電子契約を全社導入するための7ステップ—事前準備と導入プロセスの注意点

「電子契約を導入したいが、何から手をつければいいかわからない」
「社内の承認ルートや社内規定をどう変更すべきか悩んでいる」
「取引先に負担をかけないか不安がある」
電子契約の導入を検討する際、このようなお悩みを抱える法務・総務担当者やDX推進担当者の方は少なくありません。電子契約は、単なるITツールの導入ではなく「社内外の業務プロセスを新しく設計し直す」プロジェクトであるため、事前の段取りが成功の鍵を握ります。
本記事では、これまで多くの企業の契約業務デジタル化を支援してきたクラウドサインの知見をもとに、実務担当者が迷わず進められる「電子契約導入の7ステップ」を解説します。社内稟議の準備から取引先への案内方法まで、全体像を把握するためのロードマップとしてご活用ください。
目次
なぜ今、電子契約の導入手順をアップデートすべきなのか
電子契約の導入目的は、ここ数年で変化しています。以前は印紙代の削減やペーパーレス化が主な目的とされてきましたが、2026年現在ではそれに加え、改正電子帳簿保存法への対応や、2026年1月に施行された「中小受託取引適正化法(取適法)」への準拠など、全社的な業務DXの基盤作りとしての側面が強まっています。
法規制の要件が明確化された今、単に紙をPDFにするだけではなく、「いかに契約データを安全かつ効率的に社内システムと連携させるか」が問われています。そのため、導入手順においても、法的要件を満たしつつ、現場の従業員や取引先がスムーズに移行できる「ルールの再構築」が重要になっています。
電子契約導入の7ステップ全体像
まずは、導入プロジェクト全体の流れを把握しましょう。一般的な導入スケジュールは以下の7つのステップで進行します。
- 現状の課題整理と対象契約の洗い出し
- 電子契約サービスの選定
- 社内業務フロー(稟議・承認ルート)の設計
- 社内規定・ルールの整備
- 社内向け説明会の実施と操作トレーニング
- 取引先へのご案内と同意取得
- スモールスタートでの運用開始と全社展開
それでは、各ステップの具体的な進め方を解説します。
【Step1】現状の課題整理と対象契約の洗い出し
最初のステップは、自社の現状を把握することです。すべての契約書を初日から一斉に電子化する必要はありません。まずは社内にどのような契約書類が存在し、どれから電子化を進めるべきかを整理します。
- 課題のヒアリング: 営業部門や人事部門にヒアリングを行い、「製本作業に時間がかかっている」「押印のための出社が発生している」など、具体的な課題を洗い出します。
- 対象契約の選定: 導入初期は、リスクが低く件数が多い書類からスモールスタートすることをおすすめします。例えば、社内向けの「雇用契約書」、定型的な「秘密保持契約(NDA)」、毎月発生する「基本契約に基づく個別発注書」などが適しています。また、2026年施行の取適法で新たに対象となった「特定運送委託」の書類なども、電子化による業務効率化の効果が見込みやすい領域です。

上記表はビジネス法務2020年4月号の特集「電子契約のしくみと導入プロセス」にも登場する、実際の電子契約導入企業の声を参考に作成しています。
電子契約のメリットやデメリットについて詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
【Step2】電子契約サービスの選定
対象となる書類が決まったら、自社の要件に合う電子契約サービスの選び方を基準に選定します。セキュリティ水準や法的有効性(電子署名法への準拠など)はもちろんですが、実務上重視すべきポイントは「取引先(受信者)の使いやすさ」です。
送信側(自社)が便利でも、受信側(取引先)にアカウント登録の手間や費用の負担を強いるシステムでは、電子化の同意を得ることが難しくなります。
クラウドサインの場合、受信者はアカウント登録不要で、メールで届いたリンクをクリックするだけで内容の確認と合意(電子署名)が完了します。この相手方への負担の少なさが、スムーズな導入につながります。
その際、インターネット上のサービス比較サイトがよく用いられます。もちろんご利用いただいて構わないのですが、電子契約サービスの事業者が自社製品を有利に評価した比較サイトをステルスで制作しているケースも少なくないため、情報の信頼性には注意が必要です。実在企業が実名かつ事実ベースで使用感を述べているサイトを参考に、最後はご自身の目で実際に試用版・デモ・紹介動画等で確認する ことをお勧めします。
なおクラウドサインは、ITサービス比較サイト「ITreview」の電子契約カテゴリーおいて実名ユーザーの皆様から継続的に高いご評価を頂戴しています。また、「BOXIL」の2025年 下半期BOXIL資料請求数ランキングにおいても1位に選出していただいています。


