リーガルテックの今を一望できる『法務サービスバイヤーズガイド』

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日本からリクルート社が出資していることでも話題のリーガルテックベンチャーLawGeexが、リーガルテックの今を一望することができるeBook『The In-House Counsel’s LEGAL TECH Buyer’s Guide 2018』を発行しました。

85ページに渡るリーガルテック大事典

まず驚くのがそのボリュームです。自社サービスの潜在顧客獲得のため、サイトでeBookを提供し個人情報と引き換えにダウンロードをしてもらうというマーケティング手法は一般的になりました。とはいえ、そこで手にするeBookは、大概10〜30ページ程度にとどまるものがほとんど。

そんな中、このバイヤーズガイドは、リーガルテック市場の成長性とトレンド、企業から見たサービス選択のコツ(適法性含む)、個別サービス紹介を、ユーザーとなるインハウスローヤーのインタビューも交えながら、85ページものボリュームでまとめたものになっています。いわばリーガルテック大辞典。

LawGeex社がまとめた『The In-House Counsel's LEGAL TECH Buyer's Guide 2018』

LawGeex自身がリーガルテック企業ですので、当然自社サービスを思いっきりフィーチャーしているものかと思いきや、他企業のサービスと並列でほんの10行程度紹介するだけという奥ゆかしさ。徹底的に宣伝臭さを抑え、リーガルテックの導入を検討する企業法務部門の手元に長く置いてもらうことを目的とした作りになっています。

130の法務サービスを17の業務分野に分類して紹介

特に注目は「バイヤーズガイド」の名の通り、企業の法務部門が今すぐ調達・利用することができるテックサービスを紹介するパート。130のサービスを以下17のカテゴリに分類し、サイトURL、「$〜$$$」の3段階のコスト感比較、5〜15行前後の短評という構成で、次々と紹介していきます。

上記カッコ( )内には、そのカテゴリごとに紹介されているサービスの数を、私のほうでカウントして入れてみました。こう眺めてみると、CONTRACT MANAGEMENTの分野は23サービスも乱立していて、すでに超激戦区になっているのがわかります。一方、意外にもCONTRACT DRAFTING/REVIEWの分野は5〜6件と少なめ。これから狙い目の領域と見るか、それとも海外では商売にならないとすでに見切られている領域なのか…。こうした分類自体が、新しいリーガルテックサービスを考える上でのヒントにもなりそうです。

この130という数を見て、「最新のリーガルテックがもうこんなにたくさん揃ってるの?」と驚かれるかもしれません。実は、このガイドで紹介されているサービスは、Lexis Nexis・Salesforce・Google Drive・Slackといった、すでに著名なもの・必ずしもリーガル専用ではないものも含めて紹介しているために、こんな数になっているというのがミソ。

決して騙しているわけではなく、インハウスローヤーが解決したい課題に対して「今すぐ」調達して使うことができるテックサービス全般が網羅されたガイドとなっているわけです。一見タイトルとの齟齬があるようですが、これはこれで正しい編集方針だと思います。

営業管理ツールであるSalesforceも、使いこなせば契約書管理ツールとしても活用できる

EDGARの公開データを利用して英文契約書を作成できるBloomberg Law’s Draft Analyzer

すでにこのメディアでもご紹介済みのリーガルテックサービスも多い中、私も今回このバイヤーズガイドを読んで初めて知った興味深いサービスがありましたので、ここでちょっと紹介したいと思います。それが「Bloomberg Law’s Draft Analyzer」です。

締結しようとしている契約書の電子ファイルを、ドラッグアンドドロップでこのサービスに放り込むだけで、

Bloomberg Law's Draft AnalyzerのシンプルなUI

EDGARで公開されている実際の契約書と照合し、どこの法律事務所のひな形から作られたかというDNAレベルまで丸裸にして、さらにそのひな形からどのように修正・変更しているかを、精緻に分析し表示してくれるというもの。言うなれば「契約書ひな形見破りツール」。

もととなるひな形を作った法律事務所名まで表示

ちなみにEDGAR(Electronic Data-Gathering, Analysis, and Retrieval system)とは、米国証券取引法に基づいて上場企業に重要な契約を開示させるためのファイリングシステムのこと。これのおかげで米国では実際に締結された英文契約書をビッグデータとして誰でも利用できる状態になっていて、それを活用したリーガルテックというわけです。データさえオープンになっていれば、テックというものは勝手に・しかもここまで使えるものが生まれるということの実例として、参考になります。

いまだ訴訟の判決文さえその多くがデータとして公開されていない日本の状況では、リーガルテックそのものの開発というより、まず法律分野の情報をビッグデータとしてどう集めるかが目下の課題になりそうです。

eBook『The In-House Counsel’s LEGAL TECH Buyer’s Guide 2018』のダウンロードはこちらからどうぞ

The In-House Counsel’s LegalTech Buyer’s Guide 2018 (LawGeex)

(橋詰)