電子契約を全社導入するための7ステップ—事前準備と導入プロセスの注意点

電子契約を全社導入するための7ステップ—事前準備と導入プロセスの注意点

在宅勤務・テレワークを導入しようとしても、紙と印鑑による契約書への押印業務の名残りがデジタル化のボトルネックになることも。企業が電子契約導入を1日でも早く・スムーズに成功させるために抑えるべき7つのステップと、導入プロセスにおける注意点について解説します。

1. 電子契約を導入するために必要な準備

電子契約システムを導入するにあたって、導入企業の担当者としてどのような準備が事前に必要になるのでしょうか。

本記事では、電子契約の導入のプロセスをステップごとに説明していきますが、その前提として、現在日本の電子契約において主流となっているクラウド型電子署名サービスが、いかに準備負担が少ないかについて解説します。

1.1 クラウド以前は契約当事者甲乙双方が3つのハードウェアを準備する必要があった

まず、電子契約といっても、その方式はいくつかのタイプに分かれることを知っておかなければなりません。

日本の電子契約の有効性について定めた法律である「電子署名法」は、2000年に制定され、2001年に施行された法律です。当時はクラウドという技術自体がまだなかったこともあり、「ローカル署名型(上図の左)」と呼ばれる方式を採用していました。

このローカル署名型では、

  1. 電子証明書が格納されたICカード
  2. ICカードリーダー
  3. インターネットに接続できるコンピュータ端末

の3つを、契約当事者である甲と乙の双方が準備する必要がありました。

特に、1の電子証明書が格納されたICカードを入手するためには、電子認証局サービスを提供する事業者に発行手数料を支払い、本人確認を受けなければなりません。しかも、これをすべての取引先と契約前に行うことは実務上困難であり、ローカル型電子署名はまったく普及しませんでした。

1.2 クラウド型はインターネットに接続できるデバイスさえあれば準備完了

これに対し、「クラウド型電子署名(上図の右)」では、1の電子証明書やICカードリーダーの部分を、電子契約サービス事業者がクラウド上で利用者に提供する仕組みを採用しています。

これにより、利用者は、インターネットに接続できるデバイスとして、PCやスマートフォンさえ用意すれば、準備完了となります。

これにより、電子契約締結までの準備のうち、最も面倒だったハードウェアを事前に準備するプロセスの負担が大きく減り、電子契約の受信者となる契約相手方にも受け入れられやすくなったわけです。

2. 電子契約を全社導入するための7ステップ

クラウド技術により、インターネットに接続できるPCやスマートフォンだけで利用できるようになった電子契約ですが、企業がこれを利用する場合は、社内からの承諾、ワークフローの整理、規程等の準備も必要となります。

以下では、企業における電子契約の導入プロセスについて、7つのステップに分けて解説します。

ステップ1 導入目的を確認する

まず最初に、紙と印鑑による契約と電子契約の違いを把握し、メリットとデメリットを比較しながら、自社における電子契約の導入目的を整理します。

上記表はビジネス法務2020年4月号の特集「電子契約のしくみと導入プロセス」にも登場する、実際の電子契約導入企業の声を参考に作成しています。

中でも、2020年4月現在の 新型コロナウイルスの被害拡大により、業務の完全デジタル化による在宅勤務・リモートワークの実現は最重要課題に なりました。

取引先にコスト負担や待ち時間を発生させることなくスムーズに契約が締結でき、またどこからでも締結済みの契約書にアクセスできる環境づくりは、今後の事業存続のためにますます重要になっていくはずです。

ステップ2 電子契約サービスを比較検討する

自社にとっての電子契約導入の目的を整理したら、その目線をもって各社の電子契約サービスを比較します。

このステップでは、インターネット上のサービス比較サイトがよく用いられます。もちろんご利用いただいて構わないのですが、電子契約サービスの事業者が自社製品に有利に評価した比較サイトをステルスで制作しているケースも少なくないため、情報の信頼性には注意が必要です。実在企業が実名かつ事実ベースで使用感を述べているサイトを参考に、最後はご自身の目で実際に試用版・デモ・紹介動画等で確認する ことをお勧めします。

