【弁護士監修テンプレートあり】契約解除通知書とは?主な記載事項・チェックポイント・収入印紙の要否などを解説

契約を解除する際には、相手方に対して「契約解除通知書」を送付します。
債務不履行解除・中途解約・手付解除・クーリングオフなど、解除(解約)の理由によって記載内容が変わります。有効に契約を解除できるように、適切な内容の契約解除通知書を作成してください。
本記事では契約解除通知書について、主な記載事項・チェックポイント・収入印紙の要否などを弁護士が解説します。
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目次
契約解除通知書とは
「契約解除通知書」とは、過去に締結した契約を解除する際、相手方に対して送付する書面です。
相手方が契約上の義務を果たさない場合や、契約が不要になった場合などには、一定の条件を満たせば契約を解除できることがあります。その際、解除の事実や理由などが明確な記録として残るように、契約解除通知書を作成して相手方に送付します。
契約解除通知書に記載すべき事項は、解除の方法などによって異なります。有効に契約を解除できるように、適切な内容の契約解除通知書を作成しなければなりません。
契約解除の主な種類
契約を解除する方法には、主に以下の種類があります。このうち、合意解除以外の方法をとる場合は、契約解除通知書を相手方に送付するのが一般的です。
- 債務不履行解除|催告解除・無催告解除
- 手付解除
- 中途解約
- クーリングオフ
- 合意解除
債務不履行解除|催告解除・無催告解除
「債務不履行解除」とは、相手方が契約上の義務を果たさなかったことを理由とする契約の解除です。
債務不履行解除は「催告解除」と「無催告解除」の2つに大別されます。
相手方に対して義務を果たすよう催告(請求)をしたうえで、その義務が果たされることなく一定期間が経過した段階で契約を解除します。原則的な債務不履行解除の方法です。(b)無催告解除
相手方に対して催告をすることなく、契約を解除します。
民法では、債務の全部または重要な一部が履行不能である場合、相手方が債務の履行を明確に拒絶した場合などに無催告解除が認められています(民法542条)。そのほか、契約の定めに基づく無催告解除が認められることもあります。
手付解除
「手付解除」とは、当事者間で手付金の授受が行われた場合に認められる解除です(民法557条)。売買契約や工事請負契約などについては、手付金の授受が行われるケースが多いため、手付解除ができることがあります。
手付金を支払った側(買主側)は、その手付金全額を放棄すれば手付解除ができます。
反対に手付金を受け取った側(売主側)は、手付金の倍額を相手方に返還すれば手付解除ができます。
ただし、相手方が契約の履行に着手した後は、手付解除が認められません。
たとえば不動産売買契約については、売主側が引渡しと登記手続きの準備をして買主に通知した場合や、すでに引渡しや登記手続きが済んでいる場合などには、手付解除が認められないと解されています。
また手付解除については、契約によって期限が設けられていることもあります。期限を過ぎた場合は、手付解除が認められません。
中途解約
「中途解約」とは、契約期間の途中で契約を打ち切ることです。中途解約は、当事者全員の合意による場合と、いずれかの当事者の一方的な意思表示による場合に分かれます。
本記事では、当事者全員の合意による場合を「合意解除」とし、いずれかの当事者の一方的な意思表示による場合のみを「中途解約」と整理します。
(一方的な)中途解約をするためには、契約上の根拠が必要です。たとえば「~の場合には、中途解約ができる」などと定められていたら、そこに定められた条件を満たさなければなりません。
クーリングオフ
「クーリングオフ」とは、事業者と消費者が締結した契約につき、一定期間は消費者側からの契約解除を認める制度です。特定商取引法などの法律によって定められています。
クーリングオフをすれば、消費者はペナルティなしで契約を解除できます。すでに支払った代金は返してもらえますし、返品などに要する費用も事業者に負担させることができます。
クーリングオフが認められている取引としては、以下の例が挙げられます。
| クーリングオフの対象となる取引 | クーリングオフができる期間 |
