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組織づくりのノウハウ

「出社回帰」は正解か?リモートワークの課題5選とその解決策

2020年のパンデミックによる強制的な導入から5年以上が経過し、リモートワークは大きな転換点を迎えています。

「出社回帰(Return to Office:RTO)」か、「ハイブリッドワーク」の定着か。多くの経営者・人事労務担当者がこの判断に揺れています。

最新の調査データと成功企業の事例を紐解くと、問題の本質はリモートワークという働き方そのものではなく、「アナログ時代のOS(制度・ツール・慣習)」を無理やり新環境に持ち込んだことによるミスマッチにあることが浮き彫りになってきました。

この記事では、最新トレンドを踏まえた上で、リモートワークの課題やその具体的な解決策をご紹介します。リモートワークの導入をこれから検討される方はもちろん、リモートワークと出社を組み合わせたハイブリッドワークの推進を検討される方もぜひ参考にしてみてください。

リモートワークの現状:二極化する企業方針

まず、現在の立ち位置を客観的なデータで把握しましょう。現在、リモートワークは単なる「緊急避難措置」から「経営戦略」へと変貌しています。

「ハイブリッド」の標準化と「出社回帰」

2024年の国土交通省データによると、首都圏のリモートワーク実施率は38.1%と高い水準を維持しています。しかし、その中身は「ハイブリッドワーク派」と「出社回帰派」に大きく二極化しています。

ハイブリッドワーク派 出社回帰派
週2〜3日の出社と在宅を組み合わせ、
対面のチームビルディングと在宅の
集中業務を使い分ける現実的な解です。
楽天グループや本田技研工業のように、
イノベーション創出や企業文化の強化
を目的として、原則出社へ回帰する動きも
加速しています。

一方で、NTTグループのように居住地制限を撤廃し、人材獲得競争を優位に進める「フルリモート・居住地自由(Work from Anywhere)」を選択する企業もあり、「どのスタイルが自社の競争優位になるか」という戦略的な選択が求められています。

参考:社員が自律的に働き方を選択する時代へ<NTTグループにおけるハイブリッドワークの取り組み>

新たに見えてきたリモートワークの課題

リモートワークが普及するにつれて、メリットだけでなくさまざまな課題も明らかになってきました。まとめると、主に以下の5つが挙げられます。

出社しないとできない業務がある

リモートワークを阻むもっとも大きな課題が、そもそも出社しないとできない業務があるというものです。

みずほ情報総研株式会社が2021年に公開した調査データによると、「テレワークを実施するにあたってどのような課題や障壁があるか」という質問に対して、「テレワークに適した仕事でない」や「テレワークできる制度がない」といった、根本的な業界・業種や会社の制度に起因するものを除くと、もっとも多い回答が「会社に行かないと利用できない資料がある」(22.8%)でした。

さらに、「会社でしかできない手続き(捺印が必要、紙での保管が必要)がある」という回答も19.4%あり、これらを合わせると4割以上が「業務がそもそもデジタル化されていないこと」が課題だといえそうです。

出典:令和2年度 ウィズコロナにおけるデジタル活用の実態と利用者意識の変化に関する調査研究の請負(みずほ情報総研株式会社)

コミュニケーションの「質」の変化

物理的な課題に次いで大きいのが、コミュニケーションの「質」の変化です。

リモートワークをすることで、必然的に対面することが減り、メールやチャットなど文章(テキスト)ベースのコミュニケーションが増えます。

すると、表情、声のトーン、場の空気といった非言語情報(Non-verbal cues)が大幅に少なくなり、発信者の意図が正しく伝わらず、受信者が過剰に不安を感じたり、攻撃的であると誤認したりするようなトラブルが発生しやすくなります。

「雑談がなくなり、イノベーションが阻害される」という点もよく指摘される課題です。 オフィスでの偶発的な立ち話がなくなったことで、部署を超えた情報の結合や、些細なアイデアの共有が減少します。これは中長期的にイノベーションの枯渇を招く懸念があります。

参考:令和2年度 ウィズコロナにおけるデジタル活用の実態と利用者意識の変化に関する調査研究の請負(みずほ情報総研株式会社)

さらに、勤務場所が異なると暗黙知の共有が難しくなるため、新入社員が組織文化に適応するまでの期間(ランプアップタイム)が長期化してしまうといわれています。

健康リスクが増える

通勤や出社が減ることによる運動不足で、健康リスクが増えるという課題もあります。

パーソナルジムを経営する「RIZAP」が企業の健康管理担当者を対象に行なった、テレワーク中の従業員の健康に関するインターネット調査(2021年・2022年)によると、テレワークを導入している企業のうち、テレワーク普及の前後で、従業員の健康面の変化があったと回答した企業は2021年・2022年ともに約8割でした。

