私のサイン 池田・染谷法律事務所 弁護士 池田毅・弁護士 染谷隆明

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独占禁止法・消費者法分野で著名な若きエキスパートである2人がタッグを組み、誰もが予想しなかった新しい切り口でソリューションを提供する法律事務所が2018年10月1日に誕生しました。

共同事務所設立のサインはセミナー打ち上げの寿司屋で

—本日(取材日は2018年10月2日)は開所したてのお忙しいところ、お二人がこうして新事務所を開かれたと耳にし、反射的にお伺いしてしまいました。図々しくて申し訳ありません。

染谷)いえいえ、こちらこそありがとうございます。私たちも橋詰さんのフットワークの軽さは見習わないといけないです笑。

池田)今日はちょうど私の40歳の誕生日なので、お祝いに来ていただいてありがとうございます(笑)

—池田先生と染谷先生は、ともに著名事務所に在籍されながら、公正取引委員会や消費者庁等での組織内弁護士経験も積まれ、かつ、さまざまな著書や論文を書かれているということで、この分野では知らない方はいらっしゃらないと思います。そんなお二人が一緒になり、同業者の方々も脅威に感じていらっしゃるはずです。どういった経緯で今回タッグを組むことになったのでしょうか。

染谷)池田さんと出会った経緯についてお話しします。

もともと、森・濱田松本法律事務所で池田さんが専門にされてきた独占禁止法と、私が消費者庁に勤務していた際に担当していた景品表示法は近い分野です。

そして、私が消費者庁に勤務していた際に、庁内で回覧されている法律雑誌に池田さんが書かれた論稿が掲載されていました。その内容が、消費者庁が明確には整理していないが、企業にとっては気になる論点について、消費者庁の執行実務と整合させつつ、企業に参考となる指針を提供する優れた論稿を読んだことがあったなど、よく池田さんのお名前はお見かけしていました。キャンペーンの継続の論文だったですかね。

池田)書きましたね。私は、まだ誰も書いていないことを書かずにはいられない性格で(笑)

染谷)笑。初めて直接お会いしたのは、日本組織内弁護士協会という組織内弁護士の団体において、独禁法の講演を池田さんにご担当いただいた時だったと記憶しています。その時、私が消費者庁で、景品表示法の改正法案(課徴金法案)の立案を担当しており、この講演の日程が改正法案のパブリック・コメント募集期間と重なっていたのです。そこで、改正法案の周知のために池田さんの講演後10分だけ改正法案についてお話させていただいたのです。この時初めて池田さんとお会いしました。講演の語り口が滑らかで、ウィットに富んでおり、非常に話すのが上手い人だなというのが初対面での強烈な印象です笑。

池田)そうでしたね。その後、色々な縁で親しくさせていただいている、『独占禁止法(第3版)』の著者でもある菅久修一さん(現公正取引委員会経済取引局長)の勉強会などでも、染谷さんとご一緒する機会が何度かありました。そういえばあの本は独禁法界隈では赤本と呼ばれていますが、あれ、オレンジですよね。うち(池田・染谷法律事務所)のファームカラーの。

それで、事務所開設について、最終的にどちらから声をかけたかというと、私ですね。寿司屋で私から誘いました(笑)。

染谷)そうでしたよね(笑)。

池田)私は、もともと独立を考えていたわけではなかったのですが、40歳になるのを前に今後の進む道を考えてみたとき、知財や労働に比べれば、独禁法という分野はブティック事務所がほとんどなく、ブルーオーシャンではないかと気づきました。企業の方も、独禁法については、5大プラスアルファくらいしか選択肢がなく、そういう事務所だと、簡単な相談でもびっくりするような請求が来たりするということも聞いたことがありました。ですので、私たちの世代のような話しやすく、柔軟な弁護士がやるブティック事務所には間違いなく需要があるだろうと思いました。

それで、勢いのある30代のうちに開業したいと思い、私の30代最後の日である今年の10月1日のオープンを目標にして、準備を進めることにしました。そして、独禁法だけよりも隣接分野とのシナジーを活かした方がよいと思ったところ、消費者法のエキスパートである染谷さんがベストパートナーではないかと思い至りました。

染谷)私は、今年のはじめぐらいから、独立を考えはじめていました。

消費者庁を退職し、内田・鮫島法律事務所に加入したのですが、入所後わりとすぐに、消費者庁の調査対応や、ITプラットフォームにおけるポイント設計などのマーケティング戦略のご相談を直接私にご依頼いただく機会がとても多くなり、自分の案件だけで手一杯になるという状況になりました。このため、事務所の案件をほとんどできないという、事務所という組織から見たら、好ましくないであろう状況が続いていました。また、私としても、企業から見た消費者法という分野が勃興しつつある今、自分のリソースを得意分野である消費者法に広い裁量を持って取り組みたいという思いがありました。

