マネジメント契約とは?エージェント契約との違いやメリットデメリットを解説【弁護士監修】
マネジメント契約とは、芸能人やアスリート、インフルエンサーなどの活動を事務所やマネージャーが支援する契約です。
タレント側は、スケジュール管理や営業しなくて済むため、本来の活動に集中できますが、活動の事由が制限される面もあります。
事務所にとっては収益やブランド力向上につながる反面、管理コストやリスクも伴います。この記事では、マネジメント契約の概要、メリットデメリット、契約時に定めるべき内容などをわかりやすく解説します。
なお、こうした契約を書面ではなく電子で締結・管理する方法もあります。電子契約の基礎知識について詳しく知りたい方は、以下の資料もぜひご活用ください。
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マネジメント契約とは
まずはマネジメント契約の概要について説明します。
芸能人のスケジュール管理・営業・交渉などを行う契約
マネジメント契約とは、芸能人やアスリート、インフルエンサーの活動をサポートするための契約です。
主に、事務所やマネージャーがタレント本人に代わってスケジュール管理、新規案件獲得のための営業・交渉などを行います。
専門的なサポートを受けることで、タレント本人が自分で仕事を探したり調整したりする必要がなくなり、活動に集中できる仕組みです。
具体的にいうと、テレビやCMの出演、地方イベントのブッキングなどが挙げられます。
契約には専属と非専属の2種類があり、活動の自由度や報酬の仕組みにも影響します。
芸能、芸術、スポーツ業界など幅広い分野で利用されている契約です。
マネジメント契約の具体例
マネジメント契約でよくあるものを2つ紹介します。
【①芸能事務所と俳優】
芸能事務所と俳優がマネジメント契約を結ぶ場合、事務所が出演交渉や宣伝活動を代行します。俳優は演技に専念でき、事務所は仕事の獲得や報酬管理を担う形です。
【②スポーツマネジメント会社とアスリート】
スポーツマネジメント会社とアスリートが契約する場合、試合やスポンサー契約の調整、メディア対応を事務所が行います。アスリートは競技活動に集中できます。
エージェント契約とマネジメント契約の違い
マネジメント契約とエージェント契約は、似ているものだと思われがちですが、役割や契約の仕組みに違いがあります。
ここでは、両者の違いについて説明します。
マネジメント契約 | エージェント契約 | |
業務範囲 | 管理・交渉・広報 | 契約仲介のみ |
契約形態 | 専属が基本 | 非専属可 |
報酬の仕組み | 収入の一定率 | 成功報酬 |
活動の自由度 | 制約あり | 高い |
向いている人 | 初心者・サポート重視 | 自由重視 |
業務範囲
マネジメント契約では、出演交渉、宣伝活動、スケジュール管理、メディア対応など、日常的に幅広い業務を事務所が担います。事務所やマネージャーがタレントに代わって細かな調整を行い、活動を全面的に支援します。
一方、エージェント契約における業務範囲は主に仕事の紹介や契約条件の交渉に限定されることが多く、普段の活動管理や生活面のサポートまでは含まれません。
契約形態
マネジメント契約は「専属契約」で結ばれるのが一般的で、タレントはその事務所を通して仕事を行なうことが基本となります。事務所が窓口となるため、安定した活動のサポートを受けられる反面、他事務所を介した仕事は難しくなります。
一方、エージェント契約は非専属の形態をとることがあり、タレントは複数のエージェントと同時に契約することも可能です。そのため、自分で選んだ仕事やエージェントを柔軟に使い分けることができます。
報酬の仕組み
マネジメント契約では、タレントの収入から一定の料率(※例 30%など)を差し引いて事務所の報酬とする方法が多く採用されています。事務所は日常的な管理業務も行うため、固定的に収益を得る仕組みが整っています。
エージェント契約の場合は成功報酬型が中心で、エージェントが仲介した案件が成立した場合のみ報酬を受け取ります。このため、依頼する仕事の量や収益性によって、負担感やコストの仕組みが大きく異なります。
※事務所やタレントにより、料率は変わります。
活動の自由度
マネジメント契約は専属契約となる場合が多いため、タレント活動の自由度が制限されやすい側面があります。基本的には事務所の方針に従う必要があり、タレントが自分で自由に仕事や活動方針を決められるわけではありません。その一方で、さまざまな面から継続的なサポートを受けられるメリットがあります。
エージェント契約は制約が少なく、複数のエージェントや自分のコネクションを利用して仕事を受けられるため、活動の自由度が高いのが特徴です。
向いている人
マネジメント契約は、経験が浅く仕事の調整や交渉に不慣れな人、または全面的なサポートを必要とする人に向いています。手厚い管理体制のもとで安心して活動できるのが魅力です。
