FinTechオートローンの事例を使ってスマートコントラクトの定義を復習してみる

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グローバルモビリティサービス(GMS)社と西京銀行が提携し、先進的なFinTechサービスがはじまったようです。

▼国内銀行で初となるFinTechを導入した新マイカーローン開始
http://www.global-mobility-service.com/news/detail_180213.html

GMSは、自動車の遠隔起動制御を可能にする独自開発のIoTデバイス”MCCS”と”IoTプラットフォームシステム”を活用し、従来は与信審査に通過することができなかった人々へ、金融機関がオートローンを提供することを可能にしたFinTechサービスモデルを構築しフィリピンを始めとする周辺国に提供してきました。
従来のマイカーローンと異なり、本装置を活用してエンジン遠隔起動制御によるローン返済の促進など与信管理業務の高度化を実現し、お客さまの属性情報のみに依存しない”モノ(MCCS搭載車両)の価値”を基準とした新たな与信審査モデルを構築します。
本取組みにより、これまで利用が難しかった若年層や年金を受給している高齢層などを中心に幅広いお客さまにファイナンスの提供ができるものと考えており、西京銀行は、実績あるGMSのFinTechサービスモデルを活用し、国内全域において画期的なオートローンを提供していきます。

つまり、自動車ローンの返済が滞ったら、うむを言わさず遠隔で自動車のエンジンを止めるという強制力を発動させ、借主がお金を支払わざるを得ない状況にしてしまうというわけです。おそらく、通常のマイカーローンと同様、所有権留保条項もあるでしょうから、そのまま返済不能状態になれば、自動車ごと回収することも可能なのでしょう。

一見すると、これは非常にスマートコントラクト「的」なスキームに見えます。実際、以前このメディアでご紹介をした『スマートコントラクト本格入門』Kindle版926/3343(書籍版P70)にも、車のキーの開閉と決済を連動させるアイデアが紹介されています。発想や着眼点はこれとほとんど同じですね。

しかし、トップ画像にある今回のスキームをよく見てみると、実は大きな違いがあることがわかります。ポイントは、融資・返済の管理を<中央管理者>としての西京銀行が行い、支払いに異常が発生したら西京銀行がGMSに連絡し、GMSが遠隔制御でエンジン起動停止措置を施す、というスキームになっている点です。途中で中央管理者の手を介在させている点で、スマートコントラクトの定義である「人間が紙と言語で行なっていた合意をコンピュータが読めるコードに置き換え機械がこれに従って契約を履行する仕組み」からは外れることとなります。スマートコントラクト「的」ではあるけれど、厳密にはこれはスマートコントラクトではない、というべきでしょう。

もちろん、定義から外れるからといって、このサービスに問題があると言いたいわけではありません。あくまで、スマートコントラクトの定義とは何か、それまでの契約と何が違うのかを復習する事例として、ご紹介させていただきました。

こうした先進的な取り組みが早くも現実のサービスとして登場したということからも、ビットコインのような暗号通貨払いでローンを組み、支払いが滞ったらコードに従ってコンピュータが強制的にエンジン起動停止措置を施してしまう、そんな本当のスマートコントラクトが登場するのも、時間の問題でしょうね。

(橋詰)