InsurTech(保険テック)のjustInCaseが保険約款をGitHubに公開

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ついに、日本の有償サービスでも、GitHubを使った契約のバージョン管理に本格的に取り組む企業が現れました。プルリク受付中ということで、早速サインのリ・デザイン編集部からも記念プルリクしてみました。

保険約款をGitHubに公開しプルリク受付中

その企業とは、スマートフォンの少額短期保険サービスを提供するInsurTechベンチャー、株式会社justInCaseです。

株式会社justInCaseウェブサイトより https://justincase.jp/

今回の、保険約款のGitHub公開という取り組みに込めた思いについて、同社がプレスリリースを出しています。

約款は保険契約の契約内容が記載されたものですが、一般に必ずしも保険に精通していない消費者には読みやすいものとはなっていません。(中略)スマホ保険の約款を、ITエンジニアの世界では使用が当たり前となっている、Git上にアップさせていただくことで、以下の達成を目指します。

1 Githubにおいて、保険業界関係者、法曹界関係者、規制当局関係者、そして一般ユーザーからのコメント(Gitの専門用語ではプルリクエストもしくはプルリクと呼ばれます)を受け付ける
2 受け付けられたプルリクは、当社がレビューを行い、変更可能性を検討する
3 今後、いただいたプルリクを元に、よりわかりやすい保険約款として、アプリで加入する保険のスタンダートとなる約款を作成していく

当社のGithubページはこちらです:https://github.com/justincase-jp

海外におけるInsurTechの先駆けである、家財保険サービスのLemonade社も同様の取り組みを行なっていますし、日本でも、一部のウェブサービスでGitHub上に利用規約と変更履歴を公開している企業・団体はちらほらとはありました。

しかし、具体的に事業を行いながらここまで積極的かつ具体的に改善のためのプルリク(変更提案)を募っている企業は、私の知る限り日本では存在していなかったはずで、素晴らしい取り組みだと思います。

justInCaseが提供するスマホ保険とは

justInCaseが提供するスマホ保険とはどんなものなのか。保険約款を読んで改善提案をしようにも、まず先にサービスを理解する必要がありそうです。ということで、ちょっと入り口だけ試しに触ってみました。

保険商品にありがちな対面販売や書類手続きといった面倒を一切廃し、アプリだけで加入できるというのが一番の特徴になっています。また、ユーザー同意のもとスマホのセンサーや位置情報を取得し、スマホの取り扱い状況や本人の活動量を把握して、そこからはじき出した「安全スコア」に応じた保険料の割引も提供されるようです。

justInCaseスマホ保険のサービス概要

実際に申し込みプロセスを試してみると、

といったステップが、非常にわかりやすいUIとイラストで案内され、誰でもスムーズに手続きができるようになっています。

中でも、他のアプリサービスのこうした手続きになかった印象的なプロセスが、「スマホ自撮り」です。

動画による「スマホ自撮り」で保険対象の現在状態を確認

「大きな鏡を前に自撮りモードでスマホを動画で3〜10秒撮影せよ」というガイダンス。おそらくなのですが、写真ではなくあえて(改ざんしにくい)動画でアップロードさせるのは、こうした非対面で加入する保険サービスのノウハウなのかもしれません。

一方で、少し疑問を感じたのが、スマホの破損を補償するサービスなのにもかかわらず、すべての手続きをスマホアプリを介して行うようになっている点です。

アプリが操作できないようなレベルの破損や水没が発生した場合には、保険証券の確認も保険金請求手続きも、アプリからはできなくなってしまいます。約款には、ウェブサイトの「マイページ」からも請求できるというような記載があったのですが、私がサイトを拝見した限り、その入り口が分かりませんでした。このあたりが加入前にもう少し分かりやすくなっていると、安心して加入できるかもしれません。

記念プルリクを出してみた

ということで、早速ですが、GitHubに記念カキコならぬ記念プルリクしてみました!

GitHub上でjustInCase保険約款に出されているプルリク一覧

残念ながらhiro-osanoさんという先客がいらっしゃましたので、2getとなりました。時間軸をみると、プレスリリース前のプルリクなので、中の人なのでしょうか。Twitterの法務クラスタにも知られたエンジニア hajimetakase さんもプルリクされていますね。

サインのリ・デザインでは、これまでもGitHubのようなテクノロジーを活用した契約管理の手法をご紹介してきました。その度に、「法務業界の一般的なITリテラシーでは、GitHub利用の難易度は高く、壁は乗り越えられないのではないか」という感想を耳にします。そうなると、冒頭引用した会社の狙いとは異なり、法曹界関係者や規制当局関係者からのコメントは得られないかもしれません。

しかし、仮にそうだったとしても、GitHubにこうしたリーガルドキュメントが次々と公開されていくことで、少なくともエンジニアの皆さんからは契約の世界の「常識」「当たり前」にとらわれない素朴な疑問や意見が寄せられる文化が育つことが期待できると思っています。会社としても、そうしたエンジニアからの率直な声が得られるだけでも、成果ありと言えるのではないでしょうか。

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(橋詰)