反対に、エージェント契約はすでに実績や知名度があり、自分の活動を主体的にコントロールできる人に適しています。仕事を自ら選びたい人や、幅広く活動したい人にとっては、自由度の高いエージェント契約の方が合うでしょう。
エージェント契約について、より詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
マネジメント契約のメリットデメリット
マネジメント契約にはどんなメリット・デメリットがあるのか、事務所、タレント双方の目線で紹介します。
事務所側のメリット
事務所は、タレントに対する裁量が大きいため、売り出し方やスケジュールなどをある程度コントロールできます。また、所属タレントの人気が出た場合は事務所全体のブランド力や交渉力が向上し、新規案件の獲得にもつながります。
タレントを育てる手間やコストはかかりますが、ヒットすればさまざまな恩恵を受けられる点は、事務所にとって大きなメリットになります。
事務所側のデメリット
事務所はタレントの活動を支援するために多くの人員やコストを必要とします。万が一トラブルや不祥事が起きた場合は事務所が対応を迫られるリスクもあります。
また、専属契約の場合、事務所が安定的に仕事を提供できなければ、タレントとの関係悪化や、契約解除などのリスクがあります。
タレントと良い関係を築き続けるには、事務所側も責任を負う必要があります。
タレント側のメリット
タレントにとっては、事務所が営業や交渉を代行してくれるため、自分は本業に集中できるのが最大のメリットです。出演機会の拡大や条件交渉のサポートを受けられることで、個人では難しい大きな案件にもつながりやすくなります。
また、事務所の広報や宣伝活動の恩恵を受けることで、自身の知名度や影響力をより高めることができます。知名度が低い人や、経験の浅い人でも事務所のバックアップにより活動を続けやすくなります。
タレント側のデメリット
専属のマネジメント契約では活動の自由度が制限される点に注意が必要です。事務所の方針に合わなければ、自分のやりたい仕事でも断られてしまうかもしれません。
また、収入に応じて事務所に支払う金額が決まるため、手元に残るお金は少なくなります。契約解除の条件によっては独立が難しい場合もあるため、タレント側にも一定のリスクがあります。
マネジメント契約書で定めるべき主な事項と注意点
マネジメント契約を結ぶときは、口約束ではなく、契約書を作成しましょう。
必要な事項を定めないと、報酬や権利の扱い、契約解除の条件などで紛争に発展するリスクがあります。ここでは契約書に盛り込むべき主要な項目を解説します。
① 契約の目的と業務範囲
契約の目的や業務範囲を明記しないと、事務所がどこまで業務を担うのか不明確になり、双方に誤解を招きます。例えば営業活動だけなのか、広報や日常の管理まで含むのかによって契約が大きく変わります。
目的をはっきりさせることで、後のトラブルを防ぐことができます。
② 専属か非専属か(専属性の有無)
専属契約か、非専属契約かを定めておかないと、タレントが他の事務所と交渉・契約していいのか不明瞭になり、トラブルに発展する可能性があります。
専属の場合は契約範囲を明確に、非専属なら複数契約の条件を具体的に記す必要があります。
たとえば専属契約なのに他の事務所と契約を結んだりすると、事務所とタレント間だけでなく、事務所同士の問題に発展するかもしれません。
③ 契約期間と更新条項
契約期間や更新条件を定めないと、契約終了時に自動更新か否かを巡ってトラブルになる可能性があります。
一定期間を設けて定期的に見直すことで、公平性を保ちやすくなります。更新に関する条項を明確にすれば、タレントの独立や事務所側の撤退など将来の選択肢をスムーズに実行できます。
④ 報酬(料率、計算方法、支払時期)
報酬の料率や計算方法を明示しないと、収入分配をめぐる紛争が起きやすくなります。たとえば、「売上の30%」と「純利益の30%」では、金額が大きく違います。
支払時期や方法も明確に定めましょう。報酬に関するトラブルは特に発生しやすいです。
⑤ 経費の負担区分
衣装代や交通費、宣伝費などの経費をどちらが負担するのかを定めましょう。あいまいだと、片方ばかりが負担することにもなりかねません。
もちろん、どちらが負担するかだけでなく、どのように清算するのかも決めておくべきです。
報酬と同様に、経費についても明確にしておくことで、予想外の出費がでた際なども揉めなくてすみます。
⑥ 権利の帰属(肖像権、著作権など)
アーティストの場合、作品の権利を誰が持つのかを定めます。無断利用になったり、収益配分の問題でトラブルになる可能性があります。
著作権や肖像権は今後の二次利用にも直結するため、早い段階で取り決めを行うことが大切です。
⑦ 禁止事項・遵守事項
