文書管理とは何か?正しい進め方と電子帳簿保存法への対応ガイド
結論
文書管理とは、企業の資産である情報を適切に保管し、必要なときにすぐ取り出せる状態にすることです。その目的は、単なる整理整頓というだけではなく、業務効率の向上と、情報漏洩やコンプライアンス違反のリスクを回避することにあり、文書管理は重要な経営課題といえます。
この記事では、文書管理の定義から目的、具体的な進め方やルール作りの方法について解説します。
なお、文書管理システムの選び方についてはこちらの記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
目次
文書管理とは?業務効率とリスク管理を両立する仕組み
まず、「文書管理」という言葉の定義について解説します。
文書管理の定義と対象範囲
文書管理とは、企業が事業活動を行なう過程で作成・受領するあらゆる記録を、ライフサイクル(作成、保管、保存、廃棄)に沿って適切にコントロールすることを指します。
たとえば、代表的な文書の「請求書」では、まず受注者が請求書を「作成」し、これを発注者に送付して「伝達」します。その後、受注者は請求書の控えを、発注者は原本を安全な場所に「保管、保存」し、最低保存期間(原則7年など)が経過した段階で、適切な手順により「破棄」します。
このように、文書の発生から消滅までを一貫して管理する仕組みこそが、本来の文書管理です。対象となるのは、紙の書類だけでなく、PDFやWord、Excelなどの電子データ、さらにはウェブ上の公開情報やメールのやり取りに至るまで多岐にわたります。
文書管理の対象となる書類の例
- 契約書・覚書・秘密保持契約書(NDA)
- 請求書・領収書・見積書などの経理書類
- 稟議書・議事録・報告書などの社内文書
- 規程集・マニュアル・手順書
- 顧客情報・取引先情報を含む営業書類
これらを一元的に管理し、必要な人が必要なときにすぐアクセスできる状態を作ることが本来の目的です。
文書管理が注目される背景
近年、文書管理への関心が高まっている背景には、大きく二つの潮流があります。
一つ目は「法規制の強化」です。2022年施行の電子帳簿保存法の改正により、電子取引データの電子保存が義務化されました。これにより、メールで受け取った請求書や契約書をプリントアウトして保存する従来の運用が許容されなくなりました。また、インボイス制度(適格請求書等保存方式)への対応も重なり、証憑書類の適正な管理が急務となっています。
二つ目は「DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の流れ」です。テレワークの普及により、紙文書をオフィスでしか参照できない環境では業務が止まるリスクが顕在化しました。クラウド上での情報共有・アクセス管理を前提とした文書管理の仕組みへの転換は、業務継続性を高めるうえでも避けられないテーマになっています。
文書管理ができていない企業によくある4つの課題
文書管理が適切に行なわれていないと、次のような問題が起きやすくなります。
それぞれ詳しくみていきましょう。
情報が散在し、必要な情報にアクセスできない
ドキュメント管理に関するルールが整備されていないと、紙の書類はキャビネットや書庫に、電子データは個人のパソコン、共有フォルダ、クラウドストレージ、SaaSなど、ドキュメントがさまざまな場所にバラバラに保存され、どこに何があるか分からなくなりがちです。
見積書は営業部門、請求書は経理部門といったように書類ごとに作成・管理する部門が異なり、保管するためのツールや場所が書類によってバラバラになってしまうのもよくあるケースです。
結果として、必要な情報を探すのに時間がかかったり、見つけられなかったりすることが頻繁に発生します。過去の資料が活用されず、同じような資料を再作成する二度手間が発生することもあります。
情報が属人化し、特定の人がいないと業務が進まなくなる
ドキュメント管理を全社横断で行なわれていないと、特定の個人や部門でしか情報の保存場所や内容が把握できず、その人が不在の場合や退職した場合に、業務が滞ったり情報が失われたりするリスクがあります。
スペースを圧迫しコストがかさむ
企業によっては、文書はすべて紙で保管するという運用パターンもあります。
最終的な保管が紙ベースで行なわれていると、保管スペースを必要とし、そのためのコスト(賃料、キャビネット代など)が発生します。また、書類の整理や廃棄にも人件費がかかります。
コンプライアンス対応が不足する
