電子化に規制が残る文書と契約類型のまとめリスト(2022年5月法改正反映版)

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電子化に規制が残る文書と契約類型のまとめリスト

電子署名法やIT書面一括法等の施行によって、現在ではほとんどの契約書について電子化が認められています。しかし、ごく一部の契約類型については、書面化義務が残っているものがあります。電子化に規制が残る文書と契約類型について、それぞれリストにまとめてみました。

1. 法令により電子化に一部規制が残る文書と契約類型のリスト

電子契約への移行をご案内すると、必ずと言っていいほど頂く質問に、

「契約は、書面で取り交わさないと、適法に締結できないのでは?」

というものがあります。日本では、長らく印鑑(ハンコ)を用いて文書を作成し、契約を締結する慣習があっただけに、電子化の検討にあたって不安に駆られるお客様も多いようです。

この点、電子署名を手書きの署名や押印と同等に通用させる電子署名法が2001年に施行されて以降、

  • IT書面一括法(2001年施行)
  • e-文書法(2005年施行)
  • 電子帳簿保存法(1998年施行、2005、2015、2016、2020、2022年改正)
  • デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律(2021年施行)

により、電子契約で締結しそのファイルを電子データで保管することが、民法等の契約に関わる実体法のみならず税法等でも認められ、現在では、ほとんどの契約について電子化が可能となっています。

しかしながら、ごく一部の文書について、書面が必須、または電子化に相手の承諾や希望が必要となる類型が存在するのも事実です。今回は、そうした文書・契約類型をリストアップしてみます。

法令により電子化に一部規制が残る文書と契約類型のリスト

2. 現時点では電子化できない文書・契約書

2.1 電子化できない文書・契約書リスト

民間の一般事業会社が締結する契約のうち、法律により書面化が必須の義務とされ、現時点では電子化が困難な文書・契約類型 の代表例をリスト化すると、以下のとおりとなります。

文書名 根拠法令 改正法施行予定
事業用定期借地契約 借地借家法23条
企業担保権の設定又は変更を目的とする契約 企業担保法3条
任意後見契約書 任意後見契約に関する法律3条
特定商取引(訪問販売等)の契約等書面 特定商取引法4条、5条、9条、18条、19条、37条、42条、55条 2023年6月

以上のとおり、現時点でも書面化が不可とされる文書はそれほど多くなく、また、近い将来電子化が可能となることが見込まれているものもあります。

2.2 電子化できない理由その1—「公正証書」化する義務が残るため

上記表の中で、

  • 事業用定期借地契約
  • 企業担保権の設定又は変更を目的とする契約
  • 任意後見契約書

の3つについては、それぞれ公正証書によって契約を締結すべきことが法律で定められているために、現状は書面での締結が必要となります。

公正証書とは、公証人が公証人法等の法令に従って法律行為その他私権に関する事実について作成した証書のことを言います。(有斐閣「法律学小辞典」)

なお、公正証書については、規制改革推進会議において電子化を認める範囲や、その時期について検討が進められており、これらの契約書についても電子署名によって作成することが認められる可能性があります。

2.3 電子化できない理由その2—消費者保護のため

また、以下の特定商取引については、消費者保護のため、書面を交付する義務が残ります。

  • 訪問販売電話勧誘販売
  • 連鎖販売取引
  • 特定継続的役務提供
  • 業務提供誘引販売取引
  • 訪問購入

ただし同法に関しては、電磁的方法で行うことを認める法案がすでに可決成立しています。

現在、書面交付の電子化に関する承諾の要件を検討する「特定商取引法等の契約書面等の電子化に関する検討会」が開催されており、電子化に一定の制約が課される可能性もあります(関連記事:「書面交付」義務が「書面承諾取得」義務に?改正特定商取引法附帯決議への疑問)。

