白ナンバー車による有償輸送は法律違反?道路運送法や貨物自動車運送事業法のルールを解説

顧客から料金を受け取って輸送(=有償輸送)を行う事業用自動車には、緑色のナンバープレート(緑ナンバー)が付けられています。
これに対して、白色のナンバープレート(白ナンバー)は自家用自動車に付けられるものです。白ナンバー車は原則として、有償輸送を行うことができません。例外的に有償輸送が認められるケースもありますが、厳しい条件が設けられています。
本記事では白ナンバー車による有償輸送が違法であることについて、道路運送法などの法律のルールを踏まえながら解説します。
目次
白ナンバー車と緑ナンバー車の違い
自動車に付けられているナンバープレートの色には、いくつかの種類があります。トラックなどの運送に用いる自動車に付されているナンバープレートは、主に白色(白ナンバー)と緑色(緑ナンバー)の2つです。
白ナンバーは自家用自動車、緑ナンバーは事業用自動車に付されています。顧客から料金を受け取って行う輸送(=有償輸送)が認められるのは、原則として緑ナンバー車のみです。
白ナンバー車=自家用自動車|有償輸送は原則禁止
白ナンバーは「自家用自動車」に付されます。自家用自動車とは、事業用自動車以外の自動車です。
自家用自動車は原則として、有償で運送の用に供してはなりません(道路運送法78条)。したがって、顧客から料金を受け取ったうえで、その顧客や荷物を白ナンバー車に載せて運ぶことは原則として違法です。
緑ナンバー車=事業用自動車|規制の下で有償輸送が可能
緑ナンバーは「事業用自動車」に付されます。事業用自動車とは、自動車運送事業者がその自動車運送事業の用に供する自動車です。
「自動車運送事業」は、旅客(人)を運ぶ「旅客自動車運送事業」と、貨物を運ぶ「貨物自動車運送事業」の2つに大別されます。たとえば、バスやタクシーの営業は旅客自動車運送事業、トラック運送の営業は貨物自動車運送事業に当たります。
緑ナンバーが付された事業用自動車は、バス・タクシー・トラックなどによる運送の営業に用いることができます。ただし、道路運送法や貨物自動車運送事業法など、法令の規制を遵守しなければなりません。
なお、事業用自動車が軽自動車の場合は、黒色のナンバープレートが付されます。黒ナンバー車も緑ナンバー車と同様に、各種法令に基づいて有償輸送を行うことができます。
白ナンバー車が行うと違法になる有償輸送の具体例
白ナンバー車は原則として、顧客から料金を受け取って行う輸送(有償輸送)が認められていません。
たとえば以下の例などは有償輸送に当たり、白ナンバー車が行うと原則的に違法となります。
・顧客から料金を受け取って、白ナンバーの自家用乗用車でその顧客を目的地へ送り届ける(=白タクシー)
・顧客から料金を受け取って、白ナンバーのトラックで荷物を運送する(=白トラック)
など
なお、白ナンバーの自家用自動車でも、顧客から料金を受け取るのでなければ輸送に用いることは可能です。
たとえば、取引先の担当者が帰社する際に無償で送り届けることや、自社の備品を運ぶことなどは白ナンバー車でも問題ありません。
また、事前に対価を合意することなく、相手方から任意に謝礼を受け取ったに過ぎないのであれば、白ナンバー車で相手方や荷物の輸送を行っても違法とはなりません。ただし、謝礼の支払いが本当に任意であるかどうかは、厳しくチェックされる可能性があるので注意を要します。
白ナンバー車でも有償輸送ができるケース
白ナンバー車は原則として有償輸送ができませんが、以下のケースでは例外的に白ナンバー車による有償輸送が認められます。
②交通空白地有償運送
③福祉有償運送
④公共の福祉を確保するためやむを得ない場合に、国土交通大臣の許可を受けて行うとき
参考:自家用有償旅客運送(公共ライドシェア)ハンドブック|国土交通省物流・自動車局旅客課
災害のため緊急を要するとき
災害のため緊急を要するときは、白ナンバー車を用いて有償輸送を行うことができます(道路運送法78条1号)。
たとえば地震などの大災害が生じ、被災者を安全な場所へ輸送する必要性が生じたものの、すぐに動かせる緑ナンバー車が不足しているとします。このような場合は、白ナンバー車を用いて有償輸送をすることが認められると考えられます。
交通空白地有償運送
「交通空白地有償運送」とは、市町村やNPO法人などが、交通空白地において住民や観光客などの運送を行うもので、いわゆる「公共ライドシェア」の一種です(道路運送法78条2号、道路運送法施行規則49条1号)。