それと、私は、消費者庁への勤務前には、「食べログ」などを運営している株式会社カカクコムという会社の中で組織内弁護士をしていたこともあり、ITやTechが好きでたまらないのです。それで、自分自身でも作りたいサービスがあるので、早く着手したいという思いがありました(笑)。年内を目処に、弁護士事務所を設立した上で、自分がやりたいビジネスの立上げをしようと考えていました。

そのような中、池田さんと共同で講師をしたセミナーの後の打ち上げでしたね。あれは今年の3月だったと思います。お寿司屋さんで、池田さんから、
「最近どうしているの?」
と聞かれたので、私は、
「年内で独立して、事務所を設立して、サービスの開発もする予定です。」
と言ったんですよね。

そうしたら、池田さんが、
「じゃあ一緒にやって独禁・消費者法事務所を立ち上げないか」
と誘ってくださったんです。それで、一緒に法律事務所を創業することになりました。

池田)染谷さんは景表法とかの著作を出されているので、世間では景表法の専門家とみられているかもしれませんが、IT法の知識やビジネスに対する嗅覚もすごいのです。とはいえ、ビジネスサイドで「消費者法」を広く扱える専門家がほとんどいない中で、染谷さんのポテンシャルが最も活かせるのは、やはり消費者庁で鍛えられた消費者法だと思いました。

私は消費者庁が設立される前の公取委で景表法も担当しており、その後も景表法案件を相当程度やってきましたので、私と染谷さんとなら大きなシナジーが出せると思ったのです。

染谷)私自身、独立前にリアルとネットが融合した複雑かつ大規模なキャンペーンの助言を頻繁に行ってきていたのですが、ほとんど前例がありませんでした。このため、ここに来て池田さんという強力な相談相手ができたのはとても嬉しいです。

独禁法と消費者法に対する「誤解」

—それにしても、独禁法・消費者法を扱うブティックファーム(専門特化型法律事務所)というのは、あまり例が無いのでは?

池田)独禁法ブティックということでいえば、大御所の先生方がいらっしゃるような事務所が本当にごく僅かにありますが、若手・中堅と言われる私たちの世代では、確かに存在しません。1人とかでやられている方は、全くなくはありませんが、大学での教職との兼業であったり、海外の独禁法はあまり扱われていなかったりで、独禁法をフルサービスで提供できるという状況にはないと思います。

ブルーオーシャンでありながらこれまで専門事務所が少なかったのは、間口は狭くないとはいえ、独禁法だけで独立してやっていくというだけの自信を持てる方が少なかったからではないかと思いますが、この点私は、前所属事務所でほとんどありとあらゆるパターンの独禁法・景表法の案件をやらせてもらいましたので、割と思い切ったアクションが取れたと思っています。

消費者法の事務所に至っては、少なくともビジネスサイドに立つ事務所は、私は寡聞にして知りません。その意味では、独禁法・消費者法ブティックという括りでは、オンリーワンの存在になれるのではないかと思います。

ただ、これまでなかっただけで、独禁法と消費者法には色々な共通点やシナジーがあると思っています。独禁法と消費者法は、いずれも業界横断的に適用され、契約書に当事者が合意して決めたことであっても、それをひっくり返す力を持っている数少ない法領域です。その意味では、専門家は少ないですが、いずれの法律も取引の基本法として大きなポテンシャルを持っていると思います。

また、外国では、米国の連邦取引委員会をはじめ、英国や豪州の当局など、独禁法と消費者法の両方の権限を有している当局の例はよく見られます。たとえば、最近はやりのプラットフォーマーに対する規制といった論点でも、どの法律だったら使えるのかという議論の中で、独禁法と消費者法がいずれもいの一番に挙げられ、合わせて議論されるといったこともよくみられ、両者をワンストップで取り扱うニーズはかつてなく高まっていると考えています。

染谷)そうだと思います。ただ、「独禁法と消費者法のブティックファーム」とだけ聞くと、もしかすると誤解されてしまうお客様もいらっしゃるのかなと思いまして、その点は最初にお話をさせてもらってもよいでしょうか?