【Step3】社内業務フロー(稟議・承認ルート)の設計と予算の確保
ツールが決まったら、社内の業務プロセスを電子契約に合わせて再設計します。紙の契約書で行っていた「回覧」や「押印申請」をどうシステム上で再現するかを取り決めます。
- 権限の設定: 誰が契約書を送信(押印)する権限を持つのか。これまでの「代表印の管理者」にあたる役割を、システム上でどう設定するかを決定します。
- 稟議システムとの連携: ワークフローシステムで決裁が完了した後に、電子契約システムで送信を行うといった、一連の流れ(フロー)を策定します。下の図解(ネスレ日本様の事例など)のように、既存の承認フローと電子契約をどう接続するかがポイントです。
電子契約を全社導入する際に、紙の契約書の押印申請を電子契約の承認フローに統合 してしまう方法もあります。クラウドサインをご利用いただくネスレ日本株式会社様では、この方法で全社で電子契約を導入された結果、月平均40時間以上の手間を削減。あわせて、紙・電子を問わないシームレスな契約管理も実現されています。

他にも基幹システムへの「送信ボタン」実装による効率化の事例としてリコージャパン株式会社様や稟議システムとの完全自動連携の事例として株式会社Donuts様の導入事例記事もご覧ください。
予算確保のコツ
電子契約サービス採用の予算を確保することは難しいという声を、総務・法務部門のお客様から耳にします。そこでおすすめしているのが、法務コストの削減という位置付けではなく、「全社的な情報システム投資」として位置付ける方法です。。
近年、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」を推進するため、情報システム部門がデジタル化の予算を大枠で確保しているケースが少なくありません。情報システム部門をうまく巻き込み、適切な予算を確保しましょう。
【Step4】社内規定・ルールの整備
業務フローの変更に伴い、既存の社内規定を見直す必要があります。特に確認すべきなのは以下の規定です。
- 印章管理規程: 「電子署名」を社印と同等に扱う旨の追記や、電子署名を付与する権限者についてのルールを追加します。
- 文書管理規程: 電子化された契約書の保存先、ファイル名の命名規則(電帳法の検索要件を満たすための日付・金額・取引先名の入力ルールなど)、保存期間を明記します。
- コンプライアンス対応(取適法への準拠) 2026年1月施行の「取適法(改正下請法)」への対応は急務です。大きな変更点として、従来は中小受託事業者の事前承諾が必要だった「発注内容の電磁的記録(メールや電子契約等)による明示」が、承諾の有無にかかわらず可能となりました。ただし、以下の運用ルールを規定に盛り込む必要があります。
- 書面交付請求への対応: 中小受託事業者から「書面でほしい」と求められた場合、保護に支障がない例外を除き、遅滞なく書面を交付する義務があります(怠ると罰則の対象です)。
- 禁止された支払手段の排除: 代金の支払において手形による支払が全面的に禁止されました。また、電子記録債権などを用いる場合も、支払期日(受領から60日以内)までに中小受託事業者が「満額」を現金化できる設定にする必要があります。
紙の管理では、「どの発注が取適法の対象で、支払期日がいつか」を個別に追うのは限界があります。クラウドサインで発注・契約データを一元管理することで、法令違反(支払遅延や書面交付漏れ)を未然に防ぐアラート管理が可能になります。
ゼロから作成するのは手間がかかるため、クラウドサインでは実務に沿った「社内規定(電子署名管理規程など)のサンプル・ひな形」をご用意しています。これらをベースに自社用にカスタマイズすることで、準備期間を短縮できます。
無料ダウンロード

