【無料ひな形付き】反社会的勢力の排除に関する覚書とは?主な記載事項や注意点などを弁護士が解説

コンプライアンスに関する意識の高まりなどを背景として、企業間の取引に先立って「反社会的勢力の排除に関する覚書」を締結する例がよく見られるようになりました。暴力団員等に該当しないことの表明・確約や、暴力的な要求行為等をしないことの確約などを明記して、クリーンな取引の土台を整えましょう。
本記事では反社会的勢力の排除に関する覚書について、主な記載事項や注意点などを弁護士が解説します。
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目次
反社会的勢力の排除に関する覚書とは
「反社会的勢力の排除に関する覚書」とは、企業間の取引等において、反社会的勢力を関与させない旨を相互に確約するために取り交わす文書です。
暴力団員などの反社会的勢力は、株主総会に介入する「総会屋」などをはじめとして、暴力などの実力行使を背景に、企業から不当な搾取を行ってきた歴史があります。1991年に「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(暴力団対策法)」が成立して以降は、反社会的勢力を排除して企業の利益やクリーンな経営を守るための規制が全国的に展開されてきました。

企業間の取引等において、反社会的勢力を関与させない旨を相互に確約するために「反社会的勢力の排除に関する覚書」を取り交わす
政府は、2007年に「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」を公表しました。
同指針では企業に対し、契約書などにおいて「暴力団排除条項」を明記することを求めています。暴力団排除条項は、相手方が反社会的勢力であることや、相手方が暴力的な不当要求等をしたことが判明した場合には、契約を解除できる旨を定めたものです。
暴力団排除条項は個別の取引に関する契約に定めることある一方で、独立した文書である「反社会的勢力の排除に関する覚書」として締結することも考えられます。この場合の反社会的勢力の排除に関する覚書は、当事者間におけるすべての取引に適用されることを想定して作成することが大切です。
反社会的勢力の排除に関する覚書の主な記載事項|例文も紹介
反社会的勢力の排除に関する覚書には、主に次の事項を記載します。
②暴力的な要求行為等をしないことの確約
③違反時の覚書・契約等の解除、損害賠償
④その他
各項目の内容を、条文例を示しながら解説します。
暴力団員等に該当しないことの表明・確約
第1条 (暴力団員等に該当しないことの表明・確約)
- 甲及び乙は、それぞれ相手方に対し、自ら及び自らの役員が、本覚書の締結日において、暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋、社会運動等標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団、その他これらに準ずる者(以下「暴力団員等」と総称する。)に該当しないことを表明し、かつ将来にわたっても該当しないことを確約する。
- 甲及び乙は、それぞれ相手方に対し、自ら及び自らの役員が、本覚書の締結日において、以下のいずれにも該当しないことを表明し、かつ将来にわたっても該当しないことを確約する。
① 暴力団員等によって経営を支配されている
② 暴力団員等が経営に実質的に関与している
③ 自社若しくは第三者の不正の利益を図る目的、又は第三者に損害を加える目的などをもって、不当に暴力団員等を利用している
④ 資金等の提供又は便宜の供与などによって、暴力団員等に関与している
⑤ 暴力団員等と社会的に非難されるべき関係を有する
上記第1項は、当事者が暴力団員等に該当しないことの表明・確約を定めたものです。暴力団や暴力団員に加えて、それらに準ずる暴力的不法行為等を行うおそれがある者も対象に含めています。表明・確約の期間は、覚書締結日の5年前まで遡らせています。
また上記第2項は、暴力団員等と密接な関係性を有していないことの表明・確約を定めたものです。暴力団員等そのものには当たらなくても、その隠れ蓑になっている企業(いわゆる「フロント企業」など)も存在するところ、そのような企業を排除することを目的としています。
表明・確約の対象となる主体としては、覚書の当事者のほか、その役員や従業員、関係会社なども含めることがあります。
上記の例では、覚書の当事者とその役員を表明・確約の対象としています。対象者の範囲は、契約交渉によって調整する余地がある部分です。
暴力的な要求行為等をしないことの確約
第2条 (暴力的な要求行為等をしないことの確約)
甲及び乙は、それぞれ相手方に対し、以下に該当する行為を自ら行い、又は第三者を利用して行わせないことを確約する。
① 暴力的な要求行為
② 法的な責任を超えた不当な要求行為
③ 取引に関して脅迫的な言動をし、又は暴力を用いる行為
④ 風説を流布し、偽計又は威力を用いて相手方の信用を毀損し、又は相手方の業務を妨害する行為
⑤ その他前各号に準ずる行為
当事者が相手方に対し、暴力的な要求行為等をしない旨の確約を定めます。
また、当事者自身が行う場合のほか、第三者に暴力的な要求行為等をさせることも防ぐ必要があります。第三者を仕向けて暴力的な要求行為等をさせない旨の確約も定めておきましょう。
違反時の覚書・契約等の解除、損害賠償
第3条 (本覚書の違反による契約等の解除・損害賠償)
- 甲及び乙は、相手方が本覚書に違反したことが判明したときは、何らの通知又は催告を要せずに、本覚書その他の甲乙間で締結されている一切の契約(契約書、合意書、覚書その他の名称を問わず、口頭による合意も含む。以下「契約等」という。)を解除することができる。
- 前項に基づいて契約等が解除された場合、本覚書に違反した当事者(以下「違反者」という。)は、相手方(以下「解除者」という。)に対して損害賠償を請求できない。当該解除によって解除者が損害を被ったときは、違反者は解除者に対し、当該損害を賠償しなければならない。
相手方が反社会的勢力に該当することが判明した場合や、相手方から暴力的な要求行為等を受けた場合には、直ちに相手方との関係を遮断しなければなりません。
そのために、相手方の違反が判明したときは契約等を解除できる旨を定めておきましょう。反社会的勢力に排除に関する覚書だけでなく、当事者間において存在する契約をすべて解除できる旨を定めることが大切です。
