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業務改善の進め方

文書管理の電子化とは?失敗しない進め方と電子帳簿保存法への対応方法を解説

結論

文書管理の電子化とは、紙の書類と散在する電子ファイルを、保存・検索・共有しやすい形に整えることです。成功するためには、全社一括ではなく請求書や契約書など対象を絞り、ルールを定めて段階的に導入することが鍵です。

この記事では、文書管理の電子化とは何か、なにから着手すべきか迷っている担当者向けに、方法、メリット・デメリット、失敗しない進め方、電子帳簿保存法の要点までを順に整理してご紹介します。

文書管理の電子化とは?結論:業務効率と法対応を両立する仕組み

まずは、文書管理の電子化がなにを意味し、どこまでを対象に考えるべきかを確認します。

文書管理の電子化の定義と対象書類

文書管理の電子化とは、単に「紙の書類をPDFに変換する」だけではありません。最初から電子で受け取った文書も含め、すべての書類において、保存場所・命名・検索条件・閲覧権限を整理し、適切に管理することが必要です。

これには、「必要なときに迷わず取り出せる状態」に整えることも含まれます。対象は契約書、請求書、領収書、見積書、稟議書、議事録、社内規程などが中心です。

なぜ今、文書管理の電子化が求められているのか

文書管理において電子化が求められている背景には、法対応と業務効率化、働き方の変化があります。

2024年、電子帳簿保存法が完全義務化され、電子取引で授受した注文書や請求書などのデータについて、2024年1月以降は原則としてデータ保存することが義務化されました。

また、紙の文書管理は検索・共有・承認・保管に手間がかかります。電子化により、必要な文書をすぐに探せるだけでなく、リモートワークにも対応しやすくなります。さらに、閲覧・更新履歴の管理やアクセス制御により、内部統制やセキュリティの強化にもつながります。電子化は単なるペーパーレスではなく、業務を速く、安全に進めるための基盤づくりといえます。

紙管理との違い

紙管理では、保管場所の確保、持ち出し管理、回覧、原本確認が前提になります。電子化すれば、紙の文書を物理的に運ぶ必要はなく、情報を必要とする人が、権限の範囲で同じデータにアクセス可能です。原本に依存しないため、検索、版管理、アクセス記録の取得がしやすくなり、確認作業の属人化も回避しやすくなります。

文書管理を電子化する方法は主に3つ

電子化の進め方はひとつではなく、目的と社内体制に応じて選び分けるのが基本です。

1.スキャナ保存(紙をデータ化する方法)

スキャナ保存とは、紙で受け取った契約書や請求書などを電子データで保存する方法です。紙書類を減らす入口として有効で、過去文書の整理にも向いています。

ただし、国税関係書類を原本代替で保存する場合は、電子帳簿保存法の要件確認が欠かせません。単にPDF化しただけでは足りない場面があるため、保存目的を明確にしたうえで始めることが重要です。

2.OCR活用(検索できる状態にする方法)

OCRは、画像として保存した文字をテキスト化し、文書を検索しやすくする技術です。スキャンしただけのPDFは中身で探しにくいことがありますが、OCRを併用すると文書名だけでなく本文や項目でも探しやすくなります。

契約金額や取引先名で横断検索したい場合に特に有効です。ただし、読み取りエラーは起こり得るため、金額や取引先など重要項目は目視による確認運用が必要です。

3.文書管理システム活用

文書管理システムとは、書類の保存、検索、権限設定、履歴管理をまとめて行える方法です。部門をまたいで使うなら、共有フォルダ運用より再現性を確保しやすく、退職・異動時の権限見直しもしやすくなります。