禁止事項や遵守事項を契約書に明記しなければ、タレントが事務所の信用を損なう行為をした際の対応が難しくなります。
例えば、SNS利用の際の禁止事項などを定めておくと、炎上などを未然に防ぐことができるでしょう。
⑧ 秘密保持義務
秘密保持義務とは、契約を通じて知り得た情報を第三者に漏らさないよう義務づける条項です。
これを定めないと、タレント活動の戦略や契約内容、事務所の内部情報が外部に漏れる危険があります。
特に広告契約や新プロジェクトに関する情報が流出すると、損害が大きくなる恐れがあります。
⑨ 契約解除・損害賠償
契約解除の条件や違反時の損害賠償を明記しなければ、一方的な解約やトラブル発生時に対応できなくなります。
例えば「第〇条(禁止事項)に違反した場合」のように、どの条項に違反したら解除が可能になるのかを具体的に定めておくことが重要です。
また、契約違反があった場合に支払う損害賠償の金額をあらかじめ決めておく「損害賠償額の予定(違約金)」を定めておくことも有効です。これにより、実際に損害額を証明する手間が省け、紛争を未然に防ぐことができます。
⑩ 合意管轄
合意管轄とは、将来トラブルが起きたときに「どの裁判所で争うか」をあらかじめ当事者同士で決めておくことです。
決めておかないと、訴訟を起こす際にどの裁判所が管轄となるかで争いが生じ、手続きがスムーズに進まないおそれがあります。
マネジメント契約でよくある質問
マネジメント契約を解除するとどうなる?
当然ですが、マネジメント契約を解除すると、タレントは事務所によるサポートが受けられなくなります。契約書に定められた条件によって契約解除となりますが、場合によっては違約金が発生する場合もあります。
解除の条件や方法は事前に確認しておきましょう。
未成年者とマネジメント契約を結ぶ際の注意点は?
未成年者と契約する場合、本人だけでなく、親権者の同意が必要です。親権者の同意がない場合、裁判所により、契約無効となる場合もあるので注意しましょう。
また、学業との両立や過度な労働の防止など、青少年保護の観点からも慎重な契約内容の検討が求められます。
口約束でもマネジメント契約は成立する?
口約束でもマネジメント契約は成立しますが、どんな内容の契約だったかを後で確認するのが困難なので、金銭面でのトラブルなどが発生しやすくなります。
書面や電子契約で契約内容を残すことで、双方が確認できる形にしておくことが望ましいです。
マネジメント契約は電子化できる?
マネジメント契約は電子化することができます。
法律上、契約書は書面で作成することが原則とされていましたが、現代では多くの契約が電子的に締結されています。マネジメント契約も例外ではなく、「電子署名」や「タイムスタンプ」を用いることで、法的有効性を担保した上で電子化が可能です。
【電子契約のイメージ】
契約書を電子化することで、「コスト削減」「業務効率化」「リスク低減」といったメリットがあります。
- コスト削減…印刷代、郵送費、印紙代などが不要になります
- 業務効率化…契約の締結から管理まで、すべてオンラインで完結できます。
- リスク低減…データの検索や保管が容易になり、紛失のリスクも低減します。
注意点としては、電子契約で締結することについて、事前に当事者間で合意を得ておくことや、信頼性の高い電子契約サービスを利用することが挙げられます。
適切なツールと手続きを踏めば、安心してマネジメント契約を電子化できます。
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マネジメント契約は、芸能人やアスリート、インフルエンサーの活動を事務所やマネージャーが支援する仕組みです。タレントにとっては活動に専念できる反面、専属契約による自由の制限や報酬分配の負担が課題となります。
事務所側は収益やブランド力を高められる一方、管理コストやリスクを抱える点も否めません。契約を結ぶ際には、報酬や経費、権利関係を契約書で明確に定めておくことが、後のトラブル回避につながります。
なお、こうした重要な契約をスムーズかつ安全に締結・管理する方法として、電子契約の活用も進んでいます。クラウドサインでは、電子契約の基礎知識など、契約書のデジタル化を検討する方に向けた資料を無料でご提供しています。ご興味のある方は、ぜひダウンロードしてご活用ください。
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この記事の監修者
加藤高明
弁護士
2008年関西学院大学大学院情報科学専攻修了。法科大学院を経て、2011年司法試験合格、2012年弁護士登録、2022年Adam法律事務所設立。現在は、青年会議所や商工会議所青年部を通じた人脈による企業法務、太陽光問題、相続問題、男女問題などに従事する。趣味は筋トレやスニーカー収集。岡山弁護士会所属、登録番号47482。
この記事を書いたライター

弁護士ドットコム クラウドサインブログ編集部