運送委託契約書とは?主な記載事項・チェックポイント・収入印紙の要否などを弁護士が解説

運送委託契約書は、物品などの運送を委託する際に締結する契約書です。運送人が定めている約款の内容も踏まえつつ、運送の条件などを明確な文言で契約書に記載しましょう。
本記事では運送委託契約書について、主な記載事項やチェックポイント、収入印紙の要否などを弁護士が解説します。
なお、クラウドサインでは弁護士監修の「運送委託基本契約書」ひな形をご用意しています。無料でダウンロード可能ですので、これから運送委託契約を締結する方はぜひ入手ください。
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運送委託契約書とは
「運送委託契約」とは、当事者の一方が物品などの貨物の運送を相手方に委託し、相手方がこれを受託して運送を行う契約です。「運送委託契約書」は、運送委託契約の条件などを定めた書面に当たります。
特に事業者間で運送の受委託を行う際には、契約条件を明確化するため、運送委託契約書を作成することが推奨されます。
標準貨物自動車運送約款について
不特定の者の需要に応じ、有償で自動車を使用して貨物を運送する事業は「一般貨物自動車運送事業」に当たります(貨物自動車運送事業法2条2項)。一般貨物自動車運送事業を経営しようとする者は、国土交通大臣の許可を受けなければなりません(同条3項)。
国土交通大臣の許可を受けて一般貨物自動車運送事業を経営する者(=一般貨物自動車運送事業者)は、運送約款を定めて国土交通大臣の認可を受ける必要があります(同法10条)。運送約款の条項は、運送に関する契約の内容となります。
国土交通省は「標準貨物自動車運送約款」を定めています。標準貨物自動車運送約款は、一般貨物自動車運送事業に関する運送約款としてそのまま用いることができます。
運送委託契約における運送人は、一般貨物自動車運送事業者であるケースが大半です。したがって運送委託契約書を作成する場合も、標準貨物自動車運送約款が適用されることを前提として契約内容を検討する必要があります。
運送委託契約書の主な記載事項|例文も紹介
運送委託契約書には、主に以下の事項を記載します。
②運送料(委託料)
③荷送人(荷主)の遵守事項|危険物の申告など
④運送人の遵守事項|善管注意義務・事故の報告など
⑤運送保険
⑥契約に定めがない事項の取り扱い
⑦その他
各事項について、条文例を示しながら解説します。
なお紹介する条文例は、運送を継続的に委託する場合の基本契約を想定したものです。甲は荷送人(荷主)、乙は運送人を指しています。
運送業務(委託業務)の内容
第1条(運送業務の内容)
1. 甲は乙に対し、甲の指定する物品の運送業務(以下「本件業務」という。)を委託し、その対価として委託料を乙に支払うことを約し、乙は本件業務を受託する。
2. 本件業務の内容は、次のとおりとする。
① 甲の指定する物品を、○○から甲の指定する場所へ運送する業務
② 前号の業務に付随関連する、甲乙間で合意した業務
運送する物品や、運送人が行う業務を特定するための事項を記載します。
基本契約の場合は上記の条文例のように、運送する物品や目的地などは荷送人が別途指定する形とします。
これに対して、1回限りの運送を委託する場合は、運送する物品や目的地などの情報を具体的に特定する必要があります。
運送料(委託料)
第2条(委託料)
1. 本件業務に係る委託料(以下「委託料」という。)は、甲乙間の協議によって別途定める料金表に従う。ただし、甲乙間の合意によって異なる委託料を定めることを妨げない。
2. 委託料には、本件業務に要する費用(ガソリン代、電気代、車両費などを含むが、これらに限らない。)を含むものとする。ただし、甲乙間の合意により、委託料とは別に当該費用を精算することを妨げない。
3. 委託料が経済情勢の変動、燃料の高騰、公租公課の変更、その他の事由により不相当となったときは、甲乙の合意によっていつでも改定することができる。
4. 乙は、毎月末日までに完了した本件業務の委託料を記載した請求書を、翌月○日までに甲に対して提出するものとする。
5. 甲は、前項に基づき乙から受領した請求書に従い、前項に基づく当該請求書の提出期限が属する月の末日までに、乙が別途指定する口座に振り込む方法によって、乙に対して委託料を支払うものとする。なお、振込手数料は甲の負担とする。
荷送人が運送人に支払う委託料について、金額や支払方法などを明記します。
