一般社団法人クラウド型電子署名サービス協議会(CeSSA)2025年度 コングレスレポート
この度、2025年6月17日(火)に衆議院第一議員会館 国際会議室にて、一般社団法人クラウド型電子署名サービス協議会(CeSSA)による第3回コングレスが開催されました。
本協議会は、クラウド型電子署名の認知と理解の増進、個人・企業・地方公共団体・国による利用促進を図り、トラストを確保した社会のデジタル化に寄与することを目的に活動しています。
今回で3回目の開催となるコングレスは、前年度の活動報告と、来賓紹介・来賓挨拶、有識者・会員・関係省庁によるパネルトークセッション、フォトセッションという構成で行われました。
当記事では、イベント当日の様子をレポートとしてお届けします。なお、一般社団法人クラウド型電子署名サービス協議会(CeSSA)について詳しく知りたい方は公式サイトをご覧ください。
代表理事・根垣昂平(弁護士ドットコム株式会社取締役)からの挨拶・活動報告
CeSSA代表理事の根垣氏より、挨拶と活動報告が行われました。
直近の主要な活動実績として、CeSSAの自治体向け処分通知デジタル化ガイドに参考事例として東京都八王子市の一時保育承諾通知書のデジタル化事例を追加し、好評を得たことを挙げました。
また、今年5月施行の地方分権一括法により、地方公共団体の条例交付時の署名にも電子署名が可能となり、行政手続きのデジタル化がさらに進む制度が整ったと説明。商業登記電子証明書の利便性向上についても、デジタル庁や法務省との意見交換を継続し、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」に具体的な目標が示されたことを報告しました。
結びに根垣氏は、昨年開催された会員交流会はたいへん活況で、また非常に学びの多い時間となったことに触れ、今年も会員が相互に親睦を深められるような協議会運営を心がけていきたいと締めくくりました。
挨拶の最後にはCeSSAを構成する会員各社が紹介されました。CeSSA会員(2025年4月1日現在)は次の通りです。
【CeSSA会員のご紹介(全9社)】
- アドビ株式会社
- jinjer株式会社
- ドキュサイン・ジャパン株式会社
- フリー株式会社
- 弁護士ドットコム株式会社
- 株式会社マネーフォワード
- 株式会社TeraDox
- SMBCクラウドサイン株式会社
- GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社
来賓者の紹介
続いて、来賓紹介、来賓挨拶では、当日の来賓者からの祝辞のほか、デジタル大臣 衆議院議員 平将明氏からのビデオメッセージが放映されました。

デジタル大臣 衆議院議員 平将明氏からのビデオメッセージ放映時の様子
平氏からは、今回のコングレスが一般社団法人不動産テック協会との連携開催であることに関して、業界の垣根を越えた連携を実現しておりデジタル大臣および規制改革担当大臣として大変喜ばしいという旨が述べられました。
また、CeSSAがクラウド型電子署名サービスを利用しようとする自治体向けに利用ガイドを作成したことを評価し、自治体における業務のデジタル化に大きく貢献すると期待を寄せ、引き続きCeSSAと連携し、日本のデジタル化を加速させたいと結びました。
なお、当日紹介された来賓者のお名前・ご所属は次の通りです。
会場来賓者の紹介
- デジタル庁 デジタル社会共通機能グループ 参事官 杦浦維勝氏
- 国土交通省 不動産・建設経済局不動産業課 不動産政策企画官 近藤光氏
- 一般社団法人不動産テック協会 理事 和田浩明氏
- CeSSAアドバイザー: 水井大弁護士
パネルトークセッション『不動産取引文書の電子化・電子署名の利用促進に向けた取組』
パネルトークセッションでは、不動産取引のDX推進をテーマに、次の3名の登壇者による講演が行なわれ、不動産取引のデジタル化の現状と課題、そして今後の推進策について活発な議論が交わされました。
【講師】
- 一般社団法人不動産テック協会 理事 和田浩明氏
- GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社 GMOサイン事業部部長 牛島直紀氏
- 国土交通省不動産・建設経済局不動産業課 不動産政策企画官 近藤光氏
まずはじめに、一般社団法人不動産テック協会の理事である和田浩明氏から、不動産電子契約の普及における課題が共有されました。賃貸の更新契約や新築マンション販売では電子契約がかなり普及している一方で、中古売買などの流通取引では、売主・買主・双方の仲介会社が関わる「4社間契約」が一般的であるため、合意形成が難しく、普及が20%にも満たない現状が指摘されました。