—ぜひお願いします。

染谷)特に「消費者法」について申し上げたいのですが、「消費者法」というと、イメージされるのは、どうしても消費者契約法・特定商取引法・景品表示法といった、消費者庁管轄の法律だけを思い浮かべる方が多いように思います。もちろんこれらの法律は、「消費者法」の中核となる法律ですし、実務においても重要です。

しかし、私たちは「消費者法」を広く捉えるべきであると考えています。消費者庁所管法令は単に2009年に消費者庁が創設された消費者庁設置3法の立案過程で政治的に決まったものに過ぎません。

たとえば、私は顧問企業の3分の1以上がゲーム会社なので、よく使う法律としては金融庁が所管する資金決済法があります。ゲームアプリにおいてゲーム内通貨を購入した場合には、前払式支払手段(チケットのようなもの)に該当し、一定の要件を満たした場合、資金決済法に基づき、未使用残高の半分を供託しなければならなかったり、売れないゲームをクローズする場合にもユーザから預かったお金の払戻しの手続規制がありますよね。

資金決済法によれば、ゲーム内通貨を購入した後にゲーム会社が破産した場合、供託金の範囲においてゲームユーザが保護されたり、ゲームがクローズしてしまった場合でも未使用のゲーム内通貨に相当するお金は返金されるわけです。このように、資金決済法は、第1条の目的規定にも、「資金決済に関するサービスの適切な実施を確保し、その利用者等を保護する」ことを挙げていることから明らかなとおり、消費者保護を行うための事業者規制法であるわけです。

もちろん、資金決済法の自家型前払式支払手段の規制は世界的に見てもマイナーな規制であり、競争力の阻害になっているという指摘もあるところであり、その規制手法は検討すべきと思いますが、いずれにせよ消費者保護法といえます。

—昨今話題になった仮想通貨に関する規制も消費者保護という意味では同じ趣旨といえそうですね。

染谷)はい。仮想通貨交換業規制も根拠法は資金決済法です。しかし、昨今の仮想通貨の流出問題や仮想通貨取引市場におけるインサイダー取引など不公正な取引の問題が絶えないことから、規制手法としては、資金決済法より取引市場規制法である金商法の方が良いように思います。

ちょうど話が金融関係なので、もう少し金融の例で「消費者法」の話をしますと、家計簿アプリってありますよね。例えば、私も出向し、お世話になりましたが、マネーフォワードさんが出しているようなサービスです。Fintech事業者がこのような銀行口座と連携する家計簿アプリサービスを提供する場合、平成29年改正銀行法により、電子決済等代行事業者の登録が必要となりました。

大雑把な説明となりますが、この規制は、Fintech事業者が、ユーザから銀行口座のID・パスや口座情報という機微な情報を保有しているため、ユーザの保護のために、Fintech事業者に情報の適正な管理や銀行との契約を義務づけるものです。もちろん、銀行にとってもFintech企業から契約に基づかないで口座情報を取得(スクレイピング)されなくなるので、情報管理やサーバの負荷が減るというメリットがありますが、消費者保護政策が多分に含まれる規制を導入する法改正だったのです。

その他には、例えば、6月に運用開始された住宅宿泊事業法(民泊新法)がありますが、この法律は、一定の要件を満たすことによって、旅館業法規制にかかわらず、民泊サービスを提供することができることを主たる内容とするものです。そして、旅館業法は、大変古い法律ですが、その規制趣旨としては、設備構造基準や公衆衛生基準を設けることによって、公衆衛生を確保し、宿泊者(消費者)が安全に宿泊できるようにするものです。このため、住宅宿泊事業法の立案においても、民泊サービスを提供するにあたり、公衆衛生の確保をどこまで行うかという点が一大論点であり、消費者保護政策と観光振興政策の調和が問題となったわけです

このように消費者庁所管法令という視点ではなく、現実に存在するBtoCビジネスの視点から法制度を見ると実に消費者関連法の対象は広いことがわかります。BtoCビジネスにまつわる法律はすべて消費者法といっても過言ではなく、「消費者法」は「BtoCビジネス法」と呼んだ方が個人的にはしっくりきます。

このため、私たちの事務所は、「消費者法ブティック」と謳っているおりますが、その範囲はとても広いものであり、BtoCビジネスにおける法分野において専門性を発揮できると考えています。

池田)今、染谷さんが触れたことは、単に私たちの取扱領域が広いということにとどまりません。金融ビジネスで弁護士に依頼するというと、いわゆるファイナンス・ロイヤーや金融規制ロイヤーが想起されることが多いかもしれません。それらの方々の専門性を否定するつもりは毛頭ありませんが、消費者がかかわる金融ビジネスにおいては、消費者法的な観点からの政策が多数あり、消費者法の視点からの検討は有益であり、また不可欠でもあると考えています。