基本契約の場合は、個別の運送についての委託料は甲乙間でその都度合意するか、またはあらかじめ定めた料金表に従って決めるのが一般的です。
1回限りの運送を委託する場合は、委託料の具体的な金額を明記します。
また、運送に当たって生じる費用(ガソリン代、電気代、車両費など)の取り扱いも、疑義を避けるために明記しておくのがよいでしょう。
荷送人(荷主)の遵守事項|危険物の申告など
第3条(甲の遵守事項)
1. 甲は、爆発、発火その他運送上の危険を生ずるおそれのある物品の運送を乙に委託するときは、その旨を当該物品が含まれる貨物の外部の見やすい箇所に明記するとともに、あらかじめ、その旨及び当該貨物の品名、性質その他の当該貨物の安全な運送に必要な情報を乙に通知しなければならない。
2. 【必要があれば、甲(荷送人)の遵守事項を追記する】
運送を委託するに当たり、荷送人が遵守すべき事項を明記します。
たとえば危険物についての申告が挙げられますが、それ以外にも貨物の性質などに応じて、必要なら荷送人の遵守事項を追加しましょう。
運送人の遵守事項|善管注意義務・事故の報告など
第4条(乙の遵守事項)
1. 乙は、善良なる管理者の注意をもって本件業務を遂行しなければならない。
2. 乙は、本件業務によって運送する物品が滅失若しくは損傷し、又は本件業務に起因して第三者に損害を与えた場合(以下「事故」という。)には、当該事故が発生した旨及びその日時、並びに当該事故の内容その他の事項を直ちに甲に対して報告しなければならない。
3. 【必要があれば、乙(運送人)の遵守事項を追記する】
実際に運送を行う際に、運送人が遵守すべき事項を明記します。
善管注意義務違反や、事故が発生した際の報告などが挙げられますが、それ以外にも貨物の性質などに応じて、必要であれば運送人の遵守事項を追加しましょう。
運送保険
第5条(運送保険)
乙は、本件業務を遂行するに当たり、乙が合理的に選定する運送保険(積荷保険)に加入するものとする。当該保険の付保に要する費用は、乙の負担とする。
運送に伴う事故に備えるためには、運送保険に加入することが一案です。
運送保険に加入する場合はその旨を定めるとともに、保険の選定基準や費用の負担者についても明記しておきましょう。
契約に定めがない事項の取り扱い
第12条(契約に定めがない事項の取り扱い)
本契約又は個別契約に定めがない事項については、標準貨物自動車運送約款が適用されるものとする。本契約若しくは個別契約、又は同約款のいずれにも定めがない事項については、法令が適用されるほか、甲乙間の協議によって決定する。
前述のとおり、貨物自動車運送事業法との関係で、一般貨物自動車運送事業者は運送約款を定めなければなりません。運送委託契約書においても、契約に定めがない事項については運送約款が適用される旨を明記しましょう。
上記の条文例は、運送人が標準貨物自動車運送約款を用いていることを想定したものです。運送人が独自に運送約款を定めている場合は、「運送人が別途定める○○約款が適用されるものとする」などと記載します。
その他
上記のほか、以下の事項などを定めます。
→当事者のいずれかが契約に違反した場合につき、損害賠償責任の範囲などを定めます。標準貨物自動車運送約款にも定めがあるため、そちらを参照することも考えられます。・再委託の可否
→運送人が他の運送機関に運送業務を再委託してもよいかどうかを定めます。・有効期間
→契約の有効期間を定めます。・契約の解除
→契約違反による契約の解除について、解除事由や手続きなどを定めます。・反社会的勢力の排除
→双方が暴力団員などの反社会的勢力に該当しないことにつき、表明および確約を行います。・基本契約と個別契約の関係
→基本契約書の場合は、基本契約がすべての個別契約に締結される旨と、個別契約の定めが基本契約に優先する旨を明記します。・準拠法、合意管轄
→契約解釈に当たって適用される法(=準拠法)と、紛争の発生時に訴訟を提起する裁判所(=合意管轄)を定めます。など
運送委託契約書を締結する際のチェックポイント
運送委託契約書を締結する際には、自社の立場(荷送人または運送人)に応じて、主に以下のポイントに注意して内容を確認しましょう。
【共通】運送業務の内容・運送料などに関する規定は明確か
運送業務の内容や運送料などの条件を明確化しておくことは、荷送人・運送人間のトラブルを防ぐ観点から重要です。
運送する物品や運送先、運送料の計算方法などについて、曖昧な点が残らないように明確な文言で記載しましょう。継続的な運送委託を前提として基本契約を締結する場合は、個別契約においてこれらの事項を明確に記載することが大切です。