交通空白地有償運送を行おうとする者は、国土交通大臣の登録を受けなければなりません(道路運送法79条)。登録を受ければ、その有効期間内において白ナンバー車による有償輸送を行うことができます。
交通空白地有償運送の登録を受けるためには、主に以下の要件を満たす必要があります。
| 交通空白地有償運送の主な登録要件 | 
| (a)交通空白地 過疎地域または交通が著しく不便な地域であることが必要です。 また、必要な旅客輸送の確保を事業者が行うことが困難な状況にあるか、またはそのような事態を招くことが明らかであることなどが求められます。(b)運行管理・整備管理体制の整備 運行管理の責任者および車両の整備管理の責任者を選任するなどの対応が求められます。(c)運転者の確保 以下のいずれかの運転者を確保することが求められます。 ・2種運転免許を保有している ・1種運転免許を保有しており、かつ交通空白地有償運送に関する大臣認定講習を受講した(d)関係者間での協議 原則として、地方公共団体、バスやタクシーなどの一般旅客自動車運送事業者やその事業者団体、住民などの関係者間において、交通空白地有償運送の必要性等に関する協議が調っていることが必要です。 ただし市町村長等から導入が提案された場合や、交通の確保が決まっていない場合には、実際に協議が調っていなくても、協議が調ったものとみなされることがあります。  | 
また、運行管理や車両の整備管理について、バスやタクシーなどの一般旅客自動車運送事業者が協力する交通空白地有償運送も認められています(=事業者協力型自家用有償旅客運送)。民間のノウハウを活用することにより、効率的かつ安全性の高い形で交通空白地有償運を運営できるのが大きなメリットです。
交通空白地有償運送の登録の有効期間は、原則として2年です。ただし、重大な事故を起こしていないなどの要件を満たせば、更新時以降3年(事業者協力型の場合は5年)に延長されます。
福祉有償運送
「福祉有償運送」とは、市町村やNPO法人などが、一人では公共交通機関を利用できない身体障害者やその付添人を対象として、ドアツードア(Door to Door)の個別輸送を行うものです(道路運送法78条2号、道路運送法施行規則49条2号)。
交通空白地有償運送と並び、いわゆる公共ライドシェアの一種に当たります。
福祉有償運送を行おうとする者は、国土交通大臣の登録を受けなければなりません(道路運送法79条)。登録を受ければ、その有効期間内において白ナンバー車による有償輸送を行うことができます。
福祉有償運送の主な登録要件は、交通空白地に関するものを除いて、おおむね交通空白地有償運送と共通しています。
ただし福祉有償運送は、乗車定員11人未満の自動車を使用して行うことが求められます。また、車いすのまま乗り込める福祉自動車以外の自動車を使用する場合は、介護福祉士や大臣認定講習の修了者などを乗務させる必要があります。
福祉有償運送についても、事業者協力型自家用有償旅客運送が認められています。
福祉有償運送の登録の有効期間も、原則として2年です。ただし、重大な事故を起こしていないなどの要件を満たせば、更新時以降3年(事業者協力型の場合は5年)に延長されます。
公共の福祉を確保するためやむを得ない場合に、国土交通大臣の許可を受けて行うとき
公共の福祉を確保するためやむを得ない場合には、国土交通大臣の許可を受ければ、地域と期間を限定して白ナンバー車による有償輸送を行うことができます(道路運送法78条3号)。
行政通達により、以下の2つのケースは白ナンバー車による有償輸送の許可の対象になります。
幼稚園などが自ら保有する白ナンバー車によって、幼児などを自ら有償で運送することは、有償輸送許可の対象となります。参考:通学通園に係る自家用自動車の有償運送の取扱いについて|国土交通省(b)訪問介護員等の自家用自動車による利用者の輸送
タクシー事業の許可を受けている訪問介護事業所や居宅介護事業所が、所属する介護員などの自家用車を使用して介護報酬を受ける輸送をすることは、有償輸送許可の対象となります。
介護事業所のタクシー事業許可に付随するため、「ぶらさがり許可」と呼ばれることがあります。
参考:一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)の許可等の取扱いについて|国土交通省
参考:訪問介護事業所等の指定を受けた一般乗用旅客自動車運送事業者(特定旅客自動車運送事業者を含む。)が遵守すべき運行管理業務について|国土交通省
白ナンバー車で違法に有償輸送をした事業者に科される罰則|1年以下の拘禁刑・150万円以下の罰金