(一般社団法人不動産テック協会 理事 和田浩明氏によるトークセッション)
また、固定資産税評価証明書などの取得時に必要となる「媒介契約書」の電子化については、自治体によって電子署名の確認体制が異なり、対応にバラツキがある点が大きな課題とされました。新築戸建て取引のように、宅建業法と建設業法、特商法といった複数の法律が関わる複雑な取引についても、省庁横断でのガイドライン整備の必要性が示されました。
次に、GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社の牛島直紀氏が、宅建業法改正後の電子契約の利用状況と今後の課題について説明しました。

(GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社 GMOサイン事業部部長 牛島直紀氏によるトークセッション)
牛島氏は「不動産業界は書類が多く、締結コストが高いことから電子契約導入による経済効果が高い」というデジタル庁による調査報告を紹介しつつ、高齢の家主層が抱く電子化への抵抗感の存在や、「書面に比べて厳しすぎる実施基準」が普及を阻んでいるという課題を指摘しました。

画像の出典:令和6年度電⼦署名法基準等検討及び電⼦契約の普及に関する調査研究業務最終報告書(デジタル庁)
特に、電子書面提供に関する承諾の取得方法や改変防止措置の確認において、紙の取引にはない厳しい要件が求められることが事業者側の導入ハードルになっているとし、これらの要件見直しを提言しました。
最後に、国土交通省不動産・建設経済局不動産業課 不動産政策企画官の近藤光氏が、不動産取引におけるDX推進の必要性とこれまでの取り組み、今後の対応方針について発表しました。

(国土交通省不動産・建設経済局不動産業課 不動産政策企画官 近藤光氏によるトークセッション)
近藤氏は地方を中心に宅建業者が減少傾向にある現状において、業務効率化や遠隔地対応を可能にするDX推進が、地方の不動産取引活性化と持続可能性確保のために重要であると強調しました。
IT重説や書面電子化といった制度整備は進むものの、国土交通省が実施した宅建業者へのアンケートでは利用率がまだ低いことが示され、さらなる利用促進が必要であるとの見解を示しました。
【参考資料:宅建業者の取引オンライン化の導入・実施状況(国土交通省調査より)】

出典:不動産分野におけるDXの推進について(国土交通省 不動産・建設経済局不動産業課令和7年2月)
国土交通省における今後の取り組みとして、規制改革推進会議での議論を踏まえ、媒介契約書の電子署名について「PDF閲覧ソフトウェアによる確認」といった簡便な方法を総務省と協力して地方公共団体に周知する方針が示されました。
さらに、90~120分かかることが一般的な重要事項説明において、消費者保護を前提に、AI技術を補助ツールとして活用し、宅建士の負担軽減を図る具体的な例や活用方法を検討・公表していく意向が示されました。
パネルトークセッション後は、デジタル庁と国土交通省それぞれの所管法令・ガイドラインにおいて「電子署名」の定義に使用される語句が異なることにより、事業者やユーザーに混乱が生まれている点に関する問題提起など、当日の来場者も交えた質疑応答も盛んに行なわれ、関係省庁と民間団体が連携し、具体的な解決策の検討と実行を進めることで、今後のさらなるデジタル化の加速が期待される内容となりました。
フォトセッション
本コングレスの最後には、登壇者および各会員企業の代表者によるフォトセッションが行われ、全てのプログラムが終了しました。
なお、当協議会では正会員・賛助会員の募集を随時受け付けているため、ご興味をお持ちの方は公式サイトをご覧ください。
この記事を書いたライター

弁護士ドットコム クラウドサインブログ編集部
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