用契約書のポイントについて検討していきましょう。

 絶対に明示しないといけない項目

まず、労働基準法上、雇用契約を締結する場合に、必ず従業員になる人に明示しなければならない事項が決まっており、契約書等の書面で明示がされることが絶対的明示事項として定められています。
これについて、実際の業務とは異なることを伝えてしまった場合には、従業員は即時に契約を解除することができます。また、明示することを忘れてしまった場合、労働基準法違反として30万円以下の罰金が会社に対して課せられる可能性があります。これら事項について記載があるのかを注意して確認するようにしてください。

個別に決めて記載しなければならない項目

1.労働契約の期間に関する事項

終身雇用制は崩壊したとのニュースなどを見たことがないでしょうか?
終身雇用制とは、労働契約の期間が無期間であること、つまり定年まで雇用契約が継続することを前提として従業員を雇うことをいいます。最近は、ここに期間を設定して従業員を雇用することが多くなってきているため、終身雇用制が崩壊したとよく言われています。
そして、終身雇用なのか、期間付き雇用なのかは、きちんと明示をしないと従業員の人生設計そのものに影響しかねない事項なので、法律で必ず明示しなければならないことになっています。
期間の定めのない雇用契約の場合には、期間の定めを「なし」と記載します。

期間付き雇用の場合は、特例に当たらない限り3年が上限となっています。
仮に5年との期間と記載したとしても、3年を超える部分は無効となり、3年の期間付き雇用となります。
また、期限付きの場合は、契約更新の有無とその判断基準についても明示する必要があります。

2.就業の場所及び従事すべき業務に関する事項

東京勤務と聞いていたのに突然北海道や沖縄の支店に転勤になったら物理的に通勤ができなくなってしまいます。そのため、事前に就業場所を明示することが法律で定められています。
さらに、業務内容に関しても事前に明示することが求められます。

 就業規則を参照しながら記載できる項目

3.始業及び就業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項

4.賃金の決定

5.退職に関する事項(解雇の事由も含む。)

6.昇級に関する事項

これらの3〜6の記載事項については、就業規則が作成されている場合には就業規則に記載があります。

パートタイム従業員に関しての例外

 パートタイムの従業員とは、1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の職員の1週間の所定労働時間に比べて労働時間が短い職員のことをいいます。このようなパートタイムの従業員に対しては、法律上以下の事項をプラスして明示します。

 派遣社員について

派遣先の会社と派遣社員は雇用契約ではないので、雇用契約書は作成しません。 派遣社員を自社の従業員と混同して雇用契約書を作成してしまうことも少なくないため、注意が必要です。

場合によって明示しなければいけない項目

1.退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払いの時期に関する事項

2.臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及び最低賃金額に関する事項

3.労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項

4.安全及び衛生に関する事項

5.職業訓練に関する事項

6.災害補償及び業務外の病床扶助に関する事項

7.表彰及び制裁に関する事項

8.休職に関する事項

これらの事項については、契約時に絶対に明示する必要はありません。しかし、従業員に交通費を負担してほしい場合などには、従業員になる人に対して、「あなたが交通費を負担してください」と明示しなければいけません。このように、条件を定めた場合には明示が必要な事項を相対的明示事項といいます。相対的明示事項についても、基本的には就業規則に記載されています。

出向・転籍について

出向とは、所属する会社に在籍したまま、他の企業の労働者としても働くことをいい、原則として所属企業に復帰することが予定されている場合が当たります。 出向を命令した場合、従業員は就業場所が変わり生活環境も変更を余儀なくされることになります。そこで、企業が従業員に対して出向を命令するには、契約に基づいている必要があるとされ、雇用契約書に出向命令ができることを記載しておく必要があります。 転籍とは、所属企業を退社し、他の会社の従業員として働くことをいい、所属企業に復帰することが予定されていません。退社までさせるという点で、従業員に不利益が生じるおそれが非常に高く、会社が転籍を命令することはできないとされています。したがって、転籍できると事前に契約書に書いたとしても、結局転籍命令をする時点で従業員の同意を得なければならないため、契約書に明記されない場合も多くなっています。
以上の項目に注意して正しく雇用契約書を作成しましょう。

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