同様に、独禁法も公取委が所管している案件にとどまらず、電気・ガスなどの経産省が所管するエネルギー政策や、総務省が所管している電気通信関係等、競争法や競争政策からの視点が不可欠な分野は非常に広いと考えています。

ちなみに、独占禁止法も、とかく五大事務所と言われるところに相談する、世界的なIT企業やM&Aなどの大きな事案に限られた法律であるようなイメージがありますが、本来はもっと身近なものです。

たとえば、知的財産権のライセンス契約なんかも、独占禁止法違反になるような高圧的な条件のものを見かけますよね?弁理士の方に相談なさったり、公取委のガイドラインをご覧になっても、適切な回答につながらないとお困りのお客様は多くいらっしゃいます。私も、森・濱田松本法律事務所にいた際には、「事前にご相談いただければ」と思う案件が多くありました。

先ほど、独禁法は消費者法と並んで契約書をひっくり返せる法律だと申し上げましたが、とはいえ一旦契約してしまった契約は、それがどれだけ法律上不当であっても、ひっくり返そうとすると、究極的には公取委の執行や裁判手続によらざるを得ず、それを得るためのコストや労力は相当のものがあります。法的には正当な立場である企業にとっても、これまでの独禁法弁護士は敷居が高く、なかなか相談ししづらい状況があったのではないかと思います。

私たちのような若手の専門家に直接、早いタイミングで気軽に相談していただければ、不当な契約交渉とならずにすませることができます。

ルールメイキング・ロビイングに法律事務所がどう貢献するか

—ウェブサイトを拝見しますと、「ルールメイキング」をサービスの前面に押し出されている印象がありました。最近、法務部門の新しい職域としても、この分野は注目されています。

池田)私たちは省庁でのキャリアは持っていますが、それがあるからと言って万能だとは思っていません。企業の中で公共政策部門を育てるという方法もあるでしょうし、すでにロビイングを専門でやられているコンサルタントの方もいらっしゃると思います。役割分担はあると思っていて、そういう弁護士以外の方々の方が効果的な場面もあれば、我々のような立法の現場に通じている弁護士という立場の方がお役にたてる場面も多々あると思っています。

—その役割分担について、法律事務所としてのルールメイキング・ロビイングサービスにどこまで期待をしていいか、先生方から発信していただけると、企業としても助かります。

染谷)ルールメイキングは、最終的にはルールを作る、変える、または廃止するということがゴールになるわけですが、そのためには様々なフェーズがあります。

まず、当たり前なのですが、課題発見というフェーズがスタートとなります。課題が生じていないとルールメイキングということが出てこないためです。課題は、特定の事業について省庁からストップがかかったとか、あるビジネスのグランドデザインを描いたが阻害となる規制がありそうというものなど様々です。

ある規制がビジネスの阻害となっているのであれば、その規制の内容を吟味しなければなりません。これはルールメイキングの対象を特定する作業です。例えば、どの法律のどの法律要件が問題となっているのか、問題となっている規範は、法律か、政省令か、通達・ガイドラインなのかという整理を行います。

問題となっている規範が法律であれば法律改正が必要なので、ハードルは高いし、時間もかかります。一方、問題となっているのが政省令であれば、法律改正より若干手続が軽くなります。また、ガイドライン の記載が問題であるという場合であれば、通達・ガイドラインは、行政庁の有権的解釈ですので法律や政省令の変更に比べて手続は軽くなります。このようにルールメイキングの対象を分析する業務はお役に立てるところです。

たとえば、最近の事例でいうと、ゲームやエンタメ業界で、e-Sportsが流行っていますが、数年前から今年の初旬にかけて、e-Sportsにおいて賞金を提供することが景品表示法の規制にかかり、高額賞金を提供できないという点が問題となりました。この点について、当時、「景品規制を定めた法律自体がそもそもおかしい」という主張がかなりされていましたが、この主張からすると、景品表示法の景品規制を廃止するか、e-Sportsについては景品規制を適用除外とする法改正が必要になるということになります。しかし、景品規制を廃止すべきという有力な立法事実(立法を裏付ける事実)もなく、法改正を求めることはあまり実効的ではありません。このため、景品規制の内容をもっと分析することが必要なわけです。

景品規制を分析すると、景品規制を回避する手法として、景表法が一般消費者の賢い商品選択を保護するための法律であることに着目しプロ制度を導入してe-Sportsを行う方法(事業者を対象にe-Sportsを行う方法)や、賞金を景品ではなくてe-Sportsによってゲームなどのコンテンツのマーケティングに協力してくれた報酬として支払うことによって景品規制を免れる解釈があり得ることが分析できます。ただし、このような解釈があり得るとしても、当局による一定の指針がないと日本企業は、ビジネスを開始しづらい点があります。