紙と電子が混在する時期でも、保存先をひとつに寄せる基盤として使いやすい方法です。

文書管理を電子化するメリット|結論:時間・コスト・リスクを削減できる

電子化の効果は、単なるペーパーレスだけに留まらず、仕組み化による運用の速さと再現性に表れます。

検索時間の短縮と業務効率化

文書管理を電子化しておけば、情報が必要なときに紙の書類を棚から探す、担当者に所在を確認するといった時間が減ります。日付、取引先、件名などで探せる状態にしておけば、問い合わせ対応や監査準備、社内確認のスピードが大きく変わります。複数部門が同じ文書を参照する業務ほど、効果を体感しやすいでしょう。

保管コスト・スペースの削減

物理的な書類を保存するためのキャビネットや倉庫、書類の郵送・複写にかかる負担などを削減できます。システムの導入には初期費用や月額のシステム費用はかかりますが、長期的に見れば、保管スペースの圧縮や取り寄せ作業の削減につながります。保存期限を過ぎた文書の整理もしやすくなり、保管のムダを見つけやすくなるでしょう。

テレワーク・情報共有の促進

自宅などオフィスから離れた場所からでも文書を確認できるようになります。出社しないと確認できない文書が減ることで、書類の承認や問い合わせ対応のスピードも早くなり、社内の情報共有が促進されるでしょう。

コンプライアンス強化(監査対応)

システムを使うことで、誰がいつ保存し、閲覧し、更新したかを追える仕組みや、登録・承認の権限を分離し、変更・削除に承認フローを設ける仕組みが整い、監査や内部統制が強化されます。必要な文書を速やかに出力できる状態にしておけば、証憑確認の手間を減らしつつ、属人的な保管を避けやすくなります。保存期間や削除ルールを統一しやすい点も、運用面での強みです。

文書管理電子化のデメリット|結論:初期コストと運用設計が課題

電子化を目的に導入した文書管理システムは、ただ入れただけで現場に定着するわけではありません。肝心なのは、最初の設計です。

初期コストと作業負担

文書管理の電子化において、まず必要な負担は、文書の整理・スキャン・分類・移行、そして現場の教育にかかる工数といった「初期コスト」です。

とくに過去の文書が多い会社ほど、全部を最初に片付けようとすると工数が膨らみ、現場が疲弊しやすくなります。現行運用の棚卸しをせずに着手すると、不要な文書まで移行しやすい点にも注意が必要です。

運用ルールが不十分だと定着しない

保存先や命名ルールが曖昧だと、同じ文書が複数の場所に置かれ、最新版が分からなくなります。システムの機能より先に、誰が、いつ、なにを、どの単位で登録するかを決めることが重要です。例外処理が多い会社ほど、現場が迷わない最低限のルールを先に整える必要があります。

セキュリティ・誤操作のリスク

電子化の際は、紙書類の紛失や誤削除、誤共有、権限設定といったミスに注意が必要です。そのため、IPAも共有設定の見直しやバックアップの重要性を示しており、アクセス権、ログ、バックアップ、二要素認証の確認が欠かせません。便利さだけで選ぶのではなく、復旧手順まで含めて運用設計することが重要です。

文書管理の電子化を成功させるための進め方|

結論としては、文書管理の電子化を成功させるためには、段階的な導入が鍵になります。ここでは、文書管理の電子化を進める上で大切な4つのステップをご紹介します。

ステップ1.対象文書を絞る(最初からすべて電子化しない)

最初から全社・全書類を対象にすると、優先順位が崩れます。まずは請求書、契約書、注文書など、頻度が高く、検索ニーズが強く、法対応の影響も大きい文書から始めるのが安全です。電子化の目的を「検索時間短縮」「保存ルール統一」「監査対応の効率化」などひとつずつ定めると、対象範囲や必要機能を判断しやすくなります。

ステップ2.ルール設計(命名・保存・権限)

運用ルールでは、命名規則、必須項目、保存期間、アクセス権、原本の扱い、例外処理を決めます。電子取引データは日付・金額・取引先で検索できることが求められるため、少なくともこの3つは無理なく登録・検索できる設計にしておくべきです。経理、法務、総務で項目名の認識がずれないよう、登録例まで決めておくと定着しやすくなります。