なおクラウドサインは、ITサービス比較サイト「ITreview」の電子契約カテゴリーにおいて、実名ユーザーの皆様から継続的に高いご評価を頂戴しています。

https://www.itreview.jp/categories/e-sign 2020年4月1日最終アクセス
https://www.itreview.jp/categories/e-sign 2020年4月1日最終アクセス

「クラウドサイン」のサービスの特徴や利用イメージを知りたい方は以下のリンクからサービス説明資料を無料でダウンロードできますので、電子契約サービスを比較検討する際の参考にしてみてください。

ステップ3 予算を確保する

採用可能性の高い電子契約サービスを絞り込んでいく過程で、およその年間利用料が計算できます。最大の山場である予算確保のステップです。

紙と印鑑による契約で発生し続ける人件費・印紙代・郵送代は、普段は目につきにくいコストですが、1通あたり約700円のコストがかかっています。

しかし、この数字をもってしても、電子契約サービス採用の予算を確保することは難しいという声を、総務・法務部門のお客様から耳にします。そこでおすすめしているのが、法務コストの削減という位置付けではなく、全社情報システムの投資予算として位置付ける という方法です(関連記事:リーガルテック投資のための予算を確保する方法)。

特に近年、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」を旗印に、情報のデジタル化のための予算をシステム部門が大枠で確保しているケースが少なくありません。情報システム部門をうまく巻き込み、十分な予算を確保しましょう。

ステップ4 押印申請フローを整備する

さて、このステップは実務的な整理です。これまで紙を回付して申請していた押印手続きを、電子契約にも整合させていきます。

一般的な電子契約サービスでは、押印申請の回覧・承認フローを電子化できる仕組みを持っています。クラウドサインのビジネスプランでは、特定のアカウントのユーザーを経由しなければ相手方に送信できない承認機能や、高度な管理機能も備えています。

紙の申請書を前提に設計されていた申請フローは、そのまま電子に移し替えるのではなく、契約の決裁者と監督責任者を改めて見直すこともポイントです。

特に、在宅勤務・テレワークを前提とした場合、決裁権限の移譲と細分化 が重要となります。オフィスの中では実現可能だった「暗黙の了解」「あうんの呼吸」や「事後承認」を前提とした曖昧な権限設定では、決裁に紐づいた業務がスタックしたり、逆に無権代理の誘発が懸念されます。

また、電子契約を全社導入する際に、紙の契約書の押印申請を電子契約の承認フローに統合 してしまう方法もあります。

クラウドサインをご利用いただくネスレ日本株式会社様では、この方法で全社で電子契約を導入された結果、月平均40時間以上の手間を削減。あわせて、紙・電子を問わないシームレスな契約管理も実現されています。

ステップ5 社内規程を整備する

事務的ですが骨の折れる作業の一つに、社内規程の変更という仕事があります。電子契約の導入にあたっては、押印に関する規程の修正と、電子取引のデータの真実性を確保するための規程の新設をおすすめしています。

まず必要なのが、電子契約の署名権限を定める規程 です。もっとも簡便な整備の方法として、多くの押印規程や印章管理に押印手続きの例外として定められている手書き署名の手続きに関する権限を電子署名にも広げる、というアイデアがあります。

また、電子帳簿保存法10条(および同法施行規則8条1項1号・3条5項2号ロ)により、電子取引の記録を紙に印刷せずに済むようにするためには、

  • 取引記録のすべてに認定タイムスタンプを押す
  • 規程を定めそのとおりに電子記録のままで保存(データの訂正・削除をしないことをルール化)

のうち、いずれかが必要となります。クラウドサインは認定タイムスタンプを付与していますが、それ以外の(eMailや他のツールによる)電子取引も予定するならば、データの訂正及び削除を制限する規程 を定めておく必要が出てきます。

以下2つ、このアイデアに基づいて作成したWord版の社内規程サンプルを、無償で公開いたします。ご参考いただければと思います。

(サンプル)電子契約の署名権限を定める規程
(サンプル)データの訂正及び削除を制限する規程

ステップ6 導入稟議を起案する

いよいよ大詰め、導入のための社内稟議です。

ここまでのステップで、メリデメの検討、製品比較、予算確保、押印フロー・社内規程が整備され、稟議に必要な情報はすべて揃いました。あとはこれらを要約し、相見積もりの証拠を付けて、稟議を起案するだけです。