ドキュメント管理体制が整備されていない企業では、コンプライアンス対応が不足するリスクがあります。法律や規制(例:電子帳簿保存法、個人情報保護法など)に則った文書の保存期間、破棄ルールなどが遵守されていない可能性があり、その場合、法的リスクを抱えることになります。
たとえば、電子帳簿保存法では、2024年1月1日以降、電子的にやり取りした取引データは原則として、電子データのまま保存することが義務化されています。特別な事情がない限り、紙に出力して保存することは認められません。
「システムやルールの整備がどうしても間に合わない」という事業者のための猶予措置もありますが、これはあくまで「やむを得ない事情がある場合」の特例であるため、各企業には、ドキュメント管理に関するルールを見直し、適切な方法で情報を保存・管理することが求められています。

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文書管理における法令対応ポイント
文書管理において忘れてはならないのが法令への対応です。業界ごとに追加で注意すべきポイントもあるかもしれませんが、ここでは、業界関係なく一般的に注意すべき法令について解説します。
電子帳簿保存法のポイント
文書管理を語るうえで避けて通れないのが「電子帳簿保存法」への対応です。
とくに「電子取引データ保存」の義務化により、メールやウェブからダウンロードして受け取った請求書や領収書は、紙に印刷して保存することが原則として認められなくなりました。
これらを電子データのまま、「日付・金額・取引先」で検索できる状態で、かつ改ざん防止措置(タイムスタンプ等)を講じて保存する仕組みを急ぎ構築する必要があります。
電子帳簿保存法上の「電子取引データ保存」をクリアするためには、「真実性」や「可視性」等の要件を満たした状態で保存する仕組みを急ぎ構築する必要があります。詳しくは以下の記事で解説していますのでご覧ください。
e-文書法のポイント
電子帳簿保存法と混同されやすいのが、「e-文書法」です。
「e-文書法」とは、民間企業に保存が義務付けられているすべての法定文書(約250の法律にまたがる書類全般)について、紙ではなくデータでの保存を「容認(許可)」する法律です。e-文書法では、主に「見読性」「完全性」「機密性」「検索性」の4つの要件が定められています。
文書管理の基本インフラを設計するうえで、この2つの法律の違いを正しく整理しておきましょう。
e文書法と電子帳簿保存法の違い
| e-文書法 | 電子帳簿保存法 | |
| 対象文書 | 会社法や商法などで保存義務 がある法定文書全般 |
国税関係帳簿書類 (帳簿、決算書類、取引関係書類) |
| データの位置づけ | 電子保存の「容認 (ペーパーレス化の許可)」 |
電子保存の「容認」に加え、 電子取引は「義務化」 |
| 主な保存要件 | 見読性、完全性、機密性、検索性 | 真実性の確保、可視性の確保 (より具体的な厳格ルールあり) |
契約書・証憑管理の注意点
契約書や領収書といった証憑類は、企業間のトラブルを防ぐだけでなく、税務上も極めて重要な文書です。
これらは単に保存するだけでなく、「元の紙の文書と電子データが同一であること」を証明できる状態で管理しなければなりません。
スキャナ保存制度を活用する場合、解像度や階調、入力期限などの細かな要件が定められているため、これらの要件を自動でクリアできる専用システムを導入することがおすすめされます。その際、「スキャン時の画像品質(解像度)」には注意しましょう。
- 原則:200dpi以上の解像度でスキャンを行う必要があります。
- 例外(注意点): 領収書や契約書の中で、「背景色と文字の色が同系色である」「文字サイズが6pt以下と極めて小さい」「文字のかすれや薄さがある」といった不鮮明な書類をスキャンする場合は、300dpi以上の解像度を確保して読み取ることが強く推奨されています。
もし解像度が不足していると、「完全性(改ざんや文字の毀損がないこと)」の証明において不備と判定されるリスクがあるため、社内のスキャン手順書(運用ガイドライン)にも解像度設定を明記しておきましょう。
システム導入後も「事務処理規程」を
高機能な文書管理システムや「クラウドサイン」の有料プランなどを導入することで、システムの仕様として電帳法の保存要件(真実性や可視性など)に対応しやすくなります。
しかし、それでも別途「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」を自社で制定し、備え付けておくことも大切です。