ステップ3.小さく始めて検証する

一部門や一業務で試し、検索に何分かかるか、登録漏れがないか、現場が迷わず使えるかを確認します。OCR精度、フォルダ設計、アクセス権の粒度は、実際に回してみないと見えないため、短い試行期間を設けて修正するのが近道です。効果測定は、検索時間、登録件数、差し戻し件数など、少数の指標に絞ると比較しやすくなります。

ステップ4.全社展開する

試行でルールが固まったら、対象部門を広げていきます。この段階では、マニュアル配布だけでなく、登録例の共有、問い合わせ窓口、定着確認が重要です。現場ごとの例外を吸収しながら標準ルールを保つことで、紙への逆戻りを防ぎやすくなります。システム導入と同時に、責任者と見直し頻度を決めておくと運用が崩れにくいでしょう。

よくある失敗例|準備不足がほとんどの原因

失敗の多くは、文書管理システムの機能不足ではなく、前提整理の不足から起こります。

すべての文書を一気に電子化して破綻

電子化する書類の対象が広すぎると、なにをどの順番で処理するか決まらず、スキャン待ちの書類だけが増えていきます。保存基準も定まらないまま作業を始めると、あとから整理し直すことになり、二重工数になりがちです。優先順位や計画性なく「すべて電子化する」と急ぐのは典型的な失敗例です。

検索できず「使われないシステム」になる

PDFを置いただけで、件名も本文も検索できない状態では、紙の棚と大差がありません。OCRや索引項目の設計を省くと、結局は担当者の記憶に頼る運用となり、システムが使われなくなります。検索条件は、現場が実際に使う言葉で設計することが大切です。

法対応を誤り、やり直しになる

電子で受け取った請求書を印刷し、紙で保存するやり方は電子帳簿保存法に対応できていません。電子帳簿保存法では2024年1月以降、電子取引(データ)で授受した取引情報はデータで保存する必要があるとしています。誤った対応であとから保存をやり直すと大きな負担になることは避けられません。書類ごとに保存根拠を確認し、運用ルールを定めていきましょう。

現場に定着せず紙運用に戻る

登録する際に多くの手順を踏まなければならなかったり、検索しづらかったりすると、システムが定着せず、現場が紙や個人フォルダでの運用に逆戻りするかもしれません。

システムを導入する前に、現場での業務フローを確認し、入力項目を増やしすぎないことが定着のコツです。頻繁に扱う文書ほど、操作回数の多さが離脱につながります。

電子帳簿保存法に対応するためのポイント

税務関係の書類を扱う場合は、電子帳簿保存法の要件を満たさなければ、電子化の効果が薄れます。

電子帳簿保存法の対象となる文書の種類

電子帳簿保存法の対象となるのは、国税関係帳簿、国税関係書類、電子取引データ等です。具体的には、以下のようなものが挙げられます。

電子帳簿保存法の対象となる書類

電子帳簿保存法における電子データの保存方法は、書類の作成方法・受け取り方などによって大きく3つに分類されます。

3つの区分の概要と対応義務の有無について

区分 保存方法 保存の方法
原則 任意
電子帳簿等保存 会計ソフト等で作成した帳簿・
書類を電子データで保存
書面保存 電子データ
スキャナ保存 紙で受領・作成した書類をスキャン
して電子データで保存
書面保存 電子データ
電子取引 電子的に授受した取引情報を
データで保存
電子データ保存 ×

国税庁の案内では、注文書、契約書、送り状、領収書、見積書、請求書などに相当する電子データは保存対象であり、紙で受け取った契約書や請求書なども要件を満たせばスキャナ保存できます。自社の文書がどの区分に当たるかを確認し、それぞれ法に定められた「保存方法」に沿って対応することが重要です。

電子帳簿保存法について詳しくはこちらの記事でも解説しているので参考にしてみてください。

電子帳簿等保存について

1つ目が「電子帳簿等保存」で、会計ソフトやパソコンを使って電子的に作成した帳簿書類(仕訳帳、総勘定帳など)は最低限の要件を満たすことで、印刷せず電子データのまま保存することができます。

