基本契約および一般条項の民法(債権法)改正対応

投稿日:

民法(債権法)改正まで残り半年を切ってもなお、「大量の契約書を一度に巻き直すために、電子契約の利用を検討したい」というご相談は増え続けています。今回は、改定・巻き直しが必要となる代表的な契約書のうち、基本契約のひな形および各契約類型に規定される一般条項の改正対応について、ポイントをリストアップします。

待ったなしの契約書ひな形民法改正対応

2020年4月、明治時代に定められて以降契約を規律してきた民法(債権法)が、およそ120年ぶりに改正されます。

民法522条2項に、契約の基本原則として方式の自由(「契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない」)が明記されるなど、電子契約を取り扱うクラウドサインにとっても、大変に意義深い改正です。

法務省 民法(債権関係)の改正に関する説明資料 http://www.moj.go.jp/content/001259612.pdf 2019年11月13日最終アクセス

この改正に伴う契約書ひな形等の文言修正について、企業法務で契約書実務に携わる専門家の中には、「過去の判例・学説の積み重ねを条文に反映したに過ぎず、契約書の作成や審査に大きな影響を及ぼすものではない」とおっしゃる方もいらっしゃいます。そうかと思えば、弊社には 毎週のように 「これまでひな形で締結していた大量の契約書を一度に巻き直す必要があり、電子契約の利用を検討したい」というご相談をいただいている のも事実です。

民法改正の趣旨や内容については法務省の解説・市販の書籍等をご確認いただき、個別の具体的文言の変更方法については顧問弁護士にご相談いただくとしても、そもそもの 改正対応に漏れがないかについては、契約書のユーザーである各企業の担当者による自主的な点検がどうしても必要 となります。

基本契約書ひな形・一般条項で見直すべき条項リスト

そこでまず今回は、民法(債権法)改正に伴い条文の改定が必要となるであろう契約書・契約条項のうち、基本契約のひな形、および売買・請負・賃貸借等各契約類型のひな形に共通して規定される一般条項に関し、要改正対応ポイントをリストアップ してみたいと思います。

(1)契約の目的条項

改正民法では、「契約〜および取引上の社会通念に照らし」という文言が複数の条文で採用されました(95条1項、400条、412条の2 1項他)。これにより、紛争となり裁判官が契約書を解釈する際に、その契約の趣旨や目的が重視される傾向が高まることが予想されます。

これまでは形式的に定められることが多かった契約の目的条項について、契約締結に至る経緯・背景・動機や意図・合意に至る前提条件等を細かく規定しておく ことが必要になります。

(2)契約解除条項

債務不履行による解除について債務者の帰責事由が要件とされなくなった(541条、542条)とともに、以下の改正が加えられました。

ただし、契約によってこれらの規定を上書きすることは可能です。既存のひな形で解除条件を明確に記載していた場合は特別な対応は不要ですが、あえて解除条件を記載せず改正前民法の原則に従う前提のひな形を利用していた場合などでは、対応が必要となります。

(3)損害賠償条項

特別の事情によって生じた損害(特別損害)について、改正民法ではその事情を「予測すべきであった」場合に賠償すべき旨が明確化されました(416条2項)。

相手方に対し、特別の事情を「予見すべきであった」と主張しやすくするためには、契約書に個別事情を詳細に記載する ことが望ましいと考えられます。ということは、(1)の契約の目的条項同様、これまで一般条項として改正前民法の原則どおりとされることも少なくなかった損害賠償条項について、個別の取引事情に照らして書き直すかどうか、検討が必要になります。

(4)譲渡制限条項

債権の譲渡を制限・禁止する特約を契約書に定めた場合も、原則として債権譲渡が有効となる旨が明文化されました(466条2項)。基本契約書や一般条項では債権譲渡特約を設けることが当然の実務となっているため、大きな影響があります。

この新しい規定によっても 譲渡制限をできるだけ維持するため、譲渡制限特約に違反した譲渡がされた場合に、無催告解除権を発生させたり、違約金支払義務を発生させる条項をひな形に設ける ことが考えられます。しかし、このような対抗措置が有効なものと扱われるのか、権利濫用等で無効となるのかは不明です。

(5)保証条項

個人を保証人とする根保証を設定する場合であって、極度額の定めを設けないときは、保証契約の効力が生じないことが定められました(465条の2 2項)。加えて、事業用融資において第三者が保証人に立つ保証契約を締結する際、公証人による意思確認の手続き等が要求されます(465条の6〜465条の9)。

継続的取引の前提となる基本契約において、極度額を設定せずに個人の連帯保証を取得しているケースなどで影響があります。特に第三者の保証を確保するのは手続きの煩雑さから相当困難になると考えられ、代替の物的担保等の確保や取引条件の見直しを検討する ことも必要となるでしょう。

(6)利率条項

改正前民法では年5%と固定されていた法定利率に変動制が導入され、当初3%、以降3年に1回見直しがされることとなりました(404条)。これにあわせ、商法に定められていた年6%の商事法定利率も廃止されることになりました。

日本では近年しばらく低金利が続いたこともあり、民法・商法上の法定利率に委ね特に契約書ひな形に利率を定めない契約書は増加傾向にあったと考えられ、契約上確保すべき利率の水準について再検討 が必要となるでしょう。「商事法定利率+x%を乗じた額を遅延損害金とする」といった計算を伴うタイプの規定についても、見直しが必要となります。

(7)時効完成猶予に関する協議条項

権利についての協議を行う旨の書面または電磁的記録による合意があった場合、その期間の長さに応じて、時効の完成を猶予する制度が新設されました(151条)。

権利について紛争が生じてからでは、「協議を行う」旨の書面または電磁的記録を作成し合意することは事実上不可能と考えられます。そこで、協議条項に 「協議を行う場合であって、相手方の求めがあるときは、甲および乙は当該協議を行う旨の合意を書面または電磁的記録により作成する義務を負う。」といった規定を追加 しておくことが考えられます。

電子契約なら収入印紙も不要かつ迅速な締結と回収が可能

以上見てきたように、基本契約書や一般条項に多く見られる規定のうち、主なものだけでもこれだけの改正対応ポイントが挙げられます。

改正民法の施行日も迫る中、数多くの取引先とスピーディに、かつ漏れなく契約を締結し直すためにも、印刷・製本・押印・郵送が不要となり、契約相手方からの回収、契約後の検索・管理も容易 な電子契約クラウドサインのご利用をご検討ください。

特に、契約期間が3ヶ月を超える基本契約書を再締結する場合、紙の契約書で締結した場合には印紙税法上第7号文書に該当し4,000円の収入印紙を貼付する必要がありますが、電子契約で締結した場合印紙税が課税されない(関連記事:収入印紙が電子契約では不要になるのはなぜか?—根拠通達と3つの当局見解)ため、経済的なメリットも確実に得ることができます。

画像:studio-sonic / PIXTA(ピクスタ), megaflopp / PIXTA(ピクスタ) , East & West / PIXTA(ピクスタ)

(橋詰)

契約のデジタル化に関するお役立ち資料はこちら