議事録の電子化に関する法的規制と電子署名

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会社で行う会議の議事録には、署名・押印が必要なものがあります。これを電子化する場合の法的規制と電子署名の要件についてまとめました。

株主総会議事録の電子化に関する原則

まず会社の中でもっとも代表的な議事録といってよいであろう株主総会議事録についてです。

意外なことに、株主総会の議事録については、書面で作成した場合であっても、原則として記名押印義務はありません(会社法318条1項。ただし取締役会を設置していない会社が代表取締役を定める場合は、定款の定めに基づく取締役の互選による場合を除き、株主総会の決議が必要となり、このときは平成18年3月31日法務省民商第782号により、取締役全員の押印と印鑑証明書が必要)。

よって、これを電子化した場合については、後述する登記の例外を除き、押印に代わる電子署名をする義務はありません。

なお、株主等から閲覧又は謄写の請求があった場合のために、プリントアウトまたは映像として表示できるようにしておく必要があります(会社法施行規則226条1項17号)。

会社法:
第三百十八条 株主総会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない。
(略)
4 株主及び債権者は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。
(略)
二 第一項の議事録が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求

会社法施行規則:
第二百二十六条 次に掲げる規定に規定する法務省令で定める方法は、次に掲げる規定の電磁的記録に記録された事項を紙面又は映像面に表示する方法とする。
(略)
十七 法第三百十八条第四項第二号(法第三百二十五条において準用する場合を含む。)

取締役会議事録の電子化に関する原則

これに対し、取締役会議事録については、出席取締役・監査役が署名または記名押印することが義務として定められています(会社法369条3項)。

そして、これを電子化する場合には、各出席役員は記名押印の代わりに電子署名をすることが求められます(同条4項、会社法施行規則225条)。

会社法:
第三百六十九条 (略)
3 取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。
4 前項の議事録が電磁的記録をもって作成されている場合における当該電磁的記録に記録された事項については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。

会社法施行規則:
第二百二十五条 次に掲げる規定に規定する法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置は、電子署名とする。
(略)
六 法第三百六十九条第四項(法第四百九十条第五項において準用する場合を含む。)
(略)
2 前項に規定する「電子署名」とは、電磁的記録に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。
一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。

株主総会および取締役会議事録の電子化に関する例外と注意点

以上から、株主総会議事録は通常の電子ファイルで、取締役会議事録は電子署名した電子ファイルで議事録を作成しておけば問題ない、ということになるはずなのですが、ここで注意しなければならない点が2点あります。

(1)取締役会議事録に必要な電子署名の定義に関する解釈が定まっていない

まず、取締役会議事録に必要となる会社法施行規則225条の「電子署名」の定義について、法解釈が定まっていないという問題があります。

会社法施行規則225条2項を再掲します。

第二百二十五条 (略)
2 前項に規定する「電子署名」とは、電磁的記録に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。
一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。

実はこの電子署名を定義する条文は、以下の電子署名法2条1項をコピーして作られた条文です。

電子署名法における「電子署名」の定義

この電子署名法2条1項2号の要件「当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができる」については、いわゆる公開鍵暗号方式を用いる一般的な電子署名であれば、問題なく充足すると考えられています。

一方で、1号の要件「当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること」につき、どのような電子署名であればこの要件を充足するかについて、様々な見解 があります。

  1. 物理的なICカード・ファイル形式で格納した本人名義の電子証明書を用いたローカル署名のみ可とする見解
  2. クラウド等に格納した本人名義の電子証明書によるリモート署名も可とする見解
  3. クラウド等に格納した事業者名義の電子証明書によるリモート署名も可とする見解

この理由としては、電子署名法を立法した当時に、将来、電子署名法制定時には知られていなかった本人性や非改ざん性を証明するためのよりよい方法が見つかるかもしれない可能性を踏まえ、あえて条文をあいまいにしておいたことによります(関連記事:電子署名とは —電子署名法の基礎知識)。

上記3分類では、1のローカル署名タイプがもっとも厳格な電子署名ということになりますが、本条の解釈に関し3のリモート署名タイプでも電子署名法2条1項1号の要件を満たすとするノーアクションレターが出された例もあり、関係省庁の見解も一致していません。

(2)登記添付書類となる株主総会・取締役会議事録には特別な電子署名が必要

さらに注意が必要なのが、取締役の選解任など、登記事項に関わる株主総会の議事録についてです。

たとえば取締役の選任時には、登記申請時にその就任を承諾したことを証する書面を添付する必要があります(商業登記法第54条1項)。書面の場合、代表取締役および出席した取締役の実印による記名押印が必要です(商業登記規則61条4項)。

この登記申請を電子化するためには、添付する議事録にも実印に代わる電子署名が必要となりますが、この電子署名については「電子署名を行う者(情報の作成者)が登記所に印鑑を提出した者であるときは,電子認証登記所登記官が発行した電子証明書【編集部注:いわゆる商業登記電子証明書】に限る」とされています(商業登記法19条の2、商業登記規則36条ほか)。代表取締役は印鑑を提出しているためこの商業登記電子署名が必要となります。

加えて、法務局に印鑑を提出していない取締役や監査役等についても、以下 いずれかの特別な電子署名を全員が準備し利用する必要 があります。

詳しくは法務省のウェブサイト「商業・法人登記のオンライン申請について」にまとめられていますが、つまるところ、登記を管轄する法務省として、登記添付書類については自身が確認済みの電子署名に利用をとどめたい という思惑が強くあることが伺えます。

以上(1)(2)を総合すると、株主総会・取締役会議事録の完全な電子化には、電子署名に求められる要件が不明確または必要以上に厳格な点があり、また法務局の運用に強く左右される点からも、かなりハードルが高い言わざるを得ません。

参考:その他会社法が定める法定議事録

鈴木龍介ほか著『議事録作成の実務と実践』P22に、会社法における各種議事録の作成・署名(記名押印)義務がまとめられています。書籍とあわせご紹介させていただきます。

議事録 署名義務者 条文
創立総会 なし 81条1項
株主総会 なし 318条1項
種類株主総会 なし 325条(318条1項準用)
取締役会 出席取締役・監査役 369条3項
監査役会 出席監査役 393条2項
監査等委員会 出席監査等委員 399条の10 3項
報酬委員会 出席報酬委員 412条3項
指名委員会 出席指名委員 412条3項
監査委員会 出席監査委員 412条3項
清算人会 出席清算人・監査役 490条5項(369条3項準用)
債権者集会 なし 561条
社債権者集会 なし 731条1項

書籍情報

議事録作成の実務と実践
  • 著者:鈴木龍介/著 稲垣裕行/著 西岡祐輔/著 早川将和/著 平石悠亮/著
  • 出版社:第一法規
  • 出版年月:20171017

画像:mits / PIXTA(ピクスタ)

(橋詰)

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