契約が解除されると、取引の中断等に伴って当事者に損害が生じることもあり得ます。損害賠償については、違反者が全責任を負う一方で、解除者は一切責任を負わない旨を明記しておきましょう。
その他
反社会的勢力の排除に関する覚書には上記のほか、次の事項などを定めます。
- その他の事由による解除
→暴力団員等に該当したことや、暴力的な要求行為をしたこと以外に、反社会的勢力の排除に関する覚書を解除できる事由を定めます。 - 有効期間
→反社会的勢力の排除に関する覚書の有効期間や自動更新の有無、期間満了後も存続する条項などを定めます。 - 合意管轄
→反社会的勢力の排除に関する覚書に関して紛争が生じた場合に、訴訟を提起する裁判所を定めます。
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反社会的勢力の排除に関する覚書を締結する際のチェックポイント
反社会的勢力の排除に関する覚書を締結する際には、特に次のポイントを踏まえながら内容を検討してください。
②表明・確約の範囲を確認する|広がり過ぎないように注意
③法務省指針を踏まえて平時・有事の対応を検討する
自社が標準としている暴排条項等と比較する
契約書において定める暴排条項や、反社会的勢力の排除に関する覚書について用いる標準テンプレートは、企業によって少しずつ異なります。
特に相手方が反社会的勢力の排除に関する覚書のドラフトを作成した場合には、必ずその内容を自社が標準としている暴排条項等と比較しましょう。もし反社会的勢力の排除に関する覚書の内容が不十分と思われる場合は、不足している条項を追記するよう相手方に求めてください。
表明・確約の範囲を確認する|広がり過ぎないように注意
反社会的勢力の排除に関する覚書を作成する際によく問題となるのは、暴力団員等に該当しないことの表明・確約の対象範囲です。
覚書の当事者を対象とするのは当然ですが、その役員や従業員、さらには関係会社やその役員・従業員についても表明・確約の対象に含めるかどうかは検討の余地があります。
表明・確約の範囲が広いほど、反社会的勢力との関係性を打ち切ることが容易となり、取引をクリーンに保ちやすくなります。
その一方で、表明・確約の範囲が広がり過ぎると、当事者において反社会的勢力との繋がりの有無を把握するのが困難になります。たとえば、関係会社との末端の従業員について予期せず反社会的勢力との関係が判明したことを理由に、相手方から契約を解除されてしまうといった事態も想定されるので注意が必要です。
一般的に、企業の規模が一定以上である場合には、末端の従業員まで表明・確約の対象に含めるのは現実的でないでしょう。基本的には「当事者+役員」をベースとしつつ、企業規模などの実情に応じて対象範囲を調整するのが適切ではないかと思われます。
法務省指針を踏まえて平時・有事の対応を検討する
法務省が公表している「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」では、企業が反社会的勢力との関係を遮断するために留意すべき事項がまとめられています。
たとえば同指針の解説では、反社会的勢力の排除に関する覚書などに定める暴力団排除条項(暴排条項)について、次の考え方を示しています。
「……暴力団排除条項の活用に当たっては、反社会的勢力であるかどうかという属性要件のみならず、反社会的勢力であることを隠して契約を締結することや、契約締結後違法・不当な行為を行うことという行為要件の双方を組み合わせることが適切であると考えられる。」(6)不実の告知に着目した契約解除
「暴力団排除条項と組み合わせることにより、有効な反社会的勢力の排除方策として不実の告知に着目した契約解除という考え方がある。
これは、契約の相手方に対して、あらかじめ、「自分が反社会的勢力でない」ということの申告を求める条項を設けておくものである。
この条項を設けることにより、
○ 相手方が反社会的勢力であると表明した場合には、暴力団排除条項に基づき、契約を締結しないことができる。
○ 相手方が反社会的勢力であることについて明確な回答をしない場合には、契約自由の原則に基づき、契約を締結しないことができる。
○ 相手方が反社会的勢力であることについて明確に否定した場合で、後に、その申告が虚偽であることが判明した場合には、暴力団排除条項及び虚偽の申告を理由として契約を解除することができる。」
出典:企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針に関する解説 p3|法務省
本記事で紹介した条文例にも、「属性要件(=暴力団員等に該当しないことの表明・確約)」と「行為要件(暴力的な要求行為等をしないことの確約)」を含めています(上記(5))。
また、相手方による暴力団員等に該当しないことの表明が虚偽であった場合には、契約を解除できる旨を定めています(上記(6))。
暴排条項に関する取り扱いのほかにも、企業としては同指針の内容を踏まえたうえで、反社会的勢力の排除に関する平時・有事の対応を検討することが大切です。
参考:企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について|法務省
まとめ
反社会的勢力の排除に関する覚書は、企業間の取引の開始に先立って締結されることがあります。その主な内容は、暴力団員等に該当しないことの表明・確約と、暴力的な要求行為等をしないことの確約です。相手方がこれらに違反した場合には、全ての契約を解除して関係を遮断することができます。
企業はコンプライアンスを徹底するため、反社会的勢力の排除に関する覚書などに用いる暴排条項の内容を検討し、自社としての標準テンプレートを備えておくことをおすすめします。
反社会的勢力の排除に関する覚書は、電子契約によって締結することもできます。印紙代を節約できるほか、書類の検索などの契約管理もしやすくなるため、業務の効率化にも寄与します。電子契約は今後も普及が進むと思われるので、未導入の方はぜひ導入を検討してみてください。
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ダウンロードする(無料)この記事を書いたライター
阿部 由羅
弁護士
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。