| 訪問販売(キャッチセールスを含む) | 契約書面を受領した日を含めて8日間 |
| 電話勧誘販売 | 契約書面を受領した日を含めて8日間 |
| 特定継続的役務提供
(エステ、語学教育、学習塾等、家庭教師等、パソコン教室等、結婚相談所の契約) |
契約書面を受領した日を含めて8日間 |
| 個別信用購入あっせん(個別クレジット) | 契約書面を受領した日を含めて8日間 |
| 宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地または建物の売買契約 | 契約書面を受領した日を含めて8日間
※引渡しと代金の支払いが済んでいるときは、クーリングオフが認められません。 |
| ゴルフ会員権契約 | 契約書面を受領した日を含めて8日間 |
| 保険契約 | クーリングオフに関する事項を記載した書面を受領した日と、申込日のいずれか遅い日を含めて8日間 |
| 投資顧問契約 | 契約書面を受領した日を含めて10日間 |
| 現物まがい商法
(商品の現物を渡すことなく、預かり証などしか交付しない) |
契約書面を受領した日を含めて14日間 |
| 連鎖販売取引(マルチ商法) | 契約書面を受領した日を含めて20日間
※将来に向かって契約を解除することは、20日間を過ぎても可能です。 |
| 業務提供誘引販売取引
(有償の仕事をあっせんする条件として、商品やサービスを購入させる取引) |
契約書面を受領した日を含めて20日間 |
合意解除
「合意解除」とは、契約当事者全員の合意による契約の解除です。当事者全員の合意が得られれば、どのような理由でも合意解除ができます。
合意解除は、いずれかの当事者の一方的な意思表示だけでは成立しません。したがって、契約解除通知書を送付するのではなく、解除合意書などの合意文書を作成したうえで、当事者全員が調印する必要があります。
契約解除通知書の主な記載事項|例文も紹介
契約解除通知書には、主に以下の事項を記載します。
- 契約を解除する旨
- 【催告解除の場合】履行の催告・履行期限
- 【手付解除の場合】手付金の放棄・倍額償還
- 契約を特定する情報
- 解除原因(解除の理由)
- 支払済代金の返還請求
各事項について、例文を示しながら解説します。
契約を解除する旨
(例)
私は、……以下の契約を解除します。
契約を解除する旨を端的に記載します。
ただし、解除の方法によっては、解除をする前に一定の手続きを踏まなければなりません。その場合は、必要な手続きに関する事項も併せて記載する必要があります。
【催告解除の場合】履行の催告・履行期限
(例)
貴社と私の間の×年×月×日付「○○契約」に基づき、貴社が私に対して負担する代金債務○○円の支払いが、本書作成日現在において未履行となっています。○年△月△日までに、当該代金の全額をお支払いください。支払いが確認できない場合は、以下の要領にて契約を解除します。
催告解除をする場合は、まず相手方に対して債務の履行を催告(請求)する必要があります。期限を定めて催告を行う旨と、期限までに債務が履行されなければ契約を解除する旨を明記しましょう。
債務不履行が続いたまま履行期限が過ぎた場合は、原則としてその時点で契約解除の効力が生じます。ただし、催告の期間が短すぎる場合は、相手方が債務を履行するために必要と考えられる相当の期間が経過するまで、契約の解除が後ろ倒しになるのでご注意ください。
【手付解除の場合】手付金の放棄・倍額償還
(例)
【手付解除(買主)の場合】
私は、貴社に対して支払い済みの手付金○○円を放棄して、以下の契約を解除します。
【手付解除(売主)の場合】
私は、貴社から受領済みの手付金○○円の倍額を償還して、以下の契約を解除します。返還先の口座情報をご教示ください。
手付解除を行う際には、買主側は手付金の放棄、売主側は手付金の倍額償還をする必要があります。契約解除通知書の中で、手付金の放棄または倍額償還を行う旨を記載しましょう。
契約を特定する情報
(例)
- 解除する契約
【例1:当事者・年月日・契約名で特定する方法】
貴社と私の間の×年×月×日付「○○契約」(以下「本契約」)
【例2:年月日・商品やサービスの名称・契約金額などで特定する方法】
契約年月日:×年×月×日
商品又はサービスの名称:○○○○
