Clauseが「法律家にはスマートコントラクトのコードが書けない」問題を解決する


自然言語で読み書きする契約書をコンピュータが読めるコードに置き換える高機能エディターを核に、スマートコントラクトを誰でも扱えるようにしたサービス、それがこのClauseです。

コンピュータ言語で記述する「スマートコントラクト」により契約の履行までを自動化

リーガルテックの中でも、実用化されたときの影響の大きさの観点から特に注目されているのが、「スマートコントラクト」です。

スマートコントラクトとは、人間が紙と言語で行なっていた合意をコンピュータが読める言語(コード)に置き換え、機械がこれに従って契約を履行する仕組み をいいます。

たんに署名や印鑑を電子に置き換えただけでなく、人間の契約解釈やアクションを介さずに契約の条件とコンピュータとを直接連させるところがポイントです。たとえば、契約書に書かれた期日が到来し所定の条件を満たしていたら、そこに書かれた金額について自動的にクレジットカード決済を行うなど、これまでの紙の契約書では実現しえなかった「履行の自動化」までが実現できます。

Clauseは、こうしたスマートコントラクトを、非常にわかりやすいユーザーインターフェースで作成・締結できるサービスです。

https://vimeo.com/292121428 より
https://vimeo.com/292121428 より

Clauseの基本的な機能は、

  1. Word・PDF契約書を取り込んでスマートコントラクトを作成できるエディタ機能
  2. 他社電子サインサービス「HelloSign」と連動する契約締結機能
  3. 他社決済プラットフォームサービス「stripe」と連動する決済機能

この3つから構成されていますが、特徴は1のエディタ部分にあります。この記事ではこの点に注目してみたいと思います。

コードが書けない法律家でもIoT連動契約を作成できる

契約書に電子署名をしクレジットカード決済まで連動させる。たしかにこれは紙の契約書ではできないことです。しかしこのレベルであれば、日本でも弁護士ドットコムのクラウドサインペイメントがすでにこれを実現しているとおり、それほど驚くような機能ではありません。

このClauseが注目されているのは、そのもう一歩先の、人間が読み書きできる言語(英語)と機械が読める言語(コード)がリンクする「Smart Clause」をかんたんに編集し埋め込むことができ、かつ、それをブロックチェーン上で記録・実行できる ようにした点にあります。

たとえば、こんな使い方ができます。下記画面の赤いテキストボックス部分が、“fragile-goods”と名付けられたSmart Clauseの例です。このように、WordやPDFから取り込んだ契約書の中に、モジュールとしてあからじめClause社が用意したスマート条項を入れ込みます。

https://vimeo.com/293987292 より
https://vimeo.com/293987292 より

製造物供給契約において壊れやすい物品を納品する場合、運搬中に強い衝撃が加われば、受領した物品の品質劣化につながります。そんなとき、これまでの(紙の)契約書における購買者の防御策としては、

  • 購入者による検品条項を設ける
  • 全数検査はできないのでサンプリングチェックして、壊れている割合ごとに事前に定めた違約金を支払う

という内容にしておくのが精一杯の防衛策でした。

ところが、このClauseのスマートコントラクトを使えば、IoTデバイスとしての加速度センサーを用いて、所定の加速度を超える衝撃がセンサーで検出されるごとに、契約金額(支払金額)を減額するという条件を設定 、契約金額からの減額の計算も自動で行ってくれます。

Additionally the Equipment should have proper devices on it to record any shock during transportaion as any instance of acceleration outside the bounds of -0.5g and 0.5g.
Each shock shall reduce the Contract Price by 【x】 USD.

画像中段で棒状のカーソルが当たっている(上記引用【x】)部分に数字を入力すると、右側のカラムに見えているコードもリンクして自動で書き換わる仕組みです。これにより、実際にIoTデバイスで計測された加速度計のカウントに応じて契約金額が自動的に減額され、stripe上で決済まで済んでしまうわけです。

モジュールとしてあらかじめ用意されているSmart Clauseの条項例の豊富さも、Clauseのサービスの特徴の一つです(このSmart Clauseがどう作られているかもポイントなのですが、それについてはあらためて記事にしたいと思います)。

ここまでくると、スマートコントラクトが紙の契約書では絶対に実現できない次世代の契約であることが、お判りいただけると思います。

IBMプラットフォーム上で駆動するブロックチェーン契約

さらに、Clauseは創業初期からIT業界の巨人であるIBMと提携。スマートコントラクトをIBMが提供するブロックチェーンプラットフォーム上で駆動する仕組みとなっています。

https://vimeo.com/294769622 より
https://vimeo.com/294769622 より

こちらの画像は、アボカドの輸出入取引を行うスマートコントラクトのブロックチェーンステータスを表示したダッシュボードです。

契約を締結後農家から出荷されたアボカドが、温度・湿度をできるだけ保ちながら運搬業者、そして輸入業者へと渡る、こうした契約の締結と履行の過程がブロックチェーンに改ざん不可能なデータとして記録され、画面下のAudit Log(監査記録)として閲覧できるようになっています。

実際にブロックチェーン上で動くスマートコントラクトを実装したサービスやプロジェクトはすでにいくつか存在しています。そうした中での Clauseの優位性は、誰もが読み書きできる言語で書かれた契約書を書き換えるだけで、機械が読める言語(コード)も自動的に調整してくれる、使いやすいエディタを備えた点にあると言えます。

(橋詰)

契約のデジタル化に関するお役立ち資料はこちら

こちらも合わせて読む

電子契約の国内標準
クラウドサイン

日本の法律に特化した弁護士監修の電子契約サービスです。
さまざまな外部サービスと連携でき、取引先も使いやすく、多くの企業や自治体に活用されています。