内部統制システムとは?会社法・金融商品取引法の定義から構築手順まで解説
結論
内部統制システムとは、企業が法令遵守・業務の有効性・財務報告の信頼性を確保するために整備する社内管理体制や仕組みのことを指します。会社法では大会社に取締役会での基本方針決議を義務付け、金融商品取引法では上場企業に内部統制報告書の提出を求めています。
この記事では両法で定める「内部統制システム」の定義から、具体的なシステムの構築手順までをわかりやすく解説します。

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目次
内部統制システムとは何か
内部統制システムとは、組織が業務の適正性・効率性・法令遵守・財務報告の信頼性を確保するために構築する管理体制です。
内部統制システムの定義
会社法における内部統制システムの定義は、取締役会が業務の適正を確保するために整備する体制であり、リスク管理や内部監査などの組織的仕組みを指します。
一方、金融商品取引法では、上場企業に対して財務報告の信頼性を確保するための内部統制報告書の作成・公認会計士による監査を義務付けています。
両法は目的が異なりますが、健全な企業経営を支える点で共通しています。
「内部統制」と「内部統制システム」の違い
「内部統制」とは、企業が経営目標を達成するために整備されたルール・仕組みが、業務に組み込まれ適切に運用されている状態を指します。
一方、「内部統制システム」とは、内部統制を組織全体として体系的・統合的に構築・運用・監視するための仕組みや体制の総体を指します。
つまり、内部統制が「最終的に目指すべき状態」を示す概念であるのに対し、内部統制システムはその状態を実現するために必要な「仕組み・体制」を指すという違いがあります。
内部統制について詳しくはこちらの記事でも解説しています。合わせてご確認ください。
ガバナンスとの違い
「内部統制システム」は、組織内部において業務の適正性・法令遵守・財務報告の信頼性を確保するための管理の仕組みであり、主に経営執行側が構築・運用するものです。一方、「ガバナンス」とは、取締役会や株主など組織の意思決定・監督機能全体を指し、経営者を規律づける外枠の仕組みです。