契約金額:○○円
販売会社名:株式会社○○
解除する契約を特定する情報を明記します。記載すべき事項は、上記の2つの例を参考にしてください。他の契約と混同されないように、明確に特定することが大切です。
解除原因(解除の理由)
(例)
- 解除の理由
【債務不履行解除の場合】
貴社が……すべきであったにもかかわらず、……しなかったことを原因とする債務不履行解除
※無催告解除の場合は、民法または契約上の根拠条文を示すことが望ましい
【中途解約の場合】
本契約第○条第○項に基づく中途解約
※中途解約の条件や必要な手続きが定められている場合は、それを満たしていることが分かるように記載する
【手付解除(買主)の場合】
手付金の放棄による手付解除
【手付解除(売主)の場合】
手付金の倍額償還による手付解除
【クーリングオフの場合】
(法律の名称)に基づくクーリングオフ
契約を解除する理由を明記します。債務不履行解除・中途解約・手付解除・クーリングオフなど、解除理由によって記載すべき事項が異なります。上記の例を参考にしてください。
支払済代金の返還請求
(例)
本書に基づく契約の解除に伴い、同契約に関し、私が貴社に対して支払った○○円を速やかに返金してください。
債務不履行解除とクーリングオフの場合は、支払い済みの代金の返還を請求できます。すでに支払った代金がある場合は、返金を求める文言を記載しましょう。
弁護士監修の契約解除通知書ひな形ダウンロード
契約解除通知書のひな形は、以下のリンクからダウンロードできます。解除の方法などに応じて、適宜調整したうえでご利用ください。
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契約解除通知書を作成する際のチェックポイント
契約解除通知書を作成する際には、特に以下に挙げるポイントに注意しつつ対応してください。
解除する契約や解除理由を明確に記載する
契約を有効に解除するためには、解除する契約を特定する情報や、解除ができる理由を明確に記載することが大切です。
契約を特定する情報は、他の契約と混同されないように十分な情報を記載する必要があります。本記事の「契約を特定する情報」を参照してください。
解除ができる理由については、解除の方法によって記載すべき内容が異なります。本記事の「解除原因(解除の理由)」を参照してください。
記録が残る方法で発送する
契約解除通知書を相手方に送付する際には、必ず記録が残る方法を用いましょう。
最もよく用いられるのは「内容証明郵便」です。郵便局に文書の内容や差出人・宛先・発送日時を証明してもらえるほか、配達証明を付ければ到達日時も証明してもらえます。
内容証明郵便は、比較的大規模な郵便局の窓口で手続きをするか、または日本郵便のウェブサイトから「e内容証明」を利用すれば発送できます。
そのほか、特にクーリングオフ通知については、特定記録郵便・簡易書留・電子メールなども用いられています。
契約解除通知書には、収入印紙を貼る必要はない
契約解除通知書には、収入印紙を貼る必要はありません。印紙税法上の課税文書に当たらないためです。
まとめ
契約解除通知書は、契約を解除するために送付する重要な書面です。確実に契約を解除するためには、契約を特定する情報や解除を行う理由などを明確に記載し、必ず記録が残る方法で発送してください。
契約解除通知書の発送方法としては、内容証明郵便が最もよく用いられています。
特に近年では、郵便局の窓口へ行かずに発送ができる「e内容証明」が広く普及しています。業務の効率化に繋がりますので、利用をご検討ください。
また、電子契約でも契約解除通知書の発送が可能です。電子契約を使えば、電子署名を付与できるため、書面としての確実性を高めることができます。
弊社の提供する電子契約サービス「クラウドサイン」でも、契約解除通知書のやり取りができます。電子化することで、郵送費や印刷費などのコストが削減でき、さらに紛失や偽造などのリスクも回避できます。
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ダウンロードする(無料)この記事を書いたライター
阿部 由羅
弁護士
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。