事務処理規程を制定しておくことで、次のようなメリットがあるためです。
- システム非対応データへの柔軟な救済対応
相手方から「自社システムがサポートしていない特殊なファイル拡張子」で契約書が送られてきた場合、システムのみでの管理は破綻します。あらかじめ規程を用意していれば、システム外で安全に格納・整理して保存することで、電子帳簿保存法の「真実性の確保」を満たす代替運用として認められます。 - システム変更(リプレイス)時の継続性の担保
将来的に文書管理システムを変更・統合する際、過去の取引データのログや訂正履歴を100%移行することが技術的・コスト的に困難になる場合があります。この際、事務処理規程があれば、移行漏れした過去データを適法なルールのもとで安全に退避・保管させ、法適合状態を維持することができます。 - 業務手順の可視化による属人化の解消
規程内で「どのファイルが電帳法の保存対象で、誰が管理責任を持つのか」を明記しておくことで、新入社員や異動者への業務手順の伝達が極めてスムーズになり、誤削除やデータの保存漏れといった致命的な人的ミスを防げます。
こちらの記事でも解説していますので、併せてご確認ください。
監査で指摘されやすいポイント
内部監査や外部機関からの調査において、最も厳しくチェックされるのは「ルールが存在するか」ではなく「ルール通りに運用されているか」です。
たとえば、「保存期間が過ぎた機密文書が共有フォルダに残り続けている」「退職者のアカウントが有効なままになっている」「誰でもアクセスできるフォルダに重要契約書が置かれている」といった状況は、重大な是正勧告の対象となります。システムによる自動破棄や定期的な権限の棚卸しを行なうことが、監査対応をスムーズにする鍵です。
文書管理の基本となる4つのルール
文書管理を徹底するために、まずは以下の4つのルールを定めましょう。
保存期間のルールを決める
文書管理を成功させるうえで最も重要なのが「いつまで保存するか」を明確にすることです。法定保存期間(たとえば、会社法に基づく計算書類は10年、税法に基づく帳簿書類は7年など)を遵守することは当然ですが、それ以外の社内文書についても「作成から3年」「プロジェクト終了後1年」といった社内基準を設ける必要があります。これにより、不要な文書がサーバーやキャビネットを圧迫するのを防ぐことができます。
なお、文書の保管期限について詳しくはこちらの記事も参考にしてみてください。
命名規則を統一する(検索性向上)
ファイルを探すときに最も役立つのが、統一された命名規則です。担当者ごとにバラバラのファイル名をつけていると、検索機能が全く機能しません。
- 悪い例: 見積書_最新_修正版.pdf
- 良い例: 20260427_株式会社A_ウェブ制作見積書_v2.pdf
このように、「日付_顧客名_文書の種類_バージョン」といったルールを全社で統一することで、誰でも瞬時に目的のファイルにたどり着けるようになります。
アクセス権限を適切に設定する
すべての社員がすべての文書にアクセスできる状態は、セキュリティ上非常に危険です。役職や部署、プロジェクトごとに「閲覧のみ」「編集可能」「アクセス不可」といった権限を細かく設定するルールが必要です。とくに、人事情報や未公開の財務情報などは、一部の管理者のみがアクセスできるよう厳重な制限をかける必要があります。権限設計を行なうときは、「最小特権の原則(必要な人に、必要な権限だけを与える)」を徹底しましょう。
廃棄・更新ルールを明確にする
文書は「作って終わり」ではありません。保存期間を過ぎた文書は、速やかに、かつ復元不可能な方法で廃棄を行なう必要があります。紙であれば溶解処理やシュレッダー、電子データであれば完全削除のプロセスをルール化します。また、マニュアルや規程などの恒常的な文書については、「毎年4月に最新法令と照らし合わせて更新を行なう」といった定期的な見直しルールを設けることで、常に正しい情報が維持されます。
文書管理の進め方
文書管理の具体的な進め方について解説します。
ステップ1:現状の課題を洗い出す(棚卸し)
まず着手すべきは、現状の"棚卸し"です。どんな文書が、どこに、どのような形で存在しているかを可視化しましょう。
棚卸しのポイントは次のとおりです。
業務棚卸しのポイント
- 各部門にヒアリングし、管理している文書の種類・量・保存場所をリストアップ
- 「紙」「電子(社内サーバー)」「電子(クラウド)」「個人PCのみ」に分類
- 現状の課題(探せない・属人化・版管理できていないなど)を部門ごとに把握
