収入印紙が電子契約では不要になるのはなぜか?—根拠通達と3つの当局見解

電子契約は、紙の契約書との大きな違いとして、収入印紙によって納付する税金である「印紙税」が不課税となり、コスト削減ができるというメリットがあります。

なぜ同じ契約にもかかわらず印紙税がかからないのか?その根拠となる通達と、通達の解釈を裏付ける税務当局の3つの見解をご紹介します。

後半では、電子契約を利用することで印紙税を80%以上削減することに成功した企業様の例もご紹介します。

収入印紙による印紙税の納税義務

電子契約を導入するとなぜ印紙税が不課税になり、税金を収めなくですむのか?

その理由を理解する前提として、印紙税法を確認しましょう。契約書に収入印紙を貼ることで納税を行う義務は、印紙税法第2条および第3条に定められています。

第二条 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書には、この法律により、印紙税を課する
第三条 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書のうち、第五条の規定により印紙税を課さないものとされる文書以外の文書(以下「課税文書」という。)の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある

さらに印紙税法の別表第1には、課税対象となる文書20項目が一覧化されており、

といった、日常業務でも頻繁に作成する契約書や文書が、印紙税の対象となっています。

→参考: 国税庁 印紙税額一覧表 平成30年5月現在(PDF)

印紙税額一覧表

なぜ電子契約で収入印紙が不要になるのか

印紙税法第2条によれば、別表第一を見れば課税文書が分かるかのような規定になっているものの、「電子契約は非課税」とはっきり規定している記述はありません。

そこで、印紙税法第2条および第3条の運用ルールをさらに詳細に規定した、「印紙税法基本通達」を緻密に検討する必要がでてきます。

基本となる印紙税法基本通達

冒頭で確認した印紙税法の第2条をよく読むと、「文書(略)の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある」との規定があります。どうやら、課税文書を「作成」することが課税のポイントとなっているようです。

ここで、課税文書の「作成」とは何か、印紙税法基本通達第44条に記載されている定義を確認します。

第44条 法に規定する課税文書の「作成」とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう。
2 課税文書の「作成の時」とは、次の区分に応じ、それぞれ次に掲げるところによる。(平13課消3-12、平18課消3-36改正)
(1) 相手方に交付する目的で作成される課税文書 当該交付の時
(2) 契約当事者の意思の合致を証明する目的で作成される課税文書 当該証明の時
(3) 一定事項の付け込み証明をすることを目的として作成される課税文書 当該最初の付け込みの時
(4) 認証を受けることにより効力が生ずることとなる課税文書 当該認証の時
(5) 第5号文書のうち新設分割計画書 本店に備え置く時

このように、用紙等に課税事項を記載し行使する、つまり紙の書面に書いて交付することが「作成」行為となります。一方、電子データは紙ではありませんし、送信はしますが交付はしません。電子契約(データ)を締結(送信)することは課税文書の「作成」に該当せず、したがって印紙税は課税されないというわけです。

なお、電子契約をプリントアウトしたとしても、電子データの複製物(コピー)に過ぎないので、そこに印鑑を押すようなことをしない限り、課税物件には該当しません。

このことは、以下に示す税務当局見解や国会答弁においても、明確に述べられています。

当局見解その1:請負契約に用いる注文請書についての判断事例

請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係について

印紙税法に規定する課税文書の「作成」とは、印紙税法基本通達第44条により「単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう」ものとされ、課税文書の「作成の時」とは、相手方に交付する目的で作成される課税文書については、当該交付の時であるとされている。 上記規定に鑑みれば、本注文請書は、申込みに対する応諾文書であり、契約の成立を証するために作成されるものである。しかしながら、注文請書の調製行為を行ったとしても、注文請書の現物の交付がなされない以上、たとえ注文請書を電磁的記録に変換した媒体を電子メールで送信したとしても、ファクシミリ通信により送信したものと同様に、課税文書を作成したことにはならないから、印紙税の課税原因は発生しないものと考える。

当局見解その2:コミットメントライン契約に関して作成する文書についての判断事例

コミットメントライン契約に関して作成する文書に対する印紙税の取扱い

請求書や領収書をファクシミリや電子メールにより貸付人に対して提出する場合には、実際に文書が交付されませんから、課税物件は存在しないこととなり、印紙税の課税原因は発生しません。 また、ファクシミリや電子メールを受信した貸付人がプリントアウトした文書は、コピーした文書と同様のものと認められることから、課税文書としては取り扱われません

当局見解その3:国会質問における政府答弁

参議院議員櫻井充君提出印紙税に関する質問に対する答弁書(5の一部を抜粋)

事務処理の機械化や電子商取引の進展等により、これまで専ら文書により作成されてきたものが電磁的記録により作成されるいわゆるペーパーレス化が進展しつつあるが、文書課税である印紙税においては、電磁的記録により作成されたものについて課税されないこととなるのは御指摘のとおりである

以上のように、法律および課税実務からも、電子契約において印紙税は不要となっています。

電子契約による印紙税コスト削減事例

企業間取引においては、基本契約で1通あたり4,000円の印紙を毎回貼っている企業様もいらっしゃいますので、電子契約に変更するだけで大幅なコスト削減を実現できる場合もあります。

ここでは、実際に電子契約クラウドサインを導入し、大きなコスト削減に成功した企業様の具体的事例を紹介させていただきます。

株式会社アペックス様

<導入前の課題>

クラウドサイン導入前は、本格ドリップコーヒーのパッケージ販売について、基本契約書を締結するごとに4,000円の収入印紙がかかっていました。

<導入後の成果>

月に100~150件を契約しているため、印紙代は無視できない金額でしたが、クラウドサインの導入によってこれが不要になりました。

収入印紙代は営業所の経費になっていましたが、利益を向上させないといけない営業所にとって収入印紙代が節約できるとあって、大歓迎での導入となりました。

詳細はこちらから:https://docs.cloudsign.jp/2018/08/08/apex/

株式会社クレディセゾン様

<導入前の課題>

クラウドサイン導入前は、以下の2つの書類を印刷し、返信用封筒を入れて郵送するという方法で契約を締結していました。

<導入後の成果>

一つの上記2つの契約を締結するために、1契約あたり収入印紙が4,200円(基本契約書が4000円、個別契約書が200円)かかっていました。しかし、クラウドサインの導入によって印紙代は不要になり、印刷や郵送に必要だった費用も無くなったことで、コスト削減に成功されました。

詳細はこちらから:https://docs.cloudsign.jp/2016/08/08/credit-saison/

リノベる株式会社様

<導入前の課題>

リノベーションをされるお客様との工事請負契約書をはじめ、そのほか関係取引先企業様との契約書、注文書があり、それらの書類を回収する事務作業のウェイトと手間が高い状態でした。

<導入後の成果>

半年経って、利用率は契約書類の80〜90%にも達しています。勤務時間から、プリントアウトして、製本して、押印して、印紙を貼って、郵送して…、という一連の作業が一気になくなった!という実感があります。

詳細はこちらから:https://docs.cloudsign.jp/2017/12/22/renoveru/

まとめ

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MORIKAZU / PIXTA(ピクスタ)

(2018.10.18 橋詰改訂)