つまり、ガバナンスが「経営を監督する枠組み」であるのに対し、内部統制システムは「その枠組みの中で経営を適正に執行する仕組み」と位置づけられます。
ガバナンスについての詳細はこちらの記事もご参照ください。
会社法における内部統制システム
会社法は大会社に対し、内部統制システムの基本方針を取締役会で決議し整備することを義務付けています。
会社法362条・416条の規定内容
会社法362条は取締役会設置会社に関する規定であり、取締役会が業務執行の決定・取締役の職務執行の監督・代表取締役の選定および解職を行うと定めています。また、一定規模以上の大会社では、内部統制システムの整備に関する基本方針の決定を取締役会の専決事項として義務付けています。
一方、416条は指名委員会等設置会社における執行役の職務執行を監督する取締役会の役割と、内部統制システム整備の決定義務を規定しています。
大会社・上場会社に構築が義務付けられる理由
大会社・上場会社は、多数の株主・債権者・従業員など広範なステークホルダーに影響を与えるため、経営の透明性と適正性の確保が強く求められます。大会社は資産規模や取引の複雑性から経営リスクが大きく、上場会社は公開市場で資金調達する以上、投資家保護の観点から財務報告の信頼性確保が不可欠です。
そのため、会社法・金融商品取引法はこれらの会社に内部統制システムの構築を義務付け、社会的責任の履行を担保しています。
内部統制システムの基本方針とは何か
内部統制システムの基本方針とは、会社法に基づき取締役会が決定すべき、内部統制システムの整備に関する基本的な考え方と具体的な体制の指針です。
取締役・使用人の職務執行が法令・定款に適合することを確保する体制、リスク管理体制、取締役の職務執行の効率性を確保する体制、企業集団における業務適正確保体制などを含みます。この方針は単なる形式的文書ではなく、実効性ある内部統制システム構築の基盤となるものです。
基本方針として定めるべき項目
会社法施行規則100条が定める基本方針の項目は下記のとおりです。
(1)取締役の職務執行に係る情報の保存・管理体制(取締役会議事録の適切な保管など)
(2)損失の危険の管理に関する規程や体制(リスク管理委員会の設置など)
(3)取締役の職務執行が効率的に行われることを確保するための体制(予算管理制度など)
(4)使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制(コンプライアンス規定の整備など)
(5)当該会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制(子会社への内部監査実施など)
以上の(1)~(5)は、会社法施行規則100条1項が定める、対象会社に共通する事項です。これに加えて、監査役を設置しているかどうかによって、取締役会が追加で定めるべき事項が異なります。
監査役設置会社では下記の(6)~(8)を追加で定め、監査役を置かない会社では、これらに代えて株主への報告体制(100条2項)を定めることになります。
(6)監査役の職務を補助すべき使用人に関する事項及び当該使用人の取締役からの独立性に関する事項
(7)取締役・使用人・子会社の役職員等が監査役に報告するための体制、及び当該報告をした者が報告を理由に不利益な取扱いを受けないことを確保するための体制
(8)監査役の職務執行について生ずる費用の処理に関する方針その他監査役の監査が実効的に行われることを確保するための体制
金融商品取引法における内部統制システム
金融商品取引法第24条4の4では、上場企業に対して内部統制報告書の作成・提出および外部監査を義務付けています。
J-SOXとは何か・会社法との違い
J-SOX(内部統制報告制度)とは、有価証券報告書の提出義務を負う会社(主に上場会社ですが、非上場でも該当する会社を含む)に対して財務報告に係る内部統制の評価・報告および外部監査を義務付ける制度です。
会社法が取締役会による業務全般の適正確保を目的とした内部統制システムの整備を義務付けるのに対し、J-SOXは財務報告の信頼性確保に特化しています。
また、会社法は取締役会による体制整備の決定を求めるにとどまるのに対し、J-SOXは経営者による内部統制報告書の作成・開示と公認会計士または監査法人による監査証明を受けることまで義務を課している点が大きな違いです。
上場会社に求められる内部統制報告書
内部統制報告書とは、上場会社の経営者が毎事業年度末時点における財務報告に係る内部統制の有効性を自ら評価し、その結果を記載して内閣総理大臣に提出する書類です。
評価範囲・評価手続・評価結果を記載し、重要な欠陥が発見された場合はその旨を開示する義務があります。
また、公認会計士または監査法人による監査証明が必要であり、有価証券報告書と併せて開示されることで投資家保護と資本市場の信頼性確保に寄与しています。
内部統制報告書の提出義務や書き方について、詳しくはこちらの記事もご参照ください。
内部統制監査の仕組み
内部統制監査とは、経営者が作成した内部統制報告書の適正性を公認会計士または監査法人が独立した立場で検証する制度です。監査人は経営者の内部統制評価プロセスの妥当性と、財務報告に係る内部統制の有効性を監査します。
財務諸表監査と一体として実施されるため、効率的な監査が可能となります。重要な欠陥が発見された場合、監査人は監査報告書にその旨を記載し、投資家への適切な情報開示を通じて資本市場の透明性と信頼性の確保に貢献しています。
内部統制システムを構成する4つの目的と6つの基本要素
内部統制は4つの目的と6つの基本要素で構成され、組織全体の統制基盤を形成するものです。
4つの目的(業務の有効性・財務報告の信頼性・法令遵守・資産保全)
内部統制システムの4つの目的を以下にまとめます。
1.業務の有効性・効率性:組織の目標達成に向け、適切かつ効率的な業務遂行を確保
2.報告の信頼性:財務諸表をはじめ、組織の内外への報告が正確・適正に作成され、信頼できる情報をステークホルダーへ提供
3.法令等の遵守(コンプライアンス):関連する法律・規制・社内規定を遵守した業務の担保
4.資産の保全:横領・紛失・不正利用などから会社の資産(有形・無形)を守る。
6つの基本的構成要素
アメリカの「COSOフレームワーク」を基礎とし、日本の基準として「ITへの対応」を独自に追加した6つの基本的構成要素を以下にまとめます。
1.統制環境:経営者の姿勢など、内部統制全体の基盤となる環境。
2.リスクの評価と対応:目標達成を阻むリスクを識別・分析し、適切な対応策を講じるプロセス。
3.統制活動:リスク対応を実行するための具体的な方針・手続き(承認、照合、職務分離など)。
4.情報と伝達:必要な情報を適時・適切に収集し、関係者間で共有・伝達する仕組み。
5.モニタリング:内部統制が有効に機能しているかを継続的・定期的に評価・監視する活動。
6.ITへの対応:業務処理にITを活用しつつ、ITリスクを管理し統制に組み込む取り組み。
内部監査との違い
内部統制は、経営者が構築し全従業員が担う「仕組みそのもの」で、内部監査は、独立した内部監査部門が「その仕組みを評価・検証する活動」です。

