契約書の両面印刷は非常識・マナー違反か

投稿日:

契約書作成にかかるコストや製本の手間を考えると、印刷の枚数はできるだけ少なくしたいもの。契約書は両面印刷で作成してもよいのでしょうか?

たしかにあまり見かけない契約書の両面印刷

契約書を押印の前に印刷して製本するのは、とにかく面倒で、印刷代や人件費も馬鹿にならない作業です。こうしたコスト削減のためにも、両面印刷を活用したいシーンによく遭遇します。

もちろん、「契約書は両面印刷で作成してはならない」という法令はありません。ところが、製本まできれいにされているのに、わざわざ片面印刷とされた契約書 を見かけることはよくあります。法務担当者としての個人的な経験でも、契約書を両面印刷にして送付した際、相手先に「片面印刷に直していただけますか」と言われたことも実際にあります。

印刷の裏写りを気にしていた時代では、製本された本も片面だったのかもしれませんが、そもそも製本の由来である「本」自体が両面であるのにもかかわらず、なぜか契約書となると片面印刷への信仰が見え隠れします。

アンケート結果は「原則として片面印刷」が63%

実際、片面印刷と両面印刷、現状の多数派はどちらなのか? 法務担当者や弁護士をはじめとするビジネスパーソンがフォロワーに多いTwitterのタイムラインで、アンケートを流してみました。

https://twitter.com/takujihashizume/status/1095897692616572928

投票数176を集めて、合計63%が「原則として片面印刷」派 という結果に。

特に、「絶対に両面印刷はしない」という方が23%もいらっしゃるというのは、本当に驚かされます。

両面印刷のデメリット

ここまで両面印刷に根強い反対派がいるのはなぜなのか?反対派がおっしゃるデメリットを整理して考えてみました。

(1)両面印刷できるプリンター・コピー機がないとできない

コンピュータが普及し、高速なプリンターが普及したのは実はそれほど昔のことではなく、ここ20〜30年の話です。一般企業で契約書が片面印刷とされてきたのは、実はこの 「両面印刷できるプリンター・コピー機がオフィスになかったから」 が主な理由だったのではないかと推測します。

今でも、小規模オフィスで導入される小型のプリンター・複合機などでは、両面印刷機能がないものもあるでしょう。それでも、手差し印刷機能を使えば、誰にでも両面印刷は可能なはずなのですが・・・。

(2)レビューしにくい

今回のアンケートで片面派が多数になった理由のもう一つの理由に、回答者バイアスが働いた可能性があり、こう考える法務担当者が多かったとしても不思議ではありません。

確かに、製本前のバラバラな紙片を並べて契約書レビューをしているような段階では、両面印刷にしていると裏表ぺらぺらとめくり返す必要がでてくる ため、今自分がどこまで読んだのがわからなくなったり、並べて一覧することがしにくくなります。しかし、法務担当者のわがままといえばそれまでのような気もします。

(3)製本・押印後のPDFスキャン作業が面倒になる

実務的には共感する理由がこちら。製本し押印が完了した契約書をデータでも保管するため、スキャニングをしてPDFにすることは多いと思います。この際、両面印刷で製本されていると、袋とじを壊さないようにデリケートに扱いながら、スキャンの位置決めに気を使うなど、たしかに面倒 にはなります。

以前、契約書スキャン作業を代行するクラウドサインSCANの作業現場を公開したことがありましたが、この作業過程でも、両面印刷のスキャンはひと手間かかるというお話がありました。

両面印刷のメリット

一方で、契約書の両面印刷には確実なメリットがあります。言わずもがな、というものも含めてあらためて整理してみましょう。

(1)紙資源の無駄とコストが削減できる

単純に考えて、両面にしただけで紙の使用量が2分の1 になります。

会社としてのコスト削減はもちろんのこと、長期的な紙資源の無駄遣いをなくし、森林環境の保護の重要性に鑑みれば、多少のデメリットに目をつぶってでも両面印刷は推奨されるべきでしょう。

(2)製本と契印が不要になる

先日、契約書の製本(袋とじ)と契印のルールについての記事を書きましたが、どんなに 手慣れた担当者でも、袋とじ作業と契印の押印には10分程度の時間 はかかります。

短いNDAや業務委託契約書など、A4✕4枚までの契約書なら、A3用紙に2in1&裏表印刷することで1枚の紙におさめることができ、製本作業がなくなります。普段は片面派の法務担当者でも、このときだけは両面印刷を認めるという例もよく聞きます。

またこの場合、契約書のページが複数枚に分かれたときに必要とされる契印ももちろん不要です。契約相手方の押印の手間も同時に減らすことができます。

(3)保管スペースが削減できる

これも(1)同様、単純計算で保管スペースが半分で済む ことになります。増えていく一方で、いつ捨ててよいかもわからない契約書。企業が若いうちは気にならなくても、成長を続けるにつれて必ず保管スペースが足らなくなる問題に直面します。

特に都市部のお客さまがクラウドサインのような電子契約をご検討される理由の一つが、高い家賃のオフィスで保管スペースを確保すること、遠隔地の倉庫に入れて探しにくくなることに限界を感じてというものなのも、これが理由です。

結論:「契約書の両面印刷は非常識・マナー違反」は神話

以上、両面印刷のデメリットとメリットをそれぞれまとめてみました。

比較してみると、デメリットにはいずれも致命的なものは無く、メリットには確実な資源とコストの削減が見込めるというシンプルで決定的なものがあり ます。

こんなところにも、理由もないままになんとなく続けられてしまう契約書業務の悪しき習慣が見え隠れします。

関連記事

(橋詰)