【荷送人】運送人のミスによる損害を回復できるか
荷送人としては、運送人の過失によって事故が発生した場合に、契約上その損害を回復できるようになっているかどうかを確認することが大切です。
標準貨物自動車運送約款39条以下には、損害賠償に関するルールが詳しく定められています。免責事項も多く定められているため、実際に事故が発生しても、運送人の責任を問えないケースが少なくありません。
運送約款の内容を確認したうえで、不十分と思われる場合は運送委託契約書に特約を定め、損害賠償の範囲を拡張するよう求めましょう。
【運送人】自社が過度な責任を負っていないか
運送人としては、運送の過程で事故が発生した際に、自社が過度な責任を負うことにならないかどうかを確認すべきです。
標準貨物自動車運送約款に従う場合は、運送人の責任範囲は合理的であると考えられますが、運送委託契約書に特約事項を定める場合は注意を要します。運送約款と比べて、運送人の責任が過大であると思われる場合は修正を求めましょう。
運送委託契約書に収入印紙は必要?
運送委託契約書を紙で作成する場合は、収入印紙の貼付を要します。これに対して、電子契約で締結する場合は、収入印紙を貼る必要がありません。
紙で締結する場合は、収入印紙が必要(第1号文書・第7号文書)
紙で作成した運送委託契約書は、印紙税法上の「第1号文書」または「第7号文書」に当たり、印紙税の課税対象となります。
1回限りの運送を内容とする運送委託契約書は、第1号文書に当たります。印紙税額は、契約金額に応じて以下のとおりです。
<第1号文書の印紙税額>
| 契約金額 | 印紙税額 |
| 1万円未満 | 非課税 |
| 1万円以上10万円以下 | 200円 |
| 10万円超50万円以下 | 400円 |
| 50万円超100万円以下 | 1,000円 |
| 100万円超500万円以下 | 2,000円 |
| 500万円超1,000万円以下 | 1万円 |
| 1,000万円超5,000万円以下 | 2万円 |
| 5,000万円超1億円以下 | 6万円 |
| 1億円超5億円以下 | 10万円 |
| 5億円超10億円以下 | 20万円 |
| 10億円超50億円以下 | 40万円 |
| 50億円超 | 60万円 |
| 契約金額の記載のないもの | 200円 |
継続的な運送委託を前提とする運送委託基本契約書は、第7号文書に当たります。印紙税額は4,000円です。
印紙税は原則として、収入印紙の購入によって納付します。収入印紙を契約書に貼付して、消印または署名によってその印紙を消さなければなりません。
電子契約なら、収入印紙は不要
紙の契約書とは異なり、電子契約は印紙税の課税文書に当たらないと解されています。したがって、運送委託契約書を電子契約で締結する場合は、収入印紙の貼付は不要です。
電子契約には印紙税の節約のほか、遠隔地の当事者間でも締結でき、管理がしやすいなどのメリットもあります。まだ電子契約を導入していない企業は、積極的に導入をご検討ください。
まとめ
運送委託契約書を締結する際には、運送約款と併せてその内容を確認しましょう。その際、契約条件が明確であることや、事故が発生した際の責任分担が適切であることを確認するのが大切です。
運送委託契約書は、電子契約によって締結することもできます。電子契約なら印紙税を節約できるほか、管理がしやすく便利です。まだ電子契約を導入していない方は、ぜひ導入をご検討ください。
なお、電子契約サービス「クラウドサイン」をご利用の場合、契約相手方はメールアドレスとパソコン・スマートフォン・タブレットさえあれば、サービスへの新規登録なしで契約書の確認・締結できます。相手方は、受信したメールのリンクから契約内容を即座に確認し、同意(署名)できます(参考:クラウドサイン受信者向けガイド)。
また、クラウドサインをご利用いただくにあたって参考になるお役立ち資料も多数用意しているなど、電子契約を依頼する取引先が利用開始するためのサポートも充実しております。
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ダウンロードする(無料)この記事の監修者
阿部 由羅
弁護士
ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。
この記事を書いたライター
弁護士ドットコム クラウドサインブログ編集部
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