同調査では、具体的には、「運動不足」や「精神的なストレス」、「肩こり・腰痛」「食生活の乱れ」「筋力低下」といった影響がみられます。

また、EUなどの海外事例では、在宅勤務により従業員が「常時ON」の状態になり、ワークライフバランスの崩壊やストレス、睡眠障害などの健康問題が生じる可能性が指摘されています。これに対し、勤務時間外に連絡を遮断する「つながらない権利」の法制化が議論されています。

参考:令和2年度 ウィズコロナにおけるデジタル活用の実態と利用者意識の変化に関する調査研究の請負(みずほ情報総研株式会社)

セキュリティリスクが増加

従業員の自宅Wi-Fi、私用端末(BYOD)、そして公共のフリーWi-Fiなど、管理外のネットワークからのアクセスが常態化すると、VPN機器の脆弱性を狙った攻撃や、フィッシングによるID情報の窃取リスクが増加します。

また、業務効率化のために、会社が許可していないクラウドサービスや生成AIツール(ChatGPT等)を従業員が独自に利用した場合、そこから機密情報が流出するリスクも高まります。

人事評価がしづらくなる、公平性が欠如する

リモートワークが進むことで成果が見えにくくなり、人事評価がよりしづらくなったり、公平でなくなるといった課題もあります。

参考:人事評価制度の見直し(厚生労働省)

日本のメンバーシップ型雇用では、協調性や努力といったプロセスが評価の重要な要素でしたが、リモートワークでは成果物以外の部分が見えにくくなります。これにより、上司は「サボっているのではないか」と疑心暗鬼になり、部下は「正当に評価されていない」と不満を募らせる可能性があります。

また、出社している社員の方が上司との接触頻度が高く、結果として昇進や重要なプロジェクトへのアサインで有利になるというバイアスが発生するリスクもあります。

リモートワークの課題に対する解決策

ここからは企業が直面している「出社しないとできない業務」「コミュニケーション」「メンタルヘルス」「セキュリティ」「人事評価」といったリモートワークにおける課題に対し、具体的な解決策を解説します。

ペーパーレス化を促進する

ハンコや書類確認のために出社せざるを得ない「紙中心の業務フロー」がある場合は、まずペーパーレス化を徹底することから始めましょう。

ペーパーレス化すべき業務としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 社内共有資料
    紙の資料をWordやPDFファイル化し、適切なアクセス権限を設定したクラウドストレージで管理します。「会社に行かないと資料が見られない」状況を解消します
  • 社内申請・稟議
    稟議書、経費精算、休暇届などの社内手続きをクラウド上のワークフローシステムに移行します。これにより、承認スピードが上がり、スマホからでも申請・承認が可能になります。
  • 契約・請求業務
    電子契約サービス(クラウドサイン等)や電子請求書システムを導入し、押印や郵送の手間をなくします。法改正により電子保存のハードルも下がっており、導入の好機です。

ペーパーレス化は、単に紙を減らすだけでなく、情報の検索性を高め、紛失リスクを減らす業務効率化・DXの第一歩です。場所を選ばずに働ける環境を整えるため、聖域なくデジタルへの移行を進めましょう。

「相手のタイミングで確認できるコミュニケーション」を基本にする

まず、これまで課題視されていた「コミュニケーション不足」を、単に会議の「回数」で補うのではなく、コミュニケーションの「設計」を見直すことで解消していきましょう。

たとえば、リモートワーク下では、相手の時間を拘束する「同期コミュニケーション(電話・Web会議)」よりも、相手のタイミングで確認できる「非同期コミュニケーション(チャット・ドキュメント)」をベースにする必要があります。

具体的には、以下のような施策が考えられます。

施策アイデア 内容
原則「即レス不要」にする リモートワーク下でメールやチャットツールから届く
メッセージにすぐに返信すること(即レス)が
「必須」だと、常に通知を気にする必要があり、
過度なストレスになってしまう可能性があります。
急用を除いて「即レス不要」を原則にしましょう。
スタンプなど軽い反応を促す チャットツールには「スタンプ」などで簡単に反応を
示すことができる機能もあります。
「スタンプ」を活用し、気軽にコミュニケーション
を取ったり、テキストだけでは伝わりづらいニュアンス
を伝えやすくしたりすることができます。
ドキュメント文化を徹底する 会議を開く前に、議論の前提となる情報をドキュメント
(ワード、Google Docs、Notion等)にまとめ、
事前に共有・コメントし合う文化を醸成します。
これにより、同期的な会議時間を短縮し、
質の高い意思決定を行うことができます。
動画メッセージを活用する 画面操作やプレゼンテーションを短い動画として共有することで、
テキストでは伝わりにくいニュアンスを非同期で伝えます。

