第三回  業務委託契約書のチェックポイント

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業務委託契約は、企業活動で頻繁に利用される契約類型ですが、同時にトラブルを招きやすい契約でもあります。ここでは、トラブルを未然に防止するという観点から、契約の際に最低限注意しなければならないポイントについて説明します。

業務委託契約書とは

業務委託契約は、自社で業務をすることが困難な場合に他社に業務を任せる契約を締結するという、いわゆる外注と呼ばれるものがこれに当たります。
雇用契約と異なって労働基準法が適用されない点で、契約内容を自由に決定できます。しかしその反面、契約書で明確に定めないと後にトラブルに発展しやすく、契約書で合意内容を明記していくことが重要です。
特に委託業務の範囲、当該委託業務の報酬額又はその算定方法についてトラブルになりやすいことから、これら事項に注意して業務委託契約書を作成する必要があります。

基本的な記載事項

委託業務の内容

業務委託契約によくあるトラブルとして、「この業務は自社が依頼された業務ではない」と業務を拒まれる場合、「業務をしたんだから対価を支払え」と不必要な業務について対価を請求される場合などがあります。
業務内容の範囲が不明確なため争いになっていることが多く、契約書の中で業務の範囲を具体的に明記していくと良いでしょう。 定め方としては、業務内容を列挙していく方法、業務内容の詳細までを明記する方法などがあります。

業務内容を列挙していく方法
例)

業務内容の詳細までを明記する方法
例)
甲が指定するシステムを開発する業務のうち、利用者の決済に関わるシステムの開発及びワークフローに関わるシステムの開発に限る

業務委託料及び支払方法

業務委託料の定め方としては、報酬額を定める方法と、報酬額の算定方法を定める方法の2通りがあります。 報酬額を定める方法は、「金1,000万円」のように明確に報酬額を定める方法となります。報酬額の算定方法は、「1時間当たり、金2万円」のようなタイムチャージ方式による算定方法や「総売上額の50%相当額」のようなレベニューシェア方式による算定方法があります。
ここでも、何をもって総売上額とするのか、例えば税額も含めるのか等、後にトラブルになる可能性があるため、契約書に総売上額の定義規定を置いておくとよいでしょう。

個別的記載事項

成果物の納入場所及び方法

システムや製品等を制作する業務を委託する場合、できあがった物(以下「成果物」とします)の納入方法を定める必要があります。
成果物を北海道の自社倉庫に届けて欲しいのに、受託者が東京の自社倉庫に届けてしまった場合、委託者と受託者のどちらが成果物の北海道への移動費用を負担するかトラブルが生じます。また、納入の遅れによってビジネスに損害が生じた場合、その損害の責任をどちらが負うのかについても争いになりえます。
そのため、成果物が生じる業務委託契約では、納入場所と方法について具体的に明記するよう注意して下さい。その他、納入完了となるまでには、委託者による検収に合格しなくてはならないといった手続を課すことも一般的です。検収に関わる規定としては、検収期間、検収期間までに通知を行わなかった場合のみなし規定、検収に不合格だった場合の無償での補修義務などといった事項を定めることとなります。

条項例:甲は、前項に従い納入物の納入がなされた日から個別契約で定める検収期限までに、検収を実施し、分量不足、品質不足等を含む内容の検収結果を乙に通知する。なお、同期限までに甲から乙に対し何らの通知が発せられないときは、同期限が経過したときに検収に合格したものとみなす。

成果物に関する権利

委託業務の遂行により生じた成果物の所有権、知的財産権などの権利について定める必要があります。
委託者としては、「成果物の発生と同時」に委託者に知的財産権を移転するように定めることが有利な定め方ですが、「納入完了と同時」又は「委託業務に係る報酬の支払完了と同時」といった時点で権利移転するような定め方をする場合もあります。
受託者としては、成果物に関する知的財産権を全て委託者に対して譲渡してよいかを検討する必要があります。例えば、「モジュール」、「ルーチン」等の汎用的に用いられるものに関しては、受託者は再利用可能であり、かつ成果物のうち特定することが比較的容易であるという性質から、委託者に対し知的財産権を譲渡せず、受託者に留保しておくことも考えられます。この場合においても、当事者の暗黙の合意として委託者に対して当該部分に関しては利用許諾していると解される可能性が高いですが、契約書上に明確に定めておくことが安全です。