このとき、「この書類は本当に紙で残す必要があるのか」「重複しているデータはないか」といった観点でチェックを行なっておきましょう。
現状の無駄を可視化することで、今後の改善計画を立てやすくなります。
ステップ2:管理対象と優先順位を決める
棚卸しで全体像が見えたら、管理対象と優先順位を絞り込みます。すべての文書を一度に管理しようとすると、プロジェクトが膨大になり挫折します。
優先度のつけ方の例
- 優先度 高: 法令上の保存義務がある書類、 紛失・漏洩した場合のリスクが高い書類(経理書類、契約書、個人情報含む書類)
- 優先度 中: 頻繁に検索・共有される文書(マニュアル、提案書)
- 優先度 低: 過去のアーカイブ、めったに見ない参考資料
このように、リスク軽減効果や業務効率化のインパクトが大きい領域から着手するのが鉄則です。
ステップ3:運用ルールとフローを設計する
管理対象が定まったら、具体的な運用ルールを設計します。ルールの構成要素は次のとおりです。
| 構成要素 | ルールの概要 |
| 保存場所 | どのフォルダ・システムに保存するか |
| 命名規則 | ファイル名の付け方のルール |
| 保存期間 | いつまで保持し、いつ廃棄するか |
| アクセス権限 | 誰が閲覧・編集・管理できるか |
| 更新ルール | 更新時の版管理・旧版の扱い |
ルールは文書管理規程として文書化し、全社員が参照できる場所に公開することが大切です。口頭でのみ共有すると、時間が経つにつれルールが有名無実化します。
ステップ4:小さく導入し、徐々に展開する(PoC)
新しい管理ルールやシステムは、最初から全社展開するのではなく、特定の部門・文書種別でPoCを行なうことがおすすめです。
小規模での試験運用を通じて、次のことが確認できます。
- ルールが現場で実際に機能するか
- 操作・運用の手間が許容範囲内か
- 現場からのフィードバックで改善すべき点はないか
PoCで成功事例を作ると、他部門への展開がスムーズになります。逆に、最初から全社展開して失敗すると、組織全体の抵抗感が高まりリカバリーが困難になります。
なお、文書管理システムについて詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてください。
すぐ使える文書管理テンプレート|結論:型を使えば迷わない
ゼロからルールを作るのは多大な労力がかかります。以下のテンプレートや型を自社用にカスタマイズして、上司への提案資料や現場への説明に活用してください。
フォルダ構成の具体例(良い例・悪い例)
フォルダ構成は「浅く、直感的に」が基本です。階層が深すぎると、目的のファイルに到達するまでに時間がかかります。
| 評価 | フォルダ構成の例 | 理由・問題点 |
| × 悪い例 | 営業部 > 山田 > 2026年 > 見積書 > A社 > 最新版 > ... |
属人化しており、山田さん以外はどこに 何があるか見つけられない。 階層も深すぎる。 |
| ○ 良い例 | 01_顧客関連 > 01_A社 > 02_見積書 > 2026年度 |
「目的・種類」で大分類し、次に「顧客名」、 その後に「文書種類」とすることで誰でも探せる。 番号(01_など)を振ることで並び順を固定できる。 |
| 共有ドライブ > 01_経営・ 総務 > 規程・マニュアル > 2026年度 |
「部門別」で大分類し、次に「文書種別」、 その後に年度で整理することで、探しやすくなる。 |
命名ルールのテンプレート
社内でそのまま配布できる命名ルールの基本フォーマットです。
- 基本構成: [日付]_[文書タイトル]_[顧客名・プロジェクト名]_[バージョン]
- 日付の統一: YYYYMMDD(例:20260427)
- バージョンの統一: _v1, _v2(「最新」や「最終」という言葉は使わない)
- 区切り文字: 半角アンダースコア _ を使用する(スペースはエラーの原因になるため避ける)
【記入例】
20240401_業務委託契約書_株式会社ABC_v1.0
20240510_議事録_月次定例会_2024年5月
20240615_見積書_山田商事_提案A案_v2.1
日付は西暦8桁(YYYYMMDD)にすることで、ファイル名順のソートがそのまま日付順になります。さらに、版数(vX.X)を末尾に付けることで、最新版が一目で分かります。
文書管理台帳のサンプル
紙の文書や重要な契約書を管理するときは、Excelやスプレッドシートで「文書管理台帳」を作成し、一覧性を担保します。
必須項目は以下の通りです。
- 文書ID(一意の番号)
- 文書名
