印紙税の税務調査とは?印紙税調査対応の実務とポイント

紙の契約書に収入印紙を貼ることで納付する印紙税。納付漏れが税務調査により発見されると、印紙税法違反として企業のレピュテーションリスクにもつながります。

実際の国税局・税務署による印紙税の税務調査がどのように行われるのか、ポイントをまとめました。

印紙税税務調査の位置付けと管轄

印紙税の税務調査は、その契機(きっかけ)や対象企業の資本金の額により、調査の位置付けおよび管轄が異なります。

同時指導か単独調査か

同時指導とは、法人税や所得税の税務調査の際に、不納付文書が見つかったことをきっかけとして行政指導を行うものをいいます。一方、単独調査とは、印紙税のみを調査の選定税目として行うものをいいます。

調査の徹底度合いとしては、当然に同時指導より単独調査の方が上になります。なお、印紙税のみの単独調査がなされることは相当珍しいようです。私も10年以上担当した中で、単独調査を受けた経験は数回程度です。

管轄する税務当局は国税局か所轄税務署か

国税局が印紙税の税務調査を行うのは、資本金が50億円以上の会社が対象です。ただし、50億円未満であっても、国税局の判断により調査対象として指定されることがあります。上記以外の会社・会社以外の法人(協同組合など)・個人は、原則として税務署による調査の対象となります。

なおこの「資本金50億円」をボーダーラインとする区分は、法律や通達には記載されていません。東京国税局の電話相談センターにこの区分の根拠を取材したところ、内部の事務運営規程に定められているのみとのことでした。

東京国税局

調査の具体的な流れと手法

以下、一般的な印紙税税務調査の流れと手法について、ポイントをピックアップしてみます。

調査日は抜き打ちではなく打診がある

通常は、電話により実施予定日から2週間程度の間をおいて打診があり、会社都合と調整して調査日を決定します。印紙税の調査については、労働基準監督署の臨検などとは異なり、突然来訪されて抜き打ちで行われる、ということは滅多にありません。

企業の担当者は、この連絡を受けてから調査日までの期間に、説明資料や契約書を準備することになります。

当日の手順

企業規模や、契約書の管理状況等によっても変わってくると思いますが、経験上、当日は以下の3つを軸に調査が進められます。

  1. 会社概要・決算書・総勘定元帳・社内規程等の閲覧
  2. 契約書等課税対象文書の調査
  3. 担当者へのヒアリング

調査官用の作業部屋を提供

調査官の作業のための部屋(会議室)を用意し、契約書ファイルをまとめて閲覧できるような環境を提供できることが望ましいです。

普段来客用に使う会議室を提供することで十分でしょう。

調査期間はおおよそ2日

期間については、会社規模や契約書の通数次第と思われますが、1〜2日程度の調査で終了することが多いと思います。

調査のリアルな実例紹介

課税物件となる契約書に対し、収入印紙が適切に貼付され消印されているかを、職員が直接チェックします。

押印管理簿等を閲覧し、会社のすべての押印書類について連番を振るなどの管理が徹底されていれば、それらの書類の閲覧と、その範囲で発見された納付漏れ等が指摘されるだけで終了するのが通常です。しかしながら、そうした管理がなされていない場合は、さらに徹底した調査手法が取られることがあります。

調査の徹底度合いは調査官次第

以下は、都築巌「印紙税調査の実際と税理士対応」(税経通信2015.09)で紹介されている事例です。

印紙税の納付漏れによって発生する2大ペナルティ

契約書に収入印紙を貼り忘れ、納付漏れとなった場合の主なペナルティとして、過怠税とレピュテーションリスクの2つがあります。

過怠税

納付漏れがあった場合、原則としては、納付しなかった印紙税の額に加えてその2倍に相当する金額との合計額、つまりもともと納付すべき印紙税の額の3倍に相当する金額が徴収されることになります。これを過怠税(かたいぜい)といいます(印紙税法第20条1項)。かなり厳しいペナルティです。

そのため、救済を目的として第20条2項に以下のような規程があり、自主的に不納付を申し出たときは、これが1.1倍まで軽減される措置が適用されます。

第二十条 (1項省略)
2 前項に規定する課税文書の作成者から当該課税文書に係る印紙税の納税地の所轄税務署長に対し、政令で定めるところにより、当該課税文書について印紙税を納付していない旨の申出があり、かつ、その申出が印紙税についての調査があつたことにより当該申出に係る課税文書について国税通則法第三十二条第一項(賦課決定)の規定による前項の過怠税についての決定があるべきことを予知してされたものでないときは、当該課税文書に係る同項の過怠税の額は、同項の規定にかかわらず、当該納付しなかつた印紙税の額と当該印紙税の額に百分の十の割合を乗じて計算した金額との合計額に相当する金額とする。

この申し出を行うにあたり、いつまでにといった期限はあるのでしょうか。たとえば、税務調査で指摘を受けるまで気づかなかった場合、自主的な申し出とはならないのでしょうか。

この点、税務調査の実務では、条文中の「前項の過怠税についての決定があるべきことを予知してされたものでないときは」の範囲が幅広く解釈されて運用されており、よほど悪質な事案でない限り、指摘を受けて「印紙税不納付事実申出書」を税務署に提出すれば、過怠税は1.1倍で済むことがほとんどと言われています(八ツ尾順一『入門税務調査』法律文化社、2014年)。ただし、調査官によっては対応が異なる場合もありますので、注意が必要です。

印紙税不納付事実申出書

レピュテーションリスク

現実問題として、過怠税よりも影響が大きいのは、印紙税の納付漏れ事件として報道されることによるレピュテーションリスクです。

意図的なものではなくても、まるで脱税事件かのように報道されてしまうおそれがあります。

電子契約なら印紙税は不課税

収入印紙を貼るべき契約書をもれなく把握し、税額判定を誤らないようにないようなチェック体制を用意するのは、印紙代以上に体制維持コストがかかります。

そうしたコストを削減するためにも、印紙税が不課税となり、税務調査リスクも回避できる電子契約の導入をご検討いただければと思います。

電子契約で印紙税が課税されない理由は、関連記事のリンクからご確認いただけます。

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(2018/08/15 橋詰改訂)