契約書作りを「プラモデル」化するプロ向け契約書作成・管理ツール COMMONS PAL


ファイルサーバーから過去の類似案件のWordファイルを探し、コピペしながら契約書を作成するという、これまでの無駄だらけの契約書作成プロセスを大きく変えるクラウドサービスが登場しました。

これまでのリーガルテックとは一味違うプロ向け契約書作成ソリューション

2018年10月にリリースしたeBook『日本のリーガルテック2018-2019』の中で実はこっそりご紹介していたのですが、本メディアではまだ取り上げていなかった新しいリーガルテックサービス「COMMONS PAL(コモンズパル)」をご紹介します。おそらく、来年〜再来年にかけてのリーガルテックの主戦場になっていくであろう、契約書を「作成」する部分に特化したサービスです。

契約書作成の問題を解決するこれまでのリーガルテックと言えば

  • パターン分けされたサンプル・ひな形をダウンロードできるサービス(AI-CON DRAFTやKEISUKEなど)
  • プリセットされた選択肢を選んでいくと選択に応じた契約書が出力されるサービス(CONTRACT EXPRESSなど)
  • 契約書をアップロードするとAIがリスクを摘示してくれるサービス(LegalForceなど)

このいずれかのパターンだったわけですが、このCOMMONS PALはそのいずれでもない、ユニークなアプローチをとっています。言うなれば、「契約書作成のプロ達がファイルサーバーとWordを使って行っていた作業を超効率化する」というアプローチです。

プラモデルを組み立てるように契約書を組み立てる

COMMONS PALは登録制の無料トライアルも提供していますが、実際の契約書作成画面とその動きをちょっと見てみたい、という方向けに、YouTubeでもご覧いただくことができます。

COMMONS PAL 動画紹介

COMMONS PALには百種類以上の契約書サンプルと契約条項が「パーツ」としてあらかじめ格納されています。この条項パーツを右側カラムでタグ検索しながら引き出し、+(プラス)ボタンを押すことで左側の書面作成エリアの任意の場所に挿入・削除しながら、プラモデルを作るように契約書全体を組み立てていく、そんな使い方ができるようになっています。もちろん、条項を差し込むと、条文番号等も自動的に振り直してくれます。

これまで、契約書作成のプロ達はこうした作業をどうやっていたかというと、

  1. 過去の類似案件で使った契約書をファイルサーバーからダウンロードする
  2. 今回の案件で使えそうな条項をコピー&ペーストして骨組みを作る
  3. 今回の案件に合わせて条文の内容を書き直す
  4. 足りない条文があれば、また別の契約書ファイルをダウンロードしてコピペするか、ゼロから作成する
  5. 条項号のナンバリング・インデント等文書全体の体裁を再チェックして整える

このサイクルを繰り返し、出来た成果物を契約書という単位でファイルサーバーにまた格納する……つまり、ファイルサーバーで契約書ファイルというかたまりで管理をし、そのかたまりで再利用をしていた、というわけです。

この点COMMONS PALでは、クラウド上で条項という「パーツ」単位に細分化して管理することで、これまで行っていた契約書Wordファイル単位での管理、検索、ダウンロード、コピー&ペースト、条項号ナンバリング・インデント調整といった無駄な「作業」を徹底的に排除・自動化 できるようになります。

ただし、プラモデルとは大きく違う点が1つだけ。市販のプラモデルは最低限のクオリティを達成するための「組み立て」「着色」方法のマニュアルが用意されています。しかし、契約には取引の個別性や特殊性を反映する必要がそれなりにあるため、そうしたマニュアルを用意することは困難です。

この点で、現状のCOMMONS PALを扱って契約書を作成するためには、そうした契約書作りのマニュアルが頭に入っていること、つまり一定の法務経験が必要となってきます。したがって、誰でもすぐに契約書が作れるようになるツールではないという点は、注意が必要でしょう。

とはいえ、「パーツ」を作る製造工程や仕上げの工程を経ることなく契約書がすばやく・超効率的に作れる様になったという点は、高く評価すべきだと思います。

今後の共有機能の拡充に期待

もうひとつ、こうしたツールが組織で仕事を行う企業において真に効果を発揮するためには、これまで個人単位でタコツボ化していた法務パーソンのノウハウをオープンに共有化していく、そうしたマインドと行動を刺激する仕組みも必要になってくると思います。現状のCOMMONS PALには、まだその機能が実装されていません。

過去の類似案件Wordファイルから契約書を作成するという、本当はかなり非効率なプロセスが現状まかりとおっているおかげで、法務担当者の中には、自分が気に入っている条文ファイルを自分の手元だけにためこみ、社外はおろか社内の法務部の同僚にも公開したがらないという傾向があります。以前、「GitHub契約条項集『katax contract-manuals』にプルリクしてタコツボ法務から脱出しよう」にご登場いただいたkataxさんも、こんなことをおっしゃっていました。

過去の契約書を流用するのが適しているケースはごく一部で、多くの場合は避けるべきだと思っています。各契約に合った条件に調整しきれずに、ミスが起きやすいですから。
ただ僕が思うのは、いずれにせよそうした契約条項集が「秘伝のタレ」みたいに大切にしまい込まれているのは、ちょっと違うんじゃないかなあって。

COMMONS PALさんにお話をうかがったところ、共有機能やテンプレートへのコメント機能等については近日実装予定あり とのこと。その名前に「COMMONS(共有地)」を冠しているところからも、同社代表取締役の堀口弁護士が、きっとそうした問題を解決しようという意識をもってこの事業に取り組んでくださっているものと信じ、今後も期待しています。

(橋詰)

契約のデジタル化に関するお役立ち資料はこちら

こちらも合わせて読む

電子契約の国内標準
クラウドサイン

日本の法律に特化した弁護士監修の電子契約サービスです。
さまざまな外部サービスと連携でき、取引先も使いやすく、多くの企業や自治体に活用されています。