3. 電子化に承諾等が必要な文書・契約書

3.1 電子化に承諾・希望・請求が条件となる文書・契約書リスト

次に、契約相手方の承諾・希望・請求によって電子化が可能とされる文書・契約類型 の中から、主なものをまとめてみます。

文書名 根拠法令 必要な手続き
建設工事の請負契約書 建設業法19条3項、施行規則13条の2 承諾
設計受託契約・工事監理受託契約の重要事項説明書 建築士法24条の7第3項 承諾
設計受託契約・工事監理受託契約成立後の契約等書面 建築士法24条の8第2項 承諾
下請会社に対する受発注書面 下請法3条2項 承諾
不動産売買・交換の媒介契約書 宅建業法34条2第11項、同12項 承諾
不動産売買・賃貸借契約の重要事項説明書 宅建業法35条8項、同9項 承諾
不動産売買・交換・賃貸借契約成立後の契約等書面 宅建業法37条4項、同5項 承諾
定期借地契約書 借地借家法22条2項 承諾
定期建物賃貸借契約書 借地借家法38条2項 承諾
定期建物賃貸借の説明書面 借地借家法38条4項 承諾
取壊予定建物の賃貸借契約における取壊事由書面 借地借家法39条3項 承諾
マンション管理業務委託契約書 マンション管理適正化法72条6項、同7項、73条3項 承諾
不動産特定共同事業契約書面 不動産特定共同事業法24条3項、25条3項 承諾
投資信託契約約款 投資信託及び投資法人に関する法律5条2項 承諾
貸金業法の契約締結前交付書面 貸金業法16条の2第4項 承諾
貸金業法の生命保険契約等に係る同意前の交付書面 貸金業法16条の3第2項 承諾
貸金業法の契約締結時交付書面 貸金業法17条7項 承諾
貸金業法の受取証書 貸金業法18条4項 承諾
割賦販売法の契約等書面 割賦販売法4条の2、割賦販売法35条の3の8・同条の3の9第1項、同3項 承諾
旅行契約の説明書面 旅行業法12条の4、12条の5、施行令1条等 承諾
労働条件通知書面 労働基準法15条1項、施行規則5条4項 希望
派遣労働者への就業条件明示書面 派遣法34条、施行規則26条1項2号 希望
金銭支払の受取証書 民法486条2項 請求

3.2 電子化に「承諾」が必要なもの—建設工事の請負契約・下請との受発注書面など

建設工事の請負契約・下請との受発注書面 などは、締結件数も多く、また書面では印紙税が課税されるのに対し電子化すれば印紙税が不要となることもあり、電子化の効用が高い契約類型です。

相手方の承諾が必要とあるものの、むしろ承諾さえ確保できれば法的にはなんら問題はないとも言え、積極的に電子契約を活用すべき領域でしょう(関連記事:建設業法グレーゾーン解消制度による電子契約の適法性確認—建設工事請負契約の電子化がさらなる規制緩和)。

3.3 電子化に相手方の「希望」が必要なもの—労働関連の条件書類

また、労働条件通知書や派遣社員に対する条件明示書面 については、電子化について「承諾」ではなく「希望」を確認するというプロセスが必要とされています。

一見するとハードルが高そうではありますが、PCやスマートフォンが普及した現代では、企業がこれらの文書を電子化することについて、むしろ労働者からの抵抗はほとんど受けないでしょう。むしろ、書面で交付されることを迷惑がる労働者もいるのではないでしょうか(関連記事:労働条件通知書の電子化がついに解禁—労働基準法施行規則の改正ポイント)。

4. 2022年5月18日より不動産取引の電子化が完全解禁

これまで電子化が認められてこなかった不動産売買・賃貸借等に関する契約書や重要事項説明書についても、2022年5月18日の宅地建物取引業法・借地借家法等の改正により、電子契約サービスを利用した電子化が可能となりました。

特に、宅建業法改正による宅建士の押印義務廃止とあわせ、重要事項説明書の電子化が可能となったのは、実務にも大きな影響を与えるものと考えられます。

不動産取引の電子化について、詳しくまとめた「不動産DX法改正で始める不動産契約電子化のメリットとデメリット」をご参考ください。

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5. ほとんどの文書・契約書が無条件で電子契約可能

このように、いくつかの契約類型では電子化に条件がつくものの、企業が多く取り交わす文書・契約書のほとんどが無条件で電子化が可能です。

  • 取引基本契約書
  • 秘密保持契約書
  • 雇用契約書
  • 労働者派遣契約書
  • 売買契約書
  • 請負契約書(建設工事の請負契約書を除く)
  • 委任契約書
  • 業務委託契約書
  • 代理店契約書
  • フランチャイズ契約書
  • 注文書・注文請書

デジタル化を推進する法改正が施行され、多くの書類について押印義務・書面化義務が廃止された一方で、本記事で紹介したように、電子化に条件がある書類も一部存在します。電子化に条件がある契約書と無条件に電子化できる契約書をしっかりと区別できるようになった上で、必要な契約手続きを取れるようになることが重要です。

印紙税の削減等電子化によるメリットが大きい取引基本契約書・請負契約書や、大量に取り交わし契約期間管理に多大なコストがかかっている秘密保持契約書・注文書などのフロント部門の負担が大きいものから、優先順位を付けて契約の電子化・ペーパーレス化を進めていくことをおすすめします。

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