- 作成日/受領日
- 作成者/管轄部署
- 保管場所(物理的なキャビネット番号、またはURL)
- 保存期間(○年)
- 廃棄予定日
電子文書管理システムを導入している場合はシステム上で管理できますが、まだ導入していない場合はExcelの台帳から始めるのが現実的です。
運用ルールチェックリスト
システム導入やルール変更を行なうとき、以下のチェックリストを満たしているか確認してください。
【運用開始前のチェックリスト】
| チェック項目 | |
| ◻︎ | 管理対象文書の種類と範囲を定義したか |
| ◻︎ | 法定保存期間を満たすルールになっているか |
| ◻︎ | ファイル名を見れば、中身を開かなくても内容が推測できるか |
| ◻︎ | 役職や部署に応じたアクセス権限が定義されているか |
| ◻︎ | 廃棄フローが明確で、担当者が迷わず処分できるか |
| ◻︎ | 現場の担当者がマニュアルを読んで、自力で操作できるレベルのシンプルさか |
【運用開始後・運用中のチェックリスト】
| チェック項目 | |
| ◻︎ | 権限の棚卸し(退職者・異動者の権限変更)を実施したか |
| ◻︎ | 保存期間が切れた文書を廃棄したか |
| ◻︎ | ルールが現場で実際に守られているか確認したか |
文書管理でよくある失敗と対策
ここで、文書管理に「よくある失敗」ケースと、その対策方法について解説します。
ルールが形骸化する
文書管理プロジェクトで最も多い失敗が「立派なルールを作ったが、誰も守らない」という事態です。
これは、ルールが現場の実際の業務フローを無視して作られていることが原因です。たとえば、「ファイルを保存するときに10個のメタデータを入力しなければならない」といった過度な負担を強いると、現場は抜け道を探し始めます。
対策としては、入力項目を最低限に絞り、可能な限りシステムで自動付与させる仕組みを作ることが重要です。
なお、電子契約サービス「クラウドサイン」では、契約締結日や契約相手の名称などをAIが自動で読み取ってくれる「AI契約書管理機能」がフリープラン以外の全ての有料プランに搭載されています。
- 自動抽出・入力される主要7項目
「契約締結日」「契約開始日」「契約終了日」「自動更新の有無」「解約通知期限」「取引金額」「契約相手の名称」をAIが自動で判別して台帳に入力します。これにより、手入力による漏れやミスを防げます。 - 契約書以外の12類型の書類にも対応
自動読み取りができるのは契約書だけではありません。申込書、発注書、検収書、請求書など、合計12類型の書類を自動解析の対象とすることができます。これにより、経理・総務における電帳法対応の入力工数を大幅に削減できます。
このような機能があるツールを導入し、そもそもの入力作業をなくすことで、失敗が起きない仕組みにすることも文書管理を成功させるコツです。
現場の抵抗で定着しない
「今までこのやり方で問題なかったのに、なぜ変える必要があるのか」と、とくにベテラン社員から抵抗されるケースも少なくありません。
新しい仕組みを導入するとき、単に「ルールだから守れ」と強制するのではなく、「このルールを守ることで、あなたの探す時間が1日30分減ります」「監査での指摘リスクがなくなり、安心して業務に集中できます」と、現場にとっての具体的なメリットを丁寧に説明し、納得感を得るよう心がけましょう。
どうしても納得してもらえないときは、トップダウンでルールをおろしてもらうなど、その人の人事評価項目に「新しいやり方に慣れること」を入れ込んでしまうのも一案です。
ツール導入だけで満足してしまう
「高機能な文書管理システムを導入すれば、すべて解決する」という誤解も危険です。システムはあくまで「ルールを効率的に運用するための器」に過ぎません。
中身のフォルダ構成が乱雑で、ファイル名がバラバラのままシステムに移行しても、「検索できない高性能システム」という無用の長物が出来上がってしまいかねません。必ず、運用ルールの策定と既存データの整理(棚卸し)を行なったうえで、システムへの移行を行ないましょう。
管理が複雑すぎて運用崩壊する
アクセス権限や保存期間の設定を細かくしすぎた結果、異動や組織変更のたびに膨大な設定変更作業が発生し、管理部門の手におえなくなるケースもあります。
セキュリティを高めたいという思いは理解できますが、メンテナンスコストを考慮しない設計は長続きしません。「大枠の部署レベルでの権限付与にとどめる」「例外的な権限設定は極力認めない」など、運用が回る現実的なラインを見極めることが大切です。
よくある質問(FAQ)