そこで、景品表示法を所管する消費者庁と産業振興を担う経済産業省の協議がされた結果、今年の通常国会の予算委員会において、世耕経済産業省大臣が、「消費者庁との協議の結果、プロのプレイヤーが参加する興行性のあるeスポーツ大会における賞金は、あくまでも仕事の報酬ということで、法律上の景品類にはあたらないという整理が行われた。」という答弁を行い、e-Sportsビジネスに一定の指針が与えられたというケースがあります。

このように、省庁の内部にいて勘所がわかっている私たちであれば、ビジネスの阻害となっている規制を分析した上で、どの官庁のどの部署の誰にお話を持って行った方が良いという具体的なアドバイスができる場合や、グレーゾーン解消制度・ノーアクションレターなどを活用して必要な省庁に動いていただくといった形でご提案を行なうこともできる場合があります。

また、ルールメイキングを行うためには、一社のみが声高に主張しても中々前に進むものではありません。つまり、議員や省庁等を動かすには「社会がそれを必要としている」という声が必要となるので、ソーシャルマーケティングが必要となります。このため、ムーブメントを起こすために広報の企画やメディアに繋げるという事例もありました。

また、もし法律を変えるというならば、スケジュールの管理も重要です。あくまで一例ですが、通常国会に改正法を内閣提出法案として提出するためには、多くは、前年度の6月頃には改正法に関する審議会の報告書が出て、その後、改正法の所管省庁が内閣法制局と調整しつつ条文案を作成します。そして、審議会の報告書に自社(または業界団体)の主張を入れ込むためには、その審議会の立上げ前に審議会に関する情報を仕入れて、審議員候補や必要なステークホルダーと意見調整をする必要があります。

法律改正を含めたルールメイキングを行うのであれば、このような数年単位での準備が必要であり、かつ、すぐにアウトプットが出るわけでもない粘り強さが必要な仕事です。私たちは、実際に法律を立案した経験などを踏まえ、地に足のついた助言を行うことができるという点も一つの価値だと思います。

—先生方にお願いをすれば、そういったさまざまな手段と作法を駆使して、「企業に都合のよい法律解釈」を引き出したり、立法支援をしていただけると期待してしまってよいのでしょうか?

池田)そこは私たちの信用にもかかわってくるところだと思っていまして、ウェブサイトにもこう書かせていただいています。

「ご依頼者様の利益を実現しながらあるべきルールが打ち立てられるように力を尽くす」

代理人としてクライアントの主張を職人のように徹底的にフォローする通常の弁護士業務とは少し違って、あるべきルールであると私たちが共感できることが前提になっています。私たちの時点で共感できないものは、社会も共感してくれない可能性が高いのではないでしょうか。一方で、私たちとしてもそうあるべきと共感できれば、持てるリソースをすべて投下します。

事務所のさらなる拡大に向けて

—すでに既存のお客様もたくさんいらっしゃるわけで、さらにお客様が増えるとなれば、ますます人手が要りそうですね。

池田)そうですね。独立した同業の先輩・知人たちも皆言ってますが、採用が一番の課題です。さしあたり、まずはこのオフィスでは弁護士5人ぐらいをイメージして準備をしましたが。

—どんな方がこの事務所に合いそうでしょうか。

染谷)やっぱり「とんがった」方がいいですよね笑。私たち二人のように、留学経験や官庁勤務経験があるのもよいですし、ビジネスが好きでしょうがないインハウスの方にも来ていただきたいですね。私は、最近、広告のディレクションやアプリのUIやUXのアドバイザリーだったりガチャの企画のようなビジネスの現場の仕事までやってますけれど、そういうことも含めてビジネスを楽しめるような方に来ていただけたら嬉しいですね。

池田)競争法や消費者法は、グレーゾーンだらけなんですよね。でも既存の事務所ですと、グレーだからグレー、以上ですという回答で終わってしまうことも多い。それは事務所としてのポリシーなのかもしれないですが、せっかくこういう小さな事務所でやれるわけですから、「私なら、こうします」とビジネスに踏み込んでソリューションを提案する、ソリューションオリエンテッドな働き方が好きな方がよいです。つまり、自分たちみたいな方にぜひ来ていただきたいです(笑)。

—本日はありがとうございました。

池田・染谷)ありがとうございました。

(聞き手 橋詰)