クラウドサインでは電子署名の管理ルールを明確にするために必要な電子署名管理規程のサンプルを作成しました。電子契約の導入に向けて社内規程の準備を進めている方は今すぐ使えるWord形式のサンプルをダウンロードしてご活用ください。
ダウンロードする(無料)【Step5】社内向け説明会の実施と操作トレーニング
社内のルールが固まったら、実際にシステムを利用する従業員への周知を行います。新しいツールへの抵抗感を減らすことが目的です。
- マニュアルの展開と説明会: 法務やシステム担当者だけでなく、実際に手を動かす営業部門などに向けて説明会を実施します。「なぜ導入するのか(現場の業務軽減につながること)」を伝えることが重要です。
- テスト送信: 本番運用前に、従業員同士でダミーの契約書を送信し合い、操作感を掴むトレーニング期間を設けるとスムーズです。
【Step6】取引先へのご案内と同意取得
電子契約の導入において、つまずきやすいのが「取引先の理解と同意」を得るステップです。いくら自社で準備を整えても、相手方が「紙でなければ困る」となれば電子化は進みません。取引先に対しては、以下のポイントを押さえて丁寧に案内を行います。
- 事前告知: 契約更新のタイミングや、新規取引の開始時に、書面やメールで電子契約へ移行する旨を案内します。
- 法改正に伴う運用変更の伝達: 取適法の施行により、発注内容の電磁的な明示が原則認められるようになりましたが、取引先から書面の交付を求められた場合には(保護に支障がない場合を除き)遅滞なく書面を交付する義務があります。こうした法的な権利と自社の対応方針を誠実に伝えることで、安心感を持って移行してもらえます。
- メリットの提示: 「印紙代がかからない」「郵送の手間や切手代が不要になる」「スピーディに契約が締結できる」といった、相手方にとってのメリットを伝えることが重要です。
- 同意書の取得: 必要に応じて、今後の契約は電子契約で行う旨の「電子契約利用に関する同意書」を取り交わします。
- 「一方的な代金決定」のリスク回避を伝える: 取適法では、コスト上昇分を考慮せずに一方的に価格を据え置く「協議に応じない代金決定」が明確に禁止されました。取引先への案内時に、「今後は電子契約を通じて、双方向で迅速な価格協議の記録を残せる体制にします」と伝えることは、取引先への誠実な姿勢(パートナーシップ構築宣言の遵守)として、電子化への合意を得る強力なフックになります。
取引先へご案内する際のメール文面テンプレートや、同意書のひな形については『電子契約利用の同意書作成方法とひな形』の記事で詳しく解説していますので、合わせてご活用ください
【Step7】スモールスタートでの運用開始と全社展開
すべての準備が整ったら、いよいよ運用開始です。
まずはStep1で選定した特定の部門や、特定の契約書(NDAなど)に絞ってスモールスタートを切ります。1〜2ヶ月ほど運用し、現場から出てきた「システムへの入力が手間に感じる」「取引先からこんな質問が来た」といった課題を収集し、運用ルールやマニュアルを微修正(チューニング)します。
運用が軌道に乗り、運用手順が見えてきた段階で、対象とする契約類型や利用部署を段階的に全社へと広げていきます。焦らずにステップを踏むことが、全社的な定着への近道です。
電子契約の導入プロセスにおいて注意すべき3つのポイント
上記のステップを踏むことで導入は完了しますが、プロセスを進める中でいくつか注意していただきたいポイントがあります。
押印に代え電子署名で電子契約化すべき契約書を漏れなく抽出する
明日からいきなりすべての文書を電子契約に変更するのは現実的ではありません。現状、ハンコを押印している契約書の中から、「電子化すべき契約書」と「まだ紙のまま残すべき契約書」を適切により分けることが重要です。
押印を廃止し、電子契約に移行するプロセスにおいては、抑えておくべきセオリーがあります。詳細は「電子契約導入準備としての押印廃止プロジェクトの進め方—内閣府「押印見直しマニュアル」を参考に」を確認してください。
書面の契約書として残すべき契約書・電子化できない契約書は何かを押さえておく
すべての契約を電子契約にできれば理想的ですが、一部の契約書については法令等により書面での作成・保存が義務付けられているものがあります。導入にあたっては、自社で扱う契約書が電子化可能なものか、法的な観点や顧問弁護士等に事前に確認しておくことが大切です。
セキュリティ対策を万全にする
電子契約に移行した後は、様々な取引先との契約書を電子データとしてクラウド上に保管することになります。金庫に物理的に保存する紙の契約書とは異なり、インターネット経由でいつでもアクセスできる利便性がある反面、サイバーリスクへの備えも必要です。導入にあたっては、セキュリティ対策や認証基盤がしっかりと整備された電子契約サービスを選択しましょう。
おわりに
電子契約の導入には、社内ルールの変更や取引先への説明など、乗り越えるべきステップが存在します。しかし、この7つのステップを順を追って進めることで、手戻りや大きな混乱を防ぐことが可能です。 導入が完了すれば、契約締結までのリードタイム短縮、印紙代や郵送費のコスト削減、コンプライアンスの強化など、組織にとって多くのメリットが期待できます。
クラウドサインでは、導入前の社内調整から取引先へのご案内まで、専任の担当者がサポートする体制を整えています。導入に向けた具体的なご相談や、他社の導入事例について知りたい方は、ぜひお気軽に資料請求やお問い合わせをご利用ください。
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弁護士ドットコム クラウドサインブログ編集部