文書管理によくある質問をまとめました。
Q. 文書管理はどこから始めるべきですか?
まずは「現状の把握(棚卸し)」からはじめましょう。どの部署に、どんな種類の文書が、どれくらいあるのかをリストアップします。その後、法令対応が迫っている経理・法務関連の文書や、日常的に検索頻度が高く業務効率化のインパクトが大きい文書から優先的にルール化とシステム化を進めるのが定石です。
Q. 紙と電子はどちらで管理すべきですか?
最終的には「電子データでの一元管理」を目指すべきです。紙のままでは検索性がなく、保管スペースのコストもかさみます。ただし、一気にすべてを電子化するのは非現実的なため、まずは「今後発生する文書は最初から電子で作成・保管する(ボーンデジタル)」ルールを徹底し、過去の紙文書については優先度の高いものから徐々にスキャンして電子化していくアプローチをおすすめします。
Q. 無料ツールでも十分ですか?
数名程度の小規模チームでの一時的なファイル共有であれば、無料のクラウドストレージでも機能するかもしれません。しかし、企業としてアクセス権限の厳格な管理、証跡(ログ)の取得、電子帳簿保存法などの法令対応を行なううえで、無料ツールではセキュリティとコンプライアンスの面で致命的なリスクを伴います。企業の責任として、法人向けの有料システムを検討することがおすすめされます。
Q. 文書管理システムは中小企業でも必要ですか?
はい、必要です。むしろ、専任の管理部門を置く余裕がない中小企業こそ、システムによって文書管理を自動化・効率化し、少ない人数で安全に業務を回す仕組みが求められます。現在では、初期費用が抑えられ、月額数千円〜数万円程度で手軽に導入できるクラウド型のシステムが多数存在するため、企業規模を問わず導入のハードルは下がっています。
まとめ|文書管理は「仕組み化」で誰でも回る状態を作ることが重要
文書管理の重要ポイントの振り返り
文書管理は、単なるファイルの整理整頓ではなく、情報漏洩や法令違反から企業を守り、無駄な検索時間を削減して組織全体の生産性を高めるための「経営基盤」です。属人化を排除し、保存期間・命名規則・アクセス権限といった基本ルールを設計することがすべての出発点となります。
まず取り組むべき3ステップ
文書管理の改善に向けた具体的な第一歩として、以下の3ステップから着手してください。
- 現状の可視化: 自部署のフォルダ構造や紙のキャビネット状況を棚卸しする。
- ルールの策定: テンプレートを活用し、統一したファイル命名規則とフォルダ階層のルールを作る。
- スモールスタート: 1つの部署、または1つの文書カテゴリ(例:契約書のみ)に限定して、1か月間新ルールでの運用をテストする。
ルール作りと並行して、自社の課題を解決できる文書管理システムの情報収集を始めましょう。まずは自社の要件(電子帳簿保存法への対応、必要な検索機能、月額予算など)を整理したうえで、複数のベンダーのウェブサイトから資料請求を行ない、機能やコストを比較検討することをおすすめします。
なお、クラウドサインでは、デジタルツールの選定や、文書管理に役立つ資料を無料で公開しています。これから文書管理システムの選定を進める方、書類管理を少しでも効率化したい方はぜひ参考にしてください。

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この記事の監修者
奥田豊
中小企業診断士
都市銀行で融資業務、製造業(プライム企業)で本社経理・工場管理に従事。工場管理業務においては、在庫管理やSOPなどを経験。その後、中小企業診断士を取得し、財務コンサル会社へ転身し、管理部門の経理部門長として管理部門体制強化に貢献し、自社のIPOを実現させる。現在は独立し、経理業務改善等のコンサル業務に従事している。
この記事を書いたライター
業務改善プラスジャーナル編集部
業務改善は難しそう、大変そうという不安を乗り越え、明日のシゴトをプラスに変えるサポートをします。単なる業務改善に止まらず、組織全体を変え、デジタル化を促進することを目指し、情報発信していきます。契約管理プラットフォーム「クラウドサイン」が運営。
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