【無料ひな形付き】製造委託契約書とは?主な記載事項や注意点などを弁護士が解説

企業間で製品の製造を受委託する際には「製造委託契約書」を締結します。製品仕様などの契約条件を明記して、契約トラブルを未然に防ぎましょう。
本記事では製造委託契約書について、主な記載事項や注意点などを弁護士が解説します。
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目次
製造委託契約書とは
「製造委託契約」とは、一方当事者が相手方に対して製品の製造を委託し、相手方がこれを受託する内容の契約です。「製造委託契約書」は、製造委託契約の内容を記載した文書に当たります。
製造委託契約書には、製品の仕様や製造代金の支払いなど、取引に関する条件を細かく定めます。当事者間のトラブルを未然に防ぐ観点から、締結前に製造委託契約書の内容をよく確認しましょう。
製造委託契約書の主な記載事項|例文も紹介
製造委託契約書には、主に次の事項を定めます。
②個別契約に関する事項
③原材料等の供給
④型等の貸与・保管
⑤納入
⑥製品の検査・所有権の移転
⑦製造代金(委託料)
⑧類似品・模倣品の製造販売の禁止
⑨契約不適合責任
⑩その他
各記載事項につき、例文を示しながら解説します。
製造委託をする旨・製品の仕様
第1条 (製造委託)
甲は、乙に対し、別紙記載の仕様による製品(以下「本製品」という。)の製造を委託し、乙はこれを受託する。
一方当事者が相手方に製品の製造を委託し、相手方がこれを受託する旨を明記します。
製品の仕様についても定めておきましょう。仕様が詳細にわたる場合は、別紙を設けるのが一般的です。
個別契約に関する事項
第2条 (個別契約に関する事項)
- 本契約に定める事項は、甲乙間で別段の合意がない限り、個々の本製品の製造に関して甲乙間で締結する契約(以下「個別契約」という。)にも適用されるものとする。ただし、本契約の定めと個別契約の定めが矛盾抵触するときは、個別契約の定めが優先される。
- 個別契約は、甲が乙に対して次の事項を記載した注文書を交付し、乙が当該注文書の内容を承諾することによって成立する。
① 品番
② 単価
③ 数量
④ 代金の総額、支払期日及び支払方法
⑤ 納入の期限、場所及び方法
⑥ 甲が乙に対して供給する原材料に関する事項⑦ その他の必要な事項 - 前項に定める甲の注文書の交付及び乙の承諾は、書面又は電磁的記録によって行うものとする。
反復継続して製造委託をする場合は、当初に基本契約としての製造委託契約書を締結し、個々の発注は個別契約書によって行います。
この場合、基本契約書たる製造委託契約書において、個別契約に関する事項の定めが必要です。基本契約が個別契約にも適用される旨、両者が矛盾抵触する場合の取り扱い、個別契約の内容や締結方法などを定めましょう。
原材料等の供給
第3条 (原材料等の供給)
- 甲は乙に対し、本製品の製造に必要な半製品、部品、附属品又は原材料(以下「原材料等」という。)を供給するものとする。
- 原材料等に係る数量、対価、納入方法その他の事項は、個別契約において定めるものとする。
- 甲は、原材料等を用いて製造する本製品に係る代金の支払期日より前に、当該原材料等の対価の全部又は一部を乙に支払わせてはならない。ただし、乙の利益を不当に害することとならないときは、この限りでない。
製品の品質を均一化するため、発注者が受注者に対して半製品・部品・附属品・原材料を提供するケースがあります。その場合は、原材料等に関する事項を定めておきましょう。詳細が決まっていないときは、個別契約で定めるものとします。
なお取適法※が適用される場合は、受注者の責めに帰すべき理由がないのに、原材料等の対価を製品の対価よりも早く支払わせて、受注者の利益を不当に害することが禁止されています。製造委託契約書でも、その旨を定めておくとよいでしょう。
※正式名称:製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律
型等の貸与・保管
第4条 (型等の貸与・保管)
- 甲は乙に対し、本製品の製造に必要な金型、木型、治具、検具又は製造設備その他の物品(以下「型等」という。)を貸与するものとする。
- 型等の貸与に係る対価は、無償とする。ただし、甲乙間で別段の合意をした場合は、当該合意の定めに従う。
- 型等の保管は、乙が行うことを原則とする。ただし、型等を保管させることにより、乙の利益を不当に害することとなるときは、甲は速やかに当該型等の回収その他の措置を講じなければならない。
製品の製造に当たって必要な金型や木型などを、発注者が受注者に対して貸与するケースもあります。その場合は、型等の貸与・保管に関する事項を定めましょう。
なお取適法が適用される場合は、型等を保管させることにより、受注者の利益を不当に害してはなりません。特に長期間にわたって発注を行わない場合などには、発注者が型等を回収するなどの対応が求められます。
納入
第5条 (納入)
