電子化に規制が残る文書と契約類型のまとめリスト

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電子署名法やIT書面一括法の施行以降、ほとんどの文書や契約書について電子化が認められていますが、ごく一部の類型について書面化義務が残っているものがあります。電子化に規制が残る文書と契約類型について、それぞれリストにまとめてみました。

法令により電子化に一部規制が残る文書と契約類型のリスト

「契約は、書面で取り交わさないと、適法に締結できないのでは?」

電子契約への移行をご案内すると、必ずと言っていいほど頂く質問です。日本では長らく印鑑(ハンコ)を用いて契約を締結する慣習があっただけに、電子契約への移行に対し、不安に駆られるお客様も多いようです。

この点、電子署名を手書きの署名や押印と同等に通用させる電子署名法が2001年に施行されて以降、

により、電子契約で締結し、そのファイルを電子データで保管することが税務面でも法的に認められ、現在ではほとんどの契約について電子化が可能となっています。

しかしながら、ごく一部の文書について、書面が必須、または電子化に相手の承諾や希望が必要となる類型が存在 するのも事実です。今回は、そうした文書・契約類型をリストアップしてみました。

書面化義務が残り現時点では電子化できない文書

民間の一般事業会社が締結する契約のうち、法律により書面化が必須の義務とされ、現時点では電子化が困難な文書・契約類型 の代表例を挙げると、以下のとおりです。

文書名 根拠法令 改正法施行予定
不動産売買・交換の媒介契約書 宅建業法34条2 2022年5月
不動産売買・賃貸借契約の重要事項説明書 宅建業法35条5項・7項  2022年5月
不動産売買・交換・賃貸借契約成立後の契約等書面 宅建業法37条 2022年5月
定期借地契約書 借地借家法22条 2022年5月
事業用定期借地契約 借地借家法23条
定期建物賃貸借契約書 借地借家法38条1項 2022年5月
定期建物賃貸借の説明書面 借地借家法38条2項 2022年5月
取壊予定建物の賃貸借契約における取壊事由書面 借地借家法39条2項 2022年5月
特定商取引(訪問販売等)の契約等書面 特定商取引法4条、5条、9条、18条、19条、37条、42条、55条 2022年6月

人の生活に密着し、長期かつ比較的取引金額も高額となる契約類型である不動産取引と、消費者取引の領域は、行政が電子化に慎重な態度をとってきた分野でした。しかし、こうした分野における頑な書面・対面原則が、いま大きく変わろうとしています。

まず、デジタル社会形成関係整備法が2021年の通常国会で可決成立し、宅建業法・借地借家法が定める書面化義務が緩和され、相手方の承諾により電子化が認められる こととなりました(関連記事:押印義務・書面化義務の原則廃止へ—デジタル社会形成関係整備法案の国会提出)。

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/senmon_bunka/dejigaba/dai14/siryou1.pdf 2021年4月20日最終アクセス

さらに、特定商取引法の書面交付義務を改正し、消費者の承諾により電磁的方法で行うことを認める 法案も可決成立しています。

ただし同法に関しては、書面交付の電子化に関する承諾の要件を検討する「特定商取引法等の契約書面等の電子化に関する検討会」が開催されており、電子化に一定の制約が課される可能性もあります(関連記事:「書面交付」義務が「書面承諾取得」義務に?改正特定商取引法附帯決議への疑問)。

https://www.caa.go.jp/law/bills/assets/consumer_transaction_cms202_210303_01.pdf 2021年4月20日最終アクセス

このように、現時点では書面化が不可とされる文書についても、近い将来ほとんどの契約関連書面の電子化が可能となることが見込まれています。

書面電子化に相手の承諾等が必要な文書

次に、書面が原則、契約相手方の承諾・希望さえあれば電子化が可能とされる文書・契約類型 の中から主なものをまとめてみます。

文書名 根拠法令 必要な手続き
建築請負契約の契約書 建設業法19条3項、施行規則13条の2 承諾
設計受託契約・工事監理受託契約の重要事項説明書 建築士法24条の7第3項 承諾
設計受託契約・工事監理受託契約成立後の契約等書面 建築士法24条の8第2項 承諾
旅行契約の説明書面 旅行業法12条の4、12条の5、施行令1条等 承諾
マンション管理業務委託契約書 マンション管理適正化法72条、73条 承諾
下請会社に対する受発注書面 下請法3条2項 承諾
不動産特定共同事業契約書面 不動産特定共同事業法24条、25条 承諾
投資信託契約約款 投資信託及び投資法人に関する法律5条 承諾
金融商品取引契約等における説明文書 金融商品取引法等 承諾
貸金業法の契約締結前交付書面 貸金業法16条の2第4項 承諾
貸金業法の生命保険契約等に係る同意前の交付書面 貸金業法16条の3第2項 承諾
貸金業法の契約締結時交付書面 貸金業法17条7項 承諾
貸金業法の受取証書 貸金業法18条4項 承諾
割賦販売法の契約等書面 割賦販売法4条の2、割賦販売法35条の3の8・同条の3の9第1項、同3項 承諾
労働条件通知書面 労働基準法15条1項、施行規則5条4項 希望
派遣労働者への就業条件明示書面 派遣法34条、施行規則26条1項2号 希望
金銭支払の受取証書 民法486条2項 請求

請負契約・下請との受発注書面 などは締結件数も多く、また書面では印紙税が課税されるのに対し電子化すれば印紙税が不要となることもあり、電子化の効用が高い契約類型です。相手方の承諾が必要とあるものの、むしろ承諾さえ確保できれば法的にはなんら問題はないとも言え、積極的に電子契約を活用すべき領域でしょう。

マンション管理業務委託契約書面も、管理組合の承諾等一定の条件を満たすことで電子化が可能となりました。本法の施行日がやや不明確でしたが、2021年(令和3年)1月29日付国土交通省報道資料によれば、2021年(令和3年)3月1日付で施行済みとなっています。

また、労働者や派遣社員に対する条件明示書面 については、電子化について「承諾」ではなく「希望」を確認するというプロセスが必要ですが、PCやスマートフォンが普及した現代では、むしろ労働者からの抵抗はほとんど受けないでしょう。

特定方式の電子署名の利用が要求される文書

最後に、電子化は可能とされているものの、電子署名法2条1項に定義される電子署名というだけでは電子化が認められず、特定の認証局が発行する電子証明書の添付を求める文書 があります。

文書名 根拠法令
電子処方箋 医師法施行規則21条、歯科医師法施行規則20条、薬剤師法26条

この法令改正については、規制改革推進会議の医療・介護ワーキンググループでも議論が行われているところであり、当社からも新経済連盟等を通じ、改正に向けた働きかけを行なっています。

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/iryou/20210322/agenda.html 2021年9月24日最終アクセス

規制改革推進会議のリーダーシップに期待が集まる

以上見てきたように、法的規制はまだほんの少し残ってはいるものの、逆に言えば もはや一部の例外をのぞいてほとんどの文書・契約類型で電子化が認められた ということでもあります。

そして、残るいくつかの書面化義務も、規制改革推進会議のリーダーシップによって、電子化が認められていくことは間違いありません。

行政が率先して変わろうとしているいま、私たち民間も押印の慣習を見直していく必要があります。

画像:freeangle / PIXTA(ピクスタ)

(橋詰)

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