一言で言えば、内部統制は「防波堤を作ること」、内部監査は「防波堤が壊れていないか点検すること」です。両者は対立するものではなく、内部監査が内部統制の不備を発見・改善提言することで相互に補完し合う関係にあります。
内部統制システム構築の手順と実務ポイント
内部統制システムの構築には、リスク評価から運用・評価まで段階的な手順と実務対応が求められます。
構築が必要な会社の要件と期限
資本金5億円以上または負債総額200億円以上の大会社は会社法362条、指名委員会等設置会社は同416条、監査等委員会設置会社は同399条の13に基づき、それぞれ内部統制システムの基本方針を取締役会で決定しなければなりません。
また、整備した内部統制システムの概要は、会社法435条2項及び会社法施行規則118条2号に基づき、事業報告へ記載する必要があります。
また、2006年5月の会社法施行時より義務が生じているため、事業環境の変化に応じて継続的な見直しと更新が求められています。
ステップ別構築フロー
内部統制の構築はまずリスク評価から始め、業務上の課題や脅威を洗い出します。
次に経営方針に沿った基本方針を策定し、統制目標を明確化します。
続いて規定・マニュアル等の整備を行い、組織全体へ周知・導入し、その後日常業務での運用を徹底し、最後に有効性を評価・改善するサイクルを繰り返します。
3点セットの整備
内部統制の3点セットとは、業務記述書・フローチャート・リスクコントロールマトリックス(RCM)の3つです。業務記述書は業務内容や担当者を文章で明示し、フローチャートは業務の流れを図式化して可視化します。
RCMはリスクと対応する統制活動を対応づけ、統制の網羅性と有効性を確認するために活用されます。
内部統制の3点セットについて、詳細は下記記事もご参照ください。
よくある失敗パターンと対策
よくある失敗として、形式的な文書整備にとどまり実態と乖離するケースや、担当者への周知不足で運用が形骸化するケースが挙げられます。
対策としては、現場の実務に即した文書作成と定期的な研修の実施が重要です。加えて、経営層のコミットメントが不可欠であり、評価・改善サイクルを継続的に回す仕組みを組織全体で定着させることが求められます。
契約プロセスの内部統制と電子契約の活用
契約プロセスは企業活動の要のひとつですが、書類の紛失や対応の遅延といった内部統制上のリスクが生じやすい領域です。締結状況を一元管理できる電子契約の活用は、こうしたリスクを抑える有効な対策となります。
契約管理が内部統制上のリスクポイントになる理由
契約管理は内部統制上の重要なリスクポイントとなります。契約内容の確認不備や権限外の締結、更新期限の失念が法的トラブルや損失につながるためです。また契約書の保管が不徹底な場合、証跡が失われ紛争時に不利となります。
対策として、承認フローの明確化、台帳による一元管理、期限アラートの仕組みを整備し、定期的なモニタリングを実施することが不可欠です。
電子契約で実現できるワークフロー統制・証跡管理
紙の契約書は、稟議や押印の各段階を人の目視確認に頼らざるを得ず、決裁権限のない担当者が契約を締結してしまう、承認前に書類が先方に送付されてしまうといった統制上の抜け漏れが起こりやすい面があります。
電子契約を導入することで、承認フローをシステム上で設定し、権限外の契約締結を防止するワークフロー統制が実現できます。また、締結日時・承認者・変更履歴が自動的に記録され、事後の書き換えができない形で保存されるため、改ざんのない証跡管理が可能です。
紙契約と異なりデータとして一元管理されるため、監査時の資料提出や内部統制評価における有効性の確認も迅速かつ正確に行うことができます。

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まとめ
内部統制システムは、会社法・金融商品取引法の双方で整備が求められる経営上の重要な仕組みです。目的や基本方針を理解したうえで、リスク評価から運用・評価までの手順を着実に進める必要があります。
特に契約プロセスは統制上のリスクが集中しやすいため、電子契約の活用によって承認フローの明確化と証跡管理の強化を図ることをおすすめします。
なお、クラウドサインでは電子契約をこれから検討する方に向けた資料を無料でご提供しています。気になる方はぜひダウンロードのうえ、ご活用ください。

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この記事を書いたライター
奥田豊
中小企業診断士
都市銀行で融資業務、製造業(プライム企業)で本社経理・工場管理に従事。工場管理業務においては、在庫管理やSOPなどを経験。その後、中小企業診断士を取得し、財務コンサル会社へ転身し、管理部門の経理部門長として管理部門体制強化に貢献し、自社のIPOを実現させる。現在は独立し、経理業務改善等のコンサル業務に従事している。