本製品の納入の期限、場所及び方法その他の事項は、個別契約によって定めるものとする。乙は当該定めに従い、甲に対して本製品を納入しなければならない。
製造した製品の納入に関する事項を定めます。具体的に決まっていなければ、個別契約に委ねましょう。
製品の検査・所有権の移転
第6条 (本製品の検査・所有権の移転)
- 甲は、乙から本製品の引渡しを受けた日の翌日から起算して○営業日以内(以下「検査期間」という。)に、当該本製品の検査(以下「検査」という。)を行い、その合否を乙に対して通知するものとする。
- 甲は検査において、本製品の種類、品質又は数量が本契約に適合していないと合理的に判断した場合に限り、当該本製品を不合格とし、乙に対して本製品の納入のやり直しを命じることができる。
- 前項にかかわらず、専ら甲の指示又は責任に起因して、本製品の種類、品質又は数量が本契約に適合しない状態となったときは、甲は検査において、当該本製品を不合格とすることができない。
- 検査期間内に、前三項に基づいて有効に行うことができる甲の不合格通知が乙に到達しなかったときは、本製品は検査に合格したものとみなす。
- 本製品の所有権は、甲が第1項に基づき乙に対して検査の合格を通知した時、又は前項に基づき検査に合格したものとみなされた時に、乙から甲へ移転する。
納入された製品の検査に関する事項を定めます。検査の期間や合否の基準などを明記しておきましょう。
製造代金(委託料)
第7条 (製造代金)
- 本製品の単価は、個別契約によって定めるものとする。
- 甲は乙に対し、当月末日までに検査に合格した本製品に係る製造代金(以下「本代金」という。)を、翌月末日までに、乙が指定する口座に振り込む方法により支払う。振込手数料は、甲の負担とする。
製造代金について、単価や支払期限・支払方法などを定めます。単価が決まっていなければ、個別契約に委ねます。
類似品・模倣品の製造販売の禁止
第8条 (類似品・模倣品の製造販売の禁止)
乙は、本契約又は個別契約によって認められる場合を除き、本製品の類似品及び模倣品を自ら製造若しくは販売し、又は第三者をして製造若しくは販売させてはならない。
受注者が契約外で勝手に類似品や模造品を製造・販売すると、発注者はシェアの食い合いなどによって損害を被ってしまいます。類似品や模造品の製造販売の禁止について定めておきましょう。
契約不適合責任
第9条 (契約不適合責任)
- 引き渡された本製品の種類、品質又は数量が本契約に適合していないときは、甲は乙に対し、その責任(以下「契約不適合責任」という。)を追及できる。
- 契約不適合責任の追及方法は、本製品の修補、代替物の引渡し若しくは不足分の引渡しの請求、本代金の減額の請求、損害賠償の請求又は契約の解除とする。各方法の具体的な要件及び手続きについては、本契約に別段の定めがない限り、民法の定めに従う。
- 契約不適合責任を追及できる期間は、甲が乙から本製品の納入を受けた日の翌日から起算して○年間に限る。ただし、乙が納入の時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。
製品に欠陥や不足などが見つかった場合に、受注者が発注者に対して負う責任(=契約不適合責任)について定めます。
基本的には検査時において発注者が慎重に確認すべきと考えられますが、検査終了後の契約不適合責任を認める場合は、その期間や条件などを明記しましょう。
その他
製造委託契約書には上記のほか、次の事項などを記載します。
- 契約不適合責任を除く契約違反による解除
→契約不適合責任に基づく場合以外に、当事者が契約を解除する際の要件や手続きを定めます。 - 危険負担
→いずれの当事者の責めにもよらず、製品が滅失・損傷し、または製造不能となった場合の取り扱いを定めます。 - 損害賠償
→契約違反による損害賠償責任の範囲を定めます。 - 製造物責任
→製品の欠陥によって他人に損害を与えた場合に、発注者と受注者が協力して対応する旨などを定めます。 - 秘密保持
→契約に基づいてやり取りした秘密情報を、第三者に対して開示・漏えいしてはならない旨を定めます。 - 反社会的勢力の排除
→暴力団員などの反社会的勢力に該当しないことの表明・確約、および暴力的な要求行為をしないことの確約を定めます。 - 準拠法
→契約に適用される法(日本法など)を明記します。特に、当事者の国籍が異なる場合に重要となります。 - 合意管轄
→契約に関するトラブルが発生した場合に、訴訟を提起する裁判所を定めます。
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製造委託契約書を締結する際のチェックポイント
製造委託契約書を締結する際には、特に次のポイントに注意してください。
②取適法が適用される場合は、その規制を遵守する
製品仕様などの契約条件を明確に記載する
製造委託契約書を作成する際には、契約条件を明確に記載することが大切です。個別契約に委ねる事項を除き、疑義がないような記載を心がけましょう。