非同期コミュニケーションをベースにすることで、相手に過度なストレスを与えることなく、顔が見えないコミュニケーションのデメリットを補うことができます。

意図的に「雑談」を制度化する

1on1ミーティングを業務進捗確認の場ではなく、プライベートやキャリアの悩みを話す「雑談」の場として定義することで、「雑談が減る」というリモートワークの課題を克服する方法もあります。

また、「分報(Times)」と呼ばれる社内SNS上の個人タイムラインを活用し、オフィスにいるような「つぶやき」を可視化する手法もあります。Zoomなどのツールやバーチャル空間を活用した業務時間内のオンラインカフェ設置や、ランチ代の補助により、形式ばらない交流を促進する方法もあります。

メンタル不調を早期発見する

メンタルヘルスの不調を予防するだけでなく、不調がある社員を早期発見することも大切です。

出社なら「顔色が悪い」と気づけた変化も、画面越しでは伝わりづらくなります。そのため、マネージャーは「オンライン上のわずかな違和感」を観察しましょう。

  • テキストコミュニケーションの変化
    以前よりレスポンスが極端に遅くなった、絵文字がなくなり文面が攻撃的になった、報告が曖昧になった等の変化はSOSの可能性があります。
  • Web会議での様子
    理由なく頑なにカメラをオフにする、身だしなみが乱れている、発言が減り反応が鈍いといった行動は要注意です。
  • 勤怠データの乱れ
    深夜・休日のログ履歴や、突発的な欠勤の増加は、オンオフの切り替えができず疲弊している証拠かもしれません。

また、こうした個人の観察だけに頼ると見落としが発生するリスクもあるため、ストレスチェック制度やパルスサーベイなど、客観的なデータや制度も導入することがおすすめされます。

  • ストレスチェック制度の活用
    年1回の実施だけでなく、高ストレス者への面接指導を徹底する。
    集団分析を行い、ストレス度の高い部署(職場環境に問題がある可能性)を特定する。
  • パルスサーベイ(短期間の意識調査)
    月に1回や週に1回など、簡単な数問のアンケートを実施し、メンタルの浮き沈みを定点観測する。

ストレス度の高い社員や部署を定量的に把握できたら、「最近、大丈夫?」と声をかけたり、産業医等の専門家を案内するといった対策を講じることができます。

「姿が見えないから分からない」ではなく、「姿が見えないからこそ、データと言葉の裏側を注意深く見る」という意識変革が、リモートワーク時代のマネジメントには求められています。

スポーツクラブへの補助金、福利厚生の整備

リモートワークの運動不足に対する予防策として、「スポーツクラブ利用への補助金」や「健康支援型の福利厚生」の拡充が注目されています。具体的な施策例は以下の通りです。

施策アイデア 内容
ジム・スポーツクラブの会費補助 フィットネスクラブと法人契約を結び、
利用料の一部または全額を会社が負担する制度です。
オンラインフィットネスの提供 自宅で気軽にできるヨガや筋トレの
オンラインサービスの利用権を配布し、
始業前や休憩時間の運動を推奨します。

これまでは「通勤手当」や「オフィスの飲み物」に充てられていた予算を、こうした「健康投資(健康経営)」へシフトする企業が増えています。適度な運動は最高のリフレッシュであり、社員の心身の健康を守ることは、結果として生産性の維持やエンゲージメントの向上に直結します。

セキュリティ・パッケージを導入する

大企業のような高価なゼロトラスト環境を構築できない中小企業向けに、コストパフォーマンスの高いパッケージ製品が登場しています。また、ネットワークセキュリティだけでなく、重要情報の塊である「契約書・文書データ」の管理も重要視されています。