忙しい決裁者には、電子契約サービスの細かい仕様を自ら確認する時間はありません。それでもスムーズに意思決定していただくための有効な武器として、同業他社または隣接業種の導入事例 があります。

「XYZ社も、すでにこの電子契約サービスを導入済みです。この導入事例をご覧ください」

と、具体的な他社導入事例を稟議参考資料として添えることができれば、決裁者も安心して首をタテに振ることができます。

Web上でも豊富な導入事例を公開するクラウドサインの強みは、このようなところでもお役に立てると思います。

ステップ7 全社アナウンスを実施する

管理部門にとって緊張する瞬間が、紙の契約書から電子契約へと切り替えることを全社にアナウンスする タイミングではないかと思います。

採用するシステムの操作難易度によっては、契約業務に関わる部署の担当者を集め、勉強会形式で実際の操作を説明し触れていただく機会を設けてもよいでしょう。

クラウドサインは、誰もがかんたんに迷うことなく操作できるユーザーインターフェースが特徴です。操作方法等に関するFAQ検索システムや気軽に問い合わせできるチャットサポートや、従業員規模数千人を抱える大企業をサポートした経験をもつ専門チームが有償でオンボーディング(伴走・サポート)するサービスも提供しています。

3. 電子契約の導入プロセスにおいて注意すべき3つのポイント

以上のステップを一つずつこなしていくことで、電子契約の導入は完了します。しかし、この導入プロセスの過程では、いくつか注意していただきたいポイントもあります。
以下、電子契約の導入プロセスにおける3つの注意点を挙げておきます。

3.1 押印に代え電子署名で電子契約化すべき契約書を漏れなく抽出する

明日からいきなりすべての文書を電子契約に変更することは困難ですし、その反対に、電子化すべき契約書を取りこぼしてもいけません。

現状、ハンコを押印している契約書の中から、

  • 電子化すべき契約書をもれなく抽出する
  • 電子化しない契約書をより分ける

この2つが非常に重要です。

押印を廃止し、電子契約に移行するプロセスにおいては、抑えておくべきセオリーがあります。詳細は「電子契約導入準備としての押印廃止プロジェクトの進め方—内閣府「押印見直しマニュアル」を参考に」を確認してください。

3.2 書面の契約書として残すべき契約書・電子化できない契約書は何かを抑えておく

すべての契約を電子契約にできればよいのですが、いくつかの契約書について、法令により書面としての作成・保存が義務付けられている契約書があります。

その一覧と法令については、「電子化に規制が残る文書と契約類型のまとめリスト」にまとめています。また、業界特有の法令(業法)により、これ以外にも書面化を義務付けている可能性もあります。

電子契約システムを導入する際には、自社で作成する契約書が電子契約書として作成・保存可能なのか、法的な観点か顧問弁護士等に事前に確認しておくことが重要です

3.3 セキュリティ対策を万全にする

電子契約に移行後は、様々な取引先との契約書を、電子データとしてクラウド上に保管することとなります。

金庫や書庫の中に物理的に保存する紙の契約書とは異なり、インターネットを介して外部からの不正アクセスの脅威に常にさらされるのも事実です。いつでも・どこからでもアクセスすることができて便利な反面、セキュリティ対策にも配慮が必要になります。

導入にあたっては、セキュリティ対策が万全な電子契約サービスを選択するようにしたいものです

4. 電子契約導入で企業のBCPに貢献

在宅勤務・テレワークを推進するにあたり、押印業務がボトルネックとなっているというご相談は日に日に増えています。

大きな組織であればこそ、1日も早く契約のデジタル化を完了させておくことが、貴社のBCP(Business Continuity Plan, 事業継続計画)を盤石にし、事業存続に大きく貢献するものと考えます。

あらためて、クラウド型電子契約のご導入をご検討ください。

なお、クラウドサインではこれから電子契約サービスを比較検討する方に向けて「電子契約の始め方完全ガイド」をご用意しています。「電子契約を社内導入するための手順」や「クラウドサインの利用手順」「よくあるご質問」など、導入前に知っておきたい情報を網羅して解説しているため、導入検討時に抱いている疑問や不安を解消することが可能です。下記リンクから無料でご入手できますので、ぜひご活用ください。

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