特に製品の仕様は、契約不適合責任の基準となるため、想定している内容と齟齬がないように記載することが大切です。
取適法が適用される場合は、その規制を遵守する
次の資本金要件または従業員数要件のいずれかを満たすときは、製造委託契約に取適法が適用されます。
下記(a)~(c)のいずれかに該当すること(a)次の両方の要件を満たすこと
・委託事業者(発注者)の資本金等の額が3億円を超えている
・中小受託事業者(受注者)の資本金等の額が3億円以下である(b) 次の両方の要件を満たすこと
・委託事業者(発注者)の資本金等の額が1000万円を超え3億円以下である
・中小受託事業者(受注者)の資本金等の額が1000万円以下である
(c) 次の両方の要件を満たすこと
・委託事業者(発注者)の資本金等の額が1000万円を超えている
・中小受託事業者(受注者)が個人である
【従業員数要件】
・委託事業者(発注者)の常時使用する従業員の数が300人を超えている
・中小受託事業者(受注者)の常時使用する従業員の数が300人以下である
取適法が適用される場合、委託事業者(発注者)はさまざまな規制を遵守しなければなりません。具体的には、次の規制などが適用されます。
- 取引条件の明示
→個々の発注の条件などを、書面または電磁的方法(電子メールなど)で明示しなければなりません。 - 取引に関する書類等の作成、保存
→取引に関する書類または電磁的記録を作成したうえで、2年間保存する必要があります。 - 支払期日、遅延利息
→製品の納入を受けた日から60日以内、かつできる限り短い期間内で支払期日を定める必要があります。支払期日に遅れた場合は、遅延利息を支払わなければなりません。 - 委託事業者の禁止事項
→正当な理由のない納入の受領拒否や返品、買いたたきなど、受注者の利益を不当に害する行為などが禁止されます。
製造委託契約書においても、取適法が適用される場合には、そのことを意識して契約条件を定めることが大切です。
製造委託契約書に収入印紙は必要?
製造委託契約書を紙で作成する場合は、原則として収入印紙の貼付を要します。電子契約によって締結する場合は、収入印紙を貼る必要はありません。
紙で作成する場合は、原則として収入印紙の貼付が必要(第2号文書または第7号文書)
紙で作成した製造委託契約書は、原則として印紙税法上の「第2号文書」または「第7号文書」に当たり、収入印紙の貼付が必要となります。
個々の製品の製造を委託する製造委託契約書は、第2号文書に当たります。
基本契約にとどまり、個々の委託(発注)は個別契約によって行う場合は、基本契約書が第7号文書、個別契約書が第2号文書に当たります。
第2号文書および第7号文書に貼付すべき収入印紙の額は、次のとおりです。
<第2号文書>
| 契約金額 | 印紙税額 |
| 1万円未満 | 非課税 |
| 1万円以上100万円以下 | 200円 |
| 100万円超200万円以下 | 400円 |
| 200万円超300万円以下 | 1000円 |
| 300万円超500万円以下 | 2000円 |
| 500万円超1000万円以下 | 1万円 |
| 1000万円超5000万円以下 | 2万円 |
| 5000万円超1億円以下 | 6万円 |
| 1億円超5億円以下 | 10万円 |
| 5億円超10億円以下 | 20万円 |
| 10億円超50億円以下 | 40万円 |
| 50億円超 | 60万円 |
| 契約金額の記載のないもの | 200円 |
<第7号文書>
4000円(契約期間が3か月以内で、更新の定めがない場合は貼付不要)
電子契約なら収入印紙は不要
基本契約と個別契約のいずれも、電子契約で締結する場合には、収入印紙を貼る必要はありません。
電子契約のファイルは、印紙税法上の課税文書に当たらないと解されているためです。
電子契約は印紙税の節約に加えて、リモートでも締結できる、契約管理がしやすいなどのメリットがあります。まだ電子契約を導入していない企業は、積極的に導入をご検討ください。
まとめ
製造委託契約書を作成する際には、当事者間で合意した契約条件を、正確かつ明確な文言で記載することが大切です。製品の仕様をはじめとして、隅々まで内容を確認してから製造委託契約書を締結してください。
製造委託契約書は、電子契約によって締結することもできます。印紙代を節約できるほか、書類の検索などの契約管理もしやすくなるため、業務の効率化にも寄与します。電子契約は今後も普及が進むと思われるので、未導入の方はぜひ導入を検討してみてください。
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阿部 由羅
弁護士
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。
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