例外的に認められるケースを除き、白ナンバー車を用いて有償輸送を行うことは違法です。違反した者は「1年以下の拘禁刑もしくは150万円以下の罰金」に処され、または拘禁刑と罰金が併科されます(道路運送法97条1号)。
法人の代表者・代理人・使用人その他の従業者が、法人が所有または使用する白ナンバー車を用いて違法に有償輸送をしたときは、法人にも「150万円以下の罰金」が科されます(同法99条2号)。
また、無許可で一般旅客自動車運送事業または一般貨物自動車運送事業を経営した場合は「3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金」に処され、または拘禁刑と罰金が併科されます(同法96条1号、貨物自動車運送事業法70条1号)。
さらに、法人にも「300万円以下の罰金」が科されます(道路運送法99条2号、貨物自動車運送事業法80条)。
【2026年6月までに施行】無許可事業者に運送を委託すると刑事罰の対象に
2025年6月11日に公布された貨物自動車運送事業法の改正法では、無許可で一般貨物自動車運送事業または特定貨物自動車運送事業を営む者に対して、自動車による貨物の運送を委託してはならない旨が明記されました。
上記の規定に違反して、無許可事業者に貨物の運送を委託した者には「100万円以下の罰金」が科されます。
同改正は、公布日から起算して1年以内(2026年6月まで)に施行される予定です。白ナンバー車を用いて貨物の有償輸送をしている事業者がいたら、無許可事業者の可能性があるので十分ご注意ください。
まとめ
白ナンバー車を用いて、顧客から料金を受け取って運送を行うことは、一部の例外を除いて道路運送法違反に当たります。
違反者は刑事罰の対象となるので、白ナンバー車を用いた有償輸送を行うことは避けましょう。また、貨物などの運送を委託する事業者においても、運送事業者が法令を遵守しているかどうかを確認したうえで依頼することをお勧めします。
なお、物品などの運送を委託する際に締結する運送委託契約書は、電子契約によって締結することもできます。電子契約で締結することで印紙税を節約できるほか、書類の管理を効率化できます。まだ電子契約を導入していない企業は、ぜひ導入をご検討ください。
クラウドサインでは、電子契約の基礎知識など、契約書のデジタル化を検討する方に向けた資料を無料でご提供しています。ご興味のある方は、ぜひダウンロードしてご活用ください。
無料ダウンロード
この記事の監修者
阿部 由羅
弁護士
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。
この記事を書いたライター
弁護士ドットコム クラウドサインブログ編集部
こちらも合わせて読む
- 
                  
                    法律・法改正・制度の解説
                                          【2025年4月・2026年4月施行】改正物流効率化法とは?変更点や運送事業者の対応ポイントを解説
下請法物流業 - 
                  
                    法律・法改正・制度の解説
                                          フリーランス新法とは?主な義務や罰則、下請法との違い、相談窓口を解説【弁護士監修】
フリーランス新法 - 
                  
                    法律・法改正・制度の解説
                                          下請法とは?2026年施行の改正内容と実務への影響を解説
下請法 - 
                  
                    業務効率化の成功事例まとめ
                                          Salesforceとクラウドサインを連携し、業務効率化に成功した事例5選
契約書管理インタビュークラウドサインの機能コスト削減電子契約の活用方法電子契約の導入電子契約のメリット業務効率化API連携 - 
                  
                    業務効率化の成功事例まとめ
                                          kintoneとクラウドサインを連携し、業務効率化に成功した事例4選
契約書管理インタビュークラウドサインの機能コスト削減電子契約の活用方法電子契約の導入電子契約のメリット業務効率化API連携 