スキャナ保存の要件について

2つ目の保存方法が「スキャナ保存」です。紙で受領した国税関係書類についてはスキャナ等で電子データ化して保存することで、書類の保管スペースが不要になったり、リモートワークでも経費精算の対応ができたりするといったメリットがあります。

国税庁の令和6年1月以降向け案内によると、契約書、納品書、請求書、領収書などの「重要書類」は以下の要件を満たす必要があります。

なお、見積書、注文書、検収書など資金や物の流れに連動しない「一般書類」については要件が一部緩和されています。

  • 入力期間の制限(一般書類の場合は入力期間の制限なく入力することも可能)
  • 200dpi相当以上の読み取り
  • カラー画像(一般書類の場合は白黒で読み取ることも可能)
  • タイムスタンプ又は訂正削除履歴が確認できるシステム
  • 見読可能装置

業務処理サイクル方式(最長2か月以内の一定期間内に入力する方法)を採る場合は社内規程も必要になるため、現場任せにせず、経理や法務と事前に対応方針・社内規程を協議する必要があります。

電子取引データの保存について

3つ目の保存方法が、「電子取引データの保存」です。

電子帳簿保存法では2024年1月以降、電子取引で授受したデータの電子保存が完全義務化され、メール等で受け取った請求書・契約書・見積書などを紙に印刷して保管するだけでは、法令上の保存要件を満たさないことになりました。

なお、電子取引データの保存については「猶予期間」が設けられており、人手不足やシステム整備が間に合わないといった相当の理由がある場合、電子取引データを保存しておくだけでもよいことになっています

参考:「電子帳簿保存法の内容が改正されました〜 令和5年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しの概要 〜」

とはいえ、この猶予措置は、あくまで例外的な扱いです。恒久的なものではない可能性もあり、「相当の理由」の判断基準も明確ではないため、基本的には保存要件を満たす対応を目指しましょう。

クラウドサインでは電子取引における電子帳簿保存法対応のポイントをまとめた資料もご用意しています。気になる方はぜひダウンロードの上、参考にしてみてください。

よくある質問(FAQ)

最後に、検討初期によく出る質問を簡潔に整理します。

Q. 文書管理の電子化はどこから始めるべきですか?

A. 請求書や契約書など、利用頻度が高く、検索や保存の負担が大きい文書から始めるのが基本です。目的をひとつに絞ると、対象範囲と必要機能を決めやすくなります。

Q. 電子帳簿保存法に対応するにはなにが必要ですか?

A. 対象文書を特定したうえで、法に定められた要件を満たせる保存方法を選ぶ必要があります。電子取引データは紙ではなくデータ保存が義務化されているなど、文書区分ごとにルールが定められているため、要件の確認が欠かせません。

Q. 自社で対応するべきか外注すべきか迷っています

A. 過去文書の大量スキャンは外注、日々の登録や検索は社内運用という分担が現実的です。継続運用のルールだけは自社で持ち、丸投げにしないことが失敗防止につながります。

まとめ

文書管理の電子化は、紙をなくすこと自体が目的ではありません。必要な文書を必要な人が、必要なときに、適切な権限で使える状態をつくることが本質です。電子化する対象書類を絞り、ルールを決め、小さく試しながら進めれば、業務効率化と法対応を無理なく両立できます。

まずは頻度が高く、保管ルールの影響が大きい文書から着手し、自社に合う方法を見極めていきましょう。

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この記事を書いたライター

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橋爪兼続

ライトハウスコンサルタント代表

2013年海上保安大学校本科第Ⅲ群(情報通信課程)卒業。巡視船主任通信士を歴任し、退職後、大手私鉄の鉄道運行の基幹システムの保守に従事。一般社団法人情報処理安全確保支援士会の前身団体である情報処理安全確保支援士会の発起人。情報処理安全確保支援士(第000049号)。

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