条項例:乙が本件業務を遂行する過程で行った発明、考案等又は作成した一切の成果物から生じた、著作権(著作権法第27条及び第28条の権利も含む。)、商標権、意匠権、特許権その他の権利(以下総称して「知的財産権等」という。)については、乙から甲に対する納入物の納入と同時に、乙から甲に移転する。

瑕疵担保責任

納入後に成果物の不備が発見された場合、一定期間内は無償で不備を是正しなければならない責任を瑕疵担保責任といいます。
何をもって瑕疵となるかは契約当事者の意思から相対的に判断されるものであるため、契約書に明記していない場合には後にトラブルになり得ます。事前に契約書で特定しておくと良いでしょう。その方法としては、仕様書の内容と一致しない場合などを瑕疵の対象とするなどがあります。
また、瑕疵担保義務を負う期間として任意の期間を定めることができ、受託者側としては報酬額に比して負担が過大とならないよう3ヶ月〜6ヶ月程度に限定しておくことが合理的です。特にインターネットサービス開発の場合には、当初の仕様書から変動する可能性があること、及びバグが生じやすい性質を有することなどから、期間を限定することが合理的であると考えられています。

条項例:乙が前条に従い甲に対して納入した納入物に関し、甲が納入時に発見できなかった瑕疵が発見された場合、上記表に定めた期間内に発見された瑕疵に限り、乙は、当該瑕疵の原因を究明し、甲の指示に従い無償にて修補する。

秘密情報の管理義務

昨今、業務委託先からの情報流出事案もみられ、秘密情報を保護する必要性が高まっています。特に、自社のシステムやサービスの開発を委託する場合には、将来の事業情報を委託先にも開示することになるため、情報流出によってビジネスに多大な支障が生じることがあります。
そのため、秘密情報管理について厳密に契約書に記載するよう注意してください。 なお、受託者が業務を下請けに出す場合には、下請け業者から情報が流出する可能性があります。
業務委託契約は基本的には委託者と受託者間の契約のため、下請け業者が情報流出した場合の損害をどちらが負担すべきかトラブルになることも想定されます。そのため、下請け業者等、受託者以外の会社の従業員が業務に関与する場合には、当該従業員に対しても、受託者が秘密保持を徹底させる旨を契約書に記載した方が良いでしょう。また、企業の営業情報は、不正競争防止法に定める要件に合致した場合(同法第2条第4号乃至第9号)には保護されることになりますが、営業秘密の範囲が明らかではありません。そこで契約書では、より広範に秘密情報を定義付け、受託者の義務の対象とすることが合理的です。また、委託業務の遂行上、ユーザー等の個人情報を取扱う機会もあり、秘密情報の取扱いと並び、個人情報の取扱いについての条項を設ける必要もあります。

条項例:甲及び乙は、秘密情報について、本契約及び個別契約の目的の範囲内でのみ使用するものとし、当該目的の範囲を超える複製又は改変が必要なときは、事前に相手方から承諾を受けなければならない。

損害賠償

委託者としては、受託者が適切に業務を遂行しない場合等で損害を受けた場合には、当該損害の全てを受託者に請求できるようにしておく必要があります。
一方で、受託者としては、委託業務の遂行上で意図せぬ損害を委託者に対して与えてしまう場合があります。当初想定していなかったエンジニアの退職などにより、納入が遅延してしまうといった事態も考えられます。しかしながら、損害賠償の金額が、業務委託による報酬額を上回ってしまう場合など、報酬に比してリスクが過大になるケースも想定されます。このような事態に備え、受託者としては損害賠償の金額が報酬額を上回らないとの上限を設定する方法もあります。

条項例:甲及び乙が、本契約又は個別契約に関連し、相手方の責めに帰すべき事由により損害を受けた場合は、相手方に対し、当該損害を賠償することができる。但し、当該損害額は本契約に定める委託料の額を上限とする。

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