判子廃止期限を令和2年度末と定めた「規制改革推進に関する答申」

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内閣府規制改革推進会議より総理大臣に提出された「規制改革推進に関する答申」に、クラウド署名を活用した書面・押印・対面規制の見直しが期限付きで明記されました。

「規制改革推進に関する答申」まとまる

2020年7月2日、内閣府のもと開催されていた規制改革推進会議の小林喜光議長より、「規制改革推進に関する答申」が総理大臣に手交されました。

4月以降、日本組織内弁護士協会(JILA)およびクラウドサインからも提言を提出、内閣府や法務省、規制改革推進会議の各委員の皆様にもご理解とご支持をいただいて、クラウド署名の法的効力が公式に認められるはこびとなりました

本答申では、これまでの議論をまとめるかたちで、今後の押印手続きの廃止に向けた具体的手続きが示されています。

https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/202007/02kiseikaikaku.html 2020年7月6日最終アクセス

本答申を受けて、安倍総理大臣も書面主義と判子の廃止の重要性についてはっきりと述べ ています。

令和2年7月2日規制改革推進会議(首相官邸)

本日は、規制改革推進に関する答申に加え、デジタル時代の規制・制度の在り方及び書面・押印・対面規制の見直しについて、御提言を頂きました。
規制改革推進会議には、今般の新型コロナウイルス感染症への不安に対応する観点から、初診も含めたオンライン診療の全面解禁や遠隔教育の拡大などを進めるに当たり、大きな役割を果たしていただきました。さらに今般、 書面主義や判子の廃止 についても、精力的に御検討いただいています。
(中略)
既に取組を進めていただいている 書面・押印・対面規制の見直しについては、確実かつ速やかに、結果を出すことが重要 であり、北村大臣を中心に、関係閣僚は協力して取り組んでください。

押印のデジタルトランスフォーメーション期限は「令和2年度中に」

本答申の16-18ページに記載された「書面規制、押印、対面規制の見直し」では、判子原則の廃止をうけてのクラウド型電子署名等を活用したデジタルトランスフォーメーションについて、所管省庁と担当分野ごとの明確な期限が切られています

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/publication/toshin/200702/toshin.pdf 2020年7月6日最終アクセス

以下、その中身を表形式でまとめてみました。

No 方針 担当     期限
a 押印廃止の取組が進むよう、押印に関する民事基本法上の規定の意味や、押印を廃止した場合の懸念点に応える考え方等を示す 内閣府・法務省・経産省 措置済(「押印についてのQ&A」)
b クラウド署名に関して、電子署名法2条1項1号の要件を満たす電子署名と評価できることについてQ&A等で示す 総務省・法務省・経産省 令和2年度、できるだけ早期に措置
c クラウド署名が電子署名法3条の要件を満たすことの考え方を明らかにする 総務省・法務省・経産省 令和2年検討開始、早期に結論
d IT重説について、賃貸取引についての本格運用、法人間及び個人を含む売買についての社会実験の負担軽減を図り、環境整備に努める 国交省 令和2年度上期措置
e 不動産取引における重要事項説明書等の電磁的方法による交付等に向けて宅建業法の関連規定について、改正措置を講じる 国交省 直近の法改正の機会を捉えて速やかに法案提出
f 金融機関における口座開廃、融資の申込み等について業界全体での慣行の見直しを行い、書面、押印、対面の不要化や電子化を促進する 金融庁          令和2年度上期措置
g 取締役会の議事録への出席取締役等による「署名又は記名押印に代わる措置」について、クラウド署名も含まれるものとし、その解釈について周知徹底を図る 法務省    措置済(2020年5月29日付新解釈)  

注目は、すべての項目に令和2年度中に取り組むよう期限が切られている点です。このスケジュール感にあわせると、企業の経営者も、今年度中に脱ハンコ・押印のデジタルトランスフォーメーションを進める舵取りをする必要がでてきます。

また、すでに本メディアでも取り上げているaの「押印についてのQ&A」やgの「2020年5月29日付新解釈」だけでなく、不動産分野のd・eや、fの金融分野での取り組みについても、言及されているのは注目です。

なお、金融庁が主催する「金融業界における書面・押印・対面手続の見直しに向けた検討会」にも、クラウドサインから出席し提言の機会をいただいています。

クラウド署名に電子署名法3条推定効が認められる日

私たち電子契約サービス事業者にとっては、bとcに挙げられている、クラウド署名に関する電子署名法上の解釈の整理についてが最も重要です。

クラウドサインのように、PDF署名パネルにデジタル署名の指図者が明示されているものが2条1項1号の署名者表示機能(作成者表示機能)の要件を満たすことは、論をまたないところです。

クラウドサインは電子署名法2条1項の要件を満たす

一方、電子署名法3条の推定効が得られるか は考え方の整理が必要となります。この点、『デジタル証拠の法律実務Q&A』『デジタル法務の法律実務Q&A』等の著者である高橋郁夫弁護士ら業界の専門家たちも、以下のように注目してくださっています。

7月2日の「規制改革推進に関する答申」と電子署名(IT Research Art)

立会人型は、(中略)電子メールアドレスの窃用のリスク/可能性を考えると、それのみで、裁判所が、その行為者が、アドレス保有者であるということを認定するのは、困難なように思えます。しかしながら、行為者が、そのアドレス保有者である、ということを認定したあとであれば、その後、上記のインテグリティ確保の論点は、デジタル署名の技術的効力で、それのみで、推定されるものと考えられます。
このように考えると、3条推定効について厳密に分析をすれば、立会人型においても3条推定効は、(インテグリティ確保の部分に限ってのことなので、デジタル署名の技術的効力として)認められるというのが私の説 になります。
さて、総務省、法務省及び経済産業省さんが今後示す見解の周波数と一致しますでしょうか。

私たちが電子メールアドレスを利用するシーンを今一度振り返って見ると、

など、日常的かつ重要な用途にも当たり前のように用いられています。にもかかわらず、「電子署名の認証(インテグリティ確保)に用いる」と聞くと、経験したことがないだけに途端に不安を感じる方は少なくありません。

確かに、電子メールは迷惑広告やクリック詐欺的な犯罪にも使われることはあります。しかし、メールアドレスには、これを1つも持たないビジネスパーソンはいないという“悉皆性”がありながら、同じメールアドレスがインターネット上に2つと存在しないという“唯一性”が保証されているという特徴がある点にも注目すべきでしょう。これについてはまた機会を改めて解説します。

導入スピードと安全性のバランスに優れたクラウド署名を押印の代替手段とすべく、新たな商慣習を広めながら、引き続きこの規制改革への働きかけを推進します。

画像: 首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/202007/02kiseikaikaku.html)

(橋詰)

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