【中小企業向けセキュリティ対策と費用の目安】

対策レイヤー 具体的なツール・手法 期待される効果 費用の目安(月額・年額)
ゲートウェイ UTM(統合脅威管理) ウイルス、スパム、不正侵入
をネットワークの入り口で
一括防御。
月額 5,000円〜2万円
(リース含む)
エンドポイント EPP / EDR パソコン端末内での
ウイルス検知(EPP)と、
感染後の挙動監視・
封じ込め(EDR)。
年額 3,000円
〜1万円/台
認証・ID管理 MFA(多要素認証) パスワードに加え、
スマートフォンアプリ
や生体認証を用いて
なりすましを防ぐ。
ユーザー数による
(グループウェアの
機能でカバー可能)
文書・契約管理 クラウド型電子契約 契約書の紛失・改ざん防止、
閲覧権限の統制、
バックアップの自動化。
月額 1万円〜
運用監視 セキュリティパック NTT東日本「おまかせ
サイバーみまもり」など、
機器と監視代行のセット。
月額 1万5,000円
〜3万円程度

人事評価制度を見直す

リモートワークやハイブリッドワークを成功させるためには、従来の人事評価制度を見直し、新たな人事評価制度を再設計しましょう。

リモートワーク環境に適応するためには、以下のポイントを軸に制度を再設計する必要があります。

見直すポイント 内容
「成果」重視(成果主義)へのシフト 勤務態度が見えない以上、評価の軸を「時間」から
「成果(アウトプット)」へ移行することが不可欠です。
目標達成度や納品物の質など、客観的な数値や事実に
基づいた評価基準を設けることで、
働く場所に関わらず公平な評価が可能になります。
これは近年注目されている「ジョブ型雇用」の考え方
とも親和性が高い手法です。
評価基準と目標の明確化(MBO/OKRの活用) 成果で評価するためには、「何を達成すれば高評価となるか」
を事前に明確に合意しておく必要があります。
MBO(目標管理制度)やOKR(目標と主要な成果)などの
フレームワークを活用し、期待される役割とゴールを
可視化することで、従業員は迷いなく業務に取り組むこと
ができます。
プロセス評価を補う「1on1ミーティング」 成果主義といっても、結果が出るまでのプロセスを完全に無視しては、
チームワークや人材育成が疎かになるリスクがあります。
週次や隔週での「1on1ミーティング」を制度化し、
業務の進捗や悩み、チームへの貢献行動(バリュー評価)
を定期的にヒアリングすることで、見えにくいプロセス部分
を適切に評価に反映させる工夫が求められます。

従来の「長時間働いているか」「机に向かっているか」といった職務を遂行する際の行動や態度などを元に評価する情意評価や曖昧なプロセス評価のままでは、評価者による主観の偏りが生じやすく、従業員の不満やモチベーション低下を招く原因となります。

人事評価においても、最新のデジタルツールを用いることで、評価軸やプロセスを見える化し、従業員のモチベーションを損ねない制度設計・運用フローの設計が可能になります。
詳しくはこちらの記事でも解説しているので、参考にしてみてください。

まとめ:リモートワークを「妥協」で終わらせないために

リモートワークの課題は、「上司や同僚の顔が見えないこと」ではありません。「見えなくても回る仕組み」を作れていないことにあります。

この記事を参考に、リモートワークを取り入れても「業務が回る仕組み」をぜひ構築してみてください。

なお、「顔が見えなくても回る仕組みづくり」の一環として、避けて通れないのが契約書のデジタル化です。

契約書のデジタル化とは、従来の「紙と印鑑」の契約書類を「電子契約サービス」などを使ってデジタル化することで、作業時間とコストを⼤幅に削減することができる仕組みのことです。

【電子契約のイメージ】
クラウド型電子署名サービスを用いた電子契約のイメージ図
電子契約は、以下の3つの理由からリモートワーク対応の初期導入ツールとしておすすめできます。

  1. 操作が簡単(メールを使えれば大丈夫)
  2. 既存の業務フローに対して「追加・変更」が少なくて済む
  3. 収入印紙代や郵送費、管理保管場所の削減などコスト削減効果が大きく短期的な成果が見えやすい

クラウドサインでは、契約書のデジタル化をこれから検討する方に向けた資料を無料でご提供しています。気になる方はぜひダウンロードのうえ、ご活用ください。

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この記事の監修者

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高桑清人

中小企業診断士

前職ではBPO企業にて12年間、業務設計・品質管理・人材マネジメントなどの管理業務に従事。独立後は中小企業の経営支援に携わり、新規事業の立ち上げや事業計画策定を伴走型で支援。学習塾講師として16年・1万時間超の授業経験もあり、「聴く・伝える・支える」現場感を大切に活動している。

この記事を書いたライター

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業務改善プラスジャーナル編集部

業務改善は難しそう、大変そうという不安を乗り越え、明日のシゴトをプラスに変えるサポートをします。単なる業務改善に止まらず、組織全体を変え、デジタル化を促進することを目指し、情報発信していきます。契約管理プラットフォーム「クラウドサイン」が運営。

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