電子契約の基礎知識

電子契約システムの普及率とは?中立的な調査結果を比較 2023年は電子契約利用率が課題に

電子契約システムの普及率とは?中立的な調査結果を比較 2023年は電子契約利用率が課題に

この記事では、企業が利用する電子契約システムの普及率について解説します。信頼できる調査主体による電子契約の普及率とともに、「立会人型」とも呼ばれることの多いクラウド型電子契約のシェアが何%程度まで伸びているか、そして2023年の電子契約の課題について、データをもとに考察します。

商事法務・経営法友会による電子契約システムの普及率調査が信頼できる理由

「立会人型」と呼ばれることも多いクラウド型電子契約が登場して以降、電子契約の普及率が一気に高まっており、さまざまな団体がこれを調査しています。

しかし、

  • 法務部や法務担当者が存在するような、一定規模を超える企業に絞った精度の高い調査
  • 調査対象者が特定のサービスの顧客層に偏らない、中立的な調査

かといえば、疑わしいものも少なくありません。

そんな疑いを払拭してくれる、商事法務・経営法友会による調査結果「商業登記と企業の契約締結事務に関する質問票調査」が、旬刊商事法務No.2295(2022年5月25日号)の紙面上において公表されています。

今回の商事法務調査では、電子契約サービス提供企業・業界団体等によるバイアスのない中立な立場から、企業法務に理解の深いアンケート対象者に絞って調査した、本当の「電子契約普及率」が導き出されています。

電子契約システム普及率は企業全体の56.3%

その結果は、回答会社の半数超にあたる56.3%(全体455社から「導入していない」と回答した199社を差し引いた256社)となりました。

しかもこの数字は、自社主導の契約の場合に相手方に利用を求める電子契約システムに限定したものであり、受信者として受動的に利用する電子契約システムは含まれていない点は、注目に値します。

商事法務・経営法友会「商業登記と企業の契約締結事務に関する質問票調査」(旬刊商事法務No.2295 2022年5月25日号)

「立会人型」の普及率は電子契約システム導入済み企業の3分の2超

本人確認・権限確認を厳密に行う当事者型電子契約と、普及著しい立会人型電子契約。企業においては、どちらがより多く使われているのでしょうか?

この点、上記調査において電子契約導入済みの企業が利用する電子署名システムの内訳を見てみると、

  • クラウドサインのような「立会人型電子契約システム」を利用 36.7%
  • 最も厳格で公的な当事者型システムである「代表者の商業登記電子署名」を利用 12.3%

となりました。つまり、電子契約システム導入済み企業における立会人型のシェアは、65%を占めることになります。

電子契約時代においては、企業は相手方が代表者の届出印(いわゆる実印)を使用しているかにこだわらなくなっている様子が伺えます。

立会人型ではない電子契約システムが普及しているという業界団体調査も

一方で、電子認証に関する業界団体であるJIPDECが2022年1月に公開したアンケート結果では、

  • 立会人型 18.4%
  • 当事者型 26.0%
  • その他合計 25.3%

という結果が公表されており、今回の商事法務調と比較して、立会人型ではない電子契約システムが普及しているとする結果が示されていました。

JIPDECが2022年1月に公開したアンケート結果

前掲商事法務・経営法友会調査と結果が解離している原因は様々考えられますが、その一つに、JIPDEC自身が当事者型電子署名サービスを対象とした「電子署名法に基づく指定調査機関」を担っており、アンケート対象とされた企業の母集団において、「当事者型」利用ユーザー企業への偏りがあったであろうことが推察されます。

電子契約の利用率向上が2023年の課題に

2023年に入り、電子契約には、次なる課題も見え始めています。それは「利用率の向上」という課題です。

朝日新聞2023年1月23日19面の記事より引用します。

脱ハンコ「電子契約」、低迷する利用率 「大きな会社ほど難しい」

電子契約大手の弁護士ドットコムは(中略)「クラウドサイン」を運営する。同社を利用する上場企業は20年1月の5.4%から昨年10月の21.1%に増えた。
21年度の利用件数は400万件を超え、19年度のほぼ4倍になった。ただ、導入企業の契約のうち、どのくらいを電子契約が占めるかという利用率(推計)は1.5%と低迷する。

この記事における電子契約利用率(推計)の数値は、データは当社が朝日新聞に提供した推計値です。電子契約サービスは導入して終わり、ではなく、実際の契約書を電子契約に載せ替えてはじめて効果を実感できるものであるにもかかわらず、多くの企業が導入で満足してしまっている様子が伺えます。

上場企業であれば、ほぼ例外なく年間1000通以上は紙の契約書を締結していたものと思われますが、そのうちの15通前後しか電子契約に移行できていなかったということになります。この事実からも、電子契約においては「自社内で電子化の機運を高めるだけでなく、いかに相手から電子化承諾を得るか」が重要であることがわかります。

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この記事を書いたライター

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弁護士ドットコムクラウドサイン事業本部リーガルデザインチーム 橋詰卓司

弁護士ドットコムクラウドサイン事業本部マーケティング部および政策企画室所属。電気通信業、人材サービス業、Webサービス業ベンチャー、スマホエンターテインメントサービス業など上場・非上場問わず大小様々な企業で法務を担当。主要な著書として、『会社議事録・契約書・登記添付書面のデジタル作成実務Q&A』(日本加除出版、2021)、『良いウェブサービスを支える 「利用規約」の作り方』(技術評論社、2019年)などがある。

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