取締役会事務局が隠し持つ「議事録作成印」の実態と法的リスク

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取締役会議事録を作成する際、社外取締役・監査役を含めた全員の押印を集めるのは大変です。これを解消する裏技としての押印代行の実態と、その法的リスクの解消策を提案します。

想像以上にタイトスケジュールな取締役会議事録作成事務

一般的な会社であれば月に1回は開催しているであろう取締役会。新型コロナ禍以降は、Zoomのようなビデオ会議ツール上のみで行うバーチャルオンリー取締役会を採用する会社も、もはや珍しくなくなりました。

新型コロナ禍によりZoomなどを利用したインターネット取締役会が日常風景に

ところで、取締役会は「開催して終わり」ではなく、会社は議事録を「その日」以降10年間備え置く義務が(会社法371条1項)、参加した各取締役・監査役はこれに署名又は記名押印をする義務があります(会社法第369条第3項)

ただし、「その日」中の作成はさすがに難しいということで、現実には、登記変動事項の申請期限である2週間以内に作成するのが実務となっています(会社法915条1項)。

ここで発生するのが、参加役員からの押印回収の問題です。議事録の内容についてWordファイルベースで調整して3日後ぐらいにまとまったとして、印刷・製本した議事録に社外を含む各取締役・監査役全員から押印をいただくには、いったいどのくらいかかるでしょうか?

10人の役員のうち社外取締役・監査役があわせて5人出席する取締役会をモデルケースとして、郵送・バイク便・担当者の持回りでこれを行なったとします。役員間を中2日で回せたとして原本が押印されて返ってくるまで12日。現実には出張や外出でお忙しい方も多く、もっと時間がかかるのが普通です。

社外役員間を中2日で回せたとしても、原本が押印されて返ってくるまでに12日かかる

上場会社を中心に社外役員の設置義務が強化されている中で、会社法が定める2週間という期限を守ることは、書面ベースでは現実的に厳しくなっています。

苦肉の策としての「議事録作成印」と事務局による押印代行

そこで現場の知恵として編み出され実際に多用されているのが、「社外取締役・監査役の議事録押印のための専用印章を作成・保管し、事務局が議事録への押印を代行する」という裏技です。

つまり、事務局の議事録作成担当者の机の中に、社外取締役A・B・C、社外監査役D・Eの名前が彫られた印章を保管しておき、メールで配信したWordベースでの確認や修正が終了したのを見届けたら、本人に代わってその各取締役の記名欄に押印をほどこしてしまう、というわけです。

事務局が各取締役の印を「議事録作成印」として製作し、押印を代行する実務がある。

確かにこの方法なら、途中で役員の誰かが放置してボトルネックになることもありませんし、持ち回りやバイク便などで回付したりせずとも、登記時の作成期限を守ることも可能になりそうです。

事務局による取締役会議事録への押印代行に法律上の問題はないか?

さて、そのような 事務局の「押印代行」によって議事録を作成していても、法的に問題はないのでしょうか

この点、森・濱田松本法律事務所編『会社議事録の作り方 株主総会・取締役会・監査役会・委員会』(中央経済社, 2016)は、以下のように述べています。

書籍情報

会社議事録の作り方〈第2版〉
  • 著者:森・濱田松本法律事務所/編集 松井秀樹/著
  • 出版社:中央経済社
  • 出版年月:20160428

このような場合に、事務局スタッフによって押印の代行を行う会社もあるが、このような取扱いも、議事録の内容を本人自ら確認した後、押印という事実行為のみが本人の意思に基づいて代行されるのであれば許容される。逆に、議事録の記載内容の確認まで担当部署任せとすることは適切ではない。(P62)

印章を担当者が悪用しないという性善説を前提として、きちんと役員本人がその記載内容を確認して押印の指図を受けて代行すれば、違法・無効とはならないという整理のようです。

しかし、取締役会設置会社の多くがこのようなグレーゾーンと性善説に依拠して取締役会議事録を作成している現状は、決して健全な状態とはいえません。各取締役・監査役が自身で議事録の内容を確認した記録を残すことが、会社だけでなく、いざという時に役員自身を守るためにも重要となってきます。

解決策としてのクラウド型法律文書エディターと電子契約の活用

この問題を解決する手段の一つとして、クラウド型法律文書エディターのLAWGUEと、電子契約クラウドサインをご利用いただく 方法があります。

LAWGUEで取締役会を進行しながら議事録を作成、取締役会終了とともにクラウドサインで全員に電子署名を依頼

まず作成段階では、クラウド上でリアルタイムにかつ多人数で法律文書を編集することができるLAWGUEを使用します。以下の特徴から、役員間での修正案のキャッチボールが効率化できます。

さらに2020年5月には、取締役会議事録作成の電子署名としてクラウドサインを利用できることが、法務省により示されました(関連記事:取締役会議事録もクラウド型電子署名で—2020年5月29日付法務省新解釈の解説)。

LAWGUEと連携してこれを活用いただくことにより、各取締役が印章を事務局に預けるといった不健全な状態も解消します。書面と違い、外出や出張中でも内容を確認して電子署名することが可能です。

ウェブ会議を活用した取締役会への移行を期に、議事録作成のクラウド化のご検討をお勧めします。

画像:CORA / PIXTA(ピクスタ), Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ), xiangtao / PIXTA(